ワンちゃんが山に居た
ワンちゃんが山に居た、一緒に遊んだら懐いてきたので、それからずっと一緒に居る。でもワンちゃんは実は熊だった、小さかったから勘違いしちゃったのだ。
今ではグテッとさせて伸ばすと、三メートル近くなるから一緒に遊ぶのも大変だ。
この前はボディにボディアタックを喰らって五メートル強は吹き飛ばされたし、振り回した腕は岩を砕いてた。のしかかりは確実によけないとやばいので気を付けてる。
もう一緒に遊ぶなんていう段階ではなくなっちゃった。
それでも、背中に乗って走ってもらうのはとても楽しい。複雑な山道をもの凄いスピードで走り回るなんて、熊に乗る以外方法はないんじゃあないかな。
それに、この前は鮭をたっぷり採って来たし、木の実もたっぷりくれたりする。
山ではたまに猟師に撃たれるみたいだけど、散弾銃は皮膚を通さずライフルは痣ができるくらいで全然大丈夫。で、かるく追い払っちゃうみたいだ。
まぁ、なんであろうと熊さん大好きだ。
ある日、キノコ集めから帰るとなにやら山小屋の様子がおかしかった。何がおかしいのかは具体的に言える。猛獣同士が争ったような形跡が残っていたのだ。
熊さんと一緒に眠る藁や干草を固めた場所は散乱していたし、ところどころに二種類の動物の毛と血痕が残されていた、ドアーは外され、テーブルは砕け箪笥は木の破片と化していた。窓ガラスは壊されてなかった。
答えは灰色熊だ。数日前にも熊さんに乗って山を駆け巡っていたとき見かけていた、その時は近づいて来なかったけど、目の前の様子を見ると奴は熊さんと闘うつもりだったのかもしれない、で、闘ったんだ。
窓から外を見ると少し離れた所で木が数本砕け折れるのが見えた、そして咆哮が届いた。戦いはまだ続いている。
現場へ到着したとき熊さんはすでに亡骸だった。そして相手の灰色熊はこの場から去るところだった。
私は叫んだ「グリズリィーーー!」
灰色熊も満身創痍なのだろう、一度見向きしただけで山の奥へと消えた。
熊さんの亡骸をこのままにしてはおけない、一生懸命背負っていつもの場所に寝かせ、一緒に眠った。
次の日起きたら熊さんは完全復活してた。やった。