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新たな依頼は至上最悪!

 〝渦〟討伐のチェーンクエストを達成してから数日が経過した。

 このクエストの達成は、ゼノたちが思っていた以上に大きな反響があった。

 

 魔導師と聖女と令嬢という非常に珍しい組み合わせのパーティーの噂は、あっという間に、マスクス全体に広がった。


 町を歩けば、周りの人たちから感謝の言葉を伝えられ、宿舎には連日のように贈り物を持った人たちが訪れた。

 特にアーシャは、領主の娘ということもあり、町の英雄として大々的に領民から称えられた。


 冒険者ギルドからも大きなクエストを依頼されることもなく、ゼノたちは束の間の平穏な日々を過ごしていた。


 モニカとアーシャは、すっかり一緒にいることが当たり前になっており、小競り合いをしつつも、なんだかんだ気が合う部分があるようだ。

 2人は、それなりに毎日を楽しんでいる様子だった。


 が。


 一方のゼノはというと、1人密かに焦りを抱えていた。






「〔魔導ガチャ〕――発動」


 食堂で3人での朝食を終えて、自分の部屋に戻って来ると、ゼノはいつものようにガチャで魔石を召喚する。 


 シュピーン!


 青色のサークルとともに、10個の魔石がゼノの周囲に浮かび上がった。


----------


〇ガチャ結果


①☆1《子守歌》

②☆1《舗装》

③☆1《スキンケア》

④☆1《装着》

⑤☆1《アイテムボックス》

⑥☆1《美人化》

⑦New! ☆1《洗濯》

⑧New! ☆1《植物学》

⑨New! ☆1《チアダンス》

⑩New! ☆1《酒造》


----------


 最近は、緑クリスタルを使うことが多かったが、残り数が少なくなってきたので、今日は青クリスタルを使ってのガチャだ。


 だが、さすがに1ヶ月近く召喚し続けていると、新しい魔石を手に入れることが少なくなってくる。


「はぁ……。ダブりが多いよなぁ……」 


 少しだけため息をつきつつ、ゼノは自身のステータスを確認する。


----------


【ゼノ・ウィンザー】

[Lv]56

[魔力値]0 [術値]0

[力]25 [守]15

[魔攻]420 [速]20

[スキル]〔魔導ガチャ〕

[魔石コンプ率]163/666

[所持魔石]

☆1《子守歌》 ☆1《洗顔》

☆1《トリック》 ☆1《装着》

☆1《アイテムボックス》 ☆1《美人化》

☆1《舗装》 ☆1《植物学》

☆1《チアダンス》 ☆1《酒造》

☆2《地雷》 ☆2《もの化け》

☆2《クルージング》 ☆2《脱出》

☆2《状態異常回復》 ☆2《MPドレイン》

☆2《雷帝の独楽(エレキインパクト)》 ☆3《大恋愛》

☆3《被魔法ダメージ増加》 ☆3《肉体強化》

☆3《ミスリード》 ☆3《無拍子》

☆3《双翼の三竜旋(エアリアルドラゴーン)

[所持クリスタル]

青クリスタル×32

緑クリスタル×1

[Ωカウンター]013.58%


----------


 魔石コンプ率も気になるところだが、ついΩカウンターの数値に目が行ってしまう。

 すでに、カウンターは10分の1を越えてしまっていた。


「これが100%になると、死ぬんだったよな」


 たしかに、これだけ未発見魔法を自由に使っているのだから、代償があるのは当然と言えたが、たった1ヶ月ですでに10分の1まで上昇してしまったことに、ゼノは不安となってくる。


 Ωカウンターは、レアリティの高い魔石であればあるほど、その上昇率も高くなることが分かっている。


 このままだと、魔大陸へ渡って希少性の高いクリスタルを集める頃には、あっという間に半分くらいまでは、カウンターが上昇してしまっているかもしれなかった。

 

 すべての魔法を列挙するには、運も味方にする必要があるのだ。


「……とにかく。今は、なるべく早く魔大陸へ渡れるように、依頼されたクエストはしっかりと達成して、実績を積み上げるしかないな」


 Lvも上げて日々の鍛錬も怠らなければ、いずれ目的は達成されるはずだ、とゼノは思う。


(もう少し待っていてください……お師匠様)




 ◆




 ゼノたち3人は身支度を整えると、いつものように冒険者ギルドへと向かう。

 

 Sランク冒険者がいるパーティーは、ギルドの顔でもあるため、難易度の高いクエスト以外は、まったくと言っていいほど依頼されなくなる。


 しかし、だからと言って、宿舎でダラダラ過ごしているわけにもいかない。


 なので、毎回こうして新たなクエストが舞い込んでいないか、ギルドに確認をしに行くのだ。

 これも、今のゼノたちにとって重要な仕事と言えた。


「今日も、なんも依頼が届いてねーかもなー」


「ですね~。ゼノ様が受けるとなると、それ相応のクエストでないと釣り合いが取れませんし」


「おっ! 珍しくモニカと意見が合ったぜ! ゼノに相応しいクエストがありゃいーんだけどよ」


 呑気にそんな会話をするモニカとアーシャの後に続く形で、ゼノもギルドの中へと足を踏み入れる。


 すると、ちょうどそのタイミングで――。


「あっ、ゼノさん! よかった、ちょうどいいところに!」


 入館して来たゼノたちの姿を目にして、ティナが手招きながら声を上げる。

 すぐに、3人は受付カウンターへと向かった。


「何かあったんですか?」


「分かったぜっ! 依頼が届いたんじゃねーのか!?」


「さすが、アーシャ様です。実はたった今、カロリング領イニストラードの冒険者ギルドからクエスト依頼の手紙が届いたんです」


「イニストラード? イニストラードって、マスクスよりも大きな町ですよね? なんで、そこのギルドから依頼が……」


 疑問の声を上げるモニカ同様に、ゼノも首を傾げる。

 

 イニストラードのことは、もちろんゼノも知っていた。

 カロリング侯爵が治める領地の中で一番大きな町であり、領都でもある。


 カロリング領はゴンザーガ領と隣接しており、マウゼル洞窟からさらに西へ進むとイニストラードの町がある。

 

 モニカが言うように、イニストラードはマスクスよりも大きい。

 アスター王国の中でも、1位、2位を争うほどに栄えた町とも言われている。


 当然、そこの冒険者ギルドも巨大であるはずだった。


「どうやらイニストラードの冒険者は、誰もこのクエストを受注しなかったみたいなんです。それで、〝渦〟討伐のチェーンクエストを達成したっていう報告を聞いたあちらのギルドが、今回ゼノさんたちに依頼を出してきたみたいなんですよ」


「誰も受注しなかったってことは……そちらのSランク冒険者の方も受けなかったんでしょうか?」


 ゼノがそう訊ねると、ティナはゆっくりと頷く。


「はい。そのようです」


「Sランク冒険者ってのは、そのギルドの顔じゃねーか。受けねぇーなんて、んなことあんのかよ。随分と骨のない連中だぜ」


 両手のひらを見せて呆れたポーズを取るアーシャの横で、ゼノは改めてティナに訊ねた。


「クエストの内容を聞かせてもらってもよろしいですか?」


「あ、はい。ですが、あの……私の口からは、少しお願いがしづらいところがありまして……」


「大丈夫です。なんでも言ってください」


「そうですか? でしたら……お話させていただきます。イニストラードのギルドから届いたのは、レヴェナント旅団の確保という依頼でして……」


「えっ! レヴェナント旅団……ですか!?」


 モニカが驚きの表情を浮かべる。


「うわぁ……マジかよ……」


 それに続くように、アーシャも眉をひそめるのだった。

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