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魔物と旅人

魔物と旅人4: 花畑の魔物

作者: 河辺 螢

※ 童話「赤ずきんちゃん」の二次創作です。

 おばあちゃんが病気になったので、お母さんからリンゴやポテトのパイを持っていくようにって、お使いを頼まれた。

 通りすがりにお花畑があった。とってもきれいなお花がいっぱい咲いていた。

 そうだ、お花も持って行こう。

 お花を摘んでいると、突然草の中から黒くて丸いものがぴょん、と飛び出してきて、びっくりしてお尻をついてしまったら、向こうもびっくりして、どこかに逃げて行っちゃった。

 何なの? あの生き物。

 びっくりはしたけれど、怖くはなかったので、そのままお花を摘んでいると、いつの間にかリンゴとポテトパイが入った籠の中に、お花がいっぱい入っていた。

 見てると、さっきの小さな黒い丸が、籠の中に摘んだばかりの花をそおーっと入れていた。

 目と目が合って、驚いた小さな魔物さんに、

「こんにちは、いい天気ね」

 と言うと、

「ぴきゅ!」

と返事をしてきた。なんだかかわいい。

 摘んだお花で花冠を作って魔物さんに乗っけると、嬉しそうにぴょんぴょんと跳びはねた。

「これからおばあちゃんのところに行くの。魔物さんも一緒に行きましょ!」

 おばあちゃんのおうちは、花畑のすぐ近く。

 籠の中に入った魔物さんと一緒に、おばあちゃんのおうちに行った。


 いつもはおばあちゃんが「よく来たね」ってお迎えしてくれるんだけど、おうちは窓の鎧戸も閉まっていて、とっても暗かった。

「おばあちゃん、来たよ」

 そう言っておばあちゃんが寝ているお部屋に行こうとしたら、突然おばあちゃんの部屋から見たことのないおじさんが二人出てきて、

「何だ、子供か! びびらせやがって」

 そう言って一人が私の方に近づいてきた。

 とっても怖くて、声も出なくて、体も動かなくて、どうしたらいいのか判らないでいたら、突然天井に黒くて大きな影が現れて、

「ぶぁあああああああ」

と、不気味な声を上げて、部屋いっぱいに広がった。

 私を捕まえようとしたおじさんが

「わあああああっ!」

と悲鳴を上げた。

 私も怖くて動けないままだったけれど、突然体がふわっと浮いて、ドアから家の外に運ばれていった。

 何? 何があったの?

 でもおばあちゃんがまだ中にいる。

 どうしよう、おばあちゃんがあのおじさん達に殺されていたらどうしよう。

 怖くて震えながら泣いてしまった。

 すると、誰かが私の頭をそっと撫でたあと、

「ここにいるんだよ」

 そう言って、おばあちゃんの家に入っていった。

 ドタバタと音がして、しばらくすると、さっきの二人のおじさんが、紐でしっかりと結ばれて家の外に放り出されちゃった。

「きゅいいい!」

 魔物さんの声!

 もしかして、魔物さんも悪い奴だと思われて捕まってるんじゃないかと思って、急いでおうちの中に入ると、助けてくれた男の人が、飛びついてきた魔物さんをしっかりと受け止めて、嬉しそうに頬ずりしていた。

 そうか、お兄さんと魔物さんは、お友達だったんだ。


 おばあちゃんは、悪いおじさん達に縛られていたけれど、お兄さんが紐をほどいてくれた。

 風邪でまだしんどそうだったけれど、命に別状はない、と言われて、とてもほっとした。

 おばあちゃんが無事で良かった。

 おばあちゃんも、お兄さんにとっても感謝していた。

 お兄さんが、街の警備隊を呼びに行ってくれた。

 悪いおじさん達は家の外だし、しっかり縛られてるけど、ちょっと怖い。

 まだ少しドキドキしていた。

 すると、私の頭の上に、お花が降ってきた。

 さっき摘んで、籠の中に入れていたお花だった。

 魔物さんが

「きゅい、きゅい」

と喜んでいたから、多分、魔物さんが魔法でやったんだわ。

 と言うことは、さっき、ドアから私を逃がしてくれたのは、…魔物さんの力?

 あの時天井に映った影も、怖い声も、魔物さんだったのかしら。

「魔物さん、ありがとう」

 そう言うと、魔物さんは

「ぴきゅ」

と答えてくれた。笑っているように見えた。


 悪いおじさん達は、警備隊のおじさん達に連れて行かれた。


 おばあちゃんに言って、おばあちゃんのために持ってきたリンゴとポテトパイを、お兄さんと魔物さんにも分けて、みんなで食べた。

 魔物さんも、お兄さんも、おばあちゃんも、とっても喜んでいた。

 私もみんなと一緒に食べることができて、嬉しかった。


「昔、赤い頭巾をかぶった女の子が、寄り道をしてオオカミに襲われてしまった話があったよ。寄り道はほどほどに、周りに気をつけて」

 お兄さんはそんな話をしたけれど、私は寄り道をしたおかげで魔物さんに会えて、助かったんだよ。

「君もだよ。すぐにどこかに行ってしまって…」

と、魔物さんもお兄さんにちょっと叱られていたけど、全然懲りてないようだった。

 私と魔物さん、ちょっと似てるかもしれないね。


 お兄さんと魔物さんは、旅をしているんだって。

 魔物さん、お兄さん、ありがとう。

 バイバイ、またね。


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