表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

中編:あげ☆ぱんつ先生の追っかけについて(手品部。女子二人)

今回は、とある漫研部員の熱狂的ファン視点です。


 笹百合女学院の文化祭は、三日ある。今日はその初日。

 私たち手品部の出番は、二日目の午前中だ。

 だから、一日目の午後は部室で自主練することが多いのだけれど。

「うう……っ、最高に良かった」

 私の友人は今、漫研部の部誌を抱え、鼻水垂らして泣いていた。

「なに練習中に漫画読んで泣いてんの、アンタは」

 明日はうちらの出番だっつーの。

 私がツッコむと、彼女は大きく頭を振った。

「いや、手品なんかしてる場合じゃないよ」

「じゃ、何でお前、手品部入った?」

 しろよ、手品。

 先輩・後輩たちがちょうど出払っているときで良かった。

「本当、あげ☆ぱんつ先生の新作が、本当、本当に良くって……!」

「ああ、アンタが中一の頃から追ってる漫研の人ね」

 うちらの学校は中高一貫で、部活動は中高合同で行う。

 今、私たちは高一だから、かれこれ三年ほど追っかけをしていることになる。

「今回、あげ☆ぱんつ先生初のBLだったんだけど!」

「あれ、アンタBLは読まないんじゃなかったっけ?」

「普段は読まないんだけど、あげ☆ぱんつ先生のは特別だから、えいやって読んでみたの」

「どうでもいいけど、毎回その名前のせいでいまいち内容が入って来ないわ」

 ネーミングセンスの無さよ。

「そしたらば、すんごく良くって!!」

 私のツッコミをものともせず、彼女は力強く言った。

 くわっと目を見開いて。

「そ、そんなに?」

 あまりの勢いに、私は引いてしまう。

「まず、パン食い競争で主人公が逆走してお相手の子と出逢うんだけど」

「ごめん、まず初めから意味が分からない」

「それで、主人公は戦隊ヒーロー候補生なんだけど、お相手の子がそれを邪魔するのね」

「情報量多いな……」

「どうしてそんなことをって思っていたら、実は戦隊ヒーローになったら、主人公は敵に暗殺されちゃうのね。それを阻止するために、お相手の子は未来から来たってどんでん返しで」

「うん。どっかで聞いた話だね?」

 十年くらい前にやってた魔法少女のアニメかな?

 あれは兄の影響で映画版だけブルーレイで観た。良かったけど、半分トラウマだ。

「それで、主人公庇って死んじゃうの……」

「読む気は端から無かったけど、いきなりオチ言うなよ」

 この子は何かを誰かに勧めるのが下手だと思う。

「こんなジェットコースター展開を、コメディ交えつつ十六ページで収めちゃうあげ☆ぱんつ先生は神様だと思う……」

「待って? その内容で十六ページとか、どんな構成力してるの? 魂を地球外生命体に売ったの?」

 ネタバレされても、ちょっと読んでみたくなった。恐るべし、あげ☆ぱんつ。


「は~一度でいいからお会いしてみたい、あげ☆ぱんつ先生……」

「同じ学校にいるんだから、会えるでしょうよ。てか、漫研部行ったんだったら、聞いてみればいいのに」

「ダメ! 偶然出会いたいの! 図書室で本を手に取ろうとしたら手が重なって、みたいな!」

「どんな少女漫画だよ」


 END.


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ