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六十四話 置いてけぼり

難産でした。

書きたいとこまで詰め込んだので少し長め。

「──あら? シグムンド様?亅


 カランコロン、と来店を示す扉のベルの音に続いて、耳慣れない、鈴を鳴らしたような高めの綺麗な声が響いたのは、私達が料理を食べ終え、ちょうど支払いまで済ませたときだった。


 店に入ってくるや否や、目を丸くしているのは──つい最近見た顔。そう、数日前の合同訓練で見かけた、騎士団員の女性だった。訓練の時、ルゥーに水やらタオルやらを渡していた、おそらく新人である金髪美人の団員。

 そういえば、合同訓練の決闘形式、総当たり戦だったけどこの人とは当たらなかったな、と思い返す。


 騎士団に所属しているということはつまり貴族ということで、今日は休みで出かけているのか、後ろには護衛らしき男が二人控え、コートの下からは綺麗なドレスが覗いている。


「ああ、マホース殿」


 ルゥーは目を丸くしながら、受け取ったばかりの釣り銭を無造作にポケットにしまう。


「このような所で会うだなんて、奇遇ですわね! シグムンド様はお出かけにいらしたのですか?」

「ええ、久しぶりに休暇を頂けたので、仲間と」

「まあ、そうでしたのね! わたくしも、今日は一人でゆっくりとご飯でも食べようと思って来ましたのよ。お連れの方々も、国治隊の方でしたわよね? 先日の合同訓練でお見かけした気が致しますわ。私、魔術騎士団所属の、アスティーユ・マホースと申します」


 アスティーユと名乗った彼女は、私とウィスティの方を見て、にっこりと微笑んだ。

 マホース家。うーん、聞き覚えがないのでおそらく伯爵家以下だろう。貴族令嬢として名乗らないところは好感を持てる。

 私は軽く笑みを返した。


「どうも。リラ・モーガンスと言います。シグムンドの同僚です。こちらも同じく、ヴィヴェカ・シュルツです」


 ついでにウィスティまで紹介しておく。ウィスティの方をちらりと見やると、いつもの無表情と見せかけて眉がぎゅっと寄っている。

 ……すっごい不機嫌そう。

 ──何を隠そう、ウィスティが今日のお出かけをあんなに楽しみにしていた理由。おそらく一番は、こちらのアスティーユさんが合同訓練の時にあまりにルゥーの近くでベタベタしていて、ストレスが溜まりまくっていたためである。


「皆様同じ所属ですの? 優秀なのですね! 私、訓練の総当りの時に怪我をしてしまって、途中で抜けてしまったので、皆様と戦ってみたかったですわ!」


 胸の前できゅっと手を組み、歌うように彼女が言う。

 パッと見の印象、普通に良い人そうなご令嬢。多分私達がまだ成人に達していない、即ち本来ならば学生でいるはずの年齢であることに気づいているだろう。そのようなことにも言及してこない。良識があり、平民にも偏見を持っていなさそう。

 道理でルゥーも警戒しないわけだ。

 それにしても、とんでもない鈍感である。困ったことにこの男、女の子に言い寄られた経験がほぼゼロに等しいおかげで、自分が好意を寄せられていることに欠片も気づいていない。


「うちの者は皆優秀なので、良い手合わせ相手になるかと思います。とりわけこの二人は、俺の家族のような存在で」


 愛想良く微笑みながら、ルゥーが答える。普段あまり見る機会の無い、外面の良いルゥーの姿。

 少し新鮮に感じながら見ていたら、視界の端からすっと手が伸びてきた。

 ウィスティが、きゅっとルゥーの服の裾を掴む。


「ん? どした?」


 ルゥーが振り向き、ウィスティの手を掴んで優しく尋ねた。

 その声色にアスティーユさんは、すっと目を細めた──ウィスティの行動が、牽制であると気づいたのだろうか──かと思いきや、美しい完璧な笑みを浮かべる。


「まるで()()()()()()()()()、仲がよろしいのですね。ぜひ、私とも仲良くしてくださいな」


 ──恋愛感情じゃなく、家族の情でしょう? そう言いたいのが聞こえてきそうだった。

 何も気づかないルゥーは、愛想良く笑う。


「ええ、ぜひ仲良くしてやってください。こういう仕事をしている以上、二人とも同年代の友人は少ないので。な、二人とも?」


 ウィスティが、掴んだルゥーの服の裾をさらにギュッと握りこんだ。ぎゅうと眉を寄せ、鋭い目線でアスティーユを睨む。

 アスティーユさんは、あら、とわざとらしく口元に手を当てる。

 性格悪いな、この人。どっかの誰かさんを思い出させる。


「ごめんなさい、何か嫌なことを言ってしまったかしら。嫌われてしまったようですわね」

「すみません、ヴィヴェカは人見知りなもので」


 さすがに見ていられず、私はウィスティを隠すように一歩前に出た。


「私、アスティーユさんのこと、気になっていたんです。今年から騎士団に入られましたよね? 合同訓練の時、優秀そうな方だなと思って。ぜひ、仲良くしてください」


 にこりと微笑んで見せる。アスティーユが片眉をくいっと上げたように見えた。


「こちらこそ。ごめんなさいね、ヴィヴェカさんの気分を害してしまって。私もお昼を食べに来たので、この辺りで失礼させていただきますわね。また会ったら、お話しましょうね。それでは、ごきげんよう」


 小さくお辞儀をしたあと、何事も無かったかのように微笑みを浮かべ、アスティーユは店の奥へと向かっていった。後に続く護衛騎士らが、通りすがりに会釈をしていく。


「ウィスティ、今のは態度悪いだろ」


 ルゥーが、ウィスティの手を握ったまま、言い聞かせるように声をかけた。目線は、アスティーユの方を向いたまま。ウィスティの表情には気づいていない。


「アベライト生誕祭の警備時に知り合って何度か話してるけど、マホースさんはいい人だと思うぞ。歳も近いし、良い友達に慣れるんじゃねぇか?」


 ルゥーは、ウィスティの態度が、ただの人見知り故のものだと思っているみたいだった。歩み寄れよ、そう言いたげな声色。 

 けれど、どこに、自分の好きな人を狙って牽制をかけてくる女と友達になれなんて言われて、喜ぶ女がいるだろうか。

 俯いたままのウィスティの顔色が、みるみる青白くなっていく。


 ──なぜだか、傍から見ている私が、グラグラ揺れているような気がした。

 細い、塀の上でゆらゆら揺れながら回っているコマ回しのコマが二つあって、二つが塀のどっち側に落ちるのだろう、と見ている人。コマがルゥーとウィスティで、観察者が私。

 それらがどちらに落ちようが、私自身には関係の無いことなのに。


 ぐらぐらする。


「……わたし、悪くない」


 ウィスティの口から、驚くほど低く冷たい声が吐き出される。

 驚いたルゥーが目を見開いて、ウィスティの顔を覗き込む。


「どうした? 俺、なんか嫌なことでも言ったか?」


 ウィスティが、勢いよくルゥーから顔を背ける。


 ──コマがとまって、落ちる。


 どうしたらいいんだろう。分からなかった。ルゥーが全くもってウィスティの気持ちを理解していないのも、ウィスティがルゥーに対してこんなにも怒りを顕にすることも、初めてだった。


 どうすれば正解なのか分からない。割り込んで、二人の気持ちを代弁してあげる? そんなことはしたくなかった。

 二つのコマが、それぞれ塀の反対側に落ちてしまえばいいなんて、離れ離れになってしまえなんて、そんな事を思ってるわけじゃない。

 けど、手を出してしまえば、二つが共に向こう側に、私の手が届かない所に落ちてしまう気がした。もっと嫌だ。


「……あの人のが、やな感じだったのに」

「え? やな感じだったか? 気にしすぎじゃねぇの?」


 結局、何も出来ずに、どっちに落ちるんだろうって怖がりながら見つめるだけ。


 聞き返すルゥーの顔は、どう見たって何も分かっていない。アスティーユのことを庇っているようにすら見える。

 ウィスティはそんなルゥーを見て、きゅっと唇を噛んだ。


「……もういい、しらない。ルゥーなんか嫌い」


 スローモーションのように見えた。

 ウィスティが身を翻し、店の扉を体当たりするように押し開けて、走り去っていく。


「あっ、ちょっ、待てウィスティ!」


 ルゥーが、追いかけようとする。


 ──行ってしまう。


 咄嗟に追いかけ、店から出たところでその服の裾を掴んだ。

 ぐっと引っ張られ、同じくこちらに引っ張られたルゥーとぶつかりかける。

 肩をぐっと支えられて、焦った顔のルゥーと目が合う。


 後ろで、閉まった店の扉の上に取り付けられた鈴が、カランコロン、と余韻のように響いていた。


「っ、ライラ、」


 ルゥーから責めるような視線を向けられて、必死に言葉を探す。


「……追いかけて、ウィスティになんて言うの」


 どうにか、このままルゥーをここに引き止められる言葉を。だってこのまま行けば──このまま行けば。二人が結ばれてしまう。


 ──今更、何を。

 頭の中で、冷たい声が響く。

 諦めたくせに。応援も協力もしないと決めたのだから、二人を妨害する権利も無いはずだ。


「……俺、そんなに酷いこと言ったか」


 いつの間にか、俯いていた。

 下を向いて言葉を探しているのを、ルゥーは私がウィスティのために怒っているのだと思ったらしい。


「……ほら。何が悪かったかも分かってないんじゃん。それでウィスティ捕まえて、なんて言うつもりなの」

「……分かんねぇけど……。ウィスティ怒らせちまったっつーのも、出てって初めて気づいたし……」


 ルゥーの声は酷く情けなくて、顔を上げてみれば声とそう違わぬ、困り果てて情けない顔をしたルゥーがいた。


 ルゥーが今からすべきことなんて、単純明快だ。ウィスティの所に走って、好きだと、そう伝えればいい。

 私がそうアドバイスをすれば、ルゥーはこの情けない顔じゃなくなるんだろうか。私を置いて、ウィスティのところに向かうんだろうか。

 そうして二人で戻ってきたら、二人仲良く手を繋いでいて、私はそれを笑顔で祝わなければならないんだろうか。


 ぐらりと、世界が揺れたような、錯覚に陥った。


「ライラ……?」


 名を呼ばれる。

 はっとした。案じるような響きだった。


 咄嗟に、口角を上げて笑みを貼り付ける。仕方ないんだから、と呆れながらも真剣に伝えようとする、そんな表情を意識して。


「ウィスティは、怒ったんじゃない。傷ついたんだよ」


 表情を繕えば、それらしい言葉がぽんと口から飛び出た。


「傷ついた……」


 ルゥーが戸惑ったように呟く。真剣な話をしているくせに、繕いの笑みを浮かべている違和感に気づかれなかったようだ。


「ルゥー、馬鹿だよ。鈍感にも程がある。アスティーユさんは、ルゥーに気があるし、それを呆れるくらい前面に出してくんじゃん?」


 言葉はスラスラ出てくる。でも、あれ。

 何かがおかしかった。


「マホースさんが? ……そう言われてみれば……」


 ルゥーが、アスティーユさんの言動を思い返している。

 言葉を切らすことなく、私が続ける。


「アスティーユさん、ウィスティの前でもガンガンに好きオーラを出してた。そんで、言ってたじゃん? ()()()()()()()仲がいいんですね、って。所詮、あんたは妹扱いよって、そう言わんばかりに」

「え……」


 口からペラペラと、全部出てくる。


 ──止まらない。


 違う。こんな事が言いたかったんじゃない。

 自分に向けられる好意に疎いだけで、こんな話をしてしまえば、さすがにルゥーだって気づいてしまう。


「流石に気づいてんでしょ? ウィスティがルゥーに兄貴分以上の想いを抱いてるって。想像してみなよ。自分の好きな人を狙ってる人が露骨に牽制してきたのに、好きな人自身にそいつと仲良くしろって言われたウィスティの気持ち」


 違う。どうにかして引き止めたくて、話しているはずなのに、背中を押すような真似してどうすんだ。

 ──でも、私が今まで二人に対して繕ってきた顔でなら、こう言うべきでしょ。

 ルゥーは私の言葉に目を見開いている。そこから目をそらすことも出来なかった。


「思わせぶりなことしても、ルゥーは肝心なことを何も伝えてない。ウィスティにはルゥーの気持ち伝わりきってないのに、今度は他の女の肩を持つと来た。あとは自分で考えてみなよ」


 違う。違う違うちがうちがう、違うのに。こんなこと死んでも教えてやるかって、そう思っていたはずなのに。

 口が止まらない。

 取り憑かれたようだった。今まで誤魔化しのように浮かべてきた人格に。


「……俺、なんも分かってなかった。ありがとう、ライラ。見当違いなこと言って、ウィスティのことをもっと傷つけるとこだった」


 次の言葉が何なのか、それを知るためにじっとルゥーの口を凝視してしまう。

 ──そんなの見たところで分かるわけがないし、見なくたって容易に想像できた。


 ルゥーは、行ってしまう。


「──ねぇ、ルゥー」

「ん?」


 そう声をかけた時、やっと上辺の人格から私の主導権を取り返せた、そう思った。


「私、今から面会申請の書類、出しに行こうと思う。だからさ……」


 一緒に着いてきて。


 そう言おうとしたところで、言葉がなにかにせき止められた。


 なんてことを言おうとしているんだ、と冷静な私が言う。よりにもよって、このタイミングで。あまりにも我儘で、普段の私なら絶対に言わないことだ。

 ──でも、だって。ウィスティが名実ともにルゥーの唯一になろうとしてる。そうしたら私は一人に、いや違う。今更二人にくっつくななんて贅沢は言わない。だから、今だけでも私を優先してくれたっていいじゃんか。


 途中で言い淀んだ私の言葉の先をなんと解釈したのか、ルゥーは静かに頷いた。


「あぁ。気を遣わしてばっかりで悪い。ウィスティにちゃんと言ってくるよ。ライラ、ありがとな。俺、ウィスティを追いかけてくる。もう絶対に、ライラに怒られないようにする」


 ──は? と声が出そうになった。

 そんな私に気づくことなく、決意を固めた顔で、私に宣言してルゥーは背を向けた。


 ウィスティが去った方へと、ルゥーが走り出す。

 つられるように、手を伸ばす。

 当然届くことなく、その背はどんどん遠くなっていく。


 待って、と言いたかった。その言葉は口から出ることなく、中途半端に宙に浮いた手だけが残った。

 

 ルゥーの背が見えなくなって、力が抜けるように手を落ろす。ただ呆然として、ルゥーが消えた先を見つめ続ける。

 ──違う。そんなつもりじゃなかった。

 でも、行ってしまった。置いていかれたのだ。

 ようやく実感が追いついてきて、じわじわ染め上げるように胸の中に虚しさと絶望が広がっていく。


 「気を遣わせて悪い」? 私のことは気にしないで、ウィスティのもとに行って来いと、そう私が言おうとしたと、ルゥーは思ったってこと。

 私のせいなのだろうか。この状況で私ならそう言うと、ルゥーが思うような態度を今まで私が取って来ていたからだろうか。


 全部、私の自業自得?


 分かっていた。

 ルゥーの中で、私とウィスティに向ける感情の差があることくらい。分かってたはずだった。

 むしろ、それを受け入れたように、それになんとも思っていないかのように振舞っていたのは私だ。


 ──けど、でも。言ったじゃんか。「後で一緒に出しに行こうな」って。言ったじゃん。

 今にもウィスティのもとへ走っていってしまいそうなこの状況の中で、こう言ったらウィスティより私を優先してくれるんじゃないか、なんて願ってしまった。平時ではウィスティの方が上でも、たとえ今がルゥーとウィスティの二人の関係において大事な時だとしても。

 ダチュラとの面会は、今まで私に勇気がなくて避けていたことだった。面会申請をすることだって、勇気の一歩、私にとっての一大事なのだ。だからこそ「一緒に行こう」とルゥーは言ってくれた。なら、この一大事をぶつけたら、せめて、今だけでも。

 まさか、真逆の意味に取られるなんて思ってもいなかった。


 ──でも、当然か。私が二人の邪魔をしようとするなんて、ルゥーは夢にも思うまい。

 それどころか、一人で面会申請をしに行くことへの心配の一言も無かった。ウィスティの前では、所詮私の一大事などその程度に過ぎなかったのだ。思い知らされてしまった。

 ただひたすらに、私だけが愚かで、浅ましくて、惨めだった。


 ぎゅうと、音でもしてきそうなほど強く、手を握りしめる。

 最近切っていなかった爪が手のひらに刺さる。

 痛い。痛かった。

 心にぽっかりと穴が空いたような気がした。


「──モーガンス」


 一人でただ立ち尽くしていたところに、唐突に声が降ってきた。

 するりと、握りしめていた手を誰かに取られ、そのまま拳を開かれる。

 驚いて見上げれば、蜂蜜色の瞳が真剣な眼差しで私を見下ろしていた。


「キースリング様……」

「約束してた時間より少し早いけど、良いよね? 君のお仲間も行ってしまったみたいだし。君の時間、僕にちょうだい」

「え……はい」


 リュメルの圧に流されるように頷くも、リュメルはじっと私を見たままで、動かない。

 いつものような作った笑顔でも、楽しそうな表情でもない。

 いつからいたのだろうか。見られていたのだろうか。聞いて良いような空気感ではない気がした。


「……なんか、怒ってます?」


 妙に気まずく感じておずおずと聞けば、リュメルは数秒私の顔を眺めてから、答えた。


「別に。馬鹿だなぁって、そう思っただけ」

「……はい?」

「行くよ」


 ふっと目を逸らしたかと思うと、リュメルは私の手を引き、ずんずんと歩き出す。引っ張られるようにして、私は後に続いた。


次回、リュメルのターン。



ものすっごい野暮な心情解説をさせて下さい。

作者による解説は求めてないよって方は読まないでください。

↓↓↓

リラ、この時点ではもう既にルゥーに対する恋愛感情故の嫉妬とかではなくて、自分の一番の理解者であるルゥーを失うのが怖いという執着心が大きいです。元々ちゃんと好きだったんですけど、ルーウィスが両片思いなのを悟って諦め(ようと自分に言い聞かせ続け)たことにより、恋心が段々と形を変えて執着心になっていた、みたいな感じです。相手がウィスティでなければ、そう思い詰めることもなかったと思います。なぜならその場合、ルゥーの中では「恋人」枠と「家族」枠のリラウィスティで、明確に区別されていて、ルゥーに恋人が出来てもルゥーの中での自分の存在の比重は変わらないから。しかし相手がウィスティであるから、ルゥーの中で自分と同じ「家族」枠に入っているウィスティに「恋人」という付加価値が付いてしまえば、「家族」枠の中で価値の比重がウィスティに傾いて、ルゥーの中での自分の価値は軽くなってしまうんじゃないかと感じていました。

アスティーユさんに対してマイナスな反応が無いのも、本人はルゥー→ウィスティの気持ちを知ってるからと理解してますが、本当はこのことが理由。

そしてもう一つ、ルゥーを失ってしまうこと以外にも、「ルゥーとウィスティ(三人仲間のうち自分を除いた二人)が結ばれる」ことにより自分一人が阻害されるのを非常に恐れています。本人自覚はないですけど。リラさんもともと寂しがり屋ですからね…。

話は変わりますが、ルゥーを引き留めようと話している時、取り繕ってきた人格に乗っ取られた、と描写しました。これはルゥーを失いたくない気持ちと、ルーウィスに対して今まで取り繕ってきた顔(ルゥーへの恋愛感情を完全に隠してきたこと)を今更崩したくない気持ち──簡単に言っちゃうとこれただのプライドですね──のせめぎあいの結果、後者が勝っちゃったんですね。

ルゥーを引き留めようと考えているときに、当のルゥー本人が心配してきているのを見て、「ルゥーに心配されてしまっている。感情をコントロール出来ていない!顔を取り繕わないと!」って思考が反射的に働いて笑顔を作っちゃって、そのままプライドが勝っちゃいました。

決定打は反射だったってことですね。

まあそうじゃなくても、リラがルゥーに対して素直に告白するところが欠片も想像できないので、結局はリラは何も伝えられずに同じような結果になった気はしますが……。リラ自身も言ってましたが、ルーウィスの二人には弱みを絶対に晒したくないんです。ルゥーが自分を案じていると感じた瞬間に、それを阻止するための表情を浮かべようとしてしまうくらいには。

自分の弱みを晒せない相手が好きという時点で、ルゥーへの想いは潰えたも同然と言えるでしょう。難儀な性格ですね。そういう子が好きなんですね作者は。えへへ。


そしてルゥーは盛大に間違えてしまいました。平時なら、せめて一人で大丈夫なのか? とか、心配していたことでしょう。リラが気を遣ったと思ったにしろ、いつもなら案じる一言や二言は絶対にかける人ですが、なんせウィスティのことで頭がいっぱいだったので。可哀想にリラはオーバーキルされてしまいました。

ま、みんな人間なのでそういうこともありますよね。

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