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ショートショート6月~

人生自動販売機

作者: たかさば

こちら人生自動販売機でございます。


はい、貴方はどの人生を選びますか?



・おいしいやーつ

・ぬるいやーつ

・あついやーつ

・つめたいやーつ

・あまいやーつ

・しょっぱいやーつ

・ただのみず



「おいしいやーつにしよう!」


がっちゃんこ!


普通のおうちに生まれてなんとなく普通に暮らしていたらいきなり遺産が転がり込んで急に裕福な暮らしをすることになりました。

からの~裕福なまま強盗に襲われて天国行きです。



「ぬるいやーつにしよう!」


がっちゃんこ!


裕福な家庭に生まれてお坊ちゃん育ちしたらお嬢様とお見合い結婚することになって幸せに生きていくことになりました。

からの~裕福さにどっぷり浸かった平坦な人生は盛り上がりがなくてつまらないと思う毎日が地獄でした。



「あついやーつにしよう!」


がっちゃんこ!


普通の家庭に生まれて普通に育ちながらもいつも使命感に燃えて常に何かに夢中になれる人生を送ることになりました。

からの~常に何かと対峙してフルパワーで立ち向かい続ける日々にいつしか疲れ果てて無の境地を知る羽目に。



「つめたいやーつにしよう!」


がっちゃんこ!


やや裕福な家に生まれていつも一人ぼっちで過ごしながら誰かと共に過ごしたいと願いつつ冷たい態度しか取れない不器用な生き方をすることになりました。

からの~いつか誰かは本当の自分の事を分かってくれるはずと思い込む自分は誰一人分かってあげることができない事実に気付けない沼にはまる。



「あまいやーつにしよう!」


がっちゃんこ!


普通の家に生まれて普通に過ごして仲のいい幼馴染と結婚して時々けんかしながら普通の生活を送ることになりました。

からの~毎日普通だなと思いつついつか一発ドカンと当てたいと願うものの当たることはなく地味な人生を地道に送る。



「しょっぱいやーつにしよう!」


がっちゃんこ!


恵まれない家に生まれて優しい家族に恵まれて愛あふれる生活を送って最愛の人も見つけることができたけどお金がなくて人生を共にすることができなくなりました。

からの~いつか必ず取り戻せると信じて一途に想い続けようやく富を手にして迎えに行ったときにはすでに時遅しで悔やんで闇に落ちる。



「ただのみずが一番楽そうだ!』


がっちゃんこ!


時に雲となり時に海となり時に川となり時に氷となり、人と常に共にあることになりました。

からの~地球上にあふれすぎる水はその一粒一粒が魂であることすら気が付かず隣のモノと同化して個を失いただ揺蕩うばかり。



はい、本日の自動販売機はこれで売り切れです。

次回入荷までお待ち下さいね。


「早く入荷しろよ!!」

「こっちはずっと待ってるんだよ!!」


まあまあ、ここは天国ではないんですから。

なかなかそう簡単に人生を差し上げることはできないんですよね。


人であることを手放してしまった皆さん方に、再び人となる資格、あると思ってるんですか?

人の心を持てなかった皆さんに、人として生まれるチャンスがあると思ってるんですか?


天国で誰も選ばなかった人生を、たまに入荷してこちらに持って来ているんです。

入荷するほうが珍しいのですよ。今回は当たりもありましたしね。



ああ、私に殴りかかるんですか?


よろしいですよ。



びし!ばし!どごっ!!



ああ、無事ダメージが跳ね返った模様です。

良かったですね、消え去ることができたようです。


生まれることもできないままずっとここにいるよりも救いがあるのかもしれませんからね。



それじゃ私は天国に行ってまいります。


次はどんな人生が入荷しますかね?

最近はいい人生が多いみたいですから。


ここにいい人生が入荷されてくる可能性も高くなってるんですよね。



ああ、おとなしく待っている人たちがたくさんいますね。


いい人生がもらえるといいですね。


いい人生をもらって、次こそ天国にいけるよう辛い人生をしっかりと生きていけるといいですね。

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― 新着の感想 ―
[一言] どんな人生も山あり谷あり。なければ退屈。 ないものねだりで不幸へと堕ちていく。人の業ですかね。 軽いタッチで描かれた短編ですが、中々どうして深ーい小説でした。こういうの好きです♡
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