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もうひとつのおわり



堅護はもうどんな困難でも乗り越えていける。

そう確信した私は、もう過保護気味に彼を扱うことをやめることにした 。

そして、それによってできた余力で自分の幸せを追いかけてみることにした。



あのギルド戦の次の日、私はとあるゲームにログインしていた。

昨日までやっていたMOHの世界とは違い、その世界はログインと同時に身構えたくなるようなギラギラとした殺気が充満していた。



私がふと、腰に手をやるとそこには一振りの剣。

6歳の頃から振り続け、もはや体の一部のようになったその剣は触っているとどこか安心感が得られた。


ふと、前を見るとNPCの剣士たちが斬り合いをしているのが遠目に確認できた。

見た感じ、騎士団長級剣士2人の斬り合いだった。

そう、ここは『THE・剣豪』の世界だ。

お一人様専用ゲームなので他のプレイヤーはいない。

私は遠くに見えた剣士の斬り合いから視線を外し、目当ての敵を探す。



そいつはすぐに現れた。


『……』


一言も喋らないが、その立ち振る舞いからそいつが神級の剣士であることはすぐにわかった。

私は剣を抜いてそいつに近づき、

「決闘を申し込みます」

と一言発した。するとその剣士は

『受けよう』

と私の申し出を受けた。


10。、9、、8、、7、、、


視界の上方に存在している数字は1秒ごとにその数を減らす。

私はそれを黙って見続けた。


6、、5、、4、、


残り4秒。

はやる気持ちを抑え、最速の動きをできるようにと自分に言い聞かせる。


3、、2、、1、、


そして、ついにその時が来る。


――――0。



――――You Win!!

Record. 0:00:012



カウントが0になった次の瞬間にはその文字が目の前に表示されていた。

それを見て私は一息つく。


「よしっ、あの時より速くなっていますね。そろそろ約束の時間ですし、行きましょうか」


私はUIを開いてログアウトを選択、そして次の世界に足を運ぶ。


次にログインしたのは『THE・刺客』だった。

例に漏れず例の会社の、そして数少ないオンライン要素のあるゲームだ。


私は今日、この日にとある人と会う約束をしていた。

待ち合わせ場所は始まりの町の東門。


このゲームは一度行ったことのある街には転移ができるので、最果ての街にいた私はログイン後すぐさま転移してそこへ向かった。



すると、始まりの町はまさにお祭り騒ぎ状態だった。

大量の人が東門に流れていく。

その方向に向かう人はやはりというべきかギラギラとしており、それでいてどこか希望を持った目をしていた。


それを見て少し微笑ましい気持ちになりながらも、待ち合わせの人物がもうすでに待っていると推測できた。

私もその流れに乗って町の東に向かった。



東の門から出たら当然の権利というふうに先ほどまで私の後ろを走っていた剣士が切りかかってきた。

予想できていたことではあったので、剣の刃の部分だけ切り飛ばしてあとは無視した。


私は騒ぎの中心に向かう。


そこには、囲まれている銀色の騎士。

アスタリスクさんの姿があった。



「お待たせしましたアスタリスクさん」


「………待ってない」


「こんなことになるなら待ち合わせは町の中にするべきでしたね」


「………待ってくれ。今終わらせる」


彼はそういうと周りのプレイヤーたちを次々と切り飛ばしていった。

私もお手伝いとばかりに近くに来たプレイヤーは一瞬で切り飛ばしていく。

今回集まっているプレイヤーは最大でも王級に分類される程度でしかなかった。

MOHでは無双できる強さであるが、私たちには脅威になり得なかった。こちらの世界には物理法則を無視した動きをしたり、魔法を使う人がいたりなどはないので昨日より戦いやすかった。

私たちの周りのプレイヤーは5分とかからずに殲滅される。


そして、私たちは2人きりになった。


先ほどまでのは準備運動に過ぎない。

本当の戦いはこれから始まるのだ。


私とアスタリスクさんはお互いに距離をとって向かい合った。

距離をとったといっても、精々2メートル程度。

体を前に倒しながら剣を振れば届く距離だ。

もう少し離れた方が、と思うかもしれないが、私たちにはこのくらいがちょうどよかった。



「それでは、始めましょうか。アスタリスクさん、決闘を申し込みます」


「………受けて立つ」


決闘システムはこちらの世界ではないが、雰囲気のために言ってみたら乗ってきた。


「これを投げて地面についたらスタートとしましょう」

私は石ころを拾って見せた。彼もそれをよしとした。

私はその石ころを見えるように、高めに投げた。

落下軌道に入る前に私は構えをとった。

MOHでは構えるということをほとんどしなかったが、目の前の男は構えてないと負ける相手だ。

私も本気ということだった。


アスタリスクさんは抜き身の状態で構え、私は居合の構えだった。

もはや見慣れた光景の一つだ。




お互いの準備が整って数秒後、ついに石が2人の間に落下した













そして、勝負は一瞬でついた。

私の一刀はアスタリスクさんに届き、アスタリスクさんの剣は私に触れることはなかった。


だが、私はその結果を認識した直後、後ろに倒れた。



「私の負けですね」


私の剣はアスタリスクさんの左腕を飛ばしたが、致命傷を与えることはなかった。

対して、アスタリスクさんの剣は私の首元に突きつけられた状態で止まっていたのだ。


「どうして、切らなかったのですか?」


そのまま振り抜けば彼の勝ちだ。だが、彼は途中で手を止めた。

負けを宣言したからどっちにしろ彼の勝ちだが、私はどうしてもそれが腑に落ちなかった。



「………お前を、好きな人を切りたくなかった」


返ってきた言葉を聞いて、私の胸はトクンと跳ねた。

もう戦いは終わったはずなのに、今から戦うのかというほど私の体は熱くなる。


「………お前こそ、どうして本気を出さなかった?」


今度は逆にアスタリスクさんの方から疑問が投げかけられた。

私が本気を出さなかった?はて?


「………あれは、いつものお前だった。本気のお前ではなかった」


「……さあ、わかりません。もしかしたら、あなたに負けたかったのかもしれません。弟は、期待はずれでしたから」


期待はずれと言いはしたものの、自分でも隠しきれていないなとわかるほどの喜色がその声には含まれていた。


「………」

彼は納得がいかないと言った様子でこちらを見るだけだった。


「嘘をつきました」


「…… だろうな」


正直に話すと、彼はいたずらっ子を見たかのように笑った。

普段笑わない彼だからこそ、その笑顔は私の胸をさらに高鳴らせた。そのことに対しても観念した私は恥ずかしさをこらえながらも、彼に話しかけた。


「ところでアスタリスクさん」


「………なんだ」


「私、今、今までにないくらいにときめいています」


「………そうか」


「はい、創華です。それで、それで……なんですけど……えっと、その、私と付き合ってくださいませんか?」


「………俺で、いいのか?」


「はい、あなた以外にいますか?」

私より強くて、守ってくれそうな男性なんて目の前にいる彼以外に私は思いつかなかった。

私はもし断られたら、と不安になりながら告白した。

今まで、私が振ってきた人はいつもこんな気持ちを味わいながら告白していたのだろうか?だとしたら、少し申し訳ないことをしたな。

そう思いながらも、私は答えを待った。


先に言いよってきたのは向こうだ。だが、可愛げのない女である私に愛想をつかしてしまっているかもしれない。

そんな不安でいっぱいだった。


「………そうか、これからよろしく頼む」


だが、そんな心配は杞憂だった。

ただの偶然だが、私の名前を呼びながら言ってくれたその答えは、今まででいちばんの幸福感を私に与えてくれた。












それから1年と少し。

高校を卒業した私は大学にはいかず専業主婦として生きることを決めた。

今まで弟の世話で培った家事のスキルは、ここで存分に発揮されることとなる。

親に反対されるかと思って身構えていたが、両親は意外にも私たちを祝福してくれた。


特にお母さんなんかは涙を流しながら喜んでくれた。

アスタリスクさんのお父さんなんかも同じ反応だったのはちょっとだけ驚いた。

「息子はお前にはやらん!!」

みたいなのを警戒していたんだけどね。


結婚式は身内だけのこぢんまりとしたものを執り行った。

凛さんが目から涙を流すという事件が起こったが、概ね問題なく終わった。


そして今日、私は実家を出てアスタリスクさんの家に引っ越すことになる。

家を出る時、堅護が見送りに来てくれた。



「おや、堅護。特訓はいいのですか?」


「そんなことより姉ちゃんの門出の方が大切だよ。少しの遅れはすぐに取り戻すから」


堅護には脳を利用した限界突破を使えるようになる特訓方法を教えた。

今はそれを使って訓練中だ。だが、それを中断して私を見送りに来てくれたのだ。少しだけ嬉しくなった。


「お姉ちゃんが離れ離れになっちゃいますけど、堅護は大丈夫ですか? 寂しくないですか?」


「いや、寧ろ遠くになって安心したよ。姉ちゃんの近くにいるといつ切られるかって気が気じゃなかったから」


「そんなひどいことを言うのはこの口ですか!」


私は堅護の頬を両側から摘んで少し伸ばした。堅護の目には涙が滲んでいた。

少し前からお母さんが帰ってきているが、今度は私がいなくなるのだ。


酷いことを言ってなんとか乗り越えようとしているが、寂しいのをこらえているのだと気がついた。

私も、少し寂しかった。

だから私は堅護を思いっきり抱きしめた。伝わってくる体温が少しばかり心地よい。

私は両腕に目一杯力を込めて抱きしめた。


そして満足した後私は堅護を解放して笑顔で言った。



「では、行ってきます。あなたも自分の幸せ目指して頑張ってくださいね」


「大丈夫だって。すぐにものにして次に進んでみせるから」


もう心配はいらない、そう言う堅護の言葉を背中で受け止めた私はなるべく小さくなるようにとまとめられた荷物を持って駅に向かって歩き出した。








そして、数時間に渡る電車とタクシーでの移動を経て私は目的地に着いた。

少し前に来たことがあるが、とても独身男性が住んでいたとは思えないいい一軒家だった。


私はインターホンを押す。


すると家の中から1人の男性ーーーーー私の夫が姿を見せた。

私は促されるまま中に入り、そして一言


「お邪魔します。不束者ですが、よろしくお願いします」


そう言って小さくお辞儀をした。

それにしても、堅護の恋をサポートするつもりが、自分の伴侶ができるなんて、と私は遠くで頑張っている弟と、その彼女 (予定)に少し感謝した。





とりあえずこれにて完結になります。

これなんの話だっけ? となる方もいると思いますし、当初予定していたのにもかかわらず書いていない内容があり風呂敷が畳みきれていませんが、完結は完結です。

ちなみに、少し前から言われていたIFENDですが、11月27日を予定しています。

ずれるかもしれませんが……


Q、中身入りレイドボスGMとして君臨しているのでしょういろんなゲームで・・・

A、メーフラさん、この後ゲームはあまりやらなくなり、チャットメインのプレイヤーに転向しました


Q、えぇ……いきなり終結したな……

A、エピローグに3話以上使ったらいけない (戒め) からね

あの戦いが終わったら終わること自体は前々から言っていたので、言うほどいきなりではなくない?


Q、最終回と聞いて寂しさを感じる…


メーフラを同士討ちに持っていたことに胸を張って自慢出来るレベルですね…ギルド戦では敗北したけどね


最強のプレイヤーを一応倒したら今度はそのプレイヤーが遊ばれる裏ボスが待っていたのだった


A、寂しさを感じる人がいることに嬉しさを感じる作者なのであった。

裏ボスをご所望なら白黒神さまに挑もうね!

白いほうは作中に出ている神級を揃えれば勝てるーーーかも?


ブックマークは必要ありません

pt評価、感想待ってます

(感想返しは次が最後になると思われる)


あ、新作の方もよろしくお願いします↓

https://ncode.syosetu.com/n0186fw/


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お姉ちゃんの頑張りが書籍化しました。
― 新着の感想 ―
[一言] 栞ちゃんファミレスで陽ちゃんを彼女と勘違い?してたのにいきなり私の事好きなの?って発言するサイコパスで 弟は陽ちゃんが自分を好きな事を利用して最終戦に使うサイコパスって事でいいのかな? ヤ…
[一言] 久しぶりに読みたくなったので読んできました。THEシリーズの運営開発日記や掲示板を読みたいです(有るのかな?
[一言] 完結おめでとうございます。 面白かったです。 良い物語をありがとうございました。
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