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目には目を、では先に目を出したのはどちらだったのでしょうか?


アスタリスクさんの登場にこの場で一番驚いたのは私である自信があるくらいには彼の登場は私にとって驚愕だった。


彼は私をかばうように立つ。


「どういうことですか? あなたは留守番、もとい防衛だったと記憶しているのですけど」


「………ダームスタチスが万が一がありえるかもしれないと言っていた。だから来た」


「そうですか。それで? あなたはこれからどうするつもりなのですか? 私と一緒に戦うのですか?」


「………あまり介入するのは、違うと思った。だから、あのアホどもだけは俺が引き受ける。だから、思う存分目的の相手と戦って貰えば嬉しい」


アスタリスクさんはそれだけ言って斧神と槍神に向かっていった。

同格相手に2対1、高いレベルの話になればこの差は絶望的とも言えるほどだ。

だが、彼は臆することなく前に出た。


そして、もはや見慣れた光景。


斧神の斧はアスタリスクさんの剣に触れることができない。

彼の剣はすり抜けるように斧神の喉元を通り抜けた。

そこに槍神による介入。


アスタリスクさんはその攻撃を回避することはできたが、斧神への攻撃を当てることを優先したためもう回避は間に合わない。

なんとか身をよじって避けようとしたのだろうが、急所を外すことが精一杯。


結果、私を助けに来てくれた騎士はその身を槍に貫かれてあっけなくやられてしまった。














かのように見えた。


「………斧は2つ、槍はちっ、逃げられたか」


体に槍を生やしたままアスタリスクさんは剣を振るった。

一瞬前にそれを察知していた槍神は間合いから外れてそれを回避した。


アスタリスクさんの捨て身の攻撃はこうして大した成果も得られずに終わった。

そのことを私は少し残念に思った。

せっかく私のことを守りに来てくれて騎士様は私を守りきれずにやられてしまったのだ。そう思ったからだ。


だが、それは私の早とちりだった。


「よぉアスタリスク、お前にしたらあまりに直情的な突進じゃんか。そんなにかっこいいところを見せたかったのか?」


「でも残念。俺っちたち、今回ズルしてるからね。10回刺されないと死なないってやつだよ」


「………そうか、奇遇だな。………俺も、あと30回は死なない。ズルしているもの同士、じっくりやろうじゃないか」


アスタリスクさんはいつまでたっても退場する気配はなく、力強い佇まいでそこにい続けた。


「これはどういうことでしょう?」


もしかして彼も相手方が用意している身代わりアイテム的な何かを持っているのかな?

会話の内容からそんな推論を立て、それがあっているのかと当人に問いかけた。


彼はちらっとこちらを見たあと、小さく息を吐いて答えてくれた。

「………俺のはただの回復アイテムだ。ただし、一度使えば全回復するくらいのな。そしてエターシャという女に固形物にしてもらっている。俺はそれを口内に仕込んでいる。知っているかもしれないが口に入れるタイプのアイテムの効果適用は喉を通った瞬間だ。口の中に入れるだけでは発動はしない。それを利用して常に全回復を構えているのが今の状態だ。つまり俺は即死以外では死なない。だが、俺はスキルによって即死しないようにしている。そして範囲に焼かれないように主要な属性に対しての耐性を薬品で得ているということだ」


「なるほど。わかったようなわからないような感じです」


「………メーフラ、お前は強すぎるが故にこのゲームのシステムの方に無頓着だった。それだけの話だ」


普段はボソッとしか喋らないイメージのアスタリスクさんは今日はいつになく饒舌になって解説を入れてくれる。

私はそれが私を安心させるために言っていると感じた。

そして、自分は大丈夫だから気にせず決着をつけに行けと言っているようにも。


「わかりました。その2人はアスタリスクさん、あなたに任せます。私は先に進ませてもらいます」


「………任された」


「それと、この戦いが終わったらお話があるので時間をください」


「………あぁ、こいつらは俺が抑えておくからここは俺に任せて先に行け」



私達は冗談を言い合うようにそう言葉を交わしてからそれぞれの敵に向かって動き出した。

神級2人と戦っている間、それまで私が戦っていた敵のほとんどが砦の中に姿を消し、残った魔法使いが私の周りに火をつけるくらいだった。


戦いに必死で気づかなかったが、かなり見晴らしが良くなっていたのだ。

だからアスタリスクさんが誰にも邪魔されずに私の下まで走ってこれたんだなと、そんなどうでもいいことに納得しながら私は砦を目指した。


きっと、あそこではガトとフセン、あと陽ちゃんが待っているに違いない。

私が砦に向かおうとするのを、槍神が牽制しようとした。

だが、即座にアスタリスクさんが立ちふさがりその身を犠牲にしながら私を行かせてくれた。


私は全速力で野を駆けて砦の中に突っ込んだ。






砦の中には先程引いていった敵が勢ぞろいしていた。

そして、少し高い、一際目立つところにはガトとフセンの姿もあった。

ついに、2人が姿を現したのだ。

私が入ってくるのを見ていたガトは私に話しかけてくる。


「思ったより早かったね姉ちゃん。ライスさんとテルさん相手にもっと時間がかかると思ったんだけど……」

ガトがそういうと砦の中に小さな声で「姉?」「姉っていった?」というような声がちらほら聞こえた。


「ふふっ、私にだって仲間はいますからね」


和やかな声色での会話だがお互いに油断はしていない。相手がどう出るかを観察しながら自分の行動を考える。

向こうは私が砦の中に入ってきたというのに距離をとって武器を前にして牽制するだけで攻撃は仕掛けてこない。



「何か企んでいるようですね………ところで、砦は少なく見積もって3階くらいはありそうなのですが、もう出てきてよかったのですか? かくれんぼは終わりなのですね?」


「うん、もう十分だ。こっちの準備はとっくに整ってる。それに、そもそも上は執務室とかそんなんだから戦いに向かないしね」


ガトは自信満々にそう言い放つ。

まるで私をここで追い詰めることができる。いや、もうできていると言わんばかりの様子だ。



ところで、フセンはさっきから一体何をやっているのかな?

ずっと何か赤い光る石を握りしめてお祈りポーズなんだけど……




「今回俺は姉ちゃんに勝つためにはどうすればいいのかを考えた。そして出た1つの結論、それは目には目を、というやつだった。そこで神級には神級をと思ってあの2人に協力をお願いした。でも、姉ちゃんには数値の上では誰も敵わない。だから次に考えたのは数値で勝てるキャラを用意することだった。でも、おそらくプレイヤーで最高のステータスを持っているのが他ならぬ姉ちゃんだ。だから考えた。それ以上を持ってくるにはプレイヤーではないものしかない、と。そこで得た結論、それがーーーーーーーーこれだ!! フセンさん! お願い!!」



「いっけえええええええええ!! これが私たちの用意できる最強の駒だあああああ!!」



フセンがそう叫ぶと彼女が手の中に握りしめていた赤い光を放つ石に亀裂が入り、やがて粉々に砕け散った。


すると直後、砦の中央、誰もいないスペースに巨大な魔法陣が現れる。

なにやら、とんでもない魔法でも飛び出してくるのだろうか?少しだけワクワクしながら私はその光景を見ていた。

そんな私とは裏腹に、ガトのギルドのメンバーたちは大きく後退を始めた。

彼らは明らかに中央の魔法陣から距離を置いていた。


ふむ、ここで私が砦から出たらどんな反応をするのだろうか?

そんなことを考えたりもしたが、それは対策されているらしい。

私が少しだけ後ろに意識を向けた瞬間、がしゃんと音を立てて入り口に鉄格子が降りた。


あのくらいなら斬って脱出できそうではあるが、なにやらよくわからないゲームシステムが働いてきれなかったりするかもしれない。

それに、彼らが用意した策が案外なんてこともないかもしれない。


そんな言い訳を用意してその場を離脱したりすることはしなかった。

本音を言って仕舞えば、私のことを見続けた弟が私を倒せると自信を持って用意した策がどんなものかが気になっただけである。




魔法陣が轟々と輝きを放ち、その中央から這い出てくるように何者かが現れる。


それは赤い巨人だった。


高さは大体4メートルくらいだろうか?

高めの天井のこのフロアであったが、ジャンプすれば頭がぶつかってしまうだろう。


頭には2本の触覚のような、ツノのような何かが生えていた。


体は真っ赤で、体の周りに轟々と炎を纏っていた。


その右腕には肉切り包丁を大きくしたような武器が握られており、それも例に漏れず赤々としていた。

おそらく、かなりの高温なのだろう。

見ているだけで暑くなってきた。


ちなみに、衣服のようなものは一切身にまとっていない。

局部には何の凹凸もなかったりする。


巨人というよりかは聖霊のような見た目をしていた。



「これは何なのでしょうか? 差し支えなければ誰か、解説をお願いできますか?」

私の前に立つこいつが何者なのかを知りたい私は駄目元で聞いてみる。

するとフセンから答えが返ってきた。



「ふっふっふ、こいつの名前は『憤炎の魔神』と呼ばれるレイドボス。通常のレイドボスはダンジョンの奥とかにいるんだけど、こいつは儀式によって呼び出されるレイドボスだよ。そして儀式によって呼び出されるレイドボスが色々いる中でこいつを選んだ理由はこいつは近くにいる一番ステータス合計値が高いプレイヤーを狙う習性があるんだよ!! つまり………」


「ここで一番ステータスが高いと思われる私が狙われる、というわけですか」


「そゆこと。そしてその特性は運営からしたら弱点として設定したんだろうね。同レベル帯のレイドボスよりは強く作られてるんだよ。なにせ、一番強いのを狙うんだからね」


フセンが言いたいのはとてつもなく強いレイドボスが私を狙い続けるということだ。

つまり私はこの『憤炎の魔神』を相手にせねばならぬ、逆に相手は強力な味方を得たことになるのだ。


それは神級2人を同時に相手取るのとどっちが厳しいのかはわからないが、それなりに厳しい状況なのは理解できた。


流石に2人が自信を持って用意してくるだけある。

私はそうやって少しだけ感心した。

だから私も口に出して宣言する。



「お見事です。では、私もここからはレイドボスとして戦わせていただくことにしましょう。【ギアチェンジ:エターナルギア】」


これは前回進化した時、というよりかはレイドボスになった時に手に入れたスキル。

スキルの効果は体の中に内蔵された……ということになっているエターナルギアを稼働させる、という設定のスキルだ。


ぶっちゃけて言えばレイドボスと通常ボスの2つのモードをオンオフ方式で切り替えるスキルだったりする。

元に戻す時は【ギアチェンジ:エンシェントギア】を使えば通常ボスモードになる。


つまり、私はこれまで全然本気で戦っていなかったのだ!!

ふっふっふ、切り札は最後まで取っておくものだよ。



「目には目を、でしたよね。だから私もレイドボスになります」


「なっ、さっきまでのはレイドボスじゃなかったとでも言うのか!!」


私の宣言に誰かがそんな声を上げる。それに対して私は微笑みと頷きを返してあげた。

すると目に見えるほどの動揺の雰囲気が走った。


「狼狽えるな!! そもそも俺たちのギルドはレイドボス専門のギルドだろうが!!」


しかしその雰囲気をガトが一喝して弾き飛ばす。

彼の言葉にメンバーたちは「そういえばそうだったな」と思い出したかのように立ち直った。



「じゃあ早速始めよっか。行けー魔神君!!」


実際にはフセンの指示を聞いて動いたわけではないが、タイミングよく魔神が動き出す。

魔神はわかりやすく右手に持った武器をおおきく振りかぶって私に向かってきた。



「ここが最後の戦場になりそうですね。では、鳴り響いてください【終戦を告げる鐘の音】さん」



ゴォン、シャラン、ギギギ、ギシギシ、カラン……


私のスキルの発動とともに上の方からそんな音と


『キャハ、アハハ………キャハハ、アハハ………』


どこからともなく嗤い声のようなものが聞こえ始めた。



Q、ドグザ......ゲフンゲフン。ドゲザさんの胸中で死んでいったお二人のノリがスコティッシュホールドです。


......ただの軽い気持ちのおふざけなのか、心から信頼してるこその悪ノリなのかで見方は変わりますが、統率を見る限り心から信頼してるからなんでしょうね。いい仲間をもったねぇ(グスン


A、凡人視点ではレイドボスというのは鍛え上げたキャラクターと集めた情報、そしてそれ以上に連携が大切になる……ということになっています。

それらを準備期間に狩りまくっていた彼らの信頼関係はそれなりです。支援値Bはあります

飲み込まれていった2人は情報伝達が必要だと、そしてその役目は自分たちを見捨てれば容易に終わると理解し、役目が終わったので遊びに走ったわけですね。


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お姉ちゃんの頑張りが書籍化しました。
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