表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/95

閑話:再スタートの日

更新再開です

その日、私がそこにいたのは本当に偶然だった。


少し欲しい本があったから近所の本屋に買いに行こう。

そう思って普段はしない休日の外出をした私ーーー陽はたまたま堅護君が栞と一緒にいる現場を目撃した。


私が2人に気づいたのは30mほど近づいたときだった。

私は耳に対して目はさほど良くないので、そこまで近づかないとあの2人だとは気づかなかった。


大きな買い物袋を持って歩く堅護君と手ぶらでその横を歩く栞を見た私の胸の中に何か、黒いものがたまっていくのが自分でもわかった。

すぐにでもあの空間をぶち壊してやりたかった。



2人のことを認識した私はどんな会話をしているのだろうかと耳に意識を向けた。

目に対して耳はかなりいい。この距離であっても私に堅護君の言葉を聞き逃すということはない。


しかし、耳に意識を集中させた私が聞き取った音は愛しの堅護君の声ではなく、障害でしかない栞の声だった。




『君は…………私のことが好きなの?』




確かに、そう聞こえた。

そしてやはりこの女も堅護君の魅力にやられた口か、やっと本性を現したな。

そう思った。

それにしてもなんて図々しい女なのかしら。自分から好きっていう勇気がないからって相手から言わせようだなんて。


何? 告白されたほうが偉いとでも言いたいの?それとも、振られるのが怖いの?


すぐにでも飛び出そうと思った。

だが、堅護君の返事を聞いてからでも遅くはない、きっと堅護君はあんな女のことを好きでもなんでもないはずだから、断るだろう。



そう、思っていたのだが……



『うっ、………は、い……俺は………実は……』


堅護君は壊れる寸前のからくり人形のように首をぎこちなく縦に振り、


『うん、ありがとう。もうわかったよ。君は私を好いてくれているんだね。でも、ごめん。君の気持ちには応えちゃいけないの』



栞は突き放すようにそう言って逃げるようにその場を去った。


そのやりとりに私は混乱した。

なぜ、自分から告白させておいて突き放すのか??

そしてなぜあんなにも格好いい堅護君が振られたのか。

他にも色々わからない点はあって私の脳内は混乱状態が続いたのだが、その中で『歓喜』という感情も生まれていた。




何が何だかわからないけど、これは最大のチャンス!

ライバルが勝手に消えてくれてかわいそうなことに堅護君の心に傷がついてしまった。

まってて堅護君、私が今すぐにその傷を癒してあげるからね!



私は大量の荷物を抱えながら一人で呆然と立っている彼の元に向かった。



「高嶺君、悲しそうな顔をしているみたいだけど大丈夫? 私に何があったか話してくれないかな?」

堅護君が暗い分、私はいつもより少しだけ明るく声をかけた。


「藤川さん………?」

半ば放心状態の堅護君は私が突然現れたということに疑問を抱かなかった。


「はい、あなたの藤川です。何かあったんだよね? 私に話してみない?」

何があったかは知っているが、話させることで楽になることもあるだろう。


「……えっと、ごめん。俺、今から家に帰るから」


そう思ったのだが、堅護君はゾンビのような足取りで彼の家がある方向に歩き始めた。

チッ、私の思ったよりダメージが大きかったみたい。

それにしても堅護君が栞のことが好きだっただなんていまだに信じられない。

そして振られてこんなにダメージを受けるってことは、それなりに気持ちが強かったのかな?


………いや、過去は過去だ。

先ほどまであれが好きだったかもしれないけど、もう振られたのだ。かわいそうだと思うがこれを機に私をみてくれればいい。

そう考えるとあれはよくやってくれた。このまま私が堅護君の気持ちに気づかないままアプローチをかけてもなびかなかったかもしれなかった。



「高嶺君、荷物重そうだけど半分持とうか? 」


「いや、いい」


「そう言わずに、こういう時くらい頼ってよ」


私は少しだけ強引に堅護君の手から荷物を受け取った。

こうしていれば荷物運びという名の堅護君についていく理由ができるからだ。

受け取ったものはどこかの店の紙袋、ということは今日買ったものだろう。


ところで、堅護君はこんなにいっぱい何を買ったのだろう?


少し興味本位で紙袋の中身をのぞいてみる。

そこには女性ものの生活用品や雑貨が入っていた。


あ、これ多分創華さんのおつかいだ。



と、いうことはですよ。

もしかして創華さんはこの展開を予想していた?

私が堅護君のことを愛していることを知って、一番弟子である私に弟を託そうとして買い物に行かせるということをした?


もしかして私が今日、ここに現れるのも想定済みだったり?


さすが創華さんだ。

普段から未来が見えているのではないかと思う時があったけど、まさかここまで先を見通しているとは………


やっぱり、敵わないなぁ。

どうして堅護君と栞はあの人を倒そうとかいう無謀なことを真剣にやろうとしているのかが理解に苦しむ。



考え事をしながら歩いているといつのまにか堅護君の家に着いた。


「…今日は荷物を持ってくれてありがとう」


そして堅護君は精一杯普段通りの顔を見せようと作り笑いをしながら私にそう言って私が持っている荷物を回収した。

その際、手が思いっきり重なって胸が高鳴るのを感じた。


堅護君の手は少しだけザラザラしていたけど、私のものと違って大きくて温かった。



彼の手の感触を味わった余韻に浸っていた私が冷静になった時、彼はもうすでに家の中に戻ってしまっていた。

できることなら家に上がり込んで慰めてあげようと思ったんだけど、失敗してしまったみたいだった。






「………今日のところは買い物にでも行こうかな」


閉じてしまった扉を見て私は一人そう呟いた。










弟である堅護が私の友達の栞ちゃんに振られて一夜が明けた。

その日いつものようにログインを果たした私は特にやることを思いつかなかったのでギルドホームでヒメカのお腹に顔を埋めて遊んでいた。


頭の中には昨日の出来事が思い起こされた。

無残に大破した堅護の心は新しい目標を得たことで生まれ変わった。


私はその目標に対してすぐにサポートできる体制をとるために行動しようと思ったのだが、


「姉ちゃん、その気持ちは嬉しいけど少し待ってくれないかな? 新しくやることは決まった、でもだからといって今やっていることをすぐに放り出していいとは思えないんだ。だから、最後に一回だけ、挑戦させて欲しいんだ」


と言われてしまったから動けないでいるのだ。


そう、堅護は次の戦いを最後と言った。

私の弟は正直な人間だ。だから本当に次で最後にするつもりなのだろう。

そしてそこで勝利を手にするためには私が思いもよらないような準備をしてくるはずだ。


そんな風に考えているとフレンドからメールが届きましたという通知が来た。


誰から?

そう思って開けてみると堅護からだった。

メールの内容はこうだ。


『最後の戦い、ということで姉ちゃんのいるギルドにギルド戦を申し込むよ。

日付は11月10日の土曜日だから覚悟しておいてよ』



今から約一月ほど後に私たちに挑戦するという内容のメールだった。

私としてはいつでもよかったのだけど、堅護としてもダラダラと準備をするつもりはないらしかった。


一月、たったそれだけで私と堅護たちの差が埋まるとは思えなかった。

ましてや今回は運営が用意したイベントではなくギルド戦、参加してくる人数にも限りがある。

確か私の聞いた話が正しいなら、一つのギルドに加入できる人数の限界は100人だったはずだ。


つまり敵は最大でも100人ぽっち、加えて決戦となる日は土曜日ということもあってアスタリスクさんも参加してくれるだろう。

だけど、私にはなぜ堅護がその日を選んだのかはすぐにわかった。



「この日は堅護の誕生日でしたね……成る程、ここで私を倒して文字通り新しい堅護としての門出とするつもりですか………ふふっ、意図はわかりましたが、私はわざと負けてあげるつもりはないですよ? しっかり準備することですね」




メールを読んだ私は誰もいないホームで一人小さく笑い声を漏らした。





Q、高嶺家ではペットとか飼っていないのですか?

A、残念ながらペットは飼っていません

作中でペットを飼っているのはエターシャさんとライスさんくらいです。

ドゲザさんはサボテンをペットのごとく可愛がっているという噂も?



Q、リアルサイド多すぎ問題

A、このくらいのペースで入れないといつまでたっても終わらない物語になるからね

自分は出来るだけ終わりが見えない物語を書かない方針で行きたいのです!


Q、次の更新は?

A、遅れちゃってごめんなさい……日本語は丁寧な感じで結構いいと思います



ブックマーク、pt評価、感想待っています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

doll_banner.jpg
お姉ちゃんの頑張りが書籍化しました。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ