表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/95

新たな決意


甘く見ていた。

私の想像している数倍同性愛物語百合編は面白かった。

ストーリーとしてはエリートお嬢様学校に通う女子高生が幼馴染で偏差値の低い高校に通う不良の友達を更生させようとするたまにみる物だったのだが、初めはうざいと思ってた不良側が少しずつ心を開いていく描写や、危機に陥った時に身の危険を顧みずに助けに来たお嬢様に心を打たれて少しずつ深めていった友情が一気に恋愛感情に変化する描写などがかなり上手くてついつい見入ってしまった。


そして大きな困難を乗り越えた後に遂に更生…………と思いきや

「このままでいれば、きっとお前はずっとオレのことを心配してくれるから」

と目をそらしながらいった不良に対してお嬢様が強引に唇を奪って

「バカ! あなたは本当にバカですわ!!」

と言って涙を流すシーンとかお気に入りだ。


うん、この映画を観る前は凛さんを疑ったけど、さすがは迷わず選んだだけある。

文句なしの満足だ。


映画を見終わった私たちは映画館を後にする。

薄暗い場所に長時間いたため陽の光が眩しく感じた。

私は少し疲れた様子の凛さんに映画の感想を尋ねてみる。


「映画、よかったですね」

「あぁ、私としてはもっとイチャイチャする展開を繰り広げて創華様を目覚めさせて欲しかったのだがな」

「それで、今日のお昼ご飯はどうしましょう? 本来ならお昼は一緒に食べる予定だったのですが、どこかに食べに行きます? それとも、私が何か作りましょうか?」

「むっ! 創華様の手作り料理!!? 是非とも、是非とも作ってくれ!」


おお、そんなに食いついてくるとは思わなかった。

目を輝かせて私の両手を取った凛さんはものすごい気迫で私に迫ってくる。

私はそれを押し返しながら家のある食材を思い出した。


確か今日補充をするつもりだったから大したものは残っていなかったっけな?


作れそうなのは焼きそばくらいかな?



昼ごはんを高峰家で食べることになったので私は凛さんを引き連れて家に帰る。

なぜかはわからないが凛さんは道中、ずっと私と手を繋いでいた。

あれかな? 百合物語を見たからかな?

特に拒むこともないので私も手を握り返していた。

昼ごはんを楽しみにしながら手を握ってくる凛さんはどこか子供みたいで可愛いなと思った。



そして家について私は1人キッチンに立つ。


「創華様、私も何か手伝おうか?」


凛さんがそう申し出てきてくれたが遠慮してもらった。

凛さんはお客様なのだ。今、家を任されている私としてはお客様に手伝ってもらうことはできないと思ったからだ。


「凛さんはそこらへんに座って待っていてください。すぐにできますから」


「むっ、わかった。そうするとしよう」


凛さんはテーブルについて私の料理風景を眺めながら待つようだ。

そんなにじっと見られるとやりづらい。


少しのやりづらさを感じながらも調理は滞りなく進む。


「………」

「………」

「………」


やっぱり無言でいるのがやりづらさの原因なのかな?そう思った私はふと思いついたことを口にした。


「そういえば凛さん、この前くれたロッキングチェア、ありがとうございます。今ではすっかりお気に入りなんですよ」


「それは良かった。こちらとしてもプレゼントのしがいがあるというものだ。して、次は何を贈ろうか?」


「何も贈ってくれなくていいですって。そこまで迷惑はかけられません」

「そうだ! これを機に指輪でも送ればいいのでは?」

「え? 指輪がどうかしましたか?」

「い、いや?なんでもない。それよりご飯はまだか?」

「あ、もうできるのでそちらに運びますね」



昼食は食材がほとんどなかったので焼きそばになった。

突出してどうというわけではない、いたって普通の焼きそばだ。

それなのに凛さんはとっても美味しそうに食べてくれるから作った甲斐があったというものだ。


私たちは先ほど見た映画や、栞ちゃんが家でどうなのかーというどうでもいい話などをしながら焼きそばを食べた。


20分もすれば皿の中は空になる。


私は皿を流しの水につけて軽くすすいでとりあえずその場に放置した。


「そういえば、堅護…上手くやれているでしょうか?」


「堅護というと創華様の弟君だな。あれは栞を狙っているのだよな? あれだけ露骨でどうして栞は気づかない?」


「栞ちゃんはほら、異性の経験が皆無ですから……」


「それもそのはずだろうそもそも栞はーーーーーー」



凛さんが何かを言いかけたところで、ガチャっと玄関の扉が開く音がした。

しゃりしゃりとビニール袋が擦れる音がするところを考えると堅護が帰ってきたのだろう。

だが、音を聞く限り1人のようだ。栞ちゃんを家に連れ込むといったことはしていないらしい。


そうとなるとあまり関係が進展しなかったのかな?


私がそう考察している間に堅護が私たちのいるリビングに入ってくる。


「まぁ、堅護どうしたのですか?」


入ってきた堅護の顔は意中の人と買い物デートをして帰ってきた人間のものとは違ったものだった。

どちらかというと、失恋した乙女みたいなーーーーーーん? 失恋?


まさか……まさかね?


う、うちの弟に限って、そして栞ちゃんに限ってそんなことはーーーーー




「…姉ちゃん、これ、頼まれていたもの」


堅護は大量に持った荷物を私に手渡ししてくれる。

ずしっと重いが私にとってはこの程度の重さはどうってことはない。

それよりも堅護だ。

彼は私に荷物を渡した後、力が抜けたかのようにソファーの上にうつ伏せで倒れ込んだ。


両腕は頭の部分で組まれており目元を抑えているようにも見える。



「……あの、堅護、何かあったのですか?」


「……」


「…何かあったなら、お姉ちゃんに聞かせてもらえると嬉しいな。力になれるかもしれないから……」


「………」


「……あの…堅護?」


「………姉ちゃん」


「はい」


「………ごめん。俺、姉ちゃんに色々やってもらったのに、ダメだったよ」


「そ、それじゃあ………」


本当にうちの弟は振られたの!?

でも、どうして? どうしてそんな展開になったの?

はっ、もしかして堅護が男気を発揮して告白したとか!?



「………」


私はそれ以上声をかけることができなかった。

失恋して心に深い傷を負ってしまった可愛い可愛い弟に救いの手を差し伸べてあげることができなかった。


どうにか、気の利いた言葉をかけてあげられないかと考えてみても、いい答えは浮かんでこなかった。


リビングを静寂が支配する。



時折堅護の鼻をすする音が聞こえてくるのが私の心にチクチクと突き刺さる。



「ーーーふん、弟君は私の妹に告白でもしたのか? そして断られたといったところか?」

その静寂を破ったのは私でも、堅護でもなく凛さんだった。

彼女は湯呑みでお茶を飲みながら何事もないかのようにそう問いかける。


「………」

堅護から返答はなかった。でもその沈黙を凛さんは肯定ととったようで言葉を続けた。



「それはかわいそうだと思うが、弟君、気に病むことはない。そうなることは決まっていたことだ」


「ぇ………」


堅護の口から小さくだが声が漏れた。凛さんの口からさも当然のように告げられた言葉は、消沈している堅護の口を無理やり開かせるくらいには衝撃的だったのかもしれない。


どれだけ頑張っても、初めから希望なんてものはなかったのだと。

そう言われたからだ。


「ちょっと凛さん、そんな言い方はーーー 」


「違う違う。創華様、勘違いしてもらっては困る。私は何も弟君に魅力がないから振られたと言ったわけではない。というよりも、これは栞側に問題があるのだ」


「栞ちゃんに?」


「というか、漣家にかな? ぶっちゃけいえば栞は親に彼氏を作ることを許されていないのだ」


「えっ!? ちょっとそれ初耳なんですけど!?」


「むっ、栞から聞いていなかったのか? 漣家は由緒ある家らしいからな。縁を結ぶ際にはそれなりに縁を結ぶ価値のある相手じゃないと許されないのだ。で、大体それを自分で見つけられないから親が勝手に縁談を持ってくるわけだな」


えっとそれってつまり………


「政略結婚を強要されるってことですか?」


「言ってしまえばそんなものだ。栞だって中学生くらいまでは彼氏を作ろうと思っていたのだが、最近ではくっつく直前に家の手のものが阻止しにくるからって理由で考えないようにしているらしいぞ」


栞さん、あなた彼氏を作れないのではなく、作らなかったんだね。

凛さんに聞かなければ一生わからなかったことだろう。考えてみれば今までおかしいと思っていたのだ。

栞ちゃんはいいところのお嬢様だから財力もある。見た目もそこそこ、快活で友好的なのになぜ彼氏ができないのか、と。

特に私にしつこく言い寄ってくるあのーーーーあいつ、名前をど忘れしたけどあいつとかならすぐに手を出してきそうなものだ。


なのに2人一緒にいても口説かれるのは私だけだった。

もしかして、私の知らないところで栞ちゃんに手を出そうとして痛い目を見ているとかなのだろうか?

進んで真実を知る必要はないから追及はしないけど、凛さんの話を聞いてからはそれが正しいような気がした。


「あれ? ということは凛さんも?」


「心配してくれるなら創華様がもらってくれてもいいのだぞ? まぁ、私の場合は家の中の発言権が母に次いで2番目に高いから好きにできるのだがな」


その話ぶりからすると政略結婚を強要しているのは凛さんのお父さんとかそこらへんの人で、家の中でそれ以上のパワーを持つ凛さんはそのルールを真っ向から否定できるということかな?


それを聞くと凛さんは娘に力負けしていいのか、と思うけど、よくよく考えてみれば今の状態は安定していいのかもしれない。


だって凛さんが全力で抵抗して武力行使に出たらほとんどの人が取りおさえるどころか触ることもできずにのされてしまうだろうからね。



「それで、結局うちの弟はどうしたらいいのですか?」


「きっぱり諦めるーーーーーというのが一番無難なのだがな。一つ聞くが弟君、君は栞のことを諦める気はあるか? それなら君にぴったりのいい女を探してやってもいいぞ?」


凛さんの問いかけに堅護は迷いなく答えた。


「諦めたくはありません。高嶺家の人間は、諦めが悪いことが取り柄ですから」


「うむ、よく言ったぞ。それならあとは簡単だ。お前が漣家にとって益になる存在になればいいだけだ。何、そこまで高望みはされていないはずだ。精々、どこかの大企業の重役とかで十分のはずだ」


精々って言うけどその条件ってそれなりに難しくないかな?

私はそう思ったんだけど


「そのくらいなら、姉ちゃんを倒すのと比べれば簡単だ」


「ふふっ、確かにな。私も少なからず応援しているから頑張るんだぞ」


「はい!!」


気づけば堅護の声に覇気が戻ってきていた。

なんやかんやいってもう立ち直って次の目標に向けて歩き出せそうだ。


「あ、それが新しい目標なら今の目標は取り下げたほうがいいでしょうか?」


大企業の重役になるという新たな目標をえた堅護に、私を倒すという足かせをつけるわけにはいかないと思い私はそうといかけた。

そもそもこの課題は堅護と栞ちゃんに共通の話題を作り対策なんかで一緒にいる時間を増やそうという魂胆から作られた目標だ。


これはもういらないのではないか?

そう思ったのだが


「いや、それは最後までやり切らせて。実は今ギルドメンバー総動員で姉ちゃんを倒す準備をしているから、楽しみにしててよ」


堅護は不敵に笑ってみせた。先ほどまではあんなに落ち込んでいたのに、もうそんな顔ができるとは。

さすが私の弟、目標を決めたら一直線だ。



「ふふっ、楽しみにしてますよ」


私はニッコリと笑い返し、そして堅護にできた新たな目標のことについて考えてみた。


ふむ、大企業の重役、、、大企業の重役………何か最近そんな話がどこかであったような………



なんだったっけ?


えーっと確かお父さんが帰ってきて………
















あっ!


もしかしたら力になれるかも?






Q、2人が付き合ったら陽が狂いそう。続きが気になって夜しか眠れません!


A、陽「略奪も辞さない」

健康的な生活は大切にしたほうがいいですよね



Q、まさかの急展開!これはCO的に告白行ってしまうんか!?


A、告白シーンはまさかのカット……というわけではなく次話に第三者視点から告白シーンが閑話として見られます


Q、押しの強い人に振り回される話でしょこれ


A、現代日本の人間関係において押しの強さはかなりのアドバンテージを生み出すからね


Q、戦闘すくなくなった?


A、これについては申し訳ないがこの後でっかいのが控えているから作者の休憩所としてこっちの話にシフトしていました。そろそろ大規模な戦いが始まるよ



Q、剣持ってると最強なのに離すとちょっとほわほわしてるように見えるそーかお姉さんすき。

A、素手でも強すぎるのを忘れてはいけない

ちなみに最近では何もやっていないときはウッドデッキに置いてあるロッキングチェアでゆらゆらしているらしいですよ



ブックマーク、pt評価、感想待ってます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

doll_banner.jpg
お姉ちゃんの頑張りが書籍化しました。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ