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とーさんふーとーあぷでーぎるどー


「ふぅ………創華さんは一体何をやっていたのか……」

私こと藤川 陽はネット掲示板【我らのボス】メーフラ個人板14【出荷そして加工へ~】を読了して大きく伸びをしながら小さくつぶやいた。

ここは私の部屋、当然周りには誰もいないので完全なる独り言だ。そして私の口から漏れ出た言葉はそのまま先ほど見ていた掲示板の内容に対する感想でもあった。


創華さんことメーフラがさらなるステージ、レイドボス的な何かになったというアナウンスはMOHの世界全体に響き渡っており、あの日あの時間にログインしていた人ならみんな知っている事実として存在している。

それどころか、そのアナウンスを聞くことができなかった人も人伝に情報を得ているので今や知らない人のほうが少ないだろう。


して、そのメーフラであるが3日前に連れ去られて2日前にはレイドボスになって、そして昨日私たちの稽古場に白い少女によって運搬されて戻ってきた。

担がれているのにリラックスして私に向けて「陽さん、ただ今戻りました」なんて言っていた姿は強制的に連れ去られた彼女はそれはそれで楽しんできたのだろうなと感じた。


彼女のペットのクマさんもなんかすごいはしゃいでいたし、明日にでも何があったのか聞き出した方がいいかな?

あ、でも明日は休日だ。


そういえば明日って何か大きめのアップデートをやるんだっけ?確かギルドシステムを追加するとかなんとか………

「くふふっ…堅護君と一緒のギルドに入って二人の家を買って………ギルドシステムは夢が広がるね!!」


少し大きめの声が出たが現在は深夜の1時、両親は寝静まっているためそれを咎める人はやはりいなかった。

しかし、理想と現実はいつだって乖離するものであるということを私が思い出したのは、いざ、堅護君とギルドを創設した後、レイドボス討伐を基本的な活動に据えた私たちのギルドに思ったよりも人が集まってしまった時だった。



それでなくても、あの邪魔な女はどこまでもついてくるっていうのにね………私って、本当にバカ








久しぶりに研究者であるお父さんが帰ってきた。お父さんの名前は高峰 総司でとある会社の脳科学研究室にてお仕事をしていると聞いている。

会社からはなるべく定時で帰るようにというお達しは出ているらしい、のだが、そこの社員で定時に帰るような人は存在しないらしい。家にほとんど帰らない人だっていると聞いたこともある、というか、うちのお父さんがそれに該当している。


別にこれは会社がブラックというわけではないらしく、中には午後5時になったらオフィスをクールに去る社員もいるにはいるのだと。

そんな会社に勤めているお父さんが帰ってきたのだ。一瞬だけだがリストラされたのではないかと勘繰ってしまうほど衝撃だった。


だが、そんな雰囲気ではなく昨日の夕方に帰ってきたお父さんはいろいろお土産の紙袋を携えて帰ってきたので特に問題はなかったのだと判断。

一応念のために

「今日は帰ってきたんですね」

と言ってみたら

「うん、ちょっと社長がこれを娘さんに渡してくれって言われてね。ということで創華さん、これを受け取ってもらえないでしょうか?」

何故か実の娘に対して恭しいお父さん。昔一度どうしてそんなかしこまった態度をとるのか、と聞いたら「殴り合いで勝てない相手には下手に出るのが正しいかと思って」と冗談交じりに言っていた。どこまで本気かはわからないが、実の父親に敬語を使われるのは複雑な気持ちだ。

まぁ、たまにしかやらないから黙認している。


そもそも、私がこんなに強くなれたのだってお父さんが『THE・剣豪』を私にプレゼントしたからだからね?


「お父さんが帰ってくるときくらいお母さんも帰ってくればいいのですけどね」

「あはは、加胡さんには俺が帰ることを伝えてないからなぁ。最後に帰ってきたのっていつ?」

「6月中はいましたよ」

「あー、加胡さん梅雨時期は本当にしおれるからなぁ」

「しおれるって、そんな植物みたいな………お母さんが聞いたらなんていうか」

「加胡さん優しいからきっと許してくれるさ」


ソファーにもたれかかる父とキッチンで朝食を用意する私。

普段お仕事を頑張ってくれているお父さんにはこういうときくらいゆっくりくつろいでほしいからいつものように私が家事をやる。

朝食は判を押したようなメニューで悪いがベーコンエッグに白米、それと冷蔵庫の中にいろいろあるごはんのお供だ。

飲み物にはお父さんの好きなホットココアだ。


自分のところにはティーポーションで作ったアールグレイの紅茶だ。この銘柄は最近のマイブームだ。

癖の強めの風味がどことなくのんでいて楽しいのだ。


それと、そろそろ起きてくるであろう堅護の分も用意しないとね。

彼にはミルクココアを作ってあげちゃおう。


そうやって朝食の準備をしているとソファーに座っているお父さんから声がかかる。


「そういえば創華さん、うちの社長からのお土産どうだった?」


お土産、というとお父さんが帰ってきたときに社長からと渡されたあの封筒のことだろう。その中身は内容が内容だったため昨日のうちに隅々まで確認している。

それでもまだ、それに対する回答は決めかねているのが私の現状であった。



「………前向きに検討はするつもりですけど」

「そっか、いやだったら破り捨てても構わないからね」


お父さんはそう言いながらテレビをつけて朝の情報番組を見始めた。

もう話は終わったみたいだ。私も黙って朝食の用意を終わらせる。


朝食の準備ができたころにちょうど堅護が起きてきた。最近髪が伸び気味な彼はこういった朝に寝癖がひどい。どこかのタイミングで切りに行かせるべきだろうか?

そんなことを考えながら私はテーブルの上に皿を並べる。ソファーでくつろいでいたお父さんもそのタイミングでテーブルの方の椅子に座った。

私たちは「いただきます」と挨拶してからそれを食べ始める。


そしてもう少しで食事が終わる、というタイミングで堅護が話しかけてきた。


「そういえば姉ちゃん、昨日の夜アップデートがあったって知ってた?」

「いいえ、知りませんでしたが……何か変わったのですか?」

「大きなところではギルドシステムかなー、それとマップが拡張されたりしたらしい」


堅護はどこかの情報サイトで手に入れたであろうアップデート情報を事細かに私に伝えてくれる。そして最後に

「ということで、ギルド戦とかのイベントもあるから俺と姉ちゃんは別のギルドな!」

と言って皿を片付けて二階へあがって行ってしまった。

その間、終始無言だったお父さんはそれがゲームの話だと分かったところで自分の入れる話ではないなと考えて早々に食べ終わりソファーに戻っている。

お父さんのお気に入りのポジションはあそこなのだ。



朝食が終わって私はいつものように皿洗いや洗濯物を干したりなどのルーティンをこなしてから自室に戻る。

そしていつものようにMOHにログインした。



ログインした先の景色は特に何かあるわけでも無い草原———たまに小鬼みたいなのが襲ってくるけど脅威ではない―――だった。

そこに降り立った私は周りに誰もいないその草原で一人悩んだ。


「ギルドって……どうやって入るのでしょうね?」


そう、ギルドは堅護曰く同じ目的を持った集団がほとんどなのだそうだ。

しかし私の目的は堅護と栞ちゃんをくっつけること―――――――最近では陽さんでもいいかな~なんて思っているのは内緒―――――なのだが、この目的に合致する目的を持っている人はいないだろう。

しかしギルド戦なるイベントがあるということを考慮するとどこかには所属しておきたい。だとすると誰か知り合いのギルドがいいんだけど………


私はフレンドリストを確認する。

そこにはエターシャから始まりヴァニまでの名前が並んでいた。しれっとフレンドに名前を連ねている雪姫とヴァニの名前は無視するとして、現在ログインしているのはガトと陽さん、それとアスタリスクさんとリンさんとダームさんの5人だった。


「ふむ………こういう時に一番いろいろ教えてくれそうなのはダームさんでしょうか? あ、でもアスタリスクさんも割とこのゲームやりこんでいる節があるしそちらに聞くのもいいかもしれません」


誰にギルドのことを相談しようかと悩み私がとった方法は地面に円を描いてそれを三分割してアスタリスクさん、ダームさん、リンさんの名前を入れてヒメカに物を投げてもらうことだった。


「ということでヒメカ、やってください」

「く!!」


私の頭の上によじ登ったヒメカは私お手製のぐったりヒメカちゃん人形を空中に放り投げた。首の座っていないお人形さんは回転しながら地面の一部分に落下した。

そこは見事円の中心だった。


「きゅうぅぅぅ!!」

ヒメカがやってやったぜという風な態度をとるけど、それだと困る。結局何も決まらないじゃない。

でもこういうのって二回以上投げたら途端に意味をなくすからリトライはやりたくないんだよね。


って、今更だけど何も一人にしか相談したらいけないってわけじゃないからみんなに相談したらいいじゃない。


ということでまず一人目、ダームさんへフレンドコール!!


『はいはい、こちらダームスタチスです。珍しいですねメーフラさんが連絡してくるなんて』

「ダームさん、ギルドに入りたかったらどうしたらいいのですか?」

『ん? どっかのギルド員に入りたいっていえばいいんじゃないかな? それか掲示板とかでそういう書き込みをするとか? それと、今なら町の広場にでも行けばギルド員募集している人が一定数いると思うよ』

「参考になりました。ありがとうございます。ところで、ダームさんはギルドに入る予定ってありますか?」

『いつかは入ろうとは思っているけど今は特にって感じかな?』

「そうですか。突然の呼びかけに答えてくれてありがとうございました」

『力になれたならこっちもうれしいよ』


これでダームさんとのフレンドチャットは終わってしまった。

街に行ってそれっぽい人に話しかければいいってことだった。掲示板に書くという話もしてくれたが、いまいちそういうものの使い方がわからないからそこはパスだ。

それと、ギルド員に話しかければいいと言っていたけどどこかに所属している人を見分けるにはどうしたらいいのだろうか?

いまいちよくわからない。ただ、今は街に行けばいいということだったので後で行ってみようと思う。



次、アスタリスクさん


「というわけでどこかのギルドに所属したいと思っているのですけど、いい案はありますか?」

『………自分で創設するのが早いのではないのか?』

「おー、その手がありましたか! 参考になりました。ありがとうございます」

『………いい案が浮かばなくて済まないな』


最後、リンさん

『メーフラ様がギルドを!!? そ、それなら私が建てるから入ってくれれば―――――』

「それもありですねー。その時が来たらお願いしたいです」


とまあこんな感じにいろいろな意見を集めたわけだ。

まとめるとほかの人のギルドに入るか自分たちで作るかの二択ってところだ。

ふむ………リンさんの案に乗っからせていただくとしようかな?リンさんなら私の目的を知っても喜んで協力してくれそうだし。


というわけで先ほどフレンドチャットを切ったばかりだが再びコールする。


するとコール音が2回目になる前に応答があった。


『こちらあなたのリンです』

「リンさん、先ほどの話、お願いしていいでしょうか?」

『うむ、その言葉待っていたぞ。準備はとっくにできている。強いて言うならギルドの名前が決まっていないくらいだが、それは【リンとメーフラの家】とかでもいいだろう』

「いや、その名前はちょっと………よそ様に見られたときに恥ずかしくないような名前がいいのですけど………」

『ふふっ、メーフラ様は私たちのことは秘密にしたいのだな。ならふむ……じゃあ私たちにちなんだ名前ということで【敵の箱舟】とかでどうだろうか?』

「敵の箱舟?」

リンさんはこれを私たちにちなんでつけたといったがいまいちピンとこなかった。

私たちに何かお舟の要素はあったっけか?そう首をかしげているとリンさんが解説してくれる。



『ほら、例の会社の……』

「あー、理解できました。じゃあそれでいきましょう」


例の会社というのはTHEシリーズを世に流している企業である。あれの会社名をもとに私たちのギルド名を決めたみたいで、悪くない名前だと思ったので私は首を縦に振った。


『わかった。じゃあ私は今からギルドのホームの購入に行ってくるからこちらの準備ができたらまた連絡するから楽しみに待っていてくれ』

「何から何まですみません」

『気にしないでいい。私がやりたいと思っただけだからな』


その言葉を最後にリンさんとの通信が途絶えた。それにしてもリンさん、ギルドホームを買いに行くと言っていたけど要するに家を買うってことだよね?

お金、足りるんだろうか? 足りないようだったら私の倉庫に眠っているレアっぽいアイテムを市場に流して資金を作り出すくらいはできるからその時は協力させてもらうことにしよう。

なにせ、私のわがままでギルドを作ってもらっているんだからね。


あ、そうだ。ギルドが出来上がってホームの購入も終わったらフレンドのみんなも誘ってみようかな??


















余談だが、今日相談役になってくれたほかの2人はその日のうちに私たちのギルドに入ってくれた。



サブタイが思いつかず過去最高に頭の悪いものに………


Q,ヴァニさんの名前のニが漢数字に―――――

A 、……マジだ、気づかなかった………


Q、メーフラさん無理やり連れてこられた割に空気だな

A、まぁ、プレイヤーがいないと入り口が開かないから連れてこられた面が大きかったですからね


Q,ヴァニさんなかなか濃いキャラだなぁ

A,濃いのは設定だけで今後大きなことはしないんだけどね


Q,ヴァニさんが雪姫をもらわない理由

・雪姫、実は男の娘


・二人は実の兄妹


・婚姻届とみせかけ、実は外泊証明

A,項目としては二つ目が惜しいです。雪姫を神族として転生させるのにかかわったのがヴァニなので彼にとって雪姫は娘のような扱いになる―――――という設定を埋め込まれています


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