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一方的な意識

あとがきって人間性出るよね………


堅護は一度家に帰って姉に今日の昼食がいらないという旨を伝えて制服を脱ぎ着替えてからすぐに家を出た。


創華としてはこの展開は知っていたことだったので何も驚くことはない。

だから彼女は堅護が家を出る際に


「少しは男らしいところをアピールしたほうがいいかもしれませんね」


と言って一万円札を手渡した。

堅護は姉である創華が自分のこと以外にはお金をあまり使わないタイプだということを理解していたので、このことに関して本当に申し訳なく思いながらも姉の気遣いに感謝してそれを受け取った。

彼は着替えが終わってからすぐに家を出た。

そして約束したファミレスへ向かう。

この時間に出れば約束の時間の20分前には着くと思われ、実際にそうなった。


ファミレス前にたどり着いた堅護を待っていたのは、ここで待ち合わせしている相手の栞―――――――ではなく、クラスメイトの陽だった。

陽も一度家に帰ったらしく、かわいらしい服に身を包みそこにたたずんでいた。


「あ、高峰くん、奇遇だね」

「藤川さん、今日はよく会うね。昼はここで食べるの?」

「うん、実はそうなんだ……高峰くんもここで?」

「俺もここで食べるよ。人に誘われたんだ」

「そうなんだー………あ、せっかくだから私もご一緒してもいいかな?」

「ん? 藤川さんも一緒に? ……俺としてはいいんだけどもう一人がいいって言うかどうか……」

「そうだよね。急に言っても迷惑だよね」

「迷惑ってわけじゃないけど……」


陽の突然の申し出に戸惑っているとその時ちょうど栞が待ち合わせ場所に到着する。

堅護と陽の姿を見た栞は2人が知り合いであると感じる。

しかし彼女の眼には堅護のほうは少しだけ困っているような風に映り、陽のほうはなぜか自分をにらみつけているように感じた。

その様子から栞は二人の関係を誤解する。


(はは~ん、2人はカップルって感じで夏休みの間私が堅護君を独り占めにしちゃったから恨まれてるんだね)


それは堅護にとっては最悪の誤解の仕方だった。

しかしそんなことを思われているとは思ってもいないため修正もできない。


逆に、陽のほうは堅護と栞の関係の予想に大きな間違いを起こさなかった。


(この人は堅護君の彼女? ………いや、そんな感じはしない。多分だけどまだそこまで行けていないはず。なら私にもチャンスはある。いや、学校が始まってしまったからこの勝負、私に分がある!!)


陽は今は少しだけ自分のほうが有利であることを確信した。だが、彼女の分析はそこでは止まらない。


(しかし問題は現状の好感度では私のほうが負けているってことね。2人はもうすでに連絡先を交換してさらにはこうやって一緒にお昼ご飯を食べるまで……少なくとも今日、連絡先を交換するくらいにはならないと厳しいか……)


陽は自分の不利も同時に悟る。

そして最低限スタートラインに立てるようにここは何としてでも今日、一緒に食事をすることを承諾させたかった。



「堅護君ごめん、待たせちゃったね。それでそっちの人は?」

「まだ待ち合わせの時間前ですよ栞さん、こっちの人は藤川さんって言って学校でクラスが一緒の人です」

「藤川 陽です。さっきここで偶然高峰君と出会ってこれからお昼一緒にどうかって誘ってたんですけど……先約がいたなら仕方ないですね」

「そのことなんですけど栞さん、彼女もいっしょでいいですか?」

「ん? 別に大丈夫だけど……今日の目的はいつものあれだけど大丈夫なの?」

「えーっとそれは………」


堅護と栞はそもそもここには創華メーフラ討伐作戦会議をするためにやってきている。

その話に陽はついてこられなく、結果さみしい思いをさせてしまうだろう。それが2人の見解だった。

だが、栞としては彼氏を休みの間取ってしまったことを申し訳なく思っているし、何とか一緒に食事をさせてあげたいとも思っていた。

対して陽だが、そんな2人の会話はほとんど耳に入っていない。

彼女の頭の中を支配しているのは先ほどの2人の会話の内容で繰り広げられた『堅護』『栞』という名前呼びのこと。

自分なんていつまでたっても『藤川さん』という苗字呼びなのに、という思いでいっぱいだった。


(くそ、この女はどこまでも私の先をいっている……まだゴールインには遠いみたいだけど、このままだと時間の問題だ……だが、堅護君のほうは私には砕けた感じに話してくれるけどあいつには敬語。一定の距離を堅護君自身からとってくれるのはプラスか?)

堅護が栞に対して敬語なのは距離をとっているからではなく、その逆、好きな女子に荒い態度で接して嫌われたくないというところからきているのだが、陽はそれに気づいていない。


「というわけで藤川さん、だっけ? お昼、一緒に食べない?」

「えっ? あ、はい! ご一緒させていただきます」


そして知らない間に陽が一緒に食事をすることが決まっていた。

陽は少し予想外にびっくりしながらチャンスが来たと内心喜ぶ。


そのことが決まったのでいつまでもそこでそうしていても仕方ない。

だから3人は店の中に入り店員の案内に従い席に着いた。

席順としては栞、その対面に堅護、そしてその隣に陽という形だ。

栞が堅護の隣を譲り、陽が堅護の隣を狙ったため自然とこうなった。


3人はそれぞれ食べるものを注文する。

堅護は普通にハンバーグステーキランチ、栞と陽はレディースセットを注文していた。

3人ともドリンクバー付きだ。


注文が終わった後陽がさっそく立ち上がる。


「今から飲み物を取りに行くけど高峰君の分もとってきてあげるよ。何がいい?」

「別に自分でとるから気遣ってくれなくていいのに……」

「わかった。オレンジジュースでいいのね?」

「今のをどう聞き取ったらそう聞こえるのか聞きたいけど、もうそれでいいよ……」


陽が席を立ってドリンクバーにて自分の分と堅護の分の飲み物を汲みに行く。

そして堅護が飲む飲み物の中に惚れ薬を――――なんていうことはなく普通に戻ってきた。

片手に一つずつコップを持った陽は戻ってきて幸せそうに堅護の隣に座る。


栞は堅護の隣で嬉しそうな陽をみて微笑ましいものを見るようにしていた。


「それで、栞さんこの前の戦いなんですけど、最後、何をされたかわかりましたか?」


堅護は陽がいて少しやりづらそうにしていたが、当初の目的も忘れていなかった。陽にとってはわからないだろう話をすることに少し抵抗はあったが、せっかくそのために呼んでもらったのにその話をしないわけにはいかない。


「うーん、気づいたら後ろに回られていたんだけど、確かあの時堅護君視界のキャプチャ―とってたよね? そっちの視点でどうなったのかも見たいな」

「それなら携帯にデータを移してあるので今見れますよ」


堅護は肩掛けカバンの中から大きめのタブレットを取り出してその動画の再生画面を開く。

そして栞との間において二人はそれを覗き込むように見る。


(ああああああ!!  近い、近いよ堅護くん!!)


必然的に2人の顔が接近したのを横目で見ていた陽の心は今にも叫びださんとしていた。だが、はしたない姿を見せて幻滅させるわけにはいかない。

陽は表情は崩さずに口の中で歯を食いしばって耐えた。

そんな陽の様子には気づかずに堅護は近くなった栞に注意を払いながら下に置いたタブレットに流されている短い動画を見た。

前回の戦いは本当に一瞬で終わってしまったためその動画は10数秒程度しかなかった。


そしてそこに映し出されていたのは揺れながら動く視界とじっと待ち構えるメーフラの姿、まき散らされる爆薬、そして視界が真っ赤に染まる前に目の前から消え去るメーフラの姿だった。


「そういうスキルがあるって考えるのが自然だね。移動系のスキル……創華ちゃんに絶対に与えたらダメなやつだよこれ」

「ですね。条件があるのか、あるとしたらなんなのかくらいわからないと対策のしようもありません。それに、こっちの奇襲はもう通用しないでしょうし……」


動画を見終わった後2人はう~んとうなる。

話題についていけない陽はというと


(あぁ、悩む堅護君もかわいいなぁ~)


と、話題について行けていないことにはあんまり気にしていない様子ではあった。

しかし、それも一時的なこと。栞と堅護にだけ共通の話題があって自分にだけないというのは恋愛戦争においては圧倒的なディスアドバンテージであると確信した。


(ここは多少強引でも私もそこに割って入るしかない……)


「あの、高峰君たちは何のお話をしているの?」

「ん、ゲームの話。いま私たちは強大な敵を前に足踏みをし続けている状況」

「ゲーム? 強大な敵?」

「そうそう、MOHって呼ばれているゲームでね、ちょっと事情があって倒さないといけない人がいるんだけどまったく勝てる気がしなくてさ」

「その倒さないといけないっていうのがさっき見ていた?」

「そう、動画に映っていた人……っていっても藤川さんは見てないか……見てみる? これは俺視点の動画なんだけど……」

「高峰君の視点!? みるみる見せて!」


半ば奪い取るように堅護のタブレットを受け取り陽は動画をみた。

と言っても十数秒程度のやり取りだ。すぐに見終わる、が、陽は何度もリピートしてみて堅護の見ている世界を堪能した。最後のほうは初めの目的と少し逸脱していたような気がするが、本人は充実感を得られているので気にするものはいない。


(それにしてもここに映っている二人の「敵」っていう女の子って……)


「高峰君、ここに映っている女性はお姉さんだったりする?」

「えっ!? よくわかったね藤川さん、もしかして会ったことあるとか?」

「高峰君の家から出てくるのを見たことがあって……」


いつ、どんな時に見たとは言わずにそのことだけを告げる。

さすがに今日、待ち伏せしているときに少しだけ声掛けをいただいたことを言うわけにはいかない。


ちなみに、陽が創華を見た感想は堅護の姉にふさわしい好印象な女性だった。


一瞬で自分の目論見を看破しておきながらそれをとがめることなくさりげない補助をくれる。そんな女性。

陽的には創華は味方と思って問題ないと思っている。


「そっかー、まぁ見ての通り俺たちが倒そうとしているのは俺の姉ちゃんなんだ」

「でもどうして? 高峰君のお姉ちゃん、結構いいひとそうだったけど……喧嘩でもしているの?」

「まさか。もしそうなったとしたらすぐに謝って仲直りしに行くよ」

「でもだったらどうして?」

「姉ちゃんからの試練って感じかな? どんな手を使ってもいいからMOHの中で自分を倒してみろーって言ってきてるの」

「そうなんだ……あの、高峰君、もしよかったらなんだけど、私も手伝おうか?」


ここで陽は踏み込んだ。ここで拒否されてしまえば栞と同じ立ち位置に着くことはできない。

敵に有利な状況からのスタートになってしまう。

だが、陽が見た感じ2人は創華に勝つのにものすごく苦労している様子だった。その原因が何かは陽には測りかねるが、少なくとも戦力的な数を増やせるのは向こうにとってもプラスになる、それならと私の出した手を取ってくれるはずだ。

そう考えた。


だが、少し予想外の反応が堅護から飛び出す。


「うーん、藤川さんも一緒に……?」

何故か堅護の歯切れが悪いのだ。

それもそのはず。そもそもこの創華討伐作戦は創華が考案したもの。そしてその目的は堅護と栞に共通の壁として自分が君臨することで2人だけの接点を作ろうというものだった。


そこにほかの女を入れるのはどうなんだろう?

堅護は少なからずそう思ったし、それ以上に栞と二人っきりになれる口実を捨てたくなかった。

ここで首を縦に振れば栞と一緒に陽までついてくる。

栞と一緒にはなれるがそこに他人の目が入ってしまうのだ。

それを考えると堅護はあまり了承したくなかった。


「え? 藤川さん手伝ってくれるの!? それは助かるかも!!」


しかし、そんな堅護の葛藤はほかのだれでもない、栞自身に打ち壊される。

彼女は堅護の意見も聞かずに陽の申し出を受け取った。そこには創華を倒したいという思いしかなく、裏で張り巡らされた意図には一切気づかない。

堅護はがっかりしたし、陽は喜び、同時に栞の思考の裏を探る。

一番年長者である栞が、この場で一番頭を使っていなかった。


「えっとじゃあ、私はその……MOH?ってゲームを始めて強くなればいいんだよね?」

「そうなるけど……藤川さんってゲームやるの? そんなイメージは全然なかったんだけど」

「それなりに?」


それなりにやったことはあるがさほどゲームは好きではないと思っているのが陽だ。

しかしゲームが好きでなくても堅護のことは好きだ。堅護と一緒にいられるならゲームでもなんでもやってやろうというのが陽だ。

多少ゲームをやるということもあって彼女の家にはちゃんとVRマシンは存在する。

だから後はソフトをそろえるだけだった。


彼女はこうしてはいられない、早くそのゲームを用意しないと、と考えはしたが―――――――



「お待たせしました。こちら――――」


そういえば今日は一緒に食事だったと思い、踏みとどまった。

その日の昼食、陽の手はいつもより少しだけ早く動いていた。



















一方その頃の高峰家






「ふふふふ~ん♪ ふふふふ~ん♪ ふんふんふんふんふふふふ~ん♪」


鼻歌を歌いながら自分用の昼食を完成させた創華はそれをさらに乗せてテーブルに運ぶ。

ちなみに彼女の今日の昼食はミートソースパスタだ。堅護もいないしあまり凝ったものを作るつもりはなかったためパパっと作れてパパっと食べられるものを作ろうと思ったのだ。

しかしその量は通常の倍はあった。


ここで一つ、創華についての生態を解説しておくと――――――――――――――









高峰創華、彼女が歌を歌うときは基本的にさみしく感じているときなのだ。


創華は早く堅護が帰ってこないかなーなんて思いながら一人でパスタをつついた。


前回までのFisキュア!! 読者のたくさんの応援によってマックスハートになったFisのマジカルレベルがインフェニットになってなんとか五月病にかからなくて済んだのだった!!


Q,何というヤンデレ臭……

A,堅護、うまくやるんやぞ


Q,わー、刺客の有名プレイヤーがこんな美少女やったなんてー

A,THEシリーズには共通してキャラメイク機能はないので刺客で顔を知っている=現実の顔も知っているということになります。

つまり美少女でも中身おっさん、というのはTHEシリーズでは起こりえない現象です


Q,このまえ言ってたタグの話、注意喚起のチェックのやつでは?

A.やろなぁ。あれは外すわけにはいかないのでガールズラブのタグは消えることはないですねー


Q、そ「ごめんなさい、私より弱い弟以外の男性と食事に行く気はありません」


からの、男(名前なんだっけ)瞬殺でファンも萎える


A,メーフラちゃんの人気はアイドル的なやつなので、ファン的には純潔を守り続けるその態度は肯定的に取られているらしいですよ?


Q、姉弟そろって面倒そうなのが近くにいるなぁ~

A、姉のほうのあれは次の登場があるか怪しいくらいに使い捨てだから実質弟だけ付きまとわれてる感じになりそうなのが……

創華ちゃんは実害がないから無視しているみたいです


Q 、更新楽しみにまってます

A,できるだけ早く更新できるように頑張ります!!


ブックマーク、pt評価、感想待ってます!!

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