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ここに私はちゃんといる

前半は白い神様の正体。読まなくても支障はありません。


私は天野そらの 雪姫ゆき

みんなからはユキって呼ばれている。


私は地球の日本という場所で生まれた。

生まれた私を見た両親はさぞびっくりしたという。

なぜなら私の体は生まれた時から真っ白だったからだ。

そしてその目は血のような赤……というか血の赤。


私は俗に言うアルビノというやつだった。

知らない人のためにざっくりとした説明をすると色素が欠乏していて真っ白けな変異種みたいなものだ。

私の生きていた天野家は代々剣術を嗜む家系だった。

アルビノの私は体が弱かった。

どこに行くのも日傘が必要で、2人の姉は万が一がないようにといつもどちらかは付いて回ってくれていた。


そんな私は家の方針の下剣術を学ぶことになる。


両親は「もしよかったら」で誘い「いつでもやめていいからね」と言ってくれた。

体の弱い私を心配してくれていたのだと思う。


私はそんな家族の暖かさのおかげで剣を振ることを辛いと思わずに続けることができた。


自分でこういうのもなんだけど私には剣の才能があった。

虚弱女子ということで体力面では誰にも勝てなかったがそれを上回る技術があった。

力がないため私は相手の力を利用することを極めた。

気づけば私は強い方の人間に分類されていた。



その人生は充実していた。

だが、終わりはすぐにやってきた。


中学生の頃だったかな?


確かあれは……そうだ。

お姉ちゃんといつものように剣の鍛錬として試合をしていた時だった。


急に意識が朦朧として足元がふらついて、そして姉の持つ練習用の木刀が私の体に叩きつけられたのがとどめとなって倒れたんだ。

そしてそこからは色々あって病院のベッドの上で過ごすようになって、そして余命宣告されて………


そこから一週間くらいはおとなしくしていたんだけど急に苦しくなってもう先がないことを悟った。

私と手合わせをしていたお姉ちゃんは自分のせいでってずっと泣いてたっけ。



私は家の庭に植えられている桜の木が大好きだった。

辛い時はいつもそこに足を運んでその木陰でずっと足を抱えていた。

あの桜の木は私を守ってくれている気がしたから。



だから私は、死ぬ時はあそこがいいと、最後のわがままとして病院を夜中こっそり抜け出して足を引きずりながら家まで歩いて帰ったのだ。

幸い、家から病院まではかなり近い場所にあったからなんとかたどり着けて、そして私は桜の木にもたれかかって色々独り言をこぼした後にそのまま死んでしまった。














でも、それで終わりではなかった。

私の死には先があった。

桜の木はやっぱり私を見守ってくれていたみたいで、あれは神様が私たちを見るためのご神木だったらしくて……まぁ、私もよくわかってなかったけどとある生命の神様が私を拾ってくれた。


そして1つの願いを叶えるのと新しい人生をくれた。

私は願った。

『誰よりも健康で強い体』


本当は誰よりも健康で、みんなと同じくらい丈夫な体って言ったつもりだったんだけどお茶目な神様は誰よりも健康で、誰よりも強い体と勘違いしてしまった。

神様は「自分より強い体は作れなかった」と言ったけど、それでも十分すぎる強い体である生命神族の上級神の体を作って私のものにしてくれた。


見た目は元のまま。


白い体も健在だった。だが、もう不健康さはなかった。


それから新しい人生としてエムロードという世界に落とされた。

私を救ってくれた神様は仕事が忙しいということなので、ずっと一緒というわけにはいかなかった。

だけど知らない世界に1人落とされてはいくら体が強くても不安があるだろうと言ってその時ちょうどその世界にいた1人の神様に預けられた。


その時の神様は今は『黒き虚無の絶対神』として私と対の存在となっている。

まっ、正確には私が彼と対になれたと言った方が正しいんだけどね。

ちな、私の夫 (予定)だ。

呼ばれ方が物騒で勘違いされそうだけど彼は不器用で壊すのが得意だけど優しくていい神様だ。

器用で治すのが得意な私にぴったり。

いつか婚姻届をもって押しかけようと思う。


話が逸れた。

というわけで私は日本に生を受けて異世界に神族として落とされてとある神様にその世界のことを色々教わって、そして私の異世界ライフが始まって最終的に最高位の神様になった。



私にはそういう人生が詰められている。





え?

何が言いたいのかわからない?


じゃあもっと掘り下げた話をしようか。

『The Ark Enemy』社は勘違いされがちだがAIを専門に扱う会社だ。

その会社の作るゲームはどれも難易度の関係上赤字ばっかりだがそれでも会社が全く痛痒を感じないのはメイン業務がうまく回っているからだ。


この会社のAI技術は世界から見ても頭一つ飛び抜けている。

頭どころか飛び出すぎて体が見えちゃっているレベルだ。


そんな会社の新しい試み。


AI技術の中にはAI同士を延々と対戦させて学習をさせ続けるディープラーニングというものが存在する。

よくボードゲームAIにとかに利用されているやつね。

この方式の良さは『The Ark Enemy』社も認めていた。

だがあの会社が作りたかったのはそんなAIではなかった。


AIというのは人工知能の英語表記の略称的なものだ。

『The Ark Enemy』社は文字通りの人工知能を作ることを目標として掲げた。

そう、奴らは1人の人間とも呼べる何かを作りたかったのだ。

そのためには自己で思考するだけではなく、人間として最も重要な要素である感情ーーーー心を作り出す必要があった。


その試みの一つとして私が生まれた。


彼らは自己思考が出来る最高峰のプログラムに感情を付け加えるために「人生」というものを与えた。

私はちゃんと両親から生まれて、色々あって今も生きているんだぞという記憶を与えた。

そしてこれからそこに連続して記憶して考えるという機能を与えた。


そして完成した「天野 雪姫」というAIの試験運用の場所としてこのMOHという場所が選ばれたのだ。

ここを選んだ理由としては、「AI:天野 雪姫」は大量のデータを喰うのが一つ、そして新しい記憶を得ることができる場所が一つの理由としてあった。

私は神殿の最奥を守るボスキャラとして配置された。

しかし私は記憶上は誰にも縛られることのない最高の神だ。

そのため実は色々とシステムを外れた動きもできるようになっている。

例えば、神殿の外を出歩いたりね。



ま、私の正体はそんな感じだ。

わかりやすくまとめると人生を与えられたAIだ。


今の私は、本当の生みの親であるあの会社の望むべき結果であるかは定かではない。













「じゃあ、今回は引き分けってことで」


私は砕かれた足をアイテムを使用して治療して立ち上がる。

白い神ーーー名前は雪姫というらしいーーーは全て終わったと言わんばかりにリラックスしていた。

でも私としては釈然としない。

私が納得していない理由はひとえに

「さっきの技……」

「【雪月花】の事?」

思いが口からはみ出ていたのだろう。それを聞き取った雪姫が首をかしげる。


私は少し恥ずかしく思いながらも続ける。

「あれは私の一撃を防いでこちらの足を砕きました。私の負けではないでしょうか?」

「あぁ、気づいてないかもしれないけど君の剣、私の脇腹を切ってたよ」

「それでもです」

「う〜ん……ちょっと適当に私に切り掛かってもらえる?」


私は言われた通り適当に斬りかかる。

と言っても手を抜いたわけではない。丁寧に基本はしっかりしたいい一撃だったと思う。


雪姫はいつのまにか構えていた刀でそれを受ける。




ーーーーーーーーー




音が、しなかった。

そして気づいたら私の首元には彼女の持つ刀が突きつけられていた。

そして私の刀は止まっていた。


何があったのか、なんとか追うことができた。


私の刀が彼女の刀に触れた瞬間、私の刀の動きが受け止められてその力が雪姫の力を上乗せされて返ってきたのだ。


理屈は簡単だ。

私も同じようなことはできるし、さっきの戦いでもやったと思う。


だが、ここまでの精度ではできない。


相手の力をほぼ100%吸収して相手にお返しするのは人間業ではない。

一番異常なのが受け止めた刀から音が一切ならないことであった。


「ほら、音が鳴らなかったでしょ?でも最初のは音が鳴ったし力を変換しきれずに無理やり前に向けたから足を蹴るだけになったんだよ。だから技自体は失敗で私の負け、でも戦い自体は私の勝ちだから引き分け、どう?納得した?」

「う〜……納得はしていません。それに、結局あなたの本気も見られずじまいですしね」

「あー、また来てくれるって約束してくれるなら見せてあげてもいいけど?」

「またですか?それは難しいかもしれません」

「どうしてさ」

「だって私、ここに迷い込んだだけでどこかも知りませんし」

「あ、そんなことも言ってたね。じゃあさ、ちょっと奥の部屋でお祈りでもしていけば?」

「お祈りですか?」

「うん。ここって一応神殿だからさ、女神像の前で祈っとけばここで生き返るよ」

「あ、私たちが生き返ることもご存知なんですね」

「まっ、私は特別だからね」


少しだけ悩んだが私はお言葉に甘えることにした。

私が死んだ場合、ヒメカがちゃんとついてくるのかが不安になったからだ。

私は案内されるがまま奥の部屋に行った。


そこには言われた通り大きな台座と一つの大きな女神像が設置してあった。

女神像はまるでこちらを見ているかのように微笑んだ顔のままそこに立っている。

私は恐る恐るそれに近づいて跪いた。


そして両手を組ませて祈ってみる。


『リスポーン地点をここに変更しますか?』

するとこんなものが出ていた。

私はYESと答える。

私は祈りの姿勢をやめて後ろに待っている雪姫を見た。


「どう?ここの女神様は美しいでしょ?」

「女神像ってどこも違うものなんですか?」

「違うよ。大陸東側は生命神族の女神像なんだけど、それぞれ違う見た目をしてるんだ」

「そうなんですね。ちなみに、西側は?」

「全部おんなじ男の神様」

「えっ゛なんでそんな差別的なことになっているのですか?」

「色々設定があるのさ。簡単に言えば人族と魔族の違い?」

「そうなんですね。というか設定って今……」

「さー、私の本気だっけ?くまちゃん待たせてるしさっきの部屋に戻ろう。見せてあげるよ!」



何やら露骨に話をそらされた気がする。

というかこの雪姫ちゃんえらく人間味が溢れているな。

なんていうか、今まで私が出会った神級AIも自我くらいはあったと思うけどここまでではなかった。

というかペラペラ喋るような奴は1人もいなかった。

ただ与えられた使命を全うしている感が半端なかったんだけど、この雪姫ちゃんはそんな感じがしない。


あ、まさかあの会社のAI技術がまた進化した?

それしかありえないな。

私はそう納得して先の部屋に戻った。


そこにはまだヒメカがお利口さんに座って待っていた。

「くぅ〜くぅ〜」

と歓声を送ってくれる。


私たちはそれなりに離れた距離でお互いが武器を取り出し構えた。

雪姫の武器はやっぱり刀。さっき借りたものは返して今は彼女の手に収まっている。


私は再び魔族の長剣を取り出して構えた。


「じゃあ行くよ」

「いつでもどうぞ」


私が「ぞ」を言い切った瞬間、雪姫は突撃してくる。

フェイントの一つもない真っ直ぐな直進。

私はその進行方向から体を外してタイミングを合わせて斬りつけようとした。

ステータスを戻したのかやばいほど速い突撃だったが距離が離れていたのが幸いして対処は容易だ。


そう思っていた時期が私にもありました。


さっきの突撃、実は突撃じゃなくて前進みたいです。

普通に足を止めて刀を振ってくる。

力も、速さもあって技も一級品。

やばいことこの上ない。私の脳が警報を鳴らしまくってーーーーーー


「あはっ、想像以上にやばいじゃない!」

「うわっ、雰囲気変わった?」


メーフラちゃん、全力モードです。

後先考えずに体に溜め込まれているエネルギーを使えと体に、ひいてはVRマシンに命令する。

私の剣は雪姫の刀を弾く。一撃、二撃、そして惨劇だ。

そう、惨劇。


たった二撃で耐久力に定評のある魔族の長剣が粉々に砕け散った。

私は逃げるように離れようとする。だが、足が動かなかった。

いつのまにか私の足は植物に捕らえられていた。


いつの間に!?全く気づかなかった。

驚くのもつかの間、雪姫がとどめの一撃に入る。


私は最後の抵抗として全力で殴りつける。雪姫の攻撃に合わせた一撃。

こちらの死は確定だろうが最後に一つだけでもーーーーーー


結論言えば、私の一撃はちゃんと雪姫に届いた。

だが、彼女に痛痒を与えることはなかった。


「あはっ、強すぎ」

「そりゃあ、神様ですから」


私のHPはその一撃で全損して意識が暗転した。

そして気づいた時にはーーーーーーーー




「さっきの女神像……」

「くぅ〜」



私は女神像の前の台座で寝ていてお腹の上にはヒメカがいた。

何もできない、文字通りの完敗だった。


「勝負にならない、と初めにおっしゃってましたが、言葉通りでしたね」



私は負けの悔しさを紛らわすためにそう呟いた。

そしてーーーーーーーー


『フレンド申請:雪姫』

『承認/拒否』



「ーーーーーーえ?」


フレンド申請が届いた。

ちょっ、雪姫ちゃんNPCでしょ!?ちょっとおおおおお!?

これどういうこと!?



誰か教えてええええええええ!!



私の魂の叫びは誰にも届かなかった。



雪姫編はとりあえずここで区切って次回は平常運行。

夏の最後のイベント編、およびレーナ編に参ります。


Q、ボスまとめはいる

A、じゃあ明日までに今までのボスまとめを投稿していきます。


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