表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/95

人形神の呪いと槍のリベンジ

ゼルダクリアしたのでやっと更新

色々感想はあるけどなんやかんやでリーバルさんが結構好きです

(わかる人いるかな?)



あの日、あの女に負けた日からずっと首元に違和感を感じる。

それはゲームの中での話だけではなく現実世界にいるときにさえあるものだ。


何か、窮屈な感じ。


苦しくてどう、というわけではない。

しかしどうしてもこの違和感が拭えない。気持ち悪い。

あの日、人形の腕に絞め殺されてからずっとこうだ。

原因はーーーーーーーーーおおよその想像はつく。

これは呪いだ。

あの女、メーフラというやつが俺にかけてきた呪いに違いない。

だからきっとあいつを倒すことができれば、この呪いも解けるはずだ。


俺は最近癖付いてきた自分の首元を触るという動作をしながらそう考える。

メーフラを倒す。


言葉にするのは簡単なことだ。

しかしそれを実現するにはそれなりに困難を極めそうだった。


あいつはボスプレイヤー、つまりステータス的な意味では自分より優れているだろう。

それは多少のレベル差では覆せるレベルではないと想像はできた。


それに加えて単純な技量でも負けている可能性が高かった。


思えば、初めてあいつに負けたとき俺は何もできなかった。

あれはそう、『THE・刺客』の世界で自分より格上と戦ったときと同じ感覚だった。

メーフラは少なくとも王級中位、もしかしたら帝級はあるかもしれない。


もしそうであれば俺に勝ち目はない。


どうする…どうする…どうする…


あぁ、そうだ。


何も俺1人でやる必要なんてないじゃないか。

あいつはボスプレイヤー、それはプレイヤー3人分の枠を取るらしい。

となれば、3人で襲いかかっても別に卑怯ではない。

いや、6人集めても卑怯とは言われないだろう。


しかし、もし相手が帝級だった場合有象無象をいくら集めても意味はない。

あれは素人を1000人集めても傷一つつけられない化け物の別称だ。

現にあのイベント中にはサポート付きとはいえ人族の軍勢に対してたった1人で前線を張っていたという話もある。



となれば、集めるメンバーは少数精鋭のほうがいいだろう。

少なくとも俺ーーーー聖級レベルは欲しいところだ。

しかし残念なことにTHEプレイヤーは自分たちの故郷か刺客の世界からほとんど出てこない。

出てくるのは俺みたいなーーーーーーーー






…………とにかく、そういうことがあってこのMOHの世界にはあの世界の住人はほとんどいない。

そして、THEシリーズに触れずに聖級以上ある人間はほとんど存在しない。

つまるところ、連絡を取るべき人間は限られているのだ。

俺はフレンドリストからとある2人に日時と集合場所を書いたメールを送って今日はログアウトすることにした。







それから2日後の正午、俺たちは人族のホームタウン「コスモール」にある喫茶店で落ち合った。


「で?急に俺たちを呼び付けて何の用だよ。このメンバーってことは何かボスでも狩りに行くのか?」

全員が集合して早々、俺様系で赤い鎧の男ーーーアークが俺に向かって声を上げる。

こいつはこの世界で数少ない元刺客プレイヤーだ。

その実力は悔しいが俺よりは上だろう。

しかし実際にはそこまで差はないとも思っている。

何かのきっかけで簡単にひっくり返ってしまう程度の差だ。


「そうよ。時間と場所だけ書いたメール送りつけられても何がしたいのか全くわからないわ。ちょっとは先んじて情報をよこしなさいよ!」


強気に出てくるこの女はアカネ、おそらく刺客プレイヤーではないがそれでもかなりの技量を持つプレイヤーだ。

武器は二刀短剣。

軽やかな動きで相手を翻弄しながら一方的に攻撃することが得意なやつだ。


やり合えば負けはしないだろうが、それなりに苦戦を強いられそうだと感じたことがある。


彼女は少し不機嫌そうだった。



「今日呼んだのは他でもない。とあるプレイヤーを倒すのに協力して欲しいんだ」

「はぁ?あんた私たちを呼びつけておいてやることがPKの真似事?ふざけてんの?私はやらないわよ!」


アカネは目を尖らせて俺を睨みつける。

あぁ、ダメ元で呼んでみたけどこいつはダメそうだな。

俺が首をさすりながらそう考えているとアカネは黙った俺に何を感じ取ったのかさっさと出て行ってしまう。


アークは「あ〜あ、」といった様子でそれを見るだけだ。


くそっ、あいつがいてくれれば少しは楽になるし勝率も高くなりそうだったんだけどな。

仕方ない。最悪、アークだけでも協力してもらわないとな。

曲がりなりにもこいつは人族最強と謳われているプレイヤーだ。

最近ではたまに出没するというピエロと槍使いのコンビを一番と推す奴もいるらしいが、そいつらは2人組だ。

きっとタイマン性能ならアークが人族一だろうと俺は思っている。


「行っちまったな。ま、今回はお前が悪いってことで」

「やっぱりダメだったな。ま、お前が協力してくれればいいさ。PK、つまりは狙うのは同じプレイヤーだけど、お前にそんな抵抗はないよな?」

「いや、抵抗はあるよ。俺、一応クリーンなプレイヤーだぜ?」

「あぁ、そこは心配いらない。狙うのは魔族プレイヤー。つまり襲ってもレッドにはならない」

「あ、そう。で?誰を狙うんだ?俺たちを呼んだってことはそれなりに強い相手と戦うんだろ?」



あぁ、やっぱりこいつは刺客プレイヤーだな。

戦闘狂と言い換えてもいいかもしれない。いや、こいつの場合は強いやつと戦いたいわけではなく、気持ちよく勝ちたいだけで自分より強い敵とは戦いたくないんだろうがな。


俺はアークに協力の意思が見られたのを確認して今回のターゲットの名前を出した。


「よかった。協力してくれるか。今回倒したいのは「メーフラ」って名前のプレイヤーなんだが、知ってるか?」

「あ、俺も抜けるわ」

「はぁ!?おまっ、なんで?」


敵の名前を出した瞬間のアークの一抜けただ。

この場合アカネが一だからアークは二か?

いや、そんなことはどうでもいい。問題はどうしてこいつが急に手のひらを返してしまったのかということだ。


俺はアークに強く問い詰めた。


すると帰ってきたのは次の答えだった。


「俺たちの世界の神様、剣神アスタリスクがさ、そいつを探してたっていうのを聞いたんだよ。きっとあいつは剣神にとって重要な何かなんだ。下手に手を出しても絶対いい結果は待ってないって」

「でも、お前もこいつに負けたんだろ!?悔しくはないのか!?」

「はぁ?悔しいは悔しいけどんなことどうでもいだろ?確かに俺は負けたさ。だが一々そんな小さいことを言う俺様じゃねえんだよ。つーか勝てる見込みがない相手に突っ込むのは馬鹿のすることだ。そんな馬鹿、あの世界の住人だけで十分だ」


アークはそうきっぱりと言い切った。

それは本心からの言葉だと一瞬でわかるものだった。


「お前は、俺と2人じゃあの女を倒せねぇって言いたいのか?」

「ああ無理だな。俺様が2人いたらわかんねえかもしれねえが少なくともお前とは無理だ」

「はっ、言ってくれるぜ。お前と俺、さほど差があるようには見えねえんだけどなぁ」

「馬鹿かお前。もっと現実を見ろ。今のお前、正直騎士団長級にすら負けそうなほどよわっちく見えるぜ。じゃっ、そう言うことで俺は今回はパスだな」



アークも、出て行ってしまった。

俺はテーブルに1人付いて彼の後ろ姿を呆然と見ていた。

俺の頭の中には去り際に言われた言葉の一部がぐるぐると回り続ける。

俺が、騎士団長級にすら劣るだと?

ふざけるな!!!

俺はまぎれもない聖級だ!俺は天才だ!

あんな雑魚どもと一緒にするんじゃねえ!!くそっ、もうあんなやつに頼らねえ。


そうだ。俺1人でもやれるってことをあの腰抜けどもに見せつけてやる!!

俺は店を出てすぐにあの女の居場所を探った。


こういう時、掲示板は本当に役に立つ。

昨今、情報モラルがどうだとかよく言われているが大昔の人間は言ったんだよ。

『人の口に戸はたてられない』ってな。

多くの人間が集まるMMOの世界で、全ての人間がモラルを持った発言をすることはない。


中には平気で他人のSSを投稿する馬鹿だっているんだ。


あの女は多少だが有名なプレイヤーだ。

目撃者がいれば書き込みがあり、それでどこらへんにいるのか絞り込むことなど容易だ。

俺は掲示板の情報を漁っていく。


そして少しずつではあるがあの女の居場所を絞り込め、そしてついには突き止めることに成功した。


俺はその日はその場所の近くに行きログアウトをした。

決戦は明日だ。















翌日、俺はアイテムインベントリから一本の槍を取り出す。

それは『飛竜槍バラガレム』という、ワイバーンの素材を使って作られる武器だ。

武器としての性能は俺の持っているものの中で頭一つ抜けている。

そして防具も見た目は気にせずとにかく性能の高いものを選んだ。

結果、それなりに動きやすくそれなりに硬い軽装ちっくな装いになる。



装備を整えた俺はあの女が俺の目の前に現れるのを隠れて待った。


おそらくだが、俺では正面から戦っても勝てない。

だから不意をついて一気に決める。

いくらボスプレイヤーであっても大量のスキルを一瞬で吐き切って攻撃すればそのHPを削りきることはできるはずだ。


俺はその時を待つ。






ついにあの女、メーフラが現れる。

あいつは体の前に小さなクマを抱きかかえ今は両手が使えない状態だった。

どうやら、運は俺の味方をしているみたいだ。

待ってろよ。今からその子グマごとお前を貫いてやるからよ。


槍を持つ手に力が入る。


もう少し、もう少し待ってからだ。

はやる気持ちを抑えて俺は必殺の時を待つ。この位置は少しだけ遠く不意を打つには不適切だった。



根気強く待ち続けてあの女が間抜けにも俺の潜伏している場所に近づいてくる。


くくくっ、悪いな。

こちとらお前の進行方向を昨日から予測して隠れてんだ。

今回は俺の戦略勝ちってことで納得してくれや。



「おう、久しぶりくそ女。あの時の借り、返しに来たぜ!!」

俺は岩陰から飛び出しメーフラに襲いかかった。


【電光突き】【五月雨突き】【致命突き】【龍槍】【流星槍】【フレアストライク】【岩砕き】

その他諸々の多種多様なスキルを俺は次々と繰り出した。


「いきなり出てきてくそ女と呼ばれると傷つきますね……」

「黙れ!早く貫かれて死ね!」

「嫌ですよ。私たちのピクニックを邪魔しないでください」



だが、当たらない。

この女はスキルによって補助を受けた俺の動きを全く問題にせずにクマを抱きかかえたまま体捌きとステップだけで回避しやがる。

くそがっ!!

この女もだが女の腕の中でまるで遊園地のアトラクションに乗っているかのように楽しそうにしてるクマも気に食わねえ。


俺はやけになってスキルを連発した。


このスキルというものは正直言って俺からしてもお粗末なものだとは思う。


はじめの一回はいいのだ。

予想のできない、時には人のできないような動きをして奇襲を仕掛けられる。

だが、スキル自体はプログラミングされた決まった動きだ。


同じものを連発するといつかはそのスキルの隙を見つけられて狙われるだけだ。





それは、俺が持てる攻撃スキルを一通り使用して2回目の【五月雨突き】を放った時だった。


「あ、それはもう見ました」

「くぅ〜♪」


【五月雨突き】は一瞬で4回槍を突き出す比較的隙の少ない技だ。

強いて言うなら技終わりに硬直があるくらいだが、それは他のスキルをつなげることで無理矢理無効化することだってできるため打ち得なスキルとすら言われているほどだ。



だが、この女はこともあろうことか槍の突き出しに合わせるように蹴りを放ってきやがった。

すらりと長く伸びた脚が4つの槍の軌跡をすり抜け俺のみぞおちに突き刺さり俺を少しだけ後退させる。


くっ、今のは効いたがまだだ!!



少し下がったが俺は再び前に出る。

逃げるなんて無様な真似は晒す気は無い。だが、熱くなる心とは対照的に頭は冷静だ。

ここでスキルを使うのはまずい。今のやりとりでそれだけは読み取れた。


だから俺はここからは自分の力で勝とうとした。


だが、全くもって攻撃が届かない。

まるで霞でもついてるかのように、当たりそうで当たらない。


「くぅ〜ん!」

くそっ、あのクマ煽ってきやがる。


「クソアマァ!!そのクマどうにかしやがれ!!」

「そう言われましても、今地面に下ろすと攻撃に当たって怪我しそうですし……」

「そのクソグマの命くらい安いもんだろうがよ!!」


「………はい?ヒメカの命が、安い、ですか?」

「そうだろうが!所詮そいつはNPC、死んだところで悲しむやつなんざーーーーー」

「黙ってもらえますか?」


俺の言葉は蹴りが口元に入ったことで止まってしまう。

代わりに底冷えするような冷たい声が辺りを支配する。


「ヒメカの命が、安い?」

「少なくとも、死んでもすぐ生き返るあなたよりは尊い命ですよ」

「悲しむやつがいない?」

「ヒメカにだって家族はいます。お子さん思いのいい親と、二匹のきょうだいがいます」



はじめは俺が攻撃をし続け、その合間に向こうが反撃するという戦いだった。

だが、気づけば俺はただ蹴られているだけになっていた。

槍を振ろうと構えても、手首を蹴り払われてまともに前に向けられない。

そいつを捉えようと顔を向けようとしても、側頭部を蹴られてろくに姿すら見させてもらえない。



気づけば俺の視界には地面しか映っていなかった。



「さぁ、早くヒメカに謝ってください。あなたのせいでこんなに悲しんでいます」

「きゅぅ〜ん」

「………」

「やっぱり、謝る気はありませんね」









俺は、踏み殺された。





















次に目に映ったのはある意味見慣れた風景。

コスモールにある大神殿の内装だった。

あぁ、そうか俺は死んだのか。そして生き返ったのか。


自分の負けを悟ったはいいがこれから何をすればいいのかわからない。

俺はただその場に突っ立っているだけだった。



「おう、ジャーグル。やっぱり負けて帰ってきたみてえだな」

「……アーク、か?」

「くくっ、あぁすまんすまん阿呆みたいな顔して立ってるだけなのがマジ面白くてな。まっ、今回のはいい勉強になったんじゃねえのか」


アークはそう言ったが俺は今回の戦いで学びとれたことはなかった。

無理矢理一つ挙げろと言われたらあの女があの子グマをえらく気に入っているくらいだ。


俺が不思議そうな顔をしてアークの方を見ると彼はやれやれと言った様子で背を向けて出口の方に向けて歩き始めた。

そして途中で首をこちらに向けて愉快そうに笑いながら言った。


「触らぬ神に祟りなしってな」


アークはそれだけ言い残して大神殿から出て行ってしまった。

俺はその言葉の意味をうまく処理できなくてしばらくの間そこでそのまま立っていた。





というわけでアークは負けたことをあまり気にしていないけどジャーグルはずるずる引きずっています。

ちなみに、今後しばらく彼らは出てきません。


Q、すまないさんにしかみえなくてすまない

A、すまない………などというつもりはない!!


Q、ダームさんがボスになる可能性は?(軍勢の主的な意味で)

A、イベント中は指揮とってたし今後戦争系のイベントが来ればまた魔族の頭として活躍するよ



Q、アスタリスクってゆうなま?

A、アスタリスクというキャラを書くに当たって根幹とさせていただいたのはみなさんの想像通り「勇者のくせになまいきだ3D」のラスボス「****」です。

元ネタのこのキャラを一言で表すなら「化け物」です。もし対峙するときは最大限の準備を忘れずに〜


ブックマーク、pt評価をよろしくお願いします。

感想も待ってるよー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

doll_banner.jpg
お姉ちゃんの頑張りが書籍化しました。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ