彼
短くてすまない
地下墓地から出たあたりでダームさんが思い出したかのように声を上げる。
「あ、そうだ。みんなに今回の協力してくれたお礼を用意していたんだった」
ダームさんはそう言ってインベントリを開いて何やら操作を始める。
彼の背中には綺麗な体になったばかりのラストちゃんがくっついていてそれを後ろから覗き込むように見ていた。
そして少しした頃、彼はいくつかのアイテムを物質化させて私たちに渡し始めた。
「まずはドゲザさんには僕が手に入れられる中で最高レベルの麻痺薬だ。これでいいんだよね?」
「おう、強力な毒ならなんでもオッケーだ」
「そしてエターシャさんには回復効果がアップする杖を進呈しよう」
「おー、ありがとねー」
「そして教官さんには物理耐久がアップする鎧を」
「うむ。大切にさせてもらおう」
ドゲザさんたちにはあらかじめ話が通っていたこともありそれぞれ専用アイテムっぽいものをもらっていた。
だが私たちは臨時戦力だ。
何がもらえるのかはダームさんのセンス次第だ。
私は少しだけワクワクしながら何をもらえるのかと待ち構えた。
「そしてガトくんだったね。君はシールダーみたいだしこの不死者の大盾をあげよう」
「あ、ありがとうございます」
「そしてそのパートナーの君にはこれだ!魔法の範囲が少しだけ拡張される腕輪」
「おー、これでメーフラちゃんにも魔法が当たりやすくなるね!」
どうやらダームさんのインベントリにはそれなりにレアなアイテムが入っているらしくて次々と高価そうなアイテムが出てくる。
ガトは素直に喜び、フセンちゃんは私討伐にまた一歩近づいたとはしゃぐ。
ダームさん、やってくれましたね。
そして残りは私、アスタリスク、リンの3人だけになった。
ダームさんはまず真っ先に私の方に近づいてくる。
「あ、残りの2人にはメーフラさんが渡してあげてください」
「その必要はあるのですか?ご自分で渡されたら?」
「いや、あの2人は見た感じそっちの方が喜びそうだし……あ、メーフラさんにはこれを」
そう言われて私がもらったのは黒に金色で刺繍の施されたマントだった。
私はそれに【鑑定】をかけて詳細を確認する。
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星外套デルタテロス
レア度:伝説級
巨大な3つの力の集合体
物理防御力+50
魔法防御力+100
ダメージ反射2%
闇属性半減
ユニークスキル:トライガード
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………なんかすんごいやばいアイテムもらったんだけど。
「あの、ダームさん、これいいんですか?」
「ええ、もらってください。今回の勝利はメーフラさんがいないとなかったものだし、そのアイテムならまだ入手可能だからね」
「そうですか。でしたら遠慮なくもらっておきますね」
「あ、それでこっちがアスタリスクさんに、こっちをリンさんに持って行ってあげてください」
「わかりました。ダームさんの感謝の気持ちもちゃんと伝えてきますね」
「それは……ほどほどね」
私はダームさんから2つの指輪を受け取りまずはアスタリスクさんの方へ向かった。
「………メーフラ、何か用か?」
「今回手伝ってくれたお礼です。受け取ってください」
「………これは………いや、でも、いいのか?」
「はい」
「………そうか。お前にそういう気持ちがないことはわかっているが………大切にする」
「?はい、大切にしてあげるとダームさんも喜ぶと思いますよ。なんやかんや、とっても感謝していましたからね」
アスタリスクさんは私がその指輪を手渡すと早速自分の手に持っていく。
彼の右手にもたれた指輪は少しの葛藤の後中指にはめられた。
それを見届けた私は次はリンさんに指輪を持っていく。
「リンさん、これ、今回のお礼みたいです」
「なぬ!?め、メーフラ様から………指輪!!これはもしや私と添い遂げるというプロポー………ごほんっ。ありがとう大切にするよ」
「お礼はダームさんにしてくださいね?これ、私が用意したものじゃないですから」
「うむ、2人を引き合わせてくれたダームとやらには今度感謝の気持ちを伝えておくとするよ」
リンさんもアスタリスクさんと同じようにすぐに指輪を装備する。
しかし彼女は一切迷うことなく指輪をつける指を決めたようだ。リンさんは薬指に指輪をつける。
指輪に満足したのかリンさんはとっても笑顔だ。
ダームさんはアイテムを全て配り終えた頃、それに異議を唱えるものがいた。
「ねぇねぇダーム、私には?」
「え、ラストには………」
彼の背中に乗っかっている少女が期待の眼差しでダームさんを見る。
ダームさんはまさか相棒であるNPCにアイテムを要求されると思っていなかったのか困惑顔である。
少したじろいだ後、彼はインベントリを漁り始める。
「ねぇねぇ、私もあの人たちと一緒で指輪がいい」
「あの、ちょっと待ってね。指輪………残ってたかなぁ……ブツブツ…あ、あった。確かこれは『聖女の指輪』か……ラストはどれかで言えば不死者で聖女って感じじゃないけど……ま、いっか。ほれ、ラストお前の分だよ」
「わーい。ダーム大好きー!」
「うっ、調子狂うなぁ」
無邪気な子は可愛いなー。
欲しいものをもらってご満悦なラスト。彼女も例に漏れずすぐに指輪をつけた。
心なしか首に巻かれている目の首輪も嬉しそうだ。
ラストが喜んでいるのを見たダームさんはもう一つ気がついてインベントリからアイテムを取り出した。
「ラストにあるならその子にもないとダメだよね。なんてったって今回とどめの一撃を与えた子なんだから」
取り出したのはフルーツの盛り合わせ。
りんご、バナナ、洋梨にオレンジといった色とりどりの果物が一つのバスケットに詰め込まれたものを私に手渡してくる。
先の台詞からしてこれはヒメカのものだろう。
私は今はドレスのスカートの中に入って私の脚にしがみついて遊んでいるヒメカを呼び出す。
するとヒメカはスカートの裾を脚があまり見えない程度にまくって頭を出す。
そしてフルーツバスケットを見てそれを自分のものだと知るとすぐに飛び出してきた。
ダームさんからカゴを受け取りよたよたとしながら私に何かを要求してくる。
「くぅ、くぅ!!」
「ヒメカ?」
「くぅ、きゅぅぅん」
「あ、蜂の巣もいる?」
「くぅ♪」
私はインベントリから何時ぞやもらった蜂の巣を取り出してバスケットの上に乗せる。
するとヒメカは嬉しそうにはしゃぎ始めた。ヒメカが地べたに座って蜂の巣に手を突っ込み始めたので私たちもみんな座って雑談を始める。
途中、エターシャさんがラストちゃんを触ろうと追いかけ回し始めてその場に明るい笑い声が聞こえる。
ラストちゃんは必死に逃げながらダームさんに助けをと叫ぶ。
当の本人はその光景を穏やかな眼差しで笑みを浮かべながら見ているのだった。
「ちょっとダームぅ、この人何とかして!!」
「あはは……いいじゃないか、そういうコミュニケーションも大切だよ」
「そう言わないで!」
「そだなーじゃあ、【クリエイトホール】ほれ」
「きゃっ!!足元ズボッて、ちょっ、今タンマ!」
「うへへぇ〜、ラストちゃん、もう逃げられないよ〜」
「あはは。ラスト、そこにいるお姉さんに存分に遊んでもらうといいよ」
そうやって笑うダームさんは本当に……嬉しそうだった。
前回ダームさん編は終わりといったが、あれは嘘だ。
報酬の分配があったの忘れてたからね。
というか、ダームさんの話の評判が思ってたより良くて作者びっくりですよ
Q、プロポーズの言葉は「あなたに一生憑いて行きます」かな?
A、これかなり好き
Q、一番やばいやつはレーナちゃん?
A、違います
Q、コンマイ語かよ
A、ヒメカの裁定の話ですね。あのカードゲームは同じ書き方でも裁定違ってくるときがあるのがある意味面白いですよねー(白目)
破壊とリクルートは同時処理のため自身を対象にできます……は納得いかなかったなぁ
Q、気になるキャラといえば、ジャーグルとアークの人族組とか?
A、まさかそこきますか……アークの話とか用意してなかったなぁ……
ということで考えてきました。次回はアーク&ジャーグルさんの1、2話で完結する話にします。
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