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のうしぷれー

前半の解説はよく分からなかったら飛ばしていただいても結構です。

作者も書いてて何言ってるんだろう自分となってたので………


「さぁ、続きをやろっか」


その言葉を聞いて一番驚いていたのは彼女の弟であるガトだった。

メーフラの口調はいつも丁寧だ。

しかし初めからそうだったわけでは無い。


ガトにはいつからだったか明確には思い出せないが、少なくとも彼女が中学1年生くらいの時はまだ自然な口調で話していたはずだった。

それが今、戻ってきたのだ。


ガトは姉が戻ってきたような気がして少しだけ驚いた。

メーフラはいつの間にか振り抜いていた剣を引き戻して低く構えた。


それを見ていたリンはもう勝負が終わったとばかりに警戒を解いてヒメカを撫で始めた。


「時に弟君、君は王級以上とそれ未満の人間の差について気づいただろうか?」

そして何気なしにガトに話しかけた。


「さぁ、わかりません。ただ、聖級の人が王級以上は人じゃ無いってだけ言っているのを聞いたことがあります」

「何?ただ強さが違うだけじゃ無いの?」

「ふむ、人間じゃ無い、か。まぁ的を射た答えではあるな。そうだ、王級以上はある意味人間として見ない方が正しい」

「それは……どういうことでしょうか?」

「実はな、聖級と王級の技量的な差は他の階級に比べて少ないんだ。しかし逆にそこには絶対的な差がある、その理由は何か。その答えは力の解放にある」

「力の解放?ってなんなのリンねぇ」

「人は自身を壊さないために出せる力を制限している、という話は有名だろう。王級になるということはその制限をある程度自身で外せるようになるということだ。つまり、人としての防衛本能を捨て去り化け物と化すことができるということだな。そして帝級になればもっとうまく力を使えるようになり、神級は人体の全力を余すことなく出すことができる。これが私たちの強さの秘密だ。そもそも、そこいらの人間とは操縦する機体のスペックが違うと考えるべきなのだ」

「でもそれって動くたびに体を壊すことになりませんか?」

「そうだな。力を卸す術も知らないのに人体の全力を出し尽くせば反動でボロボロになるだろう。だが私たちはそれらの力を技量にて抑えつけられる。つまり神級と呼ばれる人間は文字通りの全力を体を壊さずに使役できるのだ。でなければ帝級を同時に相手取るなどできん」

「じゃあ、姉ちゃんも………」

「そしてここからが本題になるのだがな」

「それって?」

「メーフラ様はこの枷を自由に外せないのだ」

「えっ、でもそれじゃあ話が合わないじゃないですか」

「どうしてそう思う?」

「だって、身体能力が他と違うから強いって話ですよね?」

「違うぞ。大切なのは身体能力を抑えなくてもいいほどの技量を持っているということだ。メーフラ様はその技量が他より高い………が、1つ問題があってだな」

「問題?」

「そう、、、なんというか、、、メーフラ様はやりすぎたのだ。私たち普通の神級は全ての力を使えると言ってもそれは事実ではない。実はな、流石にここだけはどうしようもなかったのだ」


リンがそう言って指差したのは自分のこめかみの位置。

それが何を刺しているのかは直接言わなくても聞き手の2人には伝わっていた。


「メーフラ様は私たちと違い脳まである程度誤魔化せる………いや、意図的に脳から命令を出せると言ったほうがいいか。しかしそれは危険すぎたのだろうな。結果、メーフラ様は追い詰められないと全力で戦えなくなってしまったのだ。と言っても、通常時でも神級にふさわしい実力はあるがな。まぁ、今私たちが見せられているのは裏技みたいなものだ」


リンはそう言ってカラカラと笑い戦いに視線を向けた。

人が自分で動かすべきではない領域、そこに手をかける禁忌を犯して手に入れた力がどれほどのものなのか、そしてその代償として何を失うのか、それを見せつけてくれる戦いが今始まった。



先に動いたのはメーフラだった。


この戦い、今まで先に動くことのなかった彼女だが、敵方が警戒して足が止まった為打って出ることにしたのだ。

狙いはライス。

特に大した狙いはなく、ただ一番近かったからというだけの理由だ。


ライスは迎撃に走る。


直進してくるメーフラに向けて神速の三連突きをお見舞いした。

だがそれはほぼ同時に鳴り響いた金属音によって防がれたのだとわかる。

ライスは舌打ちをしながら今度は迎撃ではなく防御をとった。

急所を守り、隙を小さくして反撃の機会を窺う。

それは先ほどまでメーフラがやっていたはずの行動だった。


「こりゃあやべえ、想像以上だったわ」

「うふふ」


自身を守りながらこぼした感嘆の声は小さな微笑みとなって帰ってくる。

メーフラはこのままライスを攻め崩すつもりだった。

だが、そうは問屋が卸さない。


横合いからピエロ姿の男が飛び込んできたのだ。


テルはライスに集中して攻撃している今がチャンスだと思い飛び込んだ。

最悪、外しても先ほどまでの戦いを見るに反撃をいなすくらいはできると考えていた。


「………あの馬鹿」


アスタリスクはそれを冷めた目で見ながらテルのことを助けるために動き出す。

彼はこのままいけば反撃の一刀がテルの体に突き刺さることを予見していた。それは今まで幾度となく矛を交えてきた彼だからこそ断言できる未来だ。


アスタリスクは3人同時になら本気モードのメーフラであっても戦えると踏み、そのためにはここでテルに落ちてもらうのはダメだと考え助けに出た。

彼はテルとは別に攻撃を仕掛けた。

これなら、防御はされても反撃までは手が回らない。


アスタリスクは彼が『最率』と呼ばれるきっかけとなった剣を振る。

メーフラは両脇から襲いかかってくる2つに向かい強引に剣を叩きつけた。

ここで彼女を恐ろしいと感じるのは、その音がほぼ同時に聞こえるからだろう。

斧を弾かれたテルは危機を察知し後ろに下がった。


「アスっち!!今のどういうことだい!?」

「………見ての通り、お前の武器には速度が足りなさすぎる。あれじゃあこの状態のメーフラに弾かれるだけだ。それに、俺の剣もあれには意味がない」


先のやりとり、アスタリスクの剣も弾かれていた。

これは彼にとって自身の負けを示すことである。



『最率』のアスタリスク。


その異名は彼の剣の道をそのまま表した言葉である。

彼は強くなりたいと思った時、その剣から無駄を省くことを考えた。

最も効率よく敵を倒す方法を考えた。

その結果彼がたどり着いたのは『剣を打ち合う』という無駄。

アスタリスクは結果に最も効率よくたどりつくためにその無駄を捨てた。


彼の剣は、敵の剣に接触しなくなった。


別に透過しているわけではない。

ただ単純に、その技量と読みを持って敵の剣を全て避けているだけだ。

それも、『剣筋を曲げる無駄』をできるだけ省き最小限の動き、剣と剣が触れていると錯覚するほどの小さな隙間だけ残して。


彼にとって、敵の剣を避けられずに弾き返されるということは歩んできた道の敗北と同義であった。

アスタリスクは初めてメーフラのこれとかち合った時、彼女の剣に『最速』と名付けた。


『神速』ではなく『最速』

神の如き速さではなく、最も速い。


それは神級の自分ですら追いつけることのない速度という意味であった。

アスタリスクとは違い、メーフラの剣はまっすぐ無駄を省いた剣であった。言ってしまえばただ、速いだけの剣だ。

しかしその速度は神が目で追うことすら許さない。



先ほど、テルの攻撃が弾かれたのにも訳があった。

メーフラにはテルの攻撃に馬鹿正直にテルの斧に剣をかち合わせる理由はない。

彼女は斧を横から叩くことで力の向きをでたらめにしただけに過ぎないのだ。


「クソっ、流石にこりゃやべえだろ。剣速が人間じゃねえよ」

3人が力を合わせてどうにか攻撃をしのぎながらライスが悪態を吐く。

言葉に対して顔が笑っていたのはこの戦いを楽しいと思っているからだろう。


「………女の体というのは、柔らかいんだ」

それに対してアスタリスクはそう返した。仲間たちは一瞬、何を言っているのかわからなかった。


「アスっち、こういう時にそういう話をするのはやめようよ。そんな余裕ないよ」

「アスタリスク、お前がこいつをどう思っているかはわかったが流石にデリカシーがないぞ」

「………そういう話ではない」


彼が伝えたかったのは女性と男性の体の作りの違いの話だ。


女性の体は男性の体に比べて丸みを帯びており関節などが柔らかい。

その為体のしなりや回転などを使った加速は男性より優れているのだ。

メーフラはその優位をフルに使い最速を手にしている。


言葉足らずであったが、ポツポツとそのことを1つずつ伝えたアスタリスク。

それに対しても帰ってきたのは疑問の声だった。


「でも、だからといってこの速度はおかしいだろう?こっちの攻撃は出し始めで全部打ち落とされてるってどういうことだよ!」

「ふふっ、この技は【落陽華】という技です。使える相手にはとことん強い技ですよ」



【落陽華】はメーフラが自分の優位に気づいた時に使い始めた技だ。

これは相手の攻撃に合わせてこちらの最速を叩きつけるだけの力技。相手の攻撃に速度が乗る前に速度の乗り切った一撃で弾き飛ばしてしまおうというコンセプトだ。

単純な技だが、単純だけにその効果は絶大だ。



しかし確かにライスの言うことも一理あった。

ただ女性の体の柔らかさを使い速度を出しているにしてもここまでの差が出るのはおかしかった。


その理由は、先ほどリンが説明していた内容に入っていた。






人間の脳には体に命令を下す機能がある。


これは何もどう動くかと言うことだけではなく、どのくらいエネルギーを消費して動くのかと言うことも含まれるのだ。

ここをある程度自由に使えるメーフラは体が許す限りのエネルギーを使い筋肉を動かすことができる。


本来ならこんな使い方をすれば神級であろうと一瞬で体がダメになるだろう。

だが、ここは幸いにしてゲームの中。

いくら無茶な体の動かし方をしようと筋肉が壊れて使えなくなることはなかった。



しかし、この戦い方には明確な弱点がある。


言うまでもないが体力消費が激しすぎて長期戦ができないことだ。

それは人形族のスキル【人形の体】があってもどうしようもない、現実の体の疲労。

脳の機能の一部を使う戦い方は脳を機械に繋げるVR装置との相性は抜群であったが、それと同時にやりすぎを抑止できない諸刃の剣であった。

だからメーフラは多少無理にでも攻めて目の前の敵を葬り去る。






戦いは、さほど長続きしなかった。


はじめに脱落したのはピエロ姿のテル。


斧という取り回しが重い武器を持つ彼は、その速度に対応できずに刈り取られる。


次に落ちたのは神級1の常識人 (自称)のライス。

テルが落ち、戦線が崩壊して攻撃に耐えられなくなったのだ。



そして最後はーーーーーーーーーーーー



「はぁ、はぁ、あなたで、最後だね」

「………あぁ、決着をつけよう」


ここまできたらメーフラにも余裕がなくなっていた。

疲労無効のはずのメーフラは現実の体が疲弊しきっている為少しだるく感じていた。

だが、最後まで戦い抜くという信念とみんなからの応援を胸に『最率』の勇者と対峙する。



対するアスタリスクもまだ諦めてはいなかった。


仲間の力に頼ったとはいえ、ここまでメーフラを追い詰めたのは初めてのことだった。

最後まで、諦めずに己の全てをぶつけたいと思っていた。

確かに、『最率』は『最速』に負けたかもしれないが、まだアスタリスクはメーフラに負けたわけではないのだ。





メーフラは大上段に剣を構える。

本来なら神級同士の戦いでこんな大振りをしますよという構えは見せない。

だが、視認できない速度で剣を振り下ろせるメーフラならこの行動も割とアリなものであった。


アスタリスクは対抗するように下段からの切り上げを見せるように構えた。




先に動いたのはアスタリスクだ。

剣の速さで負けているなら、出の速さで負けていてはいけないと考えたからだ。

メーフラが動いたのはそのすぐ後だった。


振り下ろしと切り上げ、上から降りてくるものと、下から這い上がるもの。

2人の関係を示唆しているようなそのぶつかり合いは、静かにその雌雄を決した。


アスタリスクはミた。

その時の剣筋の美しさを。ただまっすぐ、目的を達成するために一度も曲げない力強さを。

その剣閃の輝きは初めて見たときと同じもの、彼はあの日から、いや、初めから目の前の女性が真っ直ぐ進んできたことを感じ取った。

「………あぁ、、やっぱりお前の剣は………・・しい」













アスタリスクの剣はメーフラの脇腹に刺さっていた。











そして、メーフラの剣はアスタリスクの体を通り抜けて振り切られていた。


それを認識したアスタリスクは負けを認め脱力した。

張り詰めていたものがなくなった徒労感に彼の体は耐えきれずにその場にどさりと倒れ込んだ。


メーフラはそれを見届けた後、剣をしまいその場に仰向けで寝っ転がった。


「………止めは、刺さないのか?」

「あれ?私の勝ちってことでいいんじゃないの?」

「………そうだな。お前の勝ちだ」


アスタリスクがまだここにいるということは彼のHPは全損していないということだ。

だが彼はそれがこの世界の法則ーーースキルの効果であることがわかっていた為それ以上足掻くことをしなかった。


彼のスキル欄には【不屈】という一度だけHPが0になる時1耐えるというスキルが入っていた。

いつ習得したかも覚えていないが、おそらく2人に色々連れまわされた時だろうと予想していた。



メーフラの勝利を見届けたガトたちは戦いの終わりを察知して倒れている2人に近づいた。


敵であったアスタリスクはともかくメーフラが倒れたまま起き上がらないことを心配そうに見る。


だが、そんなことは御構い無しにアスタリスクはメーフラに話しかけた。




「………なぁ、メーフラ」

「なに?」

「………」

「何か言いたいことがあるんじゃないの?」

「………頼みがある。聞いてくれ」

「内容にもよるね」

「………」



アスタリスクは一度呼吸を整えた。

ここから先の言葉は、今までの彼に縁のない言葉。

こういう時、どう言ったらいいのかが分からず、うまくできるか不安な言葉。


だが、言わねばならない。

もうこれ以上、自分の心を抑えつけるのも疲れてきたのだ。


一度唾を飲み、再度呼吸を整えてアスタリスクはその言葉を発した。





「………メーフラ、、、好きだ。結婚を前提に付き合ってほしい」



それはアスタリスクの人生初めての告白だった。



次話更新は明日にしよう。

きっと先が気になるはずだ………多分


Q、ステータスの必要性

A、ちゃんとあります。フセンが回避性能が高いはずなのにガトに守ってもらうのはAGIに一切振っていないからだとか、アルシャインの炎ダメージ、メーフラにそれなりにダメージが入っていたのはMND削ったからだとか、3人同時に相手して戦えているのはまだメーフラ側のAGIが高いからだとか、あからさまな書き方はしてないけど割とちょくちょくステータスが原因でそうなっている、ということは あります。

ちなみに、ヒメカのステータスは本当に意味のないものです。


Q、百合要素が中途半端

A、まぁ、一応そういう要素があるから注意喚起のためにタグ付けしているだけでそれメインじゃないからね


Q、メーフラさん本気モードですね!

A、多分発狂モードだぞこれ



追伸、この話で気づいた人もいるだろうけどアスタリスクさんはとあるキャラ作品のキャラを改造して使ってたりする。

………反省はしているけど、やりたかったんだよ!


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