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ある日の森の中


最強の姉を持つ男ガトは考える。

どうすればあの姉を倒すことができるのかと。


幸いにも彼の姉は強くはあるがゲームが得意というわけではない。

そのため本来なら触れることすら叶わない自分たちが攻撃を当てることを成功させることができた。


ガトは考える。


「やっぱりゲーム的に倒すしかないんだろうなぁ………でも…」

「でも?」

「あ、フセンさんおはようございます。ちょっと姉ちゃんをどうやって倒すか考えてた」

「それで、何かいい案は浮かんだの?」

「やっぱりゲームの法則が働いている場所で戦うしかないんだけど………」

「だけど?」

「姉ちゃん、よりにもよって人形なんだよなぁ………」

「人形だと何かまずいの?」

「人形だと…………弱点が少ない」

「弱点が?」

「例えば他の魔族、スライムだと攻撃力が低く魔法に弱い、バットだと耐久がない、シャドーだと光の下ではステータス半減、他にも色々な種族があってそれに対応した弱点が魔族には設定されているんだけど…………」

「人形の弱点って何があるの?」

「回復魔法が効かない、一部を除いて薬品無効………あと、平坦なステータス」


ガトはため息を吐く。

この微妙な弱点でどうやって今の実力差を埋めることができるかわからなかった。

彼は心の中で「なんだよ平坦なステータスって」と悪態を吐く。

これがもし特化型のステータスを持つ種族であったならガトもそこまで悲観的に見なかっただろう。

STRが高いだけなら自分はAGIを高めて回避率を上げればいい。

AGIが高いだけなら自分はVITを高めて攻撃を無視できるようになればいい。


そう考えていた時期が彼にもあった。

だが、現実は非情だ。

人形のステータスはどれも一様に伸びる。

よくて万能悪くて器用貧乏と呼ばれるステータスの型だった。

それに対してどう対策を立てていいかわからなかったのだ。


「はぁ………何か弱点が生えてこないかなぁ………」

ガトは賑やかな広場で再びため息をついた。
















第1回目のイベントが終わった次の日、私はいつものようにログインしてアイテムインベントリを開いた。

そう、まだイベントアイテムの報酬を全て確認していないのだ。


「え〜っと、確かもらったのは「フールギア」と「マギアギア」でしたっけ?」

私はインベントリからその2つのアイテムを物質化して手の上に乗せる。

それはギリギリ手に乗るくらいの大きさの歯車だった。

私はそれに対して【鑑定】を使用してアイテムの詳細を確認する。


えっと……確か人形専用のアイテムだったよね?



――――――――――――――――

装備:フールギア レア度 遺産レガシー


蛮族の道、愚かな心

STR+50%

VIT+35%

AGI+35%

DEX+5%

INT−100%

MND−30%

LUK−10%

――――――――――――――――

装備:マギアギア レア度 希少レア


魔法の道、賢き心

INT+50%

MND+50%

STR−80%

VIT−50%

AGI−45%

――――――――――――――――


ふむ、レア度遺産レガシーって初めて見た。

この世界のアイテム特有ユニークまでは割と見るけどそれ以上を今まであんまり見たことなかったんだよね。


これは装備品みたいだ。

どうやって装備するのかと色々調べたところこれは剣や盾と違いUI経由でしか装備できないみたい。

私は2つのアイテムを見比べてどちらを装備するかを考える。


…………


「レア度が高い方がきっと強いんですよね?」


私はフールギアを装備することに決めた。

そもそもマギアギアには言いたいことがある。


お前、私から物理攻撃奪ってどうするつもりだよ。

フレーバーテキストには賢き心とかなんとか書いてあるけど私にはそれを装備すること自体が賢い選択に思えないんだけど?


「………こちらはエターシャさんにでもあげましょうかね?」


そんなことを考えながらフールギア、セットオン!!

そしてすかさずステータス確認!!


――――――――――――――――


PN:メーフラ

種族 無慈悲な人形Type Ancient

裁縫士


LV 6


HP 24229

MP 490

STR 250

VIT 151

INT 0

MND 49

DEX 131

AGI 141

LUK 29

SP ー


――――――――――――


なんというか、随分と偏ったステータスになった。

これで私は物理型になったということでいいのかな?というかMPがすんごい減ってる。

多分INTやらMNDやらを参照してMPの数値出しているんだろうね。

スキルをばかすかうてなくなったよ。

まぁ、今までで一番使ったであろうスキルは【ギアアップ】とか【信念】とか常時発動型のやつばっかりだから気にすることはないけどね。


あ、でも確か裁縫スキルが一部MP使うんだよなぁ………

裁縫するときはギアを外す?

でもいちいち外すのも面倒だし裁縫は別にスキルはあくまで補助だから必須ってわけでもないしなぁ………その時になったら考えることにしよう。



「さて、確認も済みましたし今日からは人族の街の方に行かなきゃいけませんね!」


次のイベントが何かはまだ確認していないが次は弟と一緒に遊ぶことができるのだ。

あの2人をくっつけるということを忘れたわけではないがたまには私も混ぜて遊んでほしい。


ということで私はケイオールを出てずっと東にある人族の街に向かうことにした。

私は途中までは地図を見ながら忠実に道に沿って歩いた。

だがとある場所を前にした時、私の中の天使と悪魔が耳元で囁いてきた。


『ねぇ、あの森を突っ切っちまえば大幅ショートカットよ』

『いけません、前回それで地下墓地にたどり着いたことを忘れたのですか?』

『大丈夫だって、今回はただ真っ直ぐ進むだけ、ほら、簡単でしょ?』

『心を惑わされないでください。変なリスクを犯さなくてもこの道に沿って歩けばいずれたどり着きます!』

『でも、早く弟と遊びたいんだろう?』

『……………』



「よし、この森を突っ切れば大幅にショートカットできそうですね。ここを通りましょう」

森の中で何か面白いものでも拾っていけば堅護、喜んでくれるかな?

私は森の中に入って何か落ちていないか周りを見ながら歩く。


多分、これがいけなかったのだろう………






たった十分、現実の時間にすれば2分半で真っ直ぐ進んでいたつもりが脇道に逸れ始めた。


「ふん、ふふん、ふふ〜ん♪」

だが、そんなことに当時の私は気づかない。

ただただ森の中を歩く森ガールとして珍しいものを探しながら森の中をぐるぐるぐるぐる。


そういえば聞いたことがある。


迷子になる人の特徴としてすぐにいろんなものに目移りしてしまうことが原因になることがあると。



「おー、なんかすんごいきのこを見つけました!」

「こっちには美味しそうなきのみ!!」

「そして魔物!!」


私は森の中で現実世界では見ないものを多く見たことに感動してフラフラそれにつられて歩き始めた。

そんな時だった。


私の耳に何か硬いものを叩きつけ合うような音、それは規則的なものではなかった。

ぶっちゃけてしまえば戦闘音が聞こえてきたのだ。

私は特に理由もなくつられるようにその音のなる方へ進んだ。


そしてそこには予想通りというか戦う人と魔物の姿があった。

ただ少し予想と違っていたのは戦ってた人がプレイヤーではなくNPCだったことだろうか?


その人たちは大きな熊の魔物を前に4人で互いを補い合いながら戦っていた。



「次くるぞ、構えろ!!」

「俺が受け止めるから側面からの攻撃頼む!!」

「こっちは魔法で攻撃するわ!」

「ああ、だが………」

「わかってるわよ、火の魔法は使わない、でしょ!?」

「ベアー!!」


あ、あ、あの熊いま「ベアー」って鳴いた!?

すごい! かわいい!!

ずいぶん前にとあるゲームで「カメー」ってなく亀を見たことあったけどそれ以上に可愛い!!

あと声も可愛い。


私は木の陰に隠れてその戦いの行く末を見守っていた。


人間としてはここは人を応援するのが正しいのかもしれない。

でも、私は今は魔族だからね。

ここはくまさんを応援させてもらうよ。

がんばれ! くまさん!


「ベアー!」

私の応援は届いているのだろうか? くまさんは人間4人相手に必死に戦っている。

迫り来る氷の槍をベアクローで叩き落とし、横から斬りかかる男を口を開けて迎え撃つ。


前で戦線を支える男には容赦のないベアパンチだ!

私はその光景を見ながら心の中で「いけっ!」「そこだ!」と声を上げる。

実際にあげないのは戦いに集中してもらいたいという配慮からだ。


だが、くまさんの状況は芳しくない。数の暴力に少しずつではあるが傷を増やしていく。


あぁっ!? どうして今の避けないの!? くまさんの身体能力なら横っ飛びで避けられたはずなのに!!

そうやって戦いを見ていたからだろうか?

私の視界に突如としてとある文字が映し出された。



『『クエスト:森のくまさんを守れ!』が発生しました。』

『クエスト詳細;廃棄の森を統治するトラベアーがピンチだ!相手は強そうな4人組だがここで助けなきゃくまさんがやられちゃう!!誰か助けてあげて!!余談だけどトラベアーがいなくなると森の生態系が壊れちゃう!!』



「………何気に初クエストですね」


発生したからにはこうしてみているだけっていうのはちょっとダメな気がしてきた。

悪いことが起こるとわかっていながらこれを放置はできないからね。

というわけで私はその戦いに飛び込んだ。



「そこまでです!!」

「なっ、新手か!!?」

「ってなんだ………魔物じゃないのかびっくりさせんな」

「ベアベア?」

「森のくまさんをいじめる悪い人たちは一度お家へ帰ってください!!」

「………あんた、俺たちの邪魔をするつもりか?」

「有り体に言えばそうですね。このくまさんいなくなると森が壊れちゃうらしいので止めに来ました」

「ベア?」


このくまさん私の言っていることがわかってるのだろうか?

勢いで立ちはだかるように出てきてしまった私の背中を不思議そうに見つめるだけで攻撃はしてこない。


「えっと、とりあえずこのくまさん倒されると困るかもしれないので引いてくれませんか?」

「そうは言っても俺たちも仕事で来てるんだよなぁ」

「それはどういうお仕事?」

「この森の主を倒してこいって依頼が来ててな。かなり実入りのいい仕事だったんだ」

「へぇ、しかし森の主を倒してこいと言われただけであってこのくまさんは関係ないかもしれないですよね?」

「そりゃそうかもしれねえけど、他にそれらしいのはいねえしよ」


まぁ、クエスト概要にこのくまが森の統治者って書いてあったから間違いはないんだけど。


私がくまさんの前に立ちふさがるのをよしとしなかった人間たちだったが同族を切るのは少し気が引けていたのか私が出てきても様子を見るだけだった。

だが、私が人ではないことはすぐにバレた。


「よく見て!! その女の人、人族じゃない!! どう見ても体が作り物!!」

「あ? あぁ、本当だ。悪い、騙されるところだった」


その4人は私が人族じゃないと気付くと同時に警戒を強めた。

そういえば、人族NPC的に魔族ってどういう存在なんだろう?

とりあえず世界観的には敵対している感じでいいんだよね?

その証拠に私を魔族と見るや否やいまにも切り掛かってきそうな雰囲気醸し出しているし。


「ベアァ………」

「大丈夫ですよ〜、くまさんはそこで見ていてください」


私はそう言って心配そうに鳴くくまさんをなだめてから拳を握りしめた。

ここで剣を抜かないのはNPCは切ったら復活するか不明なため命を奪うのはできることなら最終手段としたかったのだ。


「さて、ではいきます」















と、ちょっと決戦風を装って戦い始めてみたのはいいがその4人は別に大したことがない一般人だった。

攻撃をいなして、顎を叩いて脳を揺らして気絶させる。それを繰り返すだけで戦いは簡単に終結した。

これでも一応魔族のボスなのだ。一般人には負ける要素はないのだ。


私は4人を気絶させてからこちらを見るだけのくまさんに近寄った。


「大丈夫でしたか?」

「ベア!」

「それは良かったです。ところで、この人たちはどうしましょう?」

「ベア、ベア、ベア!」

「えっと………? 殺すのですか?」

「ベアベア!!」


言葉がわからないのでありそうな答えを聞いてみたが首をブンブン横に振るくまさん。

さっきまで自分を殺そうとしていた人間を殺さないなんてくまさん、優しいのね。


「ベア!」

「えっと、この4人の処遇は任せてくれって?」

「ベア!!」


くまさんが私の隣を横切り気絶している4人をジロジロと見る。

そして顔を近づけてすんすんとその匂いを嗅いでいた。

それで何かを確認したのだろう。

くまさんは満足したように頷いてから私の方に向き直り頭を下げてくる。


「おや、礼儀正しいくまさんですね。よ〜し、なでなでしてあげましょう」

「ベアァ〜♪」


下げられた頭をクエスト報酬がわりに撫でてみた。

というか、今回のクエストはこれでクリア扱いでいいの? 私がUIからそれを確認しようとした時、体に浮遊感が訪れた。


くまさんに担ぎ上げられたのだ。


「あれ? もしかして私このまま連れ去られたりしますか?」

「ベア〜♪」


私は上機嫌なくまさんにそのままお持ち帰りされた。

ごめん堅護、お姉ちゃん、合流がもうちょっと遅れそう。

こんなことなら道沿いを行っていれば早く着けたのに………急がば回れって本当だったんだなって。



予定していた話が使えないことに気づいて別の話用意したら我ながら随分と迷走したものになった………大丈夫、次回にはくまさんのくだり終わるから。


Q、主人公はTHEシリーズでも1番なの?

A、登場予定キャラだけ並べればそうなるかも


Q、更新のスピードアップと文庫本化を〜

A、更新の速度はあげられますが文庫本化は作者の力だけじゃ無理だよ!!………とりあえず次回は話を元に戻すために明日にでも投稿します。


Q、スライムさん好き

A、ちなみに彼の名前の由来は飲みの席で土下座芸を披露するという設定から来ています。


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お姉ちゃんの頑張りが書籍化しました。
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