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番外編3 白の日記

読者の方に提案していただいたGW企画の雪姫ちゃんのスキル越しに見たメーフラ日記第一弾 (第二弾以降があるとは言っていない)です。


その日、私は面白いお人形さんに出会った。


その日、私はやっぱり今日も退屈な一日になると思っていた。


その日、私は何をするでもなく、世界の様子をただただ眺めていた。


その日、私は何の前触れもなく現れた彼女と矛を交えた。


その日、私は久しぶりに戦いを楽しいと思った。


だからこっそり祝福を与えた。

え?いつ?

それはもちろん殺す直前だよ。


祝福を与えた理由は単純だ。私が気に入ったから、それに尽きる。

もう当人にはバレているらしいが私の与える、というよりは神族が与える祝福は強力な効果を得られる代わりに行動が祝福主に筒抜けになるという一面もある。

本来ならこの機能は祝福を与えた人がその力を使って悪いことをしていないかを見張るものらしいのだが、あいにく本来の使われ方をしているところはあんまり見ない。

みんな気に入った人に与えてその人の行動を娯楽の一つとして楽しむ使い方をしている。

今回、私があの子に勝手に祝福を与えたのもその使い方をするためだ。



でもそうだな。


見てそれだけ、というのはつまらないかもしれないから、あの子の観察日記でもつけてみようかな?


その日、私は「お人形さん観察日記」というタイトルで日記をつけ始めた。










火月 23日


私の気に入ったお人形さんはこの世界の人間ではない。

そのため、常にこの世界にいるわけではない。

だが、そのお人形さんは実に規則正しい生活をしているらしく、姿を消してから次にいつ姿を現すかは大体予測ができる。

そのお人形さんの名前はメーフラといった。


神聖種の一匹であるトラベアーをただの子熊と勘違いして連れまわしている大物だ。


そんなメーフラであるが、この私が目をむくほどの剣術を操る。

おおよそ、剣の勝負でならほかに勝てるものはいないだろうと思われるほどだ。

この前戦った時は私の奥義を使って何とか引き分けにまで持ち込んだけど、あれは二度目は通用しないだろうなと思わせるほどだ。


メーフラは今日も姿を現した。

彼女はその強さゆえかそれなりに有名みたく、度々挑戦者が現れる。

本人はまったく気にしていない日常の一幕のような反応でいなしているが、その実とんでもない技術を使っている。

彼女を前に有象無象共はいつものように処理されているのだが、一人につき最大一太刀。

それ以上は振らない。

逆に大人数を相手にする場合は効率を重視してか一太刀で3人同時に切り捨てることも珍しくはなかった。

切り捨てるまでも丁寧だ。


彼女の技量なら何のフェイントも入れずとも簡単に敵を切り捨てられるだろう。

だが、メーフラは不要なリスクは負わない主義なのか相手がどんな攻撃をしようとも対処可能な動きを崩さない。

あの隙のなさが彼女の強さの本質なのだろう。

多分であるが、彼女には負けないようにするよりも勝つことのほうが難しい。

あ、それは当然か。


それより、もっと気になることがある。


それはメーフラのフェイント技術のことだ。


私も戦っていてかなり苦しめられた技術の一つだ。

メーフラのフェイントはフェイントの形式をとっているのか断言できない。

なにせ、仕掛けられた人のほとんどがフェイントを入れられたことに気づかないまま誘導されているのだから。

彼女はそうやって吸い込まれるように動く敵にまっすぐな一撃を加えるだけ。


そう、メーフラはまっすぐな一撃を入れるための下準備の動作がとてつもなくうまいのだ。


ふふっ、私の見立てでは素人は気づかない、玄人は違和感こそ抱いてもその正体に気づかない、達人になって初めて誘導されていることに気づくってところかしら?

なんにせよ、面白い。

あの敵の操作方法は私も練習する価値がある。

だがその前にもっと正確な情報を集めないと………





火月 26日


メーフラが奈落に到達した。


まぁ、当然だよねと思ったけど戦い方がユニークでちょっと笑みがこぼれた。

奈落への試練は複数人では受けることができない。


もし仮に複数人で奈落に降りようとしたらそれぞればらばらの場所に転移させられてそれぞれあの蜘蛛の魔物との戦いを強要される。

奈落には他人の力を頼らせない処置がしてあったはずだ。

だが、原則として従属させた魔物は一緒に戦うことができるのだ。


理由は単純、調教師という職業があるからだ。

魔物を武器として戦う人がいる事実があるため、従魔は武器として扱われ仲間として扱われない。


まさか、それを最大限生かすなんてね。


奈落への試練に使われている蜘蛛は距離を取って糸を吐きつけてくる。

そしてそれに巻き込まれると捕食に入る。

この捕食は固定行動に設定されているらしく捕食が完遂されるまで止まらない。捕食行動に入ればどんな攻撃でもひるむことなく対象を食べてしまう、そんな恐ろしい技なのだが……


まさかトラベアーの子供を食べさせるなんて想定されていなかったのかな?

メーフラは終始となりから叩いているだけだった。


それに味を占めたのかあのクマちゃんも蜘蛛を見つけたら前に出て糸を食らいに行っている。

結局奈落は半ば不正じみた方法で攻略されたっぽいけどまぁ、普通に戦っても試練の魔物に私のかわいいお人形さんが負けるわけないから大丈夫だろう。

なにせ彼女、この神殿の警備兵ワンセットを倒したみたいだからね。




火月30日


うー、なんでメーフラは服選びに私を呼ばないのー?


火月32日


えー!?メーフラ、誰その男の人!?

まさかメーフラ彼氏いたの!? メーフラちゃんじゃなくてメーフラさんなの!?

くそっ、私だってまだだってのにぃ……

いや、でもよく見たらこの感じ、まだ男女の仲って感じじゃないよ。

どちらかというと交際前、友達以上恋人未満的な雰囲気を感じる。


あ、男のほうを見るとちらちらとメーフラを見ている。

ふふっ、うぶなやつよのう。そんな男を前にファッションショーをして自分を見てくれとは、メーフラも小悪魔この上ない。


うわっ、メイド服きて「ご主人様」とか、あざとい!あれかな?襲ってくるのを待っているとか、そんなのかな!?

あ、違うわこれ。やった本人も耳を赤くしてるわこれ。

それで次の服は……あ、一番上にあったバニーガールを避けてその下にした。

やっぱあれは恥ずかしいと気づいたのだろうか?

そして次はーーーーあぁ、かっぽぎかっぽぎか。

これはこれでなかなか……


あ、これで決まったみたいだ。

それで一緒に散歩にでも出かけるのかな?



おや、私のお人形さんに対してわめき散らかす男が一人。

いろいろ言うだけならスルーしてもらえるんだろうけど、男は剣を抜いちゃっているからなー

メーフラに切られて終わりだろうな。

その時はそう思ってたんだけど、どうやら彼氏候補の人が戦うみたいだ。


おー、メーフラのほうが強いんだろうけど男だもんね。カッコつけたいよね。


そう思ってみていたんだけど、おや?男のほうも割とやばいタイプの人間?

メーフラと同じように身体能力をそろえて剣だけで勝負したら勝てるか怪しいんだけど?


というかなんだよあの剣、敵の剣に触れる瞬間、ありえない曲がり方して回避した?あれ?私のカウンターを素で攻略されてないこれ?


メーフラ、彼氏候補も馬鹿みたいに強いとか……もし仮にあの二人が結婚して子供に剣を教えたらどうなるんだろうかな?

気になるような……怖いような?


どれだけ技術が発達しても殺されるような私じゃないけどこの日だけは微妙に背筋が寒くなったよ。






火月  38日


この前奈落で拾った素材と元から持っていた素材で作った武器が届いたみたいだ。

メーフラはよく武器を使いつぶすらしく大量に注文していたのを記憶している。



あの光景を見ているとこの前、剣を叩きこわしたのに少しだけ罪悪感を覚えるよね


それにしても、ため込んでいた素材をふんだんに使って作った武器は壮観だね

それにかっこいい見た目のものもいっぱい


まっ、私の趣味は装飾の少ない日本刀だからあんまりほしいと思わないけどね




火月  42日


今日は夏祭りだ。

正直、この祭りに期限なんてなくて文字通り降ってわいたようなものだから何を祭る祭りかは知らないけど、世界全体でのお祭りなんだから私と彼を祭っていると取っていいよね?

そして祭りには主役が必要


ってことで、行ってきます。














水月 一日


メーフラはまた来るって言ってくれたのに、まったく顔を出さない。

彼女が死ねばここで復活するから必然的に来てくれるんだろうけど、彼女はまったく死なないからその前提もあんまり意味がない。


くそぅ、こうなったらこっちから引っ張りまわしてやる!

そしてついでに「彼」に会いに行ってやる!!




………日記はここで途切れている






おまけ




X月 Y日



今日はメーフラの何気ない一日をここに綴っておこうかな?


メーフラは大体2日おきくらいにこちらの世界にやってきて、1、2日くらいこっちにいて彼女の世界に帰っていく。


こちらに来たメーフラがまず初めにすることはお供のクマちゃん、ヒメカのチェックだ。


トラベアーはいずれ森の王様になる資質を備えた神聖獣

その子供のヒメカは今も私が以前与えた王冠とマントを着用してメーフラの頭にしがみついている。


メーフラはこっちに来ると10分くらいヒメカをもふって遊ぶ。

正直、楽しそうです。次、いつ来るかなぁ~


その後、その日の方針を決める。


今日はクマのヒメカちゃんの実家に遊びに行こうとしているみたいだ。



そこは廃棄の森と呼ばれている森。

そこに入るとメーフラの頭の上のヒメカが「カカカカカカカ」と喉を鳴らす。

すると2頭の親ぐまと2頭の子ぐま。


子ぐまはメーフラに飛びつき、親ぐまはヒメカを抱き上げる。


5頭と一人はそのまま遊び続けて夕方になる。

メーフラは「そろそろ行きます」といって親ぐまが「べあー」と蜂の巣をプレゼントしている。

微笑ましい光景だ。


それからメーフラはケイオールに向けて歩き始めた。

だが、その道中問題が発生。



なぜかメーフラは道を無視して進み迷子。

その先でメーフラを発見した人族に襲われる。だが、当然のごとく傷一つもらうことなく撃退。

戦利品の確認ののち、周辺の地形の確認。


どうやらそこは地下墓地近く、そこはなじみのある場所らしく迷いなく軌道修正。


ケイオールにたどり着いたのは夜が明けそうな時だった。


X月 Z日

それからメーフラは街の工房を借りて裁縫にいそしんでいた。

前日のクマとの攻防からインスピレーションを得たらしくクマの着ぐるみを作っているようだ。


それにしても、裁縫をしている彼女は見ていてもあんまし面白くないわね。


どうせならコスモールに突撃して暴れまわるくらいしてくれればこっちとしても面白いと思うんだけどね。

私の祝福がある彼女ならかなり面白い戦いが見られるはずなんだけどなー


願ってもそんな行動をとる気はないらしい。



それから程なくしてクマの着ぐるみが完成、メーフラはそれを迷いなく着用した。



あらかわいい


私の分はあるのかしらね?

いや、でもいい年した女があんなものを着ていてもしらけるだけかも……でもでも、私も見た目だけなら幼いからありかな?


クマになり切ったメーフラは作業中ずっと膝の上にいたヒメカと遊び始める。


そして遊び終わった彼女はUIでなにやら確認作業を済ませてから……この世界から姿を消した。


うむ、まぁ、この世界はVRゲームだからね。

この世界は私たちの世界であってメーフラはお客さん、時が来たら帰ってしまうのだ。


そこに謎はない。


私としては、こんなふわふわとした生き方をしているメーフラがなんであんなに強いのか不思議でしかない。






番外編のため本編とは関係ないように書きたかったのですが、思ったより文章量が少なく仕上がったので本来書くべきだったところをおまけパートに回して文章量を削って、そして現在本編で覗かれている部分をメインの文章にさせていただきました。

本来は「メーフラの日常観察日記」みたいな感じで5000文字くらいの内容を書こうと思ってたんだけどなぁ……


番外編のためコメント返信のコーナーはなしです。

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