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祝勝会より弟の食事の方が大切なんでね。悪いね

「はぐるまどらいぶ」という作品を読んで下手でもいいから自分も挿絵描こうかな〜なんて思った。


よくよく考えたら今ペンタブが使えないのを思い出して断念した。

ちくせう………メーフラさんのイラストがそれなりに完成する前に気づけばダメージ少なかったのになぁ。



戦いは見事私たちの勝利で終わった。

イベントエリアの私たちの本拠地になっていた城には続々と魔族プレイヤーたちが集まっている。


あ、イベントエリアはこの状態のまま現実時間で一週間は保持されるらしい。

その間は出入り自由だ。もうイベント自体も終わっているため3回目は入れないとかもない。


「ひゃっほおおおい、人族の奴らザマアミロってんだ!」

「ああ、あのいかにも自分たちの方が強いですよみたいな顔してた奴らが最後城を壊された時の顔と言ったらなかったぜ!!」


そして城内はもう大盛り上がりだ。

まぁ、勝ったからね。それは盛り上がるだろう。逆に向こうの城ではお通夜みたいな空気が流れていたりするのではなかろうか?


「メーフラ様!!」

「あ、リンさん。お疲れ様です」

「う、うむ。与えられた命は果たしてきたぞ」

「その命令を出したのは私ではなくダームさんですけどね」

「それよりメーフラ様、お疲れ様だ。あなたがいなかったら今回の勝利はなかっただろうな」

「そうですか? リンさんが王様役やってる間に他の人が攻撃………で勝てたんじゃないですか?」

「あの、私は弓使いなんだが………室内の戦闘では少し不安が残る」

「まぁ、メーフラさんがいなかったらその時はリリンさんを王様役にはしてただろうね。僕の見立てではそれでも勝てただろう」

「あ、ダームさんお疲れ様です」

「そちらこそ、お疲れ様。やっぱり「返り討ち」の名は伊達じゃないね」

「その呼び名を知っているということは…………やっぱりダームさんは」

「うん。僕もあっちには少しだけお世話になってたよ。その時から君のことは知っていたけど、まさかこっちにきているとはね。それに、「神手」の方まで」

「むっ、わ、私がメーフラ様を追いかけてきたと言いたいのか。そ、そんなことないからな?」

「…………君、あの世界でメーフラさん以外の神級を何回攻撃した?」

「なぜ今そんなことを…………合計で20回くらいだった気がするが」

「…………」



あれ?私少なくとも3桁は襲われている気がするんですけど?

もしかして私リンさんに狙われていた?

そういえばこっちの世界で初めて会った時もいきなり撃ってきたんだっけ?


………考えないようにしよう。



「まぁ何はともあれ今回の勝利は君たち2人がいなかったらなかったものだろうと思う。だから…………ありがとう」


ダームさんは改まったようにそう言って深く頭を下げた。

表情は見えないし無い。

だがその声音から、態度から、それが本気の気持ちであることが察せられる。

戦いの前に彼自身話していたように彼は本当に悔しかったのだろう。

そして勝てて、少しでもやり返すことができて嬉しかったのだろう。

それはただの自己満足かもしれない。魔族プレイヤーが理不尽に狩られたことは変わらないし、これからも新規の魔族プレイヤーはほとんど増えないかもしれない。


だけど、それでも今回の勝利は彼にとって大きなものに思えたのだ。


それは私も少なからず似通っている部分があった。

同じと言っても差し支えなかった。


私は始め人形狩りをしているプレイヤーを殲滅した。

そして今回、人形狩りを始めたプレイヤーを少しだけ脅すように殺した。

だがこれもただの自己満足。

自分が正しい。あいつは間違っている。

だから倒すべき敵だ。そう信じ込み実行することで得た自己満足でしかなかった。



でも……………………それでもいいじゃないか



私の種族は無慈悲な人形。

敵と決めたものを問答無用で切り捨てる理不尽な人形だ。

今回はその危ない人形の目に留まって、不用意にも手の届く位置まできてしまったのがあの男だったというだけの話だ。


きっと…………それ以上考えることに意味はない。



「どういたしまして。…………そういえばイベントが終わりましたが報酬はなんでしょうか?」

「あ、それならUIのイベントの項目から受け取れるようになってるよ。貢献度に応じた経験値とアイテムっぽい」

「そうでしたか。では、受け取ってみましょうか」




私はUIの下の方にあるイベントの項目を指でタップする。

そこには今までなかったイベント報酬の文字。

そこに赤い丸がついていて他の項目より少しだけ主張が激しかった。

私はそれに指で触れる。


『イベント報酬を受け取ります』

『貢献度301,555により経験値301,555が付与されます』

『レベルが6になりました』

『レベルアップに伴いスキル【イージーチューン】を習得しました』

『レベルアップに伴いスキル【オーバードライブ】を習得しました』

『さらに貢献度によりアイテムが付与されます。』

『アイテム「闇の結晶」「魔の大釜」「魔族の長剣」を手に入れました』

『あなたの貢献度ランキングは一位でした。おめでとうございます』

『一位報酬です。以下の選択肢から1つ選択してください』

『◆種族専用アイテム 』

『◆特殊な金属』

『◆特殊な薬品』

『◆特殊な武具』

『◆特殊な資材』



お、おぉ!?

なんかいっぱい経験値をもらってレベル上がってスキルを覚えた上に凄そうなアイテムを3つももらってさらにアイテムを選んで1つもらえると申すか!!

おー、運営太っ腹だね〜


まぁ、なぜか知らないけど貢献度ランキングが一位なのが大きいんだろうね。

それにしても今までは進化時にしかスキルを覚えなかったけど今回はレベルが上がっただけで覚えたね。

どうしてだろうね?


あ、とりあえず選択アイテムは◆種族専用アイテムでお願いします。

他のも気になるけどやっぱ専用アイテムとなるとちょっと欲しくなる。

ポチッとな。


『◆種族専用アイテムが選択されました』

『アイテム「フールギア」「マギアギア」を手に入れました』

『これにて報酬付与を終了します』


ほえ〜

なんか知らないけどすごそうなものをもらった。


とりまひとつひとつ確認だね。

まずはスキルから。


――――――――――――――――

【イージーチューン】

ここから始める調律道

10分間HP、MP以外のステータスが全て同じになるように調律する

消費MP10

リキャストタイム 900秒

――――――――――――――――

【オーバードライブ】

おっと、俺に触れると火傷するぜ

【ギアアップ】のステータス上昇に応じた大爆発を起こす

無属性物魔混合ダメージ

キャストタイム10秒

リキャストタイム120秒

――――――――――――――――

要するに【イージーチューン】はステータスの凹凸をなくすスキル。

【オーバードライブ】は自爆ってところかな?

どちらも悪くはないがそれなりに使い所を迷いそうなスキルだった。


次、アイテム!


――――――――――――――――

闇の結晶 レア度 特有ユニーク


魔界の洞窟にあるとされる結晶。

色々なものに使えそうな可能性を秘めていそうだがいざ何に使えるかと聞かれると首をひねるアイテム。

一応金属であるため武具に使われることが多いとか。

――――――――――――――――

魔の大釜 レア度 普遍ノーマル


魔女がよく使っている大釜…………などではなく体が大きな種族が好んで調理器具として使うアイテム。

ケイオールの街の雑貨屋にて販売中!

――――――――――――――――

魔族の長剣 レア度 希少レア

物理攻撃+80 魔属性

耐久 5000/5000

装備条件:STR50


魔族の中でも屈強な戦士と認められたものにしか手にすることができない剣

かなり頑丈に作られておりちょっとやそっとじゃ折れない

――――――――――――――――


おー。

ひとつ拍子抜けするものがあったけど残り2つは有用なアイテムだった。

特に魔族の長剣は剣が全部折れてしまった私にはとても嬉しいアイテムだ。

まぁ、一応今度またゴブリンさんに新しい剣を作ってもらうつもりだけどね。

この世界の剣はすぐ折れる。だから予備はいっぱい持っておいたほうがいいのだ。


闇の結晶は金属らしいのでそれで作ってもらおうかな?


さて、あとは「フールギア」と「マギアギア」ですか。

私がその2つのアイテムの能力を確認しようとしたところでふと、耳に入ってくる声があった。


「おっしゃー!! 祝勝記念に今から宴じゃ!!」

「お、それなら今日だけはいつもの2割引で料理を提供してやるぜ!」

「ぎゃはははは!! お前今回もこれが終わったらどうせその値段が定価になるんだろ?」

「バカ言っちゃいけねえ。今回はとてつもねえ高級食材を使うから温情で安くしてやってんだよ。ほら、これをみろ!!」

「こ、これは………」

「レタスとキャベツじゃねえか!!」

「バカ言え、これはいつもの男爵や子爵、そして伯爵とも違うトップオブ野菜貴族、その名もキングレタスとクィーンキャベツだぞ!!」

「な、なんだってー?」



…………あ、この馬鹿騒ぎで思い出した。

そろそろ私もログアウトして夕食を作らなきゃいけない。

ちょっとあのすごそうな食材の味が気になるけど弟のためのご飯を作ると考えれば未練なんてない。

ないったらない。



私は馬鹿騒ぎの中こっそりとUIのログアウトボタンをポチった。

そして戻ってくる現実世界。

気配を探っても堅護の方はまだ戻ってきてないらしい。


まぁ、彼はご飯ギリギリまでいるつもりなんだろう。



「さて、今日のお夕飯はレタスのキャベツ巻きにしましょう!」


このメニューにした時の迷いはなかった。

未練なんてないったらない。















そして夕食の時間になるとちゃんと堅護は自分でおりてきた。

そして何故か机の上に並べられた料理を見て顔を引きつらせている。

彼は何も言わずに現実から目を逸らすように机から目をそらして手を洗い机の上を再び見る。

そして視線は私の方へ


「なんですか?」

「いや、文句はないけど」


彼はそれ以上何も言わなかった。

今日の夕食の時はえらくシャキシャキという音が聞こえてきた。

さすがにレタスとキャベツのサラダを添えたのはやりすぎたと反省している。

今度からはブロッコリーとトマトものせます。


「……………それで、あの後そっちはどうなりましたか?」

「どうって?」

「こう言ってはなんですけど今回は私の完全勝利です。一度は攻撃をくらいましたが次は多分当たりませんよ。…………次は私を倒せそうですか?」

「………次は無理だろうなぁ」

「そうですか。少し残念です」



堅護は私より弱い。

守ってあげないとすぐにヘタレちゃうくらいに弱っちい。

私の知っている強い人たちには目を瞑ってもらっても指一本触れられないくらい弱い。

そんな彼は私と戦い何を思ったのだろうか?

私は自分の実力を過大評価も過小評価もしているつもりはない。


私たち姉弟の差は圧倒的に開いていることくらいわかっている。

彼は今回の戦いでその差を実感したのではないか?

その差を見て勝てないと諦めてしまうのではないか?

ここで折れてしまうのではないか?


少しだけそんな懸念があったが、その嫌な予感は当たっていたみたいだ。



私はいつもやりすぎる。



手加減は基本的にできない。



私は不器用だ。


ちょうどいい力加減なんてわからないし、どうすれば2人がいい感じになるのかもよくわからない。


ただ私はわからないなりに考えて彼らの共通の強敵として立ちはだかり、それを乗り越えさせることで愛を育んでもらおうと思っていた。

だがその計画は終わってしまった。

壁に挑むことを諦められたらそこでおしまいなのだ。

そう思い私は少しだけ下を向いた。



「ま、次は無理かもしれないけどさ次の次の次くらいには勝てるかもよ?」


そして堅護のその言葉で顔を上げた。


あれ?

あと3回で勝てそうなの?


「勝てるのですか?」

「さあ? でもあっちは色々ファンタジーなものがあるんだ。姉ちゃんに通用するものもちゃんとあるはずだ。例えば…………そうだな。周囲にいるものに毎秒3のダメージを与える炎のマントをつけた俺が姉ちゃんに突進して後ろから延々と回復魔法をかけてもらう、とかどうだろうか?」

「…………堅護は今の差を知っても諦めないのですね」

「そりゃあ、高嶺家の人間は諦めの悪さだけが取り柄だからな。姉ちゃんもそうやってそこまで上り詰めたんだろう?」



確かに。

初めは私は兵士級にすら転ばされ続けたんだったっけ?

それで対策を立てて、立てて、立ててでようやく勝てるようになって騎士級に転ばされてって繰り返した結果に私がある。

その間、不思議と諦めるという考えは一度も浮かばなかった。


そういえば、学者のお父さんはずっと同じものを研究し続けて今それなりに結果が出ているとかなんとか。

お母さんもかなり諦めが悪くて欲しいものが売り切れてたりすると県中探すような人だっけ?


…………確かに、そんな家の末っ子の堅護が諦めがいいわけないか。

少しだけ安心した。


「そうですね。まぁ、でもあと3回で負けるつもりはありませんけどね」

「じゃあ4回目には勝つ」

「おや、そこでは張り合わないのですね」

「姉ちゃんと正面からぶつかっても勝てないことが今回わかったからな」

「ゲームの話ではなく?」

「姉ちゃんの強さは現実からくるものだろうが……」


確かに、ゲームの中ならともかく現実で堅護と殴り合って負けるヴィジョンが浮かばない。

ただ、現実で自分が堅護を殴るヴィジョンも同様に浮かばないから絶対に引き分けるだろうと予想ができた。



「じゃあ、次回のイベントも期待していいのですね?」

「あ、次回のイベントは別に人と魔族の敵対系じゃないから一緒にやらない?」

「………そうですか。ご一緒させてもらいましょうかね」



う〜む

調子が狂いますね。


ですが久し振りに楽しく堅護と遊べる機会だから存分に楽しんじゃうよ。

次のイベントなんだろな?















その男は気の抜けた顔でただただテレビの画面を見ていた。

特に興味のないバラエティ番組。

CMに入ろうと彼がその画面から目を離すことはない。

その男にとっては同じ「テレビの映像」程度にしか映っておらずそこになんの意味もないのだ。



「……………」

男はただただ無言だった。

男は落ち込んでいた。

最近、彼の目標としていた人物が彼の前から姿を消したからだ。


1つの世界で最強になった自分の前に流星のように現れた1人の女性。

天狗になりかけていた男を完膚なきまでに屈服させた女性。

今や男にとってなくてはならない存在であったその女性が最近彼の前に現れなくなったのだ。


「……………」


男は無言でテレビの画面を見続ける。

内容は入ってこない。


そんな時、男のスマートフォンに1つの通知が入った。

男は無気力なまま手元に目を向ける。

そこにはもう1つの世界で自分と同じ場所にいる人物からのものだった。

否、それは少し正確ではない。


確かにそのメッセージを送ってきたものは1つの世界の頂点だが、男は1つの世界の頂点だったに過ぎない。

男は今は挑戦者に過ぎない。


男がメッセージを確認する。

そこにはこう書かれていた。


『お前最近元気ないらしいな。まぁこれでも見て元気出せって』


そこには動画サイトへ飛ぶためのURLが貼り付けてあった。

男は何の気なしにそのURLをタップする。

特に見る気はしなかったのだが、見ない理由もなかった。



動画はとあるVRMMORPGのキャプチャー動画を軽く編集しただけのものだった。

再生数は6桁を超えそうになっている。


ごくわずかな読み込みと1分半程度の広告をスキップもせずに見届けた男についにその動画が映し出される。



そこにはひとりの女性とそれに立ち向かうスライム、大根、鎧、大豚、鳥、トカゲの姿。

その動画――――否、そこに映し出された女性に男の目は釘付けになった。



「…………………見つけた。俺の神」


男の口角が釣り上がり気づけば男の顔には生気が戻っていた。

男はその動画の概要をチェックしそれがどこで撮られた映像なのかを知る。

そしてこのメッセージを送ってくれた男と、もうひとりの友人にメッセージを送りつけ、5段重ねになったバランスボールの上から飛び降りた。

















その日、とある世界から3人の神が姿を消した。



エピローグ色々考えたけど結果こうなった。

不完全燃焼な気はするけどこれもギリセーフだと思う。

Q、観光客の警察に創華ちゃん勝てるの?

A、一対一なら勝てるよ〜でもあいつら基本3人以上でくるからね


Q、蛇腹剣もろ過ぎない?

A、え?彼はよく頑張ったと思うよ?


Q、あの人形の手はどうなってるの?

A、実はメーフラさんが糸をくくりつけて操作してたりします




ブックマーク、pt評価をよろしくお願いします。


次回は久々掲示板

それと運営の状況を少しだけ書く予定


そして次の章へーーーーーーーーー

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[気になる点] イージーチューンってステータスを平均にするんですか?
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