お城を攻める翼竜と笑顔の拷問
皆さん明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
ジャーグルは飛龍騎士である。
これはゲームシステムとしてこのような職があるのではなく、飛龍を調教しそれに乗る人の俗称のようなものだ。
ガトとフセンはジャーグルの保有する飛龍に跨り空をかけた。
食糧拠点から3人を乗せた飛龍が同じようにカウンターを狙い魔族の城を狙う人族の上空を飛び去る。
途中魔族で飛行能力を持つプレイヤーが姿を現したが、飛龍の威嚇のせいか飛びかかってくるものは少なかった。
彼らは邪魔なんてものはほぼ入らないまま一気に魔族の城が見えるところまでたどり着いた。
「よしっ、見えてきたぞ」
「フセンさん!!」
「まかせて、もうたまってるよー!!」
スキル、【蓄魔】の使用中は使用者は動くことはできない。
ただし本人がその場から動けなくなるというだけであって足元が動くならばその限りではない。
彼女は【蓄魔】を使い高めた魔法効果の代償の長い詠唱時間を移動中に済ませることで相殺した。
「よしっ、願わくばこの一撃で壊れろ!! 【ファイアボム】!!」
一度はメーフラに防がれたその魔法であったが今回は誰にも邪魔はできなかった。
人の頭ほどもある火の玉はフセンの手から放たれるとそのまま直進、魔族の城のど真ん中に叩きつけられた。
ドゴオオオオオオオオオオオオオオ!!
その中に秘められた爆発力は衝撃を加えられたことによって解放される。
フセンが全力で放った魔法は魔族の城の壁を抉り、引火し、焼き尽くす…………はずだった。
「な、無傷!?」
「えっ、ちゃんと魔法は発動したよね!?」
「したはずなんだが……どういうことだ?」
大爆発と立ち上がる炎が消えた後に彼らの目に入ってきたのはそれが放たれる前となんら変わらない姿の城。
どこにも傷なんてついていなかった。
「おい、今ので俺たちの接近がバレたみたいだ
。どうする?」
「う〜なんで無傷なの〜?」
「元々それだけ城が硬いか、もしくは何かギミックを解かないと壊れないようになっているとかかな?」
「えっとそれなら………」
「このまま突撃、じゃないかな? ということでお願いします」
「おう、どうせここまで来て引くなんて選択肢はありはしねえんだ。とことん爪痕残しに行くぞ!!」
ジャーグルが手綱を引くと飛龍が速度を増した。
城に急接近した飛龍は城の城壁を越えてそのまま正面の門の前で減速する。
そして少し緩めた勢いのまま両足から門に突っ込んだ。
飛龍式ドロップキックだ。
かなり頑丈な門ではあったが大質量が高速でぶつかれば耐えられるはずがなかった。
枠は大きくひしゃげ扉は内側に吹き飛んでいた。
「きゃあああああ!!」
「フセンさん!? 大丈夫ですか!?」
「だいじょーぶーっていうかこうするなら先に言ってよ!!」
「おっと悪い。次から気をつけるぜ」
フセンたちは急に不安定になった飛龍の背中にしがみつくようにして門を突破した。
「人族が攻めてきたぞー!!」
「であえ、であえ!!」
「ごようだごようだ!」
門を突破するや否や彼らのもとに数人の魔族が詰め寄ってくる。
種族はバラバラ。
巨大な眼球だったり、動く石像だったり、空飛ぶ本だったりした。
だが数は少ない。
人族の城を落としにきた大軍に比べたらごくわずかと言える数しか残っていなかった。
ジャーグルは相棒の飛龍とともに魔族プレイヤーを蹴散らしながら進む。
飛龍もそうだが彼自身の能力もそれなりに高い。
ジャーグルという男はβテスターであり正式版でも人族のトッププレイヤーに位置する存在なのだ。
サービスが始まって一月程度で慣れない体に未だに四苦八苦しているものが多い魔族の一般プレイヤーに後れをとる彼ではなかった。
「う〜む、なあ、どこに行くのが正解だと思う?」
「普通に考えたらこういうのは王様がいる場所じゃないかな?」
「ですね。内部構造はうちの城と一緒みたいなんで道はわかります。それで行きましょう」
魔族の城と人族の城は外観や内部の装飾なんかは違ったりするのだが基本構造は同じだ。
門を通りまっすぐ階段を上ることなどを挟みながら進めばすぐに玉座の間までたどり着くことができる。
そして、彼らはついにたどり着いた。
そこにいたのは1人の女性。
真っ黒なドレスでその身を着飾り、悠然とした態度で玉座に腰掛け足を組んだ状態で3人の侵入者を迎える。
座った状態ではあるが玉座のある場所は入り口より高い場所にある。
そのためその女性は3人を見下すように見ていた。
「…………メーフラちゃん、ここにいたか」
「姉ちゃん……」
「あいつは…………」
黙ったまま見下すメーフラに対して三者三様の反応を見せる。
フセンは不都合でもあったかのように、ガトは絶望したかのように、そしてジャーグルは過去を思い出したかのように……
3人のつぶやき、それが聞こえたかどうかはわからないが次に口を開いたのはメーフラだった。
「よくぞお越しになりました。私はこの城、メーフラです。今日はどんなご用事で?」
うっすらと笑みを浮かべ優雅に話しかけるメーフラ。
ジャーグルは何故かその姿に少しばかし恐怖を覚えて冷や汗をかいた。
「もちろん、この戦いに勝つためだよ。ねえメーフラちゃん、この城はどうやったら壊れるか教えてくれないかな?」
「簡単なことです。王が死ねば城は壊れます。王と城は一心同体ですから」
「えっとつまり?」
「ふふ、よく来ましたね勇者たち。私がここの王であるメーフラ。ここを欲するというのなら、王である私を倒して奪い取ることです。つまり私を倒さないとこの城は絶対に落ちません」
「くっ、姉ちゃんを倒さないと絶対に落ちない城とか反則だろ!!」
メーフラはここに誰かが来るまでに考えていたセリフを読み上げるように口にした。
彼女はやり切ったような清々しい顔をしていた。
それに対してガトが苦しそうな顔をする。
万の軍をぶつけても倒せない相手をどうやって倒せと嘆く。
だがその態度とは裏腹に彼はたった1つ、姉に通用するかもしれない手を思いついていた。
ガトは小さくフセンの習得魔法の確認をした。
そしてちゃんとそれを習得していることを聞いた。
ガトは決戦の時は近いと大盾を構えた。
ジャーグルもその空気を感じ取りやりに手を添える。
ここまで律儀についてきた飛龍も玉座に座るメーフラに対し「グルル…」と威嚇をしている。
「立ち向かうのですね?」
「ああ………ジャーグルさん、おそらくこの戦いは長期戦になることはないです。俺たち前衛にできることは少しでも多く隙を作ることになるはずです」
「………だろうな」
「戦いのカギを握るのは………」
ガトは後ろでマナポーションをがぶ飲みしているフセンに視線を送った。
彼女はそれに気がついてニッコリと笑顔を見せて小さくだが手を振った。
ガトの気が少しだけ軽くなった。彼はいつもより頑張れそうだと感じた。
ガトは大盾を正面に構える。
するとメーフラがその腰を上げた。
そして素手のまま玉座前の階段を降りてガトたちに近づく。
「あれ? メーフラちゃん武器は?」
「ああ、全部壊れちゃいました。仕方ないので今回は格闘戦ですね」
はじめの防衛戦で万を斬ったメーフラの武器の耐久度は全てゼロになっていた。
そのためあの戦いも最後の方は敵の武器を一時的に奪ったり殴り飛ばしたりして騙し騙しやっていた。
普段なら武器を破損させるということに縁のないメーフラだが、この世界は技量とは関係ないゲーム的な処理というものがある。
いかに完璧に振ろうともものを切ればわずかにだが耐久値が減る。
この世界はそういう仕様になっているのだ。
メーフラはこの微妙な差にまだ対応できないでいた。
ガトはそのゲーム的な部分で勝負を仕掛けてメーフラにひと泡ふかせるつもりでいた。
「では、始めましょう?」
「わ、飛龍、行くぞ!!」
先陣を切ったのはジャーグルとその相棒だった。
いくら玉座の間が広いとはいえ巨大な飛龍が自由に動き回れるほどのスペースはなかった。
だがその大きな体は、爪は、牙はそれだけで脅威であり道中の者たちと同様に目の前の女性もそれに引き裂かれる………とはこの場にいる誰も思っていなかった。
ジャーグルは一度身を以てメーフラの強さを味わったから、ガトとフセンは道中で飛龍の攻撃が力任せの大振りであることに気づいていたからだ。
その大きな力の恐怖にさらされている本人はどこ吹く風で対応をする。
左右同時に振り下ろされる爪を難なくかいくぐり懐に潜り込む。
「さて、物語とかですと龍といえば首の下……あなたはどうでしょう?」
メーフラの掌底。
それはただ手のひらで打っただけに見えるがその実かなりの衝撃が飛龍に加えられている。
彼女の掌底は腕力、というよりも足の下から伝わる重さを衝撃に変えて打ち込む技だ。中国拳法で言うところの浸透勁とか発勁とか呼ばれるものになる。
「グオオオオオオオ!!」
「飛龍、お前はもう下がってろ!!」
メーフラが龍は首の下、と言っていたのは伝承の龍には逆鱗と呼ばれる鱗の中でひとつだけ逆側を向いた鱗があるということに由来してる。
しかしそんなものがなかったとしても喉に対して衝撃を叩き込む攻撃はダメージになる。
飛龍はプレイヤーと違い死んだらそれまでだと知っているジャーグルはこの戦いでは役に立たないとみるやすぐに離脱を指示する。
飛龍は苦しそうに呻きながら交代する。
メーフラもそれをみっともなく追いかけたりはしない。
「次はあなたたちですね?」
飛龍の横をすり抜けて突き出された槍を最小の動きで回避したメーフラが嗤う。
まるで攻撃なんてされていないと言わんばかりに悠々とジャーグルとの距離を詰める。
「くそおおおおお!! ガト、やれるか!?」
「いきます!」
そしてジャーグルとメーフラの距離が手の届く位置になる寸前、ガトが動いた。
彼は大盾を前方に構えたまま突撃をする。
そこに技術なんてものはない。ただイノシシのように突撃するだけだ。
メーフラはそれを蹴りで払いのけようとする。
「かかった、くらえ【リジェクト】!!」
その瞬間、ガトが大盾使いのスキル【リジェクト】を発動した。
効果は大盾に触れている相手にノックバック効果のあるダメージを与えるというもの。
効果時間はたったのゼロコンマ2秒。発動タイミングが難しいうえに盾に直接触れられないと効果がないため人気のないスキルだ。
だがこの場ではそれが有効に働いた。
メイン武器である剣系統の武器を1つでも持っていたならば盾に触れないなり盾を両断して発動条件を満たさせないなりやりようはあっただろうが、不幸にも今のメーフラは素手であり使うのは剣術ではなく体術だった。
それに、彼女の動きはどこまでも現実世界の自分に沿ったものが大きい。
そのためゲーム特有の挙動には剣無くして対応が難しかったのだ。
ガトのスキルは見事にメーフラに直撃した。
メーフラの体が2メートルほど後ろに吹き飛ぶ。
メーフラはなんとか地面に足を突かせてノックバックを止める。
だがその間にもガトの突進は止まらなかった。
「うわああああああああ!! 届けえええええええ!!」
「…………お見事でした」
盾を構えて突撃してくるガトの盾を捲り上げるような後ろ回し蹴り。
手から伝わってくる強力な衝撃にガトは思わず盾を手放してしまう。
そして蹴り飛ばされた盾はこっそりとメーフラを狙っていたジャーグルに直撃して吹き飛ばす。
「お見事でした? まだメインは終わってないぞ姉ちゃん!! 【リジェクト】!!」
ガトは盾を保持しようと思えば保持できた。
だがわざと手放したのだ。それでジャーグルがやられたのは想定外だったにしても………
ガトは一瞬でインベントリから予備の盾を取り出して再びあのスキルを発動させた。
【リジェクト】というスキルは発動条件やタイミングが微妙に難しいうえに消費MPが50と地味にでかいがその反面再使用可能時間が1秒という強みもある。
ガトは今度はメーフラに向けてではなく取り出した盾を逆向きに背中に背負うように設置し【リジェクト】を発動させた。
VIT特化の彼にとってささやかなダメージとともにガトの体は前方に吹き飛ばされる。
このままいけばガトがメーフラに体当たりをかまして押しつぶせるだろう。
そして押さえ込めば復帰してきたジャーグルの槍で貫ける。
だが、それが当たるほどメーフラは甘くない。
若干浮いたまま飛んでくるガトに対してメーフラは前蹴りを加えてその勢いを殺した。
これで作戦は破綻………かに思われたがそこでガトがニヤリと笑みを見せた。
「何を笑っているのですか?」
「何も………ただ、ゲームの雷ってよく貫通するよねって思っただけだよ」
ガトがそう言うと同時にガトの腹部から雷が飛び出してきた。
バチッと音を響かせながら、フセンが放った雷魔法【ボルトランス】は真っ直ぐガトの背中に突き刺さり、そのまま貫通してメーフラを狙う。
バチバチ!!
と感電する音がする。フセンが放ってから2度聞こえてきたその音は着弾音。
その魔法は見事メーフラを捉えたようだった。
【ボルトランス】にはダメージを与えた時に一定確率で麻痺の追加効果を見込める。
メーフラには状態異常耐性大が付いているうえに【ボルトランス】の追加効果の発動確率は低確率だがそれでも確率は0ではない。
ガトはここで麻痺を引くことを願った。
だが、現実は非情なり。
「…………お見事です」
「嘘だろ……あれ差し込めるのかよ」
メーフラの前には左腕が突き出されていた。
フセンの雷はその左腕に直撃したのだ。
【ボルトランス】は雷属性の貫通攻撃が可能な魔法だ。
しかし欠点、と言うほどではないが仕様の1つとして多段ヒットをしないという特徴があった。
つまり一度ある部位に当たって仕舞えばダメージ計算はその部位のダメージ倍率が適用される。
腕に当たって電気が伝わり心臓まで――――などということは起きないのだ。
これが現実なら雷はどの部位に当たろうと全身にダメージが回っただろう。
だが、これはゲーム、その世界に作られた法則に従い動く。
ガトはゲームの仕様になれていないメーフラの隙をつき勝利するつもりだった。
だが、最終的にその世界の仕様のせいでダメージが通らなかったのだ。
メーフラが攻撃を受けたのは左腕、つまり本体HPとは何の関係もない。
ダメージを与えたという判定にすらならないから追加効果の発動確率は0だ。
全ての希望が潰えた瞬間だった。
人形という種族について調べ上げていたガトは左腕で攻撃を受けるということの意味も当然知っていた。
「今のは少し危なかったですね。ですが私はダメージを受けていません」
ガトの作戦は確かに多少は通用したかもしれない。
だが、しかし、まるで全然メーフラを倒すには程遠かったということだ。
メーフラは驚愕しているガトにとどめを刺した。
メーフラというボスを倒さんと放たれた魔法をガトも受けたのだ。
吹けば飛ぶ程度のHPしか残っておらず簡単に倒された。
ガトにとどめを刺した後、メーフラはフセンに接近する。
「………次は勝つ」
「期待しています」
フセンはINT特化の魔法職、メーフラの攻撃を一撃耐えるだけの耐久力はない。
頼みの綱の魔法も先ほどの【ボルトランス】に全MPをつぎ込んだため使えない。
フセンに打てる手はなくそのままやられてしまった。
そして最後に残ったのはジャーグルという男ただ1人。
ちなみに飛龍さんはもう既に玉座の間から退場して大空に帰っている。
「さて………私の【鑑定】が正しければあなたがジャーグルという人ですね?」
「………そうだが、何か?」
「聞けばあなた、サービス開始直後の魔族狩りを推奨したプレイヤーらしいじゃないですか。合ってますよね?」
「………そうだと言ったら?」
「どうしましょうかね?」
この世界はゲームの世界。
殺しても生き返るし拷問することもできない。
何か罰を与えるということが非常に難しい世界なのだ。
「あ、逃げないでくださいよ?」
メーフラはジャーグルが少しずつ後ろに下がることを察知してインベントリから大きな針を4つほど取り出した。
これはメーフラがイベント開始前、ゴブリンの鍛冶屋に頼んで作ってもらったアイテムである「聖銀の裁縫大針」だ。
通常の裁縫針が10センチないのに対してこの針は1メートルはあった。
メーフラはその4つの針をジャーグルの両手足に突き刺して呟いた。
「………【縫合】」
それは裁縫針で貫いた二物体を糸で縫い付けるスキル。
これは針で貫けさえすればどんなものにでも発動できるスキルでもあった。
聖銀の針で人体や革製の鎧が貫けないわけはなかった。
ジャーグルは四肢を床に縫い付けられる。
【縫合】によって縫い付けられたジャーグルが脱出するにはその巨大な針を抜き糸を千切るしかない。
だが四肢を封じられた彼にそれができるとは思えなかった。
「何しやがる!!」
「先ほどは悩んだ感じを見せましたが、やることは決まっているんですよね。やられたらやり返す、これをやります」
「やり返すだと?」
「はい。と言っても私はやられていませんのでやられた人にやり返してもらいましょう」
メーフラはフレンドチャットを開始する。
『おねえちゃん、こちられーななの!!』
「こちらメーフラです。レーナちゃん今みんなが集まっていたお部屋に来れますか? 助けてください」
『おねえちゃんこまってるの?』
「はい、ここにお怪我をしている人がいるのでお薬を飲ませてあげてください」
『わかったの! すぐいくの!!』
こうしてフレンドチャットは終了する。
レーナはグラロが危険だからとこの城の中に残された数少ないメンバーの1人だった。
メーフラはその彼女に連絡してここにきてもらうことにした。
数分待つと玉座の間の扉が勢いよく開け放たれて件の人物が姿を現わす。
「れーな、とうちゃくしたの! かんじゃさんはどこなの?」
「レーナちゃん、こっちですよ。お薬はここにあるので飲ませてあげてください」
「わかったの! れーながんばるの!」
メーフラがレーナに渡したのは回復のお薬…………などではなく出発前にレーナに渡された劇毒だ。
レーナはメーフラに言われるがままそれを受け取りジャーグルに飲ませようとする。
「やめ、何を飲ませるつもりだ!!」
「おくすりなの! にがいかもしれないけどしっかりのむの!」
「お、おうそうか?」
ジャーグルは四肢を拘束されて何を飲まされるかと思いヒヤヒヤしていたが無害そうな少女が持っている無色の液体ということで警戒心を薄れさせた。
彼の常識ではゲーム内の毒は色付きだからだ。
しかし………
「ぐええええええええ、な、なんだこれ!? ま、まず!!」
「あー! はきだしたらだめなの! ぜんぶのむの!」
レーナがジャーグルの口を押さえて劇毒を流し込む。
彼女の作った特級劇毒は無色無臭の液体である。しかし無味ではない。
その薬は一度口に入れると夏場に放置したピータンのような味が口の中に広がるのだ。
そして今、ジャーグルはそれをなみなみ口に注がれている。
MOHの世界では設定をいじらない限り痛覚はかなりの割合でカットされている。
だが、味覚に関しては初期設定のままでかなり鋭い状態だ。
設定を特に変えていない男はその腐敗物のようなものを味わう羽目になる。
何より辛いのがそれを強要してくるのが笑顔の幼女。
口も塞がれているので文句も言えない。
「ぜんぶのませたの!」
「お疲れ様です。あとは私がやるのでレーナちゃんは戻ってください」
「またこまったらよぶの!」
レーナはひとしきり薬を飲ませ終えたあと満足して戻っていった。
レーナを見送ったあと、メーフラは死にそうな顔で貼り付けにされているジャーグルを見下ろす。
「さて、どんな気分ですか? 不自由な状態でああやって笑いながらやられたくないことをやられる気分というのは?」
「…………はぁ、はぁ、この、クソ野郎、が」
「あなたが皆さんに広めたことでしょう?」
「…………」
「気づきません?」
「何がだ?」
「あなた、相当人形に恨まれていることを……」
「それがどうしたよ。そもそもこのゲームは魔族と人族とが争うゲームだろうが。人形を倒して何が悪い」
「ええ、悪いとは言いませんよ。ただ、恨まれているんだなって思いまして」
「どうしてお前にそれがわかるんだよ!!」
「だって、あなたの手足………あの頃の人形の手足に押さえられているのですもの」
「!!?」
ジャーグルは言われるまで気づかなかった。
先ほどまで聖銀の針が刺さっていた部分にそれはなく、代わりと言わんばかりに大量の人形の手が彼の手足を掴み足が彼を踏みつけていた。
そしてその手の1つがジャーグルの首元に迫りそれを圧迫する。
彼は息苦しさのようなものを感じた。
体が冷えていき、次第に声も出なくなる。
きっとこの手が原因だ。
そう思い振り払おうとするが手足が思うように動かせずどうしようもない。
「…………そういえば私、弱いものいじめって嫌いなんですよ。戦うならなるべく強い相手の方がいいっていうか………」
最後に男の耳に届いたのはそんな世間話でもするかのような軽い声色だった。
その直後、彼の視界は切り替わり復活待機場というイベントエリアで死んだものが復活まで送られる場所に飛ばされた。
待機場に飛ばされてからジャーグルは首元にまとわりつく気配を振り払おうと必死で自分の首を触った。
『イベントエリアにいる全プレイヤーに連絡します。人族の城が全壊しました。これにより魔族プレイヤーの勝利となります。繰り返します………………』
メーフラが3人を見事撃退してから1時間もたたないうちにそのアナウンスがイベントエリア内に響き渡った。
メーフラは結局使うことのなかった2つの宝石を眺めながら玉座にてそのアナウンスを聞いていた。
三ヶ日も終わったから投稿再開せんとな〜
Q、戸愚呂………ボス?
A、どこぞのコラボではちゃんとボスしてたから!
Q 、 観光名所は立体起動育成ソフトとばかり
A、ちなみにTHE・観光名所の世界で犯罪を犯すと警察が来ます。その警察のAIは神級のものを使用しております。悪いこと、ダメ、絶対。
ブックマーク、pt評価をよろしくお願いします。
追記01:04:17:18
私はこの城←誤字ではありません。
それなりに報告あがってたので一応記しておきます。





