表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/95

はーい、時間切れでーす

前回の話確認して見たら一万字超えてた………そりゃ疲れるわけだよ


「神官たち、俺にバフをよこせ!!」

アークはメーフラの射程ギリギリからそう叫び声をあげる。

近くにいてこの声を聞いた神官の数人がアークに向かって補助魔法を飛ばす。

これによりアークのSTRとVIT、AGIが平常時の6割増しになった。

この身体能力に加えて自分の剣術があればメーフラの剣をかいくぐれる。

アークはそう確信していた。


「あ、バフ祭りですか? ならば私も1つ、プレゼントです」

そこに気まぐれでメーフラが1つのスキルを発動させた。

彼女としては本当になんとなくの動作だ。

だがそんな軽い気持ちでアークには最悪のデバフである【慈悲無き紋章】をその身に刻み込まれた。


これから先、アークが受けるダメージは全て2倍だ。

だがそんなものは些細なものだろう。

メーフラ自身もバフが欲しそうだったからくれてやった程度の認識だ。

それよりも彼女の視線は今、遠方にいる友人と弟に向いていた。


「あれは……高火力の範囲魔法といったところでしょうか?」

ブツブツと呟くように口に出してそれの考察をするメーフラ。

彼女の視界の奥にはその手にバスケットボールくらいの大きさの炎の球を用意しているフセンの姿があった。


そしてそれを守るように陣取るガトの姿も。


後方支援により定期的に敵後衛はバリスタで貫かれることになっているのだが、フセンに向けられたその矢は全てガトの大盾が上方へ方向を逸らすことで防いでいた。


「彼にあれを防げるとは思っていませんでしたが……最近やっているという特訓の成果ですかね?」


メーフラの考えは正しい。

刺客の世界に行くまでのガトでは真正面から矢を防ごうとして少なからずダメージを受けていただろう。

だが今の彼は違う。

彼は盾とは壁でもあり板でもあるということを知った。

盾とは使用者の身を守ることに特化した武具だということを教えられた。


大概の盾は多少だが湾曲している。


ガトは今まで反射速度と読みで相手の攻撃を受け止めるのが主だったが今はこの歪みとも言える丸みを利用してうまい具合に攻撃を跳ねあげていた。

それによって攻城兵器たる弩の攻撃を受けておきながらガトの盾にはかすり傷がつく程度で済んでいる。

勿論、本人もその後ろにいる女性も無事だ。



「ふふっ、待たせてしまったな。じゃあそろそろ終幕と行こうか!!」


遠くを見ているメーフラにアークが襲いかかる。

近づくものに平等に振るわれる蛇のような剣の攻撃を味方を盾にし、剣で防ぎ、ギリギリのところで掻い潜った。

そして今、彼の目の前にはメーフラがいる。

彼女は未だ遠くを見て目の前の脅威に気づいていないみたいだった。


「討った!!」


アークは大上段から剣を大きく振り下ろす。

彼の目には左肩から右の脇腹まで自分の剣が通り抜けメーフラに大ダメージ確実の一撃を加えたように見えた。


だが、実際はそうはなっていなかった。


アークの剣はメーフラに届いてすらいなかった。

彼の剣はメーフラの前方50センチほど前を通り抜けただけであったのだ。




メーフラと戦ったことのある王級以下の人間が時々口にする言葉がある。

それは「あれと戦うなら目をつぶった方がやりやすい」ということだ。


創華流歩法術【幻妖華】と呼ばれる技がある。

(まぁ、そう呼んでいるのは本人だけだが……)

ざっくり説明すると相手に自分の位置を誤認させる技だ。

上体をぶらさずに移動しつつ剣の動きで自分の位置を錯覚させる技でありメーフラの得意技の1つだ。


これを使われるとどうなるか。

その結果はアークを見れば一目瞭然だろう。彼はメーフラの位置を本人がいる場所より1メートル程度自分寄りにいると誤認した。

その結果剣を大きくからぶることになったのだ。


そして目の前で晒された大きな隙を見逃すメーフラではない。


「あ、ちょうどよかった。ちょっと体、お借りしますね」


メーフラは片方の蛇腹剣をアークの片足に巻きつけた。

そしてそのまま大きく振り抜く。


「えっ、うわあああああああああああ!!」


アークはメーフラによって大きく投げ飛ばされた。

その方向には先ほどまでメーフラが見ていたフセンがいて、彼女は今まさに手の中にある巨大な炎の球をこちらに発射したところだった。


「えっ、ちょっとお!!?」


突然射線上に飛び込んできた異物に全力で焦るフセン。

彼女が放った魔法は【ファイアボム】その効果は小さな火の玉を飛ばしその着弾点に炎属性の爆発を引き起こすというものだ。


だが、彼女の放ったものはそれだけではない。

彼女はユニーククエストの達成報酬として得たスキル【蓄魔】をその【ファイアボム】に向かって使っていた。

スキル【蓄魔】の効果は通常より多くのMPを消費して魔法の威力と範囲を高めるというものだ。

ちなみに、詠唱時間も同様に増える。


その魔法威力は本来の消費MP×2の(nー1)乗のnに入れた数値倍になる。

そして今回フセンが使ったMPは彼女の保有するほぼ全てのMP1280だった。

【ファイアボム】の通常時のMP消費は20であるからフセンは通常の64倍のMPを込めてこれを作り出したことになる。


結果威力も範囲も通常の7倍の威力の【ファイアボム】が完成したということだ。



フセンとガトはこれならもし避けられても近くに着弾させれば大ダメージを見込めると考えていた。

それは間違いではないかもしれない。

だが、それはその魔法効果範囲内にメーフラを捉えられた場合に限った話だ。


【ファイアボム】は一定以上の衝撃が加えられるとそれを着弾とみなして中に秘められた炎の力を解き放つ。


そして今、フセンが放ったそれにアークが投げ飛ばされて突っ込んできたのだ。


「まずっ……」

「フセンさん危ない!!」


フセンは死を覚悟した。

アークが火の玉に叩きつけられるとともに爆発が起こり周りのプレイヤーを軒並み吹き飛ばすほどの火力が出たのだ。

ステータスのほぼ全てをINTに振り分けている自分では耐えられるものではない。


フセンの作り出した業火はアークと火の玉が正面衝突をした地点から半径30メートルのプレイヤーを焼き尽くした。

魔法抵抗の高い魔導師や神官系のプレイヤーはなんとか耐えることができたものもちらほらいたが、さきほどまでそこで騒いでいたものたちのほとんどが炎が収まる頃には消え失せていた。


だが、そんな中フセンは生き残っていた。

彼女の前には1つの壁が立っており、それが荒れ狂う爆風と熱を大幅に軽減したのだ。

また、メーフラがなんとなくつけた慈悲無き紋章がアークが死ぬまでの間ダメージをカットしてくれたこともあったのだろうが、それでも彼女は生き残った。


だが、代償もあった。


「ふぅ、大丈夫ですかフセンさん」

「ちょっ、ガトくんこそ大丈夫なの!!?」

「HP的には………1割切ってますね。それに火傷の異常で少しずつ減ってる」

「ほら、これ使って!!」


フセンの前に壁として立ちふさがったガトは燃え尽きる寸前だった。

フセンは慌ててインベントリから中級回復薬を取り出してガトに振りかけた。

それによってあと1分も持たないだろうガトのHPバーが真ん中あたりまで盛り返した。


「ありがとうございます。これでまた守れますね」

「もう、あんまし無理しちゃダメだぞ!」

「それは………いいえ、これくらい無理なんかじゃありませんよ」

「それよりどうしよう。作戦失敗しちゃったけど……今の私たちがメーフラちゃんにひと泡ふかせられそうな唯一の作戦だったのに」

「まだ諦める時じゃないですよ。もう一度やりましょう。幸いまだ前衛が全滅していませんし後衛もそれなりに残っています」

「そう、だよね。ここで諦めるようじゃメーフラちゃんに攻撃を当てるなんて夢のまた夢だもんね。もう一回準備するからまた守って!」

「了解!!」


ガトとフセンはまだ諦めていなかった。

しかしフセンのMPは空っぽ寸前だ。だから彼女は周りのプレイヤーに心の中で一言謝ってからそのスキルを発動させた。


今回発動させたのは【吸魔】というスキルだ。

その効果は半径20メートルの生物から1%ずつMPを徴収するというものだ。

先ほどの大爆発で空白地帯ができてしまったこの場所だが、少しすれば押し寄せる軍勢がまたその穴を埋めていく。

MPの徴収先には困らなかった。


そしていくら1%ずつと言えどもこれだけ数がいればフセンの器くらいなら簡単に満たすことができる。


「よしっ、じゃあ改めて詠唱開始………多分【ファイアボム】は味方に被害を出すだけだから魔法選びは慎重にしないとね」


そうしてフセンは習得している魔法の中から何がいいか選び始める。

戦場でそんなことを悠長にやっている余裕があるのか?と問われると割とある。

そもそも詠唱時間がかなり長くなるのだ。このくらいは誤差だ。


しかしフセンが魔法を選び始めたその瞬間、人族たちにとっての2つのリミットが訪れた。

その1つはアナウンスという形で伝えられる。


『イベントエリアにいる全プレイヤーにお知らせします。人族の資材砦が破壊されました。繰り返します。人族の資材砦が破壊されました。』


そのアナウンスはその場にいる人族たちに動揺をもたらした。


ーーーーーーーあまりにも早すぎる。


誰もがそう思った。

なにせイベントが開始してからまだ3時間も経っていない。それどころか2時間経っているかどうかも怪しい。

お互いの向かい合う砦から砦までの移動時間は自分たちが約1時間ほどだと証明はした。


だから実質的に1、2時間で砦が落とされたことになるのだ。

結構な数攻撃に出張っているとは言っても防衛側もそれなりに数がいたはずだった。

それならば短時間で落とすには魔族側も数を揃える必要があるはずだ。


しかしそれだけの大群を自分たちはここに来るまで確認していない。

もし迂回したとしたら攻略時間はもっと少ないことになってしまう。


彼らの頭に湧いたそんな謎が動揺となり現れた。


だが、彼らが気にするリミットはそれじゃない。

目の前の人形が第2段階に入ったのだ。だがそれは見た目からはわからないからまだ気づいていない。


しかし本人はそのことにすぐに気づいた。


「おや? おやおや?」


メーフラは蛇腹剣を無造作に振り切った。

そして確信する。

ーーーーー越えた、と


何が越えたのか、それは彼女のSTRの値が一定値を越えたのだ。

メーフラはここまでずっと戦い続けてきた。

それによりスキル【ギアアップ】が延々とステータスの上昇をし続けていたのだ。

【ギアアップ】のステータス上昇は本当に少しずつだ。

だからこそ、人族プレイヤーたちはメーフラの動きが少しずつ速く、そして攻撃が少しずつ重くなっていることに気づかなかった。


そしてそのまま一線を越えてしまった。

その結果どうなるか。



今までメーフラはほぼ動かずに戦っていた。

その理由はいろいろあるが1番の理由としては蛇腹剣の引き起こす遠心力に耐えながら振り切るには足の力を存分に伝える必要があるためだ。

そのためには足を止めてしっかりと地面を踏みしめる必要があった。


だが、それもこれまでだ。


彼女の上がり続けたSTRがすでに腕の力だけで蛇腹剣を完全に制御できるレベルまで達していた。


「さて、砦もちょうど落とせたらしいですし、予定通りここの敵を全滅させましょう」


そして今まで迎え撃つだけだった最強の人形が動き出す。

今度は守るためではなく、倒すために。

資材砦が落ちてしまえば城から砦への転移によって戦力を増やされることもない。

戦線復帰してくるものがいない。


そこらへんの懸念が全てなくなったメーフラが走り出した。


「お、おい! あいつ走り出したぞ!!」

「ほんとだ。何をするt………」

「ぎゃあああああ!!」

「ちょっ、あれ動きながら攻撃できるのかよ!」

「タンク、タンクーーー、あいつを止めろお!!」


急に動き出したメーフラに人族は戦々恐々としている。

メーフラの目はただ敵の多い場所を探すことを最優先していた。

そして見つけた場所に飛び込んでその範囲内の敵を一方的に蹂躙する。


初めは蛇腹剣の刃を数多く当てなければ倒せないほどの攻撃力しかなかった蛇腹剣だったが、今は上がりまくったSTRのおかげで攻撃力もとんでもないことになり始めている。


それまで中距離単体攻撃程度の武器であった蛇腹剣が今では中距離範囲攻撃武器に変わっている。


メーフラが敵陣の真ん中で舞えば周りにいるやつらはなすすべもなく消えていく。

その剣はもはや蛇ではなく、獲物を食い散らかす龍へと変貌していた。


「俺たちに任せろおお!!」

「張り切ってくぞー!!」

「いくぞお前ら!!」

「準備はおっけー?」


そんなメーフラに対して槍を持った集団が束になって突撃してきた。

メーフラもそれを素早く察知する。

すると何を思ったのか彼女は片方の剣を上に向かって投げ捨てた。


「あ、それはもう耐久がないのであげます」


彼女の剣は長い戦いで耐久値がすり減っている。

丈夫な金属であるミスリルだがあれだけの敵を切れば耐久が減りもする。

メーフラは飛んでいく剣のことはもう半分忘れて自分のもとに突っ込んでくる槍兵たちを【鑑定】で見た。


「ふむ、ジャーグルというプレイヤーはいませんか」


それだけを確認した彼女は跳躍したかと思うと空中で反転して最前列にいた男の頭の上に先ほど剣を投げ捨てて空いた片手で逆立ちをした。


そしてその後逆の手で剣を振り抜いた。

人間の首の高さで地面と平行に薙ぎ払われる致命の刃はいったいどれほどの命を奪っただろうか?


メーフラは足場になっていた男がバランスを崩す前に、そしてドレスのスカートが重力に従って落ちてくる前に再び地面に降り立ち蹂躙を始める。


彼女の手にはもう既に新しい聖銀の蛇腹剣が握られていた。

















今日、魔族の資材砦を落とそうと集まった人族プレイヤーはその後強くなり続けるメーフラ1人に全滅させられたのだった。



Q イベントも終わってねえのに番外編だなんだって白けるだけだろやめろよ

A じゃあ番外編までにイベント終わらせればいいんだな?

というか24日分はもう書き終わってるし25日分も大量のボツを生み出した結果書くことは決まってるから今更やめろと言われてもボツになったストーリーが可愛そうというか………まぁ、クリスマスまでにイベント終わらせる手もあるからね。頑張ってみるよ。ダメだったらごめんねー


Q アーク君はいろいろと残念なお方。何行持つだろうか?

A行数で言えば割と生きてましたね。彼は上手い人のプレイ動画を見て自分が強くなったと勘違いするタイプの人間です。


Qレーナちゃんの将来は笑顔なマッド?

A 根がいい子だからきっとそんなことには………


Q、イベント終わった後MOHと刺客である程度ユーザーの交換現象が起こりそう。

A 実は刺客はパッケージ版しかない上に割とレアなので手に入れるのには一苦労です。

弟の強化イベントが割と遅めに始まったのは漣家の財力を駆使してそれを手に入れるための期間があったからなのさー!!(今作った設定)

まぁとりあえず刺客からは来る人いるかもしれませんが刺客に行く人はいません。

というかこっちの一般の人が行ってもすぐ帰って来るでしょ


Q これは誤字では?

A あ、指摘ありがとうございます。誤字が多いってのはもうこれ作者の仕様だな。

なるべく減らそうという努力はしてるのですが中々減らないんですよね。

………し、執筆している時間が悪いだけだし!!


ブックマーク、pt評価をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

doll_banner.jpg
お姉ちゃんの頑張りが書籍化しました。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ