斬れない敵は総じて怖い
『BOSSとは。特別な進化を経た魔族のことです。通常の進化よりステータスが高くなりますが、その代償として3人分のパーティ枠を取ります。また、通常のプレイヤーのアイコンは緑色で表示されますが、プレイヤーBOSSのアイコンは赤黒い色で表されます。BOSSプレイヤーを倒すと特別な素材をドロップします。』
私はヘルプに追加されたBOSSの項目を見ながら唸る。
BOSSになれたのは結果的にいいと思う。
もともとBOSSプレイをやるつもりだったしそれをシステム側が保証してくれたと考えれば当初の目的に沿っていると言える。
だけど私を悩ませるのは最後の一行。
BOSSプレイヤーを倒した際に特別な素材をドロップするというもの。
先のアナウンスによれば私がはじめてのプレイヤーBOSSであるらしい。つまり現状その特別とやらを手に入れるには私を倒すしか無くなるというわけだ。
「これ、素材狙いの人たちがおそってきませんかね? アイコンの色でBOSSってことはすぐばれますし」
とても不安だ。
人族に襲われるのはいいとして、魔族側からも襲われたらどうしようかと考える。
そうなればソロプレイ必須だからだ。今のうちのデスペナルティについて確認を取ったほうがいいかもしれない。というわけでヘルプ。
『デスペナルティ人族:人族は死亡して神殿などで蘇る度に所持金の4割と保持しているアイテムの一部、そして経験値がレベルに応じた数値減少します。また、死亡原因が他のプレイヤーにある場合そのプレイヤーに減少値が付与されます。
デスペナルティ魔族:魔族プレイヤーは死亡すると所持金の4割と自分の種族に応じた素材をドロップします。また、死亡後一定時間全てのステータスにデバフがかかります。』
おや? ヘルプを読んでいる限りだと魔族プレイヤーの方がデスペナルティが軽い?
お金を落とすのは共通として人族はアイテムという資産を落とすのに対して魔族は素材ドロップ。
つまり金銭的ダメージ以外は無しだ。
「これを見ていると人族と魔族はかなりシステム面で違いがありそうです。暇を見つけてヘルプを総ざらいしてみるのもいいかもしれません」
しかしそれは後回し。まだ確認するべきことが残ってる。
それは進化時に覚えたスキルの詳細だ。
新しく増えたスキルは【無慈悲】【頑強】【信念】の3つだ。1つずつ確認していくとしよう。
――――――――――――――――
【無慈悲】
悪人に慈悲などいらない。善人でも敵対するなら斬り伏せる。
攻撃対象のカルマ値によってダメージ増加
1.1倍〜2.0倍
――――――――――――――――
【頑強】
ダメージを2割軽減する。
――――――――――――――――
【信念】
同一行動をとり続けた場合その効果が上昇していく。
――――――――――――――――
「【無慈悲】が悪人特攻、【頑強】が耐久強化、【信念】はちょっと図りかねますがおそらく連鎖効果が見込めるようになるということでしょうか?」
どのスキルも使いどころによって強力だ。それも全てパッシブスキルなのでスキルを使う習慣のない私からしたら気にしなくても良い分気が楽なスキルだ。
「さてと、一応確認することも終わりましたし今日も人狩りを始めますか」
私はセーフティエリアから出て森の中を歩き始めた。
だが今日エンカウントしたのは通常このあたりに生息している魔物だけで昨日あれほどいた人族プレイヤーは見つからなかった。
どうやら祭りは昨日の時点をもって終了したみたいだ。
人形プレイヤーにも出くわさなかったから単純に獲物がいなくなって帰ったのだろう。
「それならここにとどまる必要もありませんね。私も街に向かいましょう」
私は森を出た。地図などはもっていないが一方向に歩き続ければ森を抜けることは容易だ。
そしてそこから見えている道に沿って歩けば街に着くことはできるだろう。
魔族のホームタウンとなるであろう場所はどっちに進めばいいかわからないが、人族の街についたらその時はその時で堅護の様子でも見に行けばいいやと考えて適当に歩いた。
「ええっと、この道が多分こんな感じに続いているはずですから、ここは道を外れてこの方向に行けばショートカットになりそうですね」
途中私は街道の曲がり具合をみて唐突にそんなことを思いついた。
そして忘れていた。
自分がかなり方向音痴だということを度々周りの人間から言われていたことを。
決められた道を歩いている限り問題はないのだが、少しルートから外れるとまともに目的地に着かないことを。
結論から言おう。
「あれ? ここはどこですか?」
全く別の場所についた。それも街というよりは
「何でしょうここ、不気味です。何かでこんなものを見たような――――あ! そうです! カタコンベとかいうやつです!!」
地下墓地だった。
「ですが不思議ですね。どうしてこんな場所についたのでしょう? 私の予想が正しければそろそろ街に着くはずなのですが」
この少し後に知ることになったが、この地下墓地は魔族の街「ケイオール」から南に4時間の場所である。
このゲームの中では現実とは時間の流れが現実の1日がゲーム内の4日となっているため、実時間にして1時間はかかる計算である。
「せっかくたどり着いたんですし、少し探索してきましょうか。ゲームで墓地といえば何かレアなアイテムがあってしかるべきですし」
それはそれとして探索開始だ。
軽い囲いだけ作られた下りの階段を軽快な足取りで降りていく。
その足音は墓地にふさわしくないものだった。
私が地下に足を踏み入れるとそこには出待ちのファンの皆様が。
まずファン第1号 どこはかとなく腐臭のするボロ布を纏ったお兄さん。
そして第2号 ちゃんと食べているのかと不安になる程やせ細り真っ白な肉体を見せつけるお姉さん。
はい、ゾンビとスケルトンですね。
「地下墓地ということで出現するのはアンデッド系ですか」
とりあえず、ゾンビとスケルトンのクビを一撃ずつ切り裂いてみる。
するとゾンビは一撃で死亡したがスケルトンはなんとか持ちこたえていた。
「定番の斬撃耐性とかもってるんですかね? もう一撃、あ、動かなくなりましたね」
BOSSに進化したことによってステータスはかなり上がったけどスケルトンが即死しないことを見て耐性持ちだったと予想を立てた。
もしそれが当たっているのならスケルトン系は苦手な相手になりそうだなと考えた。
だが、現状1発即死が2発になっただけなので私は気にせず前に進む。
ちなみに、ドロップアイテムはゾンビが腐肉でスケルトンが骨だった。そのまんまだ。
ある程度地下墓地を歩いて回るとさらなる地下へ続く階段を発見した。
「この階層はゾンビとスケルトンがいるだけでしたし、降りても大丈夫そうですね」
私はスルスルと階段を降りていく。降りた先には私のファンの3号が出待ちしていた。
ファン3号はとっても照れ屋さん。全身鎧に引きこもって盾まで持っている。それに加えていかにも破壊力がありそうな手斧。
はい、リビングアーマーというやつですね。
カテゴリで言えばアンデッドだと思います。
リビングアーマーは私を見るや否や即座に手斧を振り上げて切りかかってくる。
ただ、動き始めは速いが肝心の動きが遅い。
少し横にそれるだけでその変化に対応できずに手斧は地面を叩いた。
地面を叩いた手斧がほんの少しだが床に突き刺さっている。
見た目通り攻撃力は高そうだ。低速アタッカーというやつだろう。
私はとりあえずリビングアーマーを斬ってみる。
いつも通り首元を狙ったが、兜が飛んでいくだけでダメージが入った様子があまりなかった。
頭を失ったリビングアーマーはその場で一度ワタワタしてから飛んでいった兜を拾いに行った。
「ちょっと今の動作可愛かったですね。ではなく、首を切り離しても死にませんか。となると鎧自体を壊した方がいいんでしょうか?」
どう倒すかと思案していると兜を付け直したリビングアーマーが帰ってくる。
そのまま逃げるということはしなかったみたいだ。
そいつはこちらに向かってくる最中に助走をつけて今度は勢いをつけた手斧振り下ろしをやってきた。
ただ悲しきかな。速度がまだまだ足りない。
私にぶつけるには速さも技も足りなすぎた。
軽くいなして私は今度は鎧の腹のあたりを切ってみる。
金属製の鎧だが私の技量があって切れないものではない。
なにせ『THE・剣豪』の世界の剣王級以上は木刀で鋼鉄に大きな傷をつけられるのだ。
剣神級最強まで上り詰めた私なら、青銅製、つまりは金属製の剣を持って金属の鎧程度両断できないはずがない。
私の一撃はリビングアーマーの腹を輪切りにして両断した。
リビングアーマーの腹から上が地面に落ちて動かなくなる。
「これだけ綺麗に切ればまだ動きそうなものですけど、どうやら鎧としての機能を失ったあたりで死亡判定みたいですね」
今度から鎧系の敵が出たら切るのではなく壊すといった感じに攻撃しよう。そうしよう。
そう結論づけて私は地下墓地探索を再開する。
すると待ち望んでいたものが見つかった。
「おぉ! あれは宝箱ですか」
私がこの地下墓地を探索し始めてそこそこの時間が経っていた。
そこで目の前に現れた目に見える成果。
私は一も二もなく飛びついた。
そしてなんの警戒もせずに宝箱をオープンする。
――――プシューーー!!
「きゃっ、なんですか!?」
宝箱を開けた瞬間、その中から紫色の煙のようなものが噴出された。
「こ、これは毒!? まずいですよこれは。解毒薬なんてものは 持ってないし、そもそも持ってても人形なので使えません。あれ? 人形?」
私はステータスを確認する。
毒どころかその他の状態異常にかかっている様子はなかった。
「ああ、そうでしたか。人形は異常耐性高い上に薬品無効ですものね」
未だに自分の特性を把握し切れていなかった。
さて、それはそれとして宝箱の中身はなんじゃろな?
「っと、これは布? 肌触りはかなりいいですね」
困った時はアイテム詳細を見るのが確実だ。
――――――――――――――――
素材 布 (未鑑定)
詳しくはわからないが多分いいものだろう
――――――――――――――――
「困りました。【鑑定】のスキルってどこで取れるんでしょうか」
わからないものは仕方ない。とりあえずいいものっぽいし持って帰るとしよう。
ただ、インベントリがいっぱいなので代わりにいらないアイテム、――具体的には骨とか腐肉とか大量にある青銅具――を宝箱の中に置いていこう。
これで次に来た人もドキドキ感が味わえるよ。きっと開けたらがっかりするだろうけど。
私は念入りに宝箱を閉じた。
そこでふと思いつく。
「一応、もう一度開けてみますか」
カパっ――――プシューーー
「成る程。何度でも発動するタイプの罠ですね。これは次に開けた人は罠も踏むしアイテムしょぼいしでかわいそうです。願わくば、私みたいに毒が効かない人があけてくれることを」
さて、じゃあ宝箱も開けたしそろそろ次の階層にでも行くとしよう。
実はこの少し前に次の階層への道は見つけていた。
しかしくまなく探せば何かあるかもと思い進むのは後回しにしていたのだ。
「さーて、新しいファンはどんな方でしょうか?」
どうせ降りたら魔物が1体は出待ちしているだろうと考えながら階段を降りる。
そしてそこには当然のごとく出待ち勢がいた。今回は珍しく3種類だ。
まずファン第3号 2階層に渡って出勤してくる偉いやつ。
そしてファン第4号 体が薄くなっている女性
最後にファン第5号 少し清潔になって腐臭がなくなった第1号くん。
私はその三体をみて内心慌てていた。
「まずいですよ。とりあえずリビングアーマーとゾンビ改はサクッと倒すとしまして、お化けがいます。これはどうしようもありません」
だってどう考えても物理攻撃効きそうにないんですもの。
ゾンビ改とリビングアーマーは一撃ずつでちゃんと倒せた。
だが問題となっているお化けはどうしようか。
「もしかしたらあの見た目で物理攻撃当たるかもしれませんし、やって見るだけやってみましょう」
私は自分のできる最高の一刀を半透明の女性にお見舞いした、が無駄。
当然のごとくすり抜けてしまった。
そしてその行動に怒ったのかお化けから火の玉が飛んでくる。
「これだからお化けは苦手なんです。切れないなんて恐怖でしかないです。というかこんなところで火なんてつかわないでくださいよ」
私は逃げ出した。
降りて来た階段を全速力で駆け上がる。そしてお化けが追ってきていると困るのでそのまま地下墓地の外まで走り抜けた。
そしてそこで振り返りお化けが来ていないことを確認してから一言。
「今度来る時は対抗策を持ってきますからね。その時は覚悟してください」
その声はどこか震えていたという。
皆さんたくさんの感想をありがとうございます。感想でいただいた疑問等は返信で返してもいいかなと思ったのですが、同じ疑問を持つ方もいるかもしれないのでこの場で返していきます。
Q 弟の名前って結局どれなの?
A 堅護が正解です。それ以外のは誤植ですのでこれを投稿し終わったら修正に向かいます。
Q タイトルが『THE・剣豪』なのに騎士級とか違和感。足軽級とかじゃないの?
A この作品に度々出て来るであろう通称『THE』シリーズと呼ばれるものの第一弾が西洋ものでありそれ以降は全てそのシステムを転用しているという設定があります。その為仮に『THE・魔法使い』というタイトルがあったとしても宮廷魔導師級、などではなく騎士団長級として判別されます。
Q 魔族不遇すぎない?魔族を選ぶ利点は?
A主人公がボスへ進化したことからもわかると思いますが魔族のコンセプトは強大な個です。圧倒的なステータスで粉砕する感じですね。
ただし魔族はその種族ごとに明確な弱点が設定されて降ります。その弱点を補填させないて目にメイン職というものがなくなり、自由なステータス振りができなくなっているということです。
序盤に狩られているのは人族がスタート地点が一緒なのに対して魔族は種族によってはフィールドに生まれます。つまり特定の種族は少数の中で限られたエリアにいることになり、また変更しない限りリス地がそのどこかに押し込められるからです。
Q脳波の伝達速度の関係上表現を変えたほうがいいかも
A主人公が人間やめているとだけ認識できればいいのですが、一応少し書き換えておきます。
Q その他誤植
A 直しておきます。
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