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乱れない街(下)

 放課後。

 今日は早く帰ってくることが出来た。

 部屋に入ると既に彩夢の姿があり、何やら真剣な表情で本を読んでいる。


「読書?」

「学校の課題図書なんです」

「へぇー。最近の小学生は大変だ」


 わたしは何の気なしに、彩夢の隣に座る。

 しかし、やることが無いのでどうにも暇を持て余してしまう。彩夢は真剣に読書をしているから、邪魔するのは気が引けるし・・・。

 でも、この日はちょっとばかり好奇心の方が勝ってしまった。


「よいしょ」


 ちょっとばかり、テーブルの位置をずらすと。


「えいっ」


 彩夢の膝に向かって、頭を下ろした。

 ぷにぷにの太腿の感覚が、部屋着のスカート越しにも伝わってくる。


「ちょ、歌子さん?」

「えへへー、こうしてるだけだから。良いでしょ?」


 ああ、本当に太腿の感覚がすごくいい。

 わたしの頭を包み込んでしまいそうな柔らかな肉付き・・・、さすが彩夢としか言いようがない。


「もうっ、膝枕だけですよ?」

「うん。わかってるわかってる」


 彩夢の膝に頭を預けていると、それだけで安らぐ。目を瞑ると、そのままゆっくりと呼吸を整え、睡眠のサイクルに入ろうとする。

 しかし、少しだけ西日が眩しい。手を目の前に持ってこようと、動かしたのがまずかった。


「ひゃっ」


 彩夢の膝に手が触れてしまい、それに反応してかわいい声を漏らす。


「だ、ダメだって言ったじゃないですかっ」


 顔を真っ赤にさせて、ちょっとだけ怒る彩夢はとてつもなく可愛らしかった。


「ち、違うの今のは・・・」


 おや、でも待てよ。


「ねえ。彩夢」

「なんですか」

「彩夢って、わたしのおかあさん・・・、だよね?」

「そ、そうですよ」

「しかもお互いのことが好き。間違いないよね?」

「はい・・・」


 なんだかよくないことが起きそうな雰囲気を察した彩夢の語尾が、どんどん小さくなる。


「じゃあ、彩夢の身体にわたしが触ってもいいわけだよね?」

「え、ちょっ」

「こんな風にさっ」


 手を彩夢の脇に持っていって、こしょこしょとくすぐる。


「きゃっ、何するんですかっ」

「こしょこしょー」

「や、やめてください歌子しゃんっ、ひゃ、あぁ」


 悩ましげに漏れ出る声が小学生なのに妙に艶っぽくて、どんどん続けてしまう。


「ほら、もっとかわいい声聞かせて」

「ひゃんっ、あ、んくぅ・・・、や、やめ、て・・・くだしゃっ・・・いっ、お、怒りますよっ」


 くすぐりを続けると、さすがの彩夢も怒りのメーターが溜まっていくように口調が強くなる。

 この辺が止め時だと、手を止めると。


「はぁ、はぁ」


 少し汗ばんだ肌が、紅潮している。彩夢の吐息は荒く、目も虚ろな感じがたまらなくえろい。


「い、いたずらは・・・」


 しかし、そんな中でも彼女はお母さんであることをやめなかった。


「めっ!」


 ちょこん、と頭にチョップを食らう。


「です!」


 そして、彩夢は腰に手を付け、子供を諭すように続けるのだ。


「おかあさんが何かしてる時は、邪魔しちゃダメです。あとで・・・いっぱい、遊んであげますから」


 ここまで言われちゃ、しょうがない。


「はぁい」


 半分納得、もう半分はあと少しだけ続けたかったと言う後悔というか、後ろ髪を引かれる気分。彩夢を徹底的に困らせてみたい気もするけれど、わたしはそこまで悪い子供じゃない。おかあさんに言われたことは、ちゃんと守るタイプの子供であるつもりだ。

 結局、彩夢の読書が終わるまではわたしも宿題を片づけることにした。

 数学と現国の宿題が出ている・・・。めんどくさいけれど、やるしかない。わたしも彩夢の隣で、カリカリとシャーペンを動かし始めた。


(んー・・・)


 難しいな。勉強は苦手じゃないけれど、それでも結構難しい宿題だ。さっきまでくすぐり攻撃をしていた疲れもあって、なかなか集中できない。


「・・・」


 それを、じっと見ていた彩夢が。


「お茶でも淹れましょうか」


 と言って、席を立った。


「ありがとう」


 こういう時のこういう細やかな気遣いは、彩夢にしか出来ない事だと思う。


「今日は紅茶ですよ。チーズケーキは隣のおばあちゃんから貰いました」

「わ、良いねコレ」

「ご飯前ですから、食べ過ぎないように気を付けてくださいね」

「うんうん」


 宿題でお腹が空いてきたときにちょうどいい。

 一斤のチーズケーキと紅茶で頭と体力、両方を回復させ、宿題に挑む。

 その途中で。


「私の方は読み終わりました」


 彩夢はぱたんと本を閉じ、その場でじっとしている。


「・・・」


 わたしはわたしの方で宿題がなかなか終わらない。

 この問題・・・、かなりやりおる。


「あの」

「ん?」

「隣、行ってもいいですか?」

「いいけど、わたしも宿題の途中だよ?」

「隣に居るだけで、いいんです」

「じゃ、どうぞどうぞ」


 彩夢に限って、わたしみたいにくすぐりをしてくることもないだろう。少しだけ足をずらし、彩夢を隣にお迎えする。

 それからの彩夢はホントにじっとわたしと宿題の両方をにらめっこしているだけで、何もしてこなかった。わたし自身、彩夢と言う愛しい彼女の前でみっともない姿は出来ないと、宿題が結構捗ったのは嬉しい誤算だったのかもしれない。

 ロリ勉強法か・・・。


(いける)


 何がいけるのかは分からないが、とりあえず宿題がどんどん進んでいくので、勉強法としては間違ってないのだろう。

 ものの数十分で宿題は片付き、


「できたー!」


 と、ノートを鞄にしまうと。


「きゅぅ・・・」


 ばたん。

 わたしはまた、隣の彩夢の膝枕に倒れ込んだ。


「もう、歌子さん。しょうがないんですから」

「イチャイチャが足らない・・・」

「え?」

「勉強したからイチャイチャが足らないのーっ」


 もうだめだ。宿題のせいで甘えたいゲージがもうほぼゼロになっている。彩夢に甘えないと、死んでしまう。ここからは思いっきり、甘えてやるんだから。


「そ、そんな事を言われましても・・・」

「イチャイチャしたいーっ。してーっ」

「してって、何を」

「彩夢の考えるイチャイチャを思いっきりやってみてください」


 それを聞いた彩夢は、はあと息を漏らすと。


「ちょっとだけ、ですよ」


 と、渋々オーケーを出してくれた。でも、わたしには分かる。


(彩夢だってしたいくせに)


 口実が欲しいんでしょ。

 ほら、口実はあげたから。素直になってみなよ。


「じゃあ」


 と、彩夢はわたしのほっぺに手を当てる。まるでふわふわの綿菓子を撫でるように、優しく、ゆっくりと。


「ん・・・」


 顔を優しく触られると、少しくすぐったくて気持ちいい。そのまま輪郭をなぞると、喉の方に手をまわし、手探りするように喉を撫でる。


「くふぅ」


 ちょっと、くすぐった過ぎる。でも、それも口から出せないもどかしさ。切なさみたいなものも感じる。


「気持ちいいですか」

「すごくいいです・・・」


 頬や喉を優しく撫でられ、そのまま逆方向の頬へ彩夢の手は伸びてく。そしてもう片方の手で、頭を撫で。


「よちよち」


 と、小さな声で囁く。


「よちよーち」


 それがまたたまらなく甘ったるい声で、甘えたいゲージがぐんぐん上昇していくのが分かった。


「おかぁさぁん」


 わたしはわたしで、彩夢の服をぎゅっと掴んで、手にこちらから顔を当てていく。


「おかあさん、好き」

「私も、好きですよ」

「わたしの方がもっと、ちゅき・・・」

「私だって、負けませんよ」


 しばらくじゃれついていると、なんだか口の中も甘い物が欲しくなってきた。


「おかぁさん、チョコ、ちょーだい」


 机の上に置いてあった、勉強した後用に買っておいたチョコがあることを思い出したのだ。


「チョコですか? またご飯食べられなくなっちゃいますよ」

「食べる・・・。食べるからぁ、チョコぉ」

「うぅ。しょうがないですね、歌子さんは」


 彩夢はチョコをひとかけら、摘まむと。


「はい、あーん」


 と、それをわたしの口元まで運んできてくれる。


「あー・・・」


 口を開いて待ち構えていると。


「んっ」


 彩夢の指ごと、ぱくっと口の中に入れた。


「う、歌子さっ!? 指が・・・」


 だけど、わたしは指も欲しかったのだ。チョコと一緒に、彩夢の指をしゃぶりたかった。

 お母さんの指って、むしゃぶりつきたくなるじゃない?


「んちゅ」


 チョコを舐めとるように下を遣うと、彩夢の指にも舌先が当たる。


「う、歌子さぁん・・・、くすぐったいですよぉ」

「ちゅぷ」


 しかし、彩夢のいう事には耳を貸さない。チョコも指も、両方舐める。チョコが段々溶けてきて、それが指に絡まってドロドロと水っぽさと甘さが口の中にいっぱいに広がり、その中心には彩夢の柔らかな指先があった。


「ちゅぱ」


 きちんと切りそろえられた爪。

 小学生を思わせる、細くて小さな指。

 ぷにぷにでやわからな肉付き。すべてが最高だった。


「ぱっ」


 溶けたチョコを舐めとるように舌で何度も指を舐め続ける。そのたびに彩夢は顔真っ赤にさせて、そして途中からは声が漏れないように、もう片方の手で口元を押さえ、目をぎゅーっと瞑って必死に声を出すのを我慢している。


 ―――我慢しなくていいんだよ、彩夢のかわいい声、聞かせて

 そう言いたかったけれど、何せ指とチョコをしゃぶっているから、言葉を発することが出来ないのが残念でしょうがなかった。甘さで口の中がいっぱいになり、だんだんドロドロとしたチョコの感触が無くなって、唾液と彩夢の指だけの感触にある。

 最後にチョコを全部舐めとるように少し力を入れて指を舐めると、その勢いのまま。


「んぱっ」


 彩夢の人差し指と親指が、わたしの口から出ていく。まるでわたしの名残惜しさが形になったように、その指からは唾液の糸が引かれており、途中まで伸びていたがすぐに切れて、夕陽が差し込む部屋の中でキラキラに光ってはすぐに消えてなくなっていった。


「あ、あ・・・」


 彩夢は自らの指を見る。

 わたしも見る。

 そこにはふやけた指先と、わたしの唾液がちょっとだけ残っていて。


「何するんですか、歌子さんのバカー!」


 この後、メチャクチャ怒られました。

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