第4節:プロセルピナ
もっと英語に強くならなければ……
何故眼球の復活についての話が彼女の職業の話になるかというと長くなるが、短くまとめることも可能である。英語で言うとサマライズ。要するにこの世界では、一般的な医療は医師によって行われるが、常軌を逸した医療はホワイト呪詛師らによって行われるのだ。なお、医師に免許は必要だがホワイト呪詛師には免許は必要ない。よりフリーな世界である。
もちろん、ホワイトとわざわざ名乗っているくらいなのでホワイトでない呪術師もいる。すなわちこの世界には二種類の呪詛師がいるのだ――ブラック呪詛師とホワイト呪詛師、およびそれ以外の呪詛師である。前者は破壊、呪詛、殺傷などダークな仕事を担当し、後者は医療、略奪、諜報などライトな仕事を担当する。なお、それ以外の呪詛師はそれ以外の仕事を担当する。
そもそも呪詛師とは所謂ファンタジーものでの『魔法使い』とは似て非なる存在である。実はこの世界にもちゃんと魔法使いは別にいて、そうした魔法使いたちは市街に結界を張ったり、魔物を討伐したり、さらには魔道具を設計製造して一般向けに販売しているらしい。が、呪詛師が行うのはもっぱら地味な呪いの類である。
こう聞くと一見呪詛師って魔法使いの下位互換じゃね?などという疑問に全身を包まれて窒息してしまう事かと思うが、実際やっていることは似ていてもそのプロセスは全く別の物だそうである。ツカサによると『魔法使いは外部の力をうまく変換してなんか形にしてんだけど、呪詛師ってぇのは自分自身の中にある力を行使してワーって世界に働きかけんだ』だそうだ。疑問は氷解、無事呼吸は確保された。
さっき免許が不要等と書いてはいたが、そのホワイト呪詛師とやらも意外と馬鹿にならない――というのも俺の視力が見事復活したからだ。眼球を抉られる体験も新鮮だったが、そこから新たな眼球が生えてくる体験もまた(also)新鮮だった(正直新鮮なんて生易しいモノじゃなかったが)。なんか境遇とかがかわいそうだから無賃で治療してくれたらしい。まったく、タダより安い物はない(但し金額≧0とする)。そして馬にも乗せてくれた(栗毛の綺麗な馬だった)。人生初2ケツ。しかも先ほど相手のツカサさんは同年代の女の子であることが発覚したのだ(やはり視力は便利である)。この幸運、まるで自分がネットで流行りの異世界転生ラブコメの主人公になったような気分だ。もっともラブコメでは妖精さんに眼球を抉りだされたりはしないが(この辺りがこの小説の異彩を放つところである)。
同刻。
――宙界の柘榴を口にしたものは宙界のモノに――
――自ら望んだならなおのこと――
――だからきっと、もう二度と此処に春は来ないのでしょう――
――https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9A%E3%83%AB%E3%82%BB%E3%83%9D%E3%83%8D%E3%83%BC――
書き終わってから気づいた。この節、セリフがない。