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エピローグ

「――母ちゃん、性転換ってどういうことだよ?」

「あら? 言ってなかったかしら」

 異世界から戻って来て初日の学校生活を終えた渉は、帰宅するとすぐに、紹子とエレナに事情を確認した。

「……そうか。やっぱり、エレナがオレの代わりをしていたのか」

 渉の言葉に、エレナは決まりが悪そうに頷いた。

「ワタシは無理があると思ったけど、そうしないと『この家の敷居はマタがせない』ってショーコに言われて……」

「ひどい! 横暴だ!」

 渉はエレナに同調したつもりだったが、彼女も紹子もじろりと渉を睨み返した。

「「お前が言うな」」

 二人の声がハモった。

「あう……ごめんなさい」

 渉は意気をくじかれて、小さくなった。

 コホンと、紹子が咳払いをした。

「まあ、無理があるのはわかってたけど、学校側からもさすがにこれ以上欠席したら留年確定だって言われたしね。物理的に出席したことにすれば問題ないですよね? ってゴリ押しするので精一杯だったよ」

(いや、母よ……そのゴリ押しの方法はどうかと……)

 と、渉はツッコみたかったが、発言権がなさそうだったので自重した。

「――で、オレはどうすればいいんだ?」

「どうって?」

 紹子は目を丸くした。「何か問題でもあるの?」と言っているような気さえした。

 渉は溜め息を吐きたくなるのをこらえながら、言葉を継いだ。

「いや、昨日まで女子だったやつが、また元の男子に戻ってるってどう考えてもおかしいだろ……。どういうていで行けばいいんだよ……」

「ああ、そういうこと」

 紹子はそこまで聞いて、やっと合点が行ったようだった。

「心配ないわ。先生に話は通してあるから」

「…………」

 渉は軽い目眩を感じた。

(それでいいのかよ……。なんて非常識な学校だ)

 明日からも適当に誤魔化そう、と渉は心に決めた。

 紹子は話題を替え、渉が不在の間のエレナの活躍ぶりについて語った。

「エレナちゃん、すごく評判が良かったみたいよ。なにせ、カリフォルニア大の現役学生だからね。授業もテストも完璧よ」

「なるほど。それでか……」

 渉には合点が行くところがあった。日中の授業で先生にやたら難しい問題を当てられたり、クラスメートに課題について質問されたりしたのだ。もちろん、いずれも全く答えられなかったが。

(――ん、待てよ。……ってことは、――)

 紹子の話を聞いて、渉の頭の中にある考えが過ぎった。

「……ワタル、何を考えてイルの?」

 エレナに問われて、渉は慌てて手を振った。

「いいや。別に何も考えてないよ」

 渉の返事に、エレナは溜め息を吐いた。

「ワタルはもっと考えて行動した方がイイね」

「あ、ああ。気をつける」

 渉は彼女に言われた通り、たったいま思い浮かんだアイディアについて、じっくりと考えることにした。



 それから一週間が経ったある朝のことである。

「ショーコ。ワタル、遅いデスね」

 坂口家にて。その日、もう学校に行かなければならない時刻になっても、渉が自室から降りて来る気配がなかった。

 紹子は食べ終わった食器を片付けながら、返事をした。

「そうね……。エレナちゃん、悪いけど、起こして来てくれる?」

「オーケイ」

 エレナは階段を上がって、渉の部屋のドアを開けた。

「ワタル、遅刻します……ヨ?」

 部屋の中はもぬけの殻だった。隠れられるようなスペースはほぼないが、エレナが探したところ、ベッドの下にも押入れの中にも渉の姿はなかった。

 ふと机の上を見ると、渉が書いたと思われる手紙が置かれていた。


『悪い。異世界で急用ができたから、行ってくる

 学校のことはエレナに任せるよ 渉』


 エレナはそれを読んで、渉の取った行動を理解した。

「ワ、ワタルのヤツ〜……!!」

 手紙を握ったエレナの手がわなわなと震えていた。エレナがもう少し力を入れたら、手紙はバラバラに引き裂かれてしまっただろう。

 エレナは渉の部屋を出ると、バタバタと階段を駆け下りた。

「どうしたの、エレナちゃん。渉は?」

「ショーコ。これを見テ」

 エレナは興奮を抑えながら、紹子に渉が残していった手紙を見せた。

 紹子は困ったときによくやるように、片頬に手を当てた。

「あらあら……。我が息子ながら、本当に困った子ね」

 エレナは頷きながら、紹子に意思表示をしようとした。もう渉の身代わりは絶対にやりたくない、と。

「ショーコ、私は――」

 しかし、エレナが言葉を言い終えるより早く、紹子は言い放った。

「じゃあ、エレナちゃん。また渉の代わりをよろしくね」

「ノー、ノーーーーッ!!」

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