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バッドエンドの転生者  作者: 避雷心
襲撃Ⅰ.v
86/114

2人組の男女

本編開始です。

 その日も、岩場で魔法の見せ合いをしていたリリーシャとユークラウド。


 リリーシャの魔法は日に日に、深く切り込みを入れれるようになっており、ユークラウドは新しく覚えた魔法を披露する。

 そんないつも通りとも言える日を二人は謳歌していた。


 魔力を気にせず、バンバン魔法を打ち出していると、いつの間にか日は天辺へと登っている。

 それに気付いた二人は、お昼休憩として、貰ったサンドイッチをパクついていた。


「誰かくる……」


 森へとやってくる何者かの気配に気付いたのはリリーシャ。

 サンドイッチを食べて、ユークラウドの膝でうとうとしていたはずの彼女は、目を見開きそう呟いた。


 リリーシャの野生的な勘に感謝しながら、銀の髪を隠すように認識阻害魔法を展開させるユークラウド。

 彼が自身に魔法をかけたのを確認すると再び彼女はまぶたを閉じて眠りに落ちようとする。


 彼が人に見られないように髪の色を隠すことに否定的だったリリーシャだが、あくまでもユークラウド本人の意思を尊重するというスタンスで居てくれるのだ。

 気遣ってくれる幼馴染に、小さなお礼を言うと、彼女は目は開けないまま頭を差し出す。

 褒めろとの言外指示に、ユークラウドはしょうがないなぁと応じるのだった。


 そうこうしている間に森へと入ってきた二人が近付いてくる。

 遠目で見ると、男女二人のペアだと分かり、ユークラウドは頭に疑問符を浮かべた。


 てっきり、村の誰かが呼びに来たのかと彼は思っていたのだが、あの背格好の男女ペアをユークラウドは知らないため、どうやら違うらしい。

 リリーシャも知らない匂いを感じたらしく、寝つこうとするのを辞め、その瞳を薄く細め警戒し始めた。


 恋人という風体の二人は、こちらの姿を見つけると、おーいと手を振って近寄ってくる。

 そのまま、ゆっくりとしたこちらに近付いてくると、二人の姿を確認して、男の人は安心したような顔をした。


「良かった、人が居ました」


 そのまま男の人が声をかけてきたので、「何か様ですか?」と返すユークラウド。

 その返事に慌てて、不躾にすいませんと男が頭を下げて謝った後、申し訳なさそうな顔をしながら、質問を投げかけてくる。


「実は道が分からなくなってしまって、この近くに村はありますか?」


 恐らく迷子なのであろう男の質問に、ユークラウドはあっちにありますよ。と背中の方、時計の針に直して五時あたりを指差す。

 休んでいる岩から見てちょうどその方向に、リリーシャ達の村があるのだ。


 リリーシャ達の村には、よく訳ありの人達が住まいを求めて流れ着く。

 多分彼らもそう言った人達なのだろうと、リリーシャもそう考えていた。


「どうもありがとうございます!」


 男は、そう言ってユークラウドの方に頭を下げてお礼を言うと、村の方へと歩いてゆく。

 その一歩後ろを、付いていく女の人。


 そして、すれ違いざま、一番、二人との距離が近い状態で。


 彼女は、方向転換をして、岩の上に座っている二人の首を狙って手を伸ばした。


 急な出来事。

 人の身を超えた速度で迫る彼女。

 咄嗟のことに二人は動けずにいる。


 その手は二人の首を掴むが、その瞬間二人の姿は虚空に消えた。

 まさか空振りするとは思って居らず、突然のことに驚く、男女。


 一般人を装い一撃で首を締め、騒がれたりたり余計な詠唱をされる前に、仕事を終わらせるのがお決まりのパターンなのだろう。

 呆気にとられること数秒、このまま逃げられてはいけないと、辺りを見渡したが見つからない。


「何処へ行った? 探せ」


 完全な不意打ちだった筈だが、上手く決まらなかったことに男は苛立ちながらも、辺りを探す。

 まだ遠くには、行ってないはずだと。


 自らが敵対意思を持っていることに気付かれ、更に隠れられたり、人を呼ばれると仕事がやりづらくなってしまう。

 その前に見つけなければと、焦り始めた男だったが、女は冷静に標的を捉えた。


「あっちだ」


 言われてそちらを見ると、遠くへと遠ざかっている二人が、小さく見えた。

 すぐに、男は指示を出す。


「足止めして捕まえろ」

「チッ……」


 男の指示に舌打ちで答えながらも、足に力を入れ始める女。

 魔法で足を強化、一瞬にして二人へと跳躍する。


 開いていた筈の距離を、その驚異的な脚力で縮めていく。

 その跳躍は大きく、僅か三歩で手の届く距離まで迫る女。


 伸ばせば届く距離のそれに、4歩目を強く踏み込み、上へと飛翔。

 そして彼女がいた筈の地表を水弾が通り抜けていく。


 もし、あのままあそこに留まれば、自らが突っ込んだ勢いも合わせて少なくないダメージを負っていただろう。


「外した!」


 少女の叫びを聞きながら、上から全てを見下ろす女。

 彼女目から見た限りでは、相手は逃げるばかりでこちらを追撃してくる様子はない。


 このまま、前を取り逃げ道を塞ぐのが最善、と前へと出ようとする女だったが、その驚異的な視力がその火の残滓を捉えて空中で身を捻った。

 そんな彼女のすぐ脇を、火の球が通り抜けていく。


 逃げまどっているように見えたユークラウドは魔法の詠唱をしていたのだ。

 ユークラウドの攻撃をかわして、一安心する女だったが、避けた筈の火が唐突に爆発する。


 その爆発は、女の身を焦がした。

 しかし、その爆発は直撃ではなかったため、大したダメージではないと、割り切る彼女。


 だがそれは、その爆発は攻撃ではない。


 その炎は信号。

 爆発の正体は花火だ。


 ユークラウドが放ったのは、自らの居所と危険を知らせるための魔法。

 空へと、大輪の花が浮かぶ。


 その数は、二つ。


 ユークラウドと同様、男も花火に似た魔法を打ち上げていた。

 そのことに今度は顔をしかめるのは、ユークラウド。


 ユークラウドは救難信号のつもりで上げたものだったが、相手は何の意図で上げたのか、分からない。

 視力の良いリリーシャは、遠くで不敵に笑う男を捉え、不気味さを覚える。


 窮地がこれでは終わらないことだけは、確かだった。

別サイドから展開していきます

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