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バッドエンドの転生者  作者: 避雷心
序章Ⅲ.v
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幼馴染のリリーシャ09

「行ってくる」


 そう短く声をかけ、家を出る。

 家の前で待っていてくれたユークラウドと合流し、二人で向かうのは森である。


 途中、近所の人たちに声をかけられたり、サンドイッチなどを分けて貰ったりと、二人に対する村の人達の対応は優しい。

 リリーシャの家のリールイと、ユークラウドの家のミシェルは何かと気が回る為、何かを手伝って貰った家も少なくないというのが理由の一つ。


 最近、エリアナの魔法での雑用にユークラウドがついて回る様になったのもこの事に大きく貢献しているだろう。

 しかし、何より、この村に子供が少なく、元気に村をかける子供には、皆んな好意的なのだ。


 ちなみに、六歳の子供の二人で森へと出掛けるのに反対するものはあまり居ない。

 この森に肉食獣等は出ないと何度も確認されているし、何かあれば声を出せば助けに行ける程度の距離である。


 獣ではなく悪意を持った人の心配もあるが、この世界には八匹の神獣が存在し、彼らの定めた国際法により、犯罪を犯しても簡単に逃げ切る事はできず、厳しい罰が下される為、犯罪に走る様な者は、ほぼ居ないと言って良いだろう。

 大きな組織がバックについてでもいない限り、直ぐに犯罪の痕跡は洗い出され、極刑か終身刑を免れないため、再犯など存在せず、犯罪者に対する強力な抑止力となっているのだ。


 勿論、八大国以外には国際法を受け入れない地域や国などもあるが、ここは、端の方ではあるが、ランバルディア王国国内であり、神獣の加護の元で犯罪を犯そうとする程の愚か者は人生一〇週してようやく出会うかどうかであり、そんな心配など必要ないと皆が思っていた。


 そうこうしている間に、戦利品を得て、村を抜け、二人は森に着いた。

 人目が無いことを確認し、その身にかけていた幻惑魔法を解くユークラウド。


 外出する時、ユークラウドは、その銀髪を目立たないようにするため、髪に意識を向かない様にする魔法を使っているのだ。

 どうもこの銀の髪は人目についてしまう為、ユークラウドとしては、若干コンプレックスであり、あまり見せびらかしたい物じゃない。


「ユーの髪は綺麗だから、隠さなくても良い」

「ありがと」


 リリーシャの苦言に、お礼をいうユークラウドだったが、これは誤魔化しであり、これからも彼は幻惑魔法を使うことを辞めないだろう。

 彼女としては、問い詰めたいのは山々だったが、満月が近付くと、ユークラウドは、自分にもその魔法をかけてくれる為、強く抗議できない。


 頰を膨らませ不満そうなリリーシャを見て、頭を撫でることで、話を有耶無耶にするユークラウド。

 これでこの話は終わりということらしい。


 彼に撫でられると安心して、思わず話を許容してしまっている自分に気付き、後からぐぬぬ、するのであった。

 自分といい、彼の妹のクリスティーナといい、撫でられたら許してしまう姿勢は、如何なものかかと思うリリーシャ。


 彼の近くにいる自分達がこんなだから、彼が撫でを多用する事に拍車をかけてしまっている。

 あまり、今の仲はあまり芳しくないと言えるが、この事について話し合う必要があると思うリリーシャだった。


 余談ではあるが、別にリリーシャはクリスティーナを嫌っては居らず、むしろ好きな部類であり、お姉さんとして色々と気をかけなければならないと思っている。

 思っているのだが……、クリスティーナが妹という立場を利用し普段から、ユークラウドとベタベタしている事を考えると、どうしても口調と当たりがきつくなってしまうのだ。


 本当は昔みたいに仲良くしたいと、いつも思っているリリーシャだが、人より嗅覚が優れているらしく、ユークラウドに染み付いたクリスティーナの匂いを感じてしまう為、理性的な行動をとれず、ついつい当たりがきつくなってしまうのである。

 結局、二人は似た者同士だったりするのだが、その事に本人達が気付くのは、まだ当分先だろう。


 森を少し進むと、二人の目的の岩場へとたどり着く。

 軽い準備運動をした後、互いに準備が出来たことを確認すると、「どっちから?」と尋ねるユークラウド。


「なら、代わり映えしない私から」


 その質問にこう答えて、自分から先にやることを宣言した彼女は、岩の方に身体を向け、右腕を軽く後ろにして力を溜めるような動作をする。

 彼女の右手には水風船の様に球体状の水が溜まっていた。


 やがて、ここだ、というかタイミングでリリーシャが右腕を振りかぶると、溜まっていた水が、球から横に鋭い円へと変わり、軌道を描いて岩へと向かって飛ぶ。

 やがて、その円は、岩へとその身をぶつけて、弾けた。


 二人が水の円が当たった岩へと駆け寄ると、水がぶつかった場所にはロータリカッターに切り込みを入れられた様に、少しだけ円状の傷が入っており、リリーシャの手によって出来た物だと分かる。

 その切り込みを見て、ユークラウドはリリーシャを褒め、リリーシャはまだまだと、謙遜を見せた。


 これは、水に圧を加え、刃のように鋭くし、物を切るリリーシャの魔法なのだが、二人がここに来た理由はこれである。

 彼女達は、こんな風に週に一度、互いの魔法を見せ合って、互いの魔法の進捗を確認しているのだ。

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