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バッドエンドの転生者  作者: 避雷心
序章Ⅲ.v
74/114

長女クリスティーナ01

毎日更新の記録ががががが

 クリスティーナが兄のことを慕い、尊敬の念を持って接し始めたのはいつからだろう。

 最初こそ、クリスティーナは普通の妹だった筈だ。


 いや、普通と言うと語弊があるかも知れない。

 何故なら、彼女も生まれ付き多くの魔力を持っていた為、一般的な子供達と比べると成長が早かったからである。


 彼女は、普通の子より早く成長し、普通の人より早く考え始めた。

 その結果として、彼女は兄のことを畏敬の念を込めて、慕い始めたと言えるだろう。


 とは言え、最初から兄を尊敬していた訳ではない。

 そもそも、始めは尊敬という概念すら分からないのだから。


 兄を強く思い始めた一番最初の動機は些細で、それこそ、小さな子供らしい思いだ。

 兄が付きっ切りで遊んでくれない、という。


 ユークラウドは、年不相応に家に居ない人であった。

 それが、クリスティーナには気に食わなかったのだ。


 勿論、ユークラウドが居ない時は、必ず他の人の手が空いていて、クリスティーナの相手をしてくれている。

 くれるのだが、口に出した事はなかったものの、それが彼女にとっては不満で仕方ないのだ。


 年の近い兄妹であるユークラウドに、もっと沢山構って欲しいと言うのが彼女の本音。

 側から見れば今まででも充分一緒に居る様にも思えたが、彼女はずっと遊びたかったし、今以上に甘えたかったのだ。


 そうして、段々と拗れていったクリスティーナは、家にいる時は鬱憤を晴らすかの様に全力で構って貰い、親の手伝いをしている時は今か今かとずっと目で追っており、ユークラウドが居ない時は、ずっと彼の事を考えていた。


 そうして彼の事を観察していると、いつしか、クリスティーナは、ある一つのことに気付く。

 ユークラウドは、誰かが彼を必要とした時必ず家に居て、それ以外の時、家に居ないのだ、と。


 ユークラウドは、それこそ、クリシアやミシェルと言った、大人が人出を必要とする時は、必ず家に居て、手伝いを率先としてやるのだが、家を出る時は、それ以外の時を見計らったかのように、家を出ているのだ。

 必要とされている時は、声をかけられるより先に動き、必要とされていない時は、自分の研鑽を行うその姿は、幼子の目から見ても間違いなく異質だったのだ。


 何故、兄がそんなことをしているのかクリスティーナには全く分からなかった。

 分からないが故に、彼女の兄観察にはますます拍車がかかる。


 彼女の観察結果を簡単に纏めるとこうだ。


 良く出かけこそするものの、それ以上に家の手伝いを忘れないし、二人やクリスティーナが困っていたら、そちらを優先する。

 子供の癖に、遊ぶのは、誰かといる時だけで、時間が空くと勉強をする。

 クリスティーナや近所のリリーシャより寝る時間が極端に少なく、あえて、活動時間を増やしている。


 これが、クリスティーナにとっての兄という生き物だった。

 彼女が兄が好きなのは変わらなかったが、相変わらず、兄が何故こんなことをしているのか、リリーシャには全く理解できない。


 食べて、遊んで、寝て、甘えて。

 子供として当たり前のことを何故兄はやらず、まるで大人の様に振る舞うのか。


 答えの出なかった彼女、ある日、ユークラウドに直接、話しを聞くことにした。


「にいは、なんで、しっかりしようとするの?」


 そんなクリスティーナの質問に、ユークラウドは面食らった顔をしてしまう。

 彼もまさか、三歳の妹にそんなことを言われるとは思っていなかったからだ。


 ユークラウドは、困ったなぁという表情をした後、秘密にしてくれる? とクリスティーナに確認を取る。

 兄が理由を教えてくれるならと頷いて、秘密にすることを誓うクリスティーナ。

 しかし、兄が出した答えは、自分の求めていたものでは無かった。


「全部、自分のためだよ」


 クリスティーナは、ますます訳が分からなくなる。

 そんな事を言ってしまうなら、クリスティーナの方がよっぽど自分のために行動していたからだ。

 第一、それは明らかに嘘である、としか彼女は思えなかった。


 兄は明らかに皆んなのために行動している時間の方が多い。

 加えて、勉強して覚えたことも人の為に使っている。

 それが、自分のためだなんて、そんな訳がないのだ。


 だけど、彼女には、どうしても、ユークラウドが嘘を言っいる様にも思えない。

 答えを貰ったはずなのに、謎は深まるばかり。


 結局、何も分からなかったため、クリスティーナの兄観察は、更にその色合いを強くしていく。

 家に居ない時以外、ずっと兄の後を付いて行く日々。

それでも成果は得られない。


 どうすべきか困っていた クリスティーナを救ったのは母の言葉。


「お兄ちゃんの後をずっと、付いて、クリスティーナはお兄ちゃん子ね」


 ずっと兄を付いて回る妹と、最初こそ、困惑した様な様子だったが、やがて諦めた様に受け入れていたユークラウドを見て、クリシアは、呑気にそんな事をいう。

 お兄ちゃん子である事を否定するつもりは無かったが、今は邪魔しないで欲しいと思っていたクリスティーナだったが、続く言葉は彼女にとって、正しく天啓とも思えるものだった。


「その内、お兄ちゃんの真似でも始まるのかしら?」


 その言葉を聞き、体に稲妻が走った様な衝撃を受けるクリスティーナ。

 もしかしたら、兄の真似をすれば、その気持ちが分かるのでは無いか?と。


 クリスティーナは、兄という命題を解くため、すぐに兄の真似を始めた。

どっかで2個投稿すればセーフのはず

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