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バッドエンドの転生者  作者: 避雷心
序章Ⅲ.v
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幼馴染のリリーシャ07

ユークラウドに2人目の妹が産まれて半年程。


クリシアの体力も出産前程に戻り、家には余裕が産まれ、彼の外出の機会も、元の頻度に戻り始めていた。

必然、エリアナの家やリリーシャの家に、ユークラウドが出かける頻度も元通りに戻っており、彼女達は大いに喜んだ。


が、実は、以前とは一つだけ変わったことがあり、リリーシャには、少しだけ不満があった。

それは、満月の日、周辺についてである。


「リリーシャ、今日は満月だから、早く帰って来なさい」


母の心配する声も、若干、煩わしく感じてしまうリリーシャ。

しかし、リリーシャの母ルルーシャが心配してしまうのも無理はない。


リリーシャが4歳へと成長するにつれて、先祖返りの特徴は治るどころか、悪化していた。

満月の日の夜が近付くと、精神は不安定になり、当日はより先祖返りの特徴が強く現れてしまうようになったのだ。


自分が子供だった時よりもはっきりと特徴が出てしまう娘を見て不安で不安で仕方ないルルーシャ。

この国には、亜人が少ないため、もし、リリーシャも先祖返りの性質を持っていると知られたら、周りから偏見を持たれて育つ事になるかも知れない、そうもうと夜も眠れない。


娘が自分と同じ目に合うことだけは何としても避けたいというのが、ルルーシャの心から願いだった。

なので、リリーシャは、満月の日が近付くと、いつもより早く家に戻されてしまう。


また、念には念を入れ、満月の日が近くなると、ユークラウドの家や、リリーシャの家でのお泊まりも禁止された。

リリーシャには、4歳でありながら、自分が異質であるという自覚はあり、しょうがないこととして、その言い付けは守ってはいる。


が、守っているかと、不満に思っていないかは別問題である。


明らかにユークラウドと会う機会が減ってしまっている現状にリリーシャのストレスは日に日に溜まっていった。

このままでは、ストレスが爆発し、逆に、日中に先祖返りの特徴が出てしまうかも知れない。


その日は、そんな大義名分を元に、リリーシャはあることを決意する。


「父……」

「なんだいリリーシャ?」


そんな彼女の決意を知らず、普段はあまり甘えてくれない娘と一緒に過ごせる日である満月の日を、不謹慎ながらも内心少しだけ嬉しいと感じている、リリーシャの父リールイ。

そんな彼の服の袖を引っ張り、あるお願いをするのだった。


「私は、今日の夜は、父より、ユークラウドと一緒に過ごしたい」


父より幼馴染が良いというリリーシャ。

娘の早過ぎる父離れに、少なくない心的ダメージを受けるリールイ。


場を静寂が包む。

最初に言葉を発したのは、リリーシャの母、ルルーシャ。


「駄目よ、リリーシャ!貴女の体質は他の人には秘密なんだから」


周りにバレる様なリスクを犯すべきでは無いと、リリーシャを叱るルルーシャ。

だが、そんなありきたりな返答、最初からリリーシャは予想していた。


「ユーは知っている」


大前提として、ユークラウドは、このことを知っていると、リリーシャは話す。

短く、簡素な返答だが、これ以上なく、母に効くと知っていた。


母が前々からユークラウドを苦手としている事を彼女は何となく理解していたのだ。

そして、彼女の予想通り、ルルーシャは動揺する。


「貴女、自分の秘密を教えたの?いくら仲が良いからって……」

「違う。教えてない」


ルルーシャが震える声で捻り出した返答に、一泊を置き、ただ事実のみを告げることで対抗するリリーシャ。


「ユーはずっと前から知っている。でも、ずっと昔から知らないフリをしてくれている」


ユークラウドは信頼に足る人物であると彼女は強く告げる。

だから、ユークラウドを信用して、自身を預けるのは何の問題も無いのだと。


娘の言葉にルルーシャが思い出すのは、彼女達の幼少期の出来事。

やっぱりあの時の事を覚えていて、あえて誰にも話していなかっただなんて、と彼女の動揺は更に深まる。


「ユーは信用できる。ユーを頼ることに何も問題はない」


淡々と、彼女は彼女の中の事実を告げる。

そこには、思いだけが込められており、あらゆる現実的な観点が抜けていた。


だが、動揺したルルーシャは、リリーシャの跳躍した発言に何も返す言葉が思いつかない。

娘が語外に何を言いたいか察してしまったら、彼女は動けなくなってしまったというのもあるだろう。


だが、そんなルルーシャ内心など知る由もないリリーシャは止まらない。


「それとも、ユーに頼るのを否定するのは、恣意的な理由?」


やがて、その決定的な一言を放った。

リリーシャからしてみれば、母の思いやりは、わざと自分とユークラウドを離す為に意地悪をしている様にとれて仕方ないのだ。


そして、それは、ルルーシャからしてみれば一番話題に出されたくないもの。

その側面が100%ないかと言われると素直に頷くことは出来ず、何も言葉を出せない自分がいた。

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