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バッドエンドの転生者  作者: 避雷心
序章Ⅲ.v
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適性について04

ルビ多め

「ですが、裏を返せば、1秒で魔法を完成させなければならないのです」


1秒で魔法を完成させなければいけないと聞き、頭にはてなマークを浮かべてしまうユークラウド。

それのどこが悪い事なのだろうか?と単純に疑問に思ったからだ。


そんなユークラウドに対するエリアナの回答は、最初に作ったルベルーのジュース、1秒で作ることは出来ますか?というもの。

当然、あの手間がかかった作業を1秒でこなすことは出来ないと、ユークラウドは首を振る。


「その通りです。1秒で魔法ジュースを作ることなど不可能に近いでしょう。ですが、魔闘型は、1秒という時間で魔法ジュースを完成させてしまう」


しかし、魔闘型はそれを可能にしてしまうのだとエリアナはいう。


「そこにはある辻褄合わせがあります」


そして、不可能を可能にするにはあるカラクリがあるのだ、とも。


分かりやすく説明する為と話を中断して、エリアナが取り出したのは、円錐を逆さにした様な形状をした漏斗の様なもの。

その漏斗をコップへ突き刺すと、その上で、最初に使用したルベルーの実が詰まった瓶を逆さにする。


すると、漏斗の中へとルベルーの実が雪崩込み、その重さで下の方のルベルーの実が潰れ、潰れたものが下のコップへと注がれる。

コップの中には、多少荒さはあるものの、確かにジュースができていた。


「これで、1秒です」


確かに1秒で出来ましたね?と答え合わせをするエリアナにごくりと唾を飲み込んでしまうユークラウド。

エリアナは見事に1秒で出来ないと思っていたジュースを完成させてしまった。


器に移さずに、そのまま加工を行い完成品を作り出す。

とても、真っ当とは言えないそのやり方に、圧倒されたユークラウドを他所に、エリアナは話を進めた。


「極端な話をしてしまうと魔闘型の人達は、魔法を組み立てる作業なんかしていないのです」


そして、それは、魔闘型も同じなのだとエリアナは言う。

魔闘型は、魔力きのみ詠唱ししきって取り出したり、詠唱スプーンなどでこねくり回したりしないのだと。


「魔力を魔力門へと通しているだけで、彼らの魔法はほぼほぼ完成します」


魔闘型は、魔力門うつわが、魔法を作る為ろうとの形を取るのだ。

あたかも先程のエリアナがやってみせた様に器など使わず、器の役割をする部分が最初から漏斗のように最適な形を持っている。


魔術型と魔闘型のあまりにも違いを実感させられるユークラウド。

リリーシャが彼と違って、簡単に魔法を使ってみせるカラクリもこれだ。


エリアナが、魔闘型の魔法の組み立ては、人が意識できるスピードで無いので、仕方ないとも言えますが、と補足する。

魔闘型は意識領域では無く、無意識領域で魔法を組み立てているのだ。


例えるならそれは身体に染み付いた手癖や反射のような物。

意図して動くというより身体が魔法が先に動いて完成へと向かうのだ。


本来は、長年反復して覚える必要があるものもあるが、魔力門の場合、肉体という外側の制約に縛られず、その記憶量は数十倍である。

そして、その記憶力を生かし、更に魔力門を形ごと変えていく。


エリアナはユークラウドを見て、きちんと話について来て理解しているかを確かめると、話をおさらいにかかった。


「私達、魔術型が魔力門という受け皿に対して道具という名の詠唱を使うのに対して、魔闘型は魔力門を受け皿ではなくそれ自体を魔法を最適化する為の機関として変えてしまいます」


魔闘型の魔力門は、魔力を受け取る器ではなく、それ自体が、魔力を魔法と変換させる為の機関であると、エリアナは説明する。

魔術型がこねくり回す必要ないある工程を、一瞬で通り抜けることができるから、魔闘型と魔術型では、魔法の発動速度は大きく異なるのだ。


「これを魔闘型の、魔法式保存と言います。これにより魔闘型は魔法を凄まじいスピードで完成させます」


そして、この自分が使った魔法のいろに魔力門が染まっていく事を魔力式の保存と呼ぶ。

この特性は、魔力が複雑な為詠唱が必要でで、やる事が単一では無い魔術型には、無い特性だ。


「ですが、これは無限に魔法を保存できるわけではありません」


だが、その特性は、必ずしも魔闘型には優位に働くとは限らない。

漏斗の形の魔力門では作れないものがあるのだ。


「魔術型が詠唱を変え様々な物を作れるのに対して、魔闘型は魔力門自体の形を変えてしまう為、使える魔法の種類は、そこで決まってしまいます」


例えるなら、穴の小さな漏斗だけだと、瓶の中にあるルベルーの実を、潰さずに皮を剥いただけの状態にする事は出来ない。

ルベルーの実は漏斗の小さな穴を必ず通らないといけない為、必ず潰れた状態で出てくる。

そこには器の時にはあった筈の多様性は存在しない。


そしてそれは、実際の魔力に対しても同じことがいえる。

魔法の工程を保存してしまうと言うことは、使う魔法を限定させてしまうと言うことでもあるのだ。


「これが魔闘型の欠点、魔法の容量キャパシティです」


魔闘型の魔法には容量キャパシティの限界があると話すエリアナ。

そのままエリアナは話をまとめにかかる。


「魔闘型には、その速さを維持するために多様性がありません。その速さを容量キャパシティの限界という形で成り立たせています」


魔闘型が魔術型より、発動が早い。

だが、代わりに、使える魔法には限りがある。


「逆に魔術型は、その詠唱さえ覚えれば、沢山の魔法を使えます。しかし、その柔軟さ故に魔法の発動までに時間がかかります」


魔術型は、その反対で、魔闘型がより発動が遅い。

その代わりに、適性さえあれば沢山の魔法を使うことができる。


「これが魔術型と魔闘型の違いです。さて、今までの内容の中で質問はありますか?」


エリアナはそう締めくくり、ユークラウドが怒涛の質問責めを始めた為、講義は一旦休憩に入る事になった。

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