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バッドエンドの転生者  作者: 避雷心
序章Ⅲ.v
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適性について03

瓶を傾ける作業に移行したユークラウドだったが、これがなかなか上手くいかない。

瓶を傾けて、中身を受け皿に移そうとすると、どうやっても、他の2つより小さな木ノ実であるルベルーの実の割合が多くなってしまうからだ。


エリアナに出されたお題はストルーの実5個、ルベルーの実1個、ミンボの実3個。

瓶を傾けるだけではどうやっても、ルベルーの実が2個以上受け皿に入ってしまう。


「降参です」


手を挙げて、降参を表明するユークラウド。

それに対し、エリアナは気付けた時点で合格ですよと、慰めの言葉をかける。


「それでは、傾けるだけでは無理そうなので、詠唱と言う名の道具を使ってみましょう」


そう言って、エリアナが渡して来たの半円状の板。

どう使うのか分からなかったユークラウドがエリアナに聞くと、口の下の部分だけ塞いで下さいと説明された。


エリアナの言う通り口の下の部分を少しだけ塞ぐと、元々小さく下から抜けてくるルベルーの実は完全にせき止められ、傾けても落ちてこなくなった。

ルベルーの実が落ちてこなくなった事で、作業が簡単になり、楽々と受け皿に木の実を指定の数集めるユークラウド。


しかし、喜んだのもつかの間、次のスプーンで潰す工程で、またも苦戦することになる。

ストルー、ルベルーの2つは球体に近い為、スプーンで潰すことが出来るのだが、ミンボの実はとても柔らかく、スプーンの裏側で潰そうとすると、するんとスプーンから抜けてしまうのだ。

仕方なく、スプーンの側面で実を2つに割ろうとするのだが、力を入れた途端、やはりするんとスプーンから抜け出してしまう。


ギブアップともう一度エリアナの方をユークラウドが見ると、では、この工程も詠唱をどうぞ、とフォークを渡された。

ミンボの実を渡されたフォークで串刺しにすると、プスっと音を立てて中身の果汁を溢れ出させるミンボの実。

ミンボの実に穴が空いた事により、その柔らかさは失われており、フォークの裏面で簡単に潰すことが出来た。


「この様に魔法の完成を手助けするのが、詠唱です。詠唱有りと無しじゃ全然難易度がいます」


詠唱とはこう言った魔法の完成を支える道具であるのだとエリアナは言う。

そのまま、ユークラウドに同意を求めるエリアナ。


「詠唱は便利でしたか?」


エリアナの質問に、ユークラウドはYESで答えた。

そのまま、手癖も良いですが、やはり詠唱は大事なので肝に命じておいて下さいと、釘を刺される。


手癖というのは無詠唱の事だ。

要はユークラウドの無詠唱とは、3つの木ノ実が入った瓶を、完全に手の加減だけで傾けて、手の加減だけで構築している様なもの。


本来、魔術型の魔力を魔闘型の方式で行なっている自分の今の魔法が、歪なものであるという事実が言葉だけではなくイメージとして明確に理解できたのはこの時。

手癖だけで行うと、一歩間違えれば、指定された配分を間違えてしまう可能性もない訳じゃないという気付き、ユークラウドは少し身震いがした。


きっと、これを理解して貰うために、エリアナはこの装置を使ったのだろう。

完成した物をコップに注ぎ、エリアナに渡すと、ユークラウドの表情を見て、分かっていただけたようで何よりです、と言って満足そうに目を伏せた。


「魔法が完成しましたね」


そう言った後、注がれたジュースを手に取り、飲みますか?と聞かれるユークラウド。

その申し出に首を振ると、では、頂いても?と聞かれ、ユークラウドが頷く。


出来たミックスジュースを口に運び、全部飲み終わった後、甘いですね、と感想を漏らした。


そして、もう一度説明に戻る。


「この様に、魔法の適性が少なく、魔力の形が単一であるが故に、詠唱を使う必要がなく、また、複数の工程を使い分けるがない、人は基本的に魔闘型となります」


魔力の種類がそう多くない為、どれだけの量、魔力を注ぎ込むかを簡単に調節できる。

故に、魔法の発動が早く、詠唱を使わない魔闘型。


どちらかというと魔闘型、魔術型から先に決まるのだと思っていたユークラウドは、その解説を聞いて、感心するのだった。

生まれ持った魔法の適性によって、魔闘型と魔術型の違いは決まる。


「逆に魔法の適性が多く、魔力の形が複雑であるが故に、詠唱を使う事を迫られる人達は、必然的に魔術型となります。私やユートがそうですね」


魔術型の場合は、その反対と、エリアナの説明は続いていく。


魔力の種類が多く混在してる為に、特定の魔力の抽出、魔力の変化の工程を詠唱に頼る。

故に、魔法の発動は遅く、詠唱を使う必要がある魔術型。


別れ方としては、大体、属性の適性が1つなら魔闘型、2つなら2つの属性の相性次第、3つ以上なら、魔術型というのが一般的ですね、との補足に、成る程と納得を見せるユークラウド。

若干遠回り気味だった説明が伝わったようで何よりだと、エリアナは内心ホッとした。


しかし、エリアナがホッとしたのもつかの間、ユークラウドは新たな疑問を持つ。


それは、この特性を聞くと、魔闘型の方が優秀な様に感じてしまうというもの。

確かにここまでの利便性だけを聞くと、一見魔闘型が有利に見えてしまうが、エリアナはその問いかけに待ったをかける。


「ただし、一概に魔闘型が良いという訳ではありません。その特性故に魔闘型には欠点があります」


何時もの様に魔闘型を心良く思わないエリアナとしてではなく、1人の講師として、魔闘型にも出来ないことがあると告げるエリアナ。

欠点を知る為に、まず利点から上げましょうと、話を続ける。


「確かに熟練の魔闘型の魔法使いになると、1秒とかからず魔法を作り出してしまいます」


熟練の魔闘型の魔法使い、通称、魔闘士は、簡単な魔法なら、1秒とかからず、すぐさま発動してしまう。

それを聞いて凄い事ではと思うユークラウドだったが、エリアナが注目して欲しいのはその早さについてだ。


「ですが、裏を返せば、1秒で魔法を完成させなければならないのです」


1秒で魔法を完成させなければいけないと聞き、ユークラウドは頭に、はてなマークを浮かべてしまう。

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