適性について
説明回なので、5話とも飛ばしても大丈夫です。
「では、講師としては未熟者ですが、よろしくお願いします」
話は、魔法の基礎の講義の初期まで遡る。
時間としてはユークラウドが4歳の頃。
これは、今まで対話で教えていたエリアナが、始めて授業形式で教育を教えた時の話。
「これから、魔法の適性について1から説明します」
そう言って、彼女が取り出したのは、形や大きさ色が違う木の実を、同じ実ごとに分けた籠と、赤、青、黄、緑と色のついた水を注いだバケツだった。
それぞれ4種類、合計8個の器が机の上に並べる。
ふと、ユークラウドの方を見ると、それをどう使うのかな?と興味津々の目で見られる事に気付く。
彼としては、この道具が気になって仕方なかった純粋な好奇心故の行動だったが、エリアナには少しプレッシャーである。
きっと、質問したい気持ちを押さえつけて、大人しく待っているであろうユークラウド。
やがて、彼の目線に遂に耐えきれなくなったエリアナは自ら説明を始める。
「これは魔法ではなく魔力を例える為に使います。個人的には、これが一番分かりやすいと思っているのですが、分かりにくかったらまた考えます」
予め言い訳のように断りをいれる姿は何処と無くぎこちない。
初めての講義で彼女も緊張しているのだろう。
しかし、エリアナの説明が起爆剤になったかの様に、はて、魔力?と頭にはてなマークを浮かべ、さらに興味津々な様子を見せるユークラウド。
この道具で一体どんな説明を見せてくれるのか、気になってしょうがないと言った様子だ。
「今から説明しますので、落ち着いてください」
その言葉を聞いて慌てて佇まいを直すユークラウド。
どうやら、自らの状況を理解していなかったらしく、こほんと小さく咳払いをして、すいませんでしたと謝罪する。
年相応の子供っぽさと、それを正す子供らしからなさのギャップに少しだけ気が緩むエリアナ。
自身が少しだけ落ち着いたのを確認すると、さて、と、空気を切り替える様に一言。
「始めての授業を開始ましょう」
その言葉を合図に、エリアナの初講義が開講した。
エリアナがこの最初の授業で、ユークラウドに説明したいのは、どちらかというと魔法についてではなく、基礎の基礎、体内を流れる魔力についてだった。
その点で言えば、魔法について説明すると言った自分は、言葉足らずだったかも知れない、とエリアナは思う。
魔闘型に産まれて来たのならば、魔法について知る前に、まず、一番最初に知るべきは魔力。
魔法を発動させる為の燃料となる魔力について知っておかなければならないというのがエリアナの方針だった。
が、それでも少しだけ方針を転換して、先ずは基本的な魔法の知識から、入る事にする。
「魔法は2種類に分類されます」
いつもの癖で指を2つ立てるエリアナ。
その事を知らない、ユークラウドのはその指に注目するが、特に何か起きるわけでもない。
「まず、火、水、土、風などエレメントに関する属性魔法と言います」
まず、エリアナが最初に説明し始めたのは属性魔法について。
ここで話す、エレメントとは物理世界で言うところの元素ではなく、世界を構成する要素としての元素のこと。
この世界には、原子は存在せず、人も動物も、海も大地も、全ては魔素によって組み立てられている。
その魔素を魔法的な意味での元素とし、それを総じてエレメントと呼ぶ。
「属性魔法とは、文字通り何かしらのエレメントの力を宿した魔法です」
実践して見せましょう、と、軽い詠唱を行なった後、この様に火を出したり、と言って火の先から火を点火させ、水を出したり、と言って、指の先に丸い水の球体を作るエリアナ。
その光景にユークラウドは、おぉ、と驚き手を叩く。
そのあからさまなよいしょに、それでも悪い気はしないエリアナ。
その様子にユークラウドも内心ほっとする。
続けますよ、と、エリアナは先を話す。
「属性魔法の種類は、基本的には、12種類……となっています」
少しだけエリアナが、考えるようなそぶりを見せる。
厳密には12種類に当てはまらない、不明属性と呼ばれる属性もあるにはあるのだが、天文的な確率であり、そう言った者は産まれたときからその属性のみの魔闘型である為、適当な時に説明すれば良いかと、片付けたのであった。
余計な思考をもう一度元に戻し、説明を再開させるエリアナ。
「基礎4系統となる、火、水、風、土。次に、上位よ、8系統となる、雷、氷、爆、闇、光、音、鉄、熱です」
火、水、風、土、雷、氷、爆、闇、光、音、鉄、熱。
これら12属性が属性魔法となる。
エリアナは上位8系統の所で、またも余計な思考を思想になるが、今度は我慢する。
ここら辺の分け方は、教科書によって、記載の仕方が違ったりするのだが、今はその話も必要ないと切り捨てたのだ。
属性魔法の話を説明するのは苦手だと、内心ため息を吐きながら、詳しくは後日話す事として、次の話へ移行する。
「次に強化、付与、構築、召喚を主とする魔法を状態魔法と言います」
次にエリアナが話し始めたのは状態魔法について。
2種類に分類される魔法の内、治癒魔法や付加魔法などの、属性に関係なく存在する魔法の事を状態魔法と呼ぶ。
「状態魔法とは、物や人の状態を変化させたり、何かを作り出す事のできる魔法です」
状態魔法は主に、人や物に魔力を流し、魔力の流れを変えたり、魔素の性質や形を変える特性を持っている。
他にも、魔素を使って一から物を組み立てる状態魔法も存在する。
「状態魔法の種類も、それぞれの系統に3種類ずつで12種類あります」
こちらにも不明状態が存在したりするが、これも今話す必要は無いと後で話す事リストに追加する。
不明属性も不明状態も、分類上は分けて考えるが、属性魔法と状態魔法に対してどっち付かずな為、纏めて固有魔法と呼ばれる為、固有魔法の説明の際にでも話せば良い。
改めて言うが、明らかに水の魔法を使ってみせたユークラウドには関係ない話なのだ。
不完全とはいえ火や水などの属性魔法を使えている時点で固有魔法とは縁がない。
これからの人生の中でも出会ったとして、精々、一生に1人、2人会うか位の頻度程度の確率だ。
概要をを説明するだけのここで詳しく説明する優先性は低い。
「強化系統、強化、回復、肉体変化。付与系統、付与、妨害、付加。構築系統、結界、契約、幻惑。召喚系統、召喚、生成、憑依で12種類です」
強化、回復、肉体変化、付与、妨害、付加、結界、契約、幻惑、召喚、生成、憑依。
これら12状態が状態魔法となる。
こちらもまぁ教科書によって色々とあるのだが、これらも余談である。
次の機会を模索する事だけを誓い、ユークラウドに質問は後で受けますと、断りを入れた。
「基礎的な説明だけで申し訳ないですが、後で詳しく話すので、一先ず触りだけ覚えていてください」
一先ず、12と12で合計24種類の魔法がある事は話した。
本当は中身の話に行きたいのだが、今回の本題ではない。
エリアナが一番に知って欲しいのは、魔力とそれによる適正についてなのだ。
「それでは、今日の本題、魔力と適正の関係の話に移ります」
そう言って彼女は、先ほど用意した道具を取り出した。




