少年初期03
「お帰りなさいませ!お兄さま!」
講義が終わり、師匠の研究の手伝いも終わって帰宅した僕を妹のクリスティーナが迎えてくれた。
そしてそのまま、外套と荷物をお預かりしますと、言って息つく暇もなく片付けてくれる。
あまりの甲斐甲斐しさに彼女は本当に5歳なのだろうかと時折疑ってしまう今日この頃。
付け加えるなら、彼女の家事スキルはメイドであるミシェルも認める程であると言っておく。
クリスティーナ曰く、ミシェルのやり方を真似ていく内に出来る様になったらしいが、とても5歳とは思えない仕事ぶりに家は大助かりである。
僕が師匠の家に行く頻度が増えたのは彼女のお陰と言っても過言ではないだろう。
まぁ、最初の頃は、メイドの仕事に誇りを持ち、お世話する側に仕事を取られると思ってなかったミシェルと色々あったのだが。
今では役割を分担する事で、メイドの先輩と後輩の様な良好な関係だったりする。
「少し遅い時間ですが、お昼は食べてきましたか?」
帰ってきた僕にそんな事を聞いてくるクリスティーナ。
時刻としては、3時ぐらいだろうか?
「ご馳走になってきたけど、お腹はまだ空いてるかな」
師匠の所で少し食べて来たけど、師匠は小食だから、それに合わせて師匠の所ではあまり食べない様にしているのだ。
「でしたら、軽くお作りしましょうか?」
ここでこの返答が出て来る辺り、本当に出来た妹である。
いや、僕もこう返しがくる事が分かってて言った所があるんだけどさ。
というか、彼女の瞳は私に作らせてくれと訴えかけている気がする為、遠慮なくお言葉に甘える事にする。
「お願いしても良いかな」
「はい!喜んで!」
そう言って、スキップする様な足取りで台所へ向かうクリスティーナ。
今まさに絶賛家事が楽しい真っ最中らしく、こう言ったリクエストをすると彼女は喜んでやってくれるのだ。
臨時だからミシェルと仕事が被らないしね。
「お帰りなさいませ」
「おかえり!にぃに!」
一度部屋に戻った後、リビングへ向かうとミシェルと2人目の妹のクルーニャが出迎えてくれた。
…………、今、ミシェルが軽食なら私が作るのにという目をした様な気がするが、気のせいという事にしておこう。
僕の2人目の妹のクルーニャは今2歳と丁度半分くらい。
僕が半年経たない内に7歳を迎えるその少し後ぐらいに3歳を迎える。
クルーニャは椅子から飛び降りると、僕に向かってタックルの格好で飛び込んでくる。
彼女なりの愛情表現を両手で受け止め、そのまま、持ち上げ一回転すると、クルーニャは嬉しそうにきゃっきゃと笑った。
とても元気な子で今まさに元気盛り一番って感じ。
「にぃに!おみやげは?」
「クルーニャ様、そう毎回お土産を求めるとユークラウド様も困ってしまいますよ」
「んん、ぷぅー!」
笑顔で今日は何か持ってきてないかと質問するクルーニャと、未だ6歳の僕の懐に事情が心配なミシェル。
ミシェルに諭されて、頰を膨らませて拗ねるも、聞き入れくれてる辺りクルーニャも将来有望だなぁなんて、考えながら、先程、クリスティーナが持って来てくれて、リビングに置いてたあった紙袋から果物を2つ取り出す。
「大丈夫だよ、ミシェル。はい、お土産」
「やったぁ!」
道中買ってきた果物を手渡すと両手に持ちながら小躍りするクルーニャ。
そのまま、調理中のクリスティーナの元へ駆け出していく。
「ねぇね!にぃにからもらった!」
「まぁ!それは良かったですね。では、おやつのパイにしましょうか」
「やったぁ!」
クルーニャが来ると分かっており、予め調理用の台から降りて、果物を受け取るクリスティーナ。
そのまま、では出来るまでの間ミシェルお姉ちゃんと遊んで待ってましょうか、クルーニャを追い返して作業に戻る。
手伝いを申し出ようとしたミシェルはそれを封じられて、少し落ち込んだが、お姉ちゃんと呼ばれた為直ぐに気分を持ち返しした。
台所を覗き見ると、最初からお土産の中身も知っていて、このやり取りも予想していたであろうクリスティーナは、予め生地の準備をしているのが伺える。
最早、出来過ぎていて末恐ろしささえ感じてしまう、そんな日常の日々だった。




