メイドのミシェル04
ミシェルはいつも通り、主人の家の家事をこなしていた。
最近は特に忙しい。
「クリシア様、入ります」
ドアをノックして確認を取り、許可が出たため、ミシェルが作った昼食を持って部屋に入る。
そこには彼女の主人であるクリシアがベットの上で裁縫をしていた。
「もうそんな時間なのね」
どうやら裁縫に熱中している彼女は、時間が経つのを忘れていたらしい。
「時間を改めますか?」
「そんなの勿体無いわ。美味しいご飯は、1番美味しい時に食べるのが1番だもの」
気を遣おうとしたミシェルだったが、主人の意図しない褒め言葉にたじろいでしまう。
狙った訳ではなく、天然でこういう事をするのが、ミシェルの主人である。
「お手伝いは必要ですか?」
「大丈夫よ?なんなら、ベッドから出て皆んなで食べたいぐらい」
「く、クリシア様……!いけません!」
誤魔化すように出た言葉だったが、主人の返答にまたも平静を崩してしまうミシェル。
「もう心配性なんだから……」
そんな従者の様子に頬を膨らませるクリシアだったが、仕方がないと言った様子でため息をつくと、愛しさを込めながら自身の大きくなったお腹をさすった。
クリシアのお腹は第三子を身籠り、大きく膨らんでいる。
彼女は、ベッドの上を中心とした生活を余儀なくされていた。
それは身体が動かないとかの理由ではなく、家事をしようものなら、ミシェルが狼狽し全力で止めるからである。
いくら子供がお腹にいるとはいえそこまで慎重に生活する必要は無いのだが、臆病なメイドの為に彼女は大人しくベッドの上で編み物をして過ごしているのだ。
お腹の子に何かあるよりは良いかとクリシアも納得している。
ご飯を食べ始めたクリシアに不自由な所が無い事を確認すると、何かあったらすぐにお申し付け下さいと部屋から出るミシェル。
本当なら、最後まで見届けたくはあるのだが、そんな事をしていたら、暇を持て余した主人に食べたいの?なんてからかわれてしまうのがオチである。
それに、ミシェルは今少し立て込んでいた。
クリシアがあまり動かなくていいようにする為、ミシェルは家事全般をこなしながら、空き時間には小物を作ってお金を稼いでいる。
その為、あまり休んでいる余裕はなく、ゆっくりと立ち止まる時間を作るのは避けたかったのだ。
リビングに戻ると、ご飯を食べ終わったユークラウドが食器を妹のクリスティーナの分と一緒に洗っていた。
クリスティーナは大人しく絵本を読んでいる。
「ユークラウド様、ありがとうございます。後は私がやりますよ」
「いいよこのくらい、やっておくからご飯食べなよ」
皿洗いを代わろうとすると、止められてしまう。
その行動がクリシアにそっくりに見えて、ミシェルは思わずくすりと笑ってしまった。
きっと、無理矢理代わろうとしても絶対に譲ろうとしてくれないだろう。
付け加えるなら、ここで変わりの仕事でもしようものなら、止められるのは間違いない。
「ありがとうございます」
ミシェルは大人しく、昼食の時間をとるのだった。




