研究者エリアナ11
今、ユークラウドはあまり家から出ていないらしい。
あまり芳しく無い実験の合間に手を止めエリアナは物思いにふける。
家の手伝いをしろと言ったのはエリアナなのだが、こうも来る頻度が下がってしまうと、どうも調子が出ないのは確かだった。
少し前の自分からは考えられいなと、自嘲する。
人は思い掛けない事がきっかけで変わる物だ。
エリアナも人に教えるという事で確実に自分が変わっていると感じる。
全く、あんなお調子者の何処にそんなに影響されたんでしょうか?
そんな事を呟くが、その実、ユークラウドに多いに肩入れしてしまっている自分は確かにそこいた。
現にこうして、誰かの為にプレゼントを用意するなんて、もしかしたら産まれて初めての事かも知れない。
この本で相手が喜ぶかどうかを考えるのも新鮮である。
少なくとも、数年前までのエリアナなら、有り得ないと間違えなく一笑に付して、今の自分を馬鹿にするだろう。
「こうしてみると、案外教え子というのも悪く無い物ですよ」
誰に言うわけでもないその言葉は虚空に消えた。
実家の手伝いで中々顔を見せる事が出来ず不貞腐れているであろうユークラウドを思い浮かべ、クスリと笑う。
息抜きを済ませて、実験に戻ろうとしたエリアナの家のドアが控えめにノックされた。
ユークラウドは昨日来たばかりで、ドアを叩く者の心当たりは無い。
「はい」
大方、村人が何か依頼に来たのであろうとあたりをつける。
エリアナは研究費を稼ぐ為に、魔法で解決できる事でお金を稼ぐ何でも屋紛いの事もやっているのだ。
だが、ドアを開けると、自分の予想は外れていたのだと気付く。
「私も弟子にして欲しい」
そこに居たのは、新しい厄介毎。
この日を境に、これ以上弟子を取る気のないエリアナと、ユークラウドと一緒に学びたいリリーシャの密かな攻防が始まるのだった。




