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バッドエンドの転生者  作者: 避雷心
序章Ⅱ.v
37/114

研究者エリアナ09

ユークラウドと知り合って数ヶ月。

色々な事を教えたし、色んな事を手伝わせたりもした。

初めての教え子は随分と優等生でお調子もので問題児である。


教えた事の理解も早く、成績も優秀で、時にはエリアナが思い悩んでいた事に思わぬ所からアイデアをくれたりと良い所は沢山あるのだ。

あるのだが……。


その反面、面倒くさい作業で手を抜いたり、エリアナを小さくからかったりと決して根っからの優等生タイプの人間では無い。

割合で言えば、優等生な所、不真面目な所で7.3だろうか?


エリアナは別にそれがいやという訳では無く、寧ろ子供ながらに大人びて見えるユークラウドの年相応の子供らしさを好意的な目で見ていた。

コミニケーションが若干苦手なエリアナからすれば、多少の茶目っ気を出してくれた方がありがたかったというのもあるだろう。


そんなエリアナだが、ユークラウドが無意識でやらかす案件に頭を抱えさせられる事が何度もあった。

彼は稀に常識では測れないような事を平然とやらかしてしまう。


例を挙げるなら、初めて会った時の無詠唱もその内の1つ。


魔闘型は魔力の流れが一定である為、イメージで魔法を組み立てる事ができるが、エリアナやユークラウドの様な魔術型は本来詠唱を使わなければ魔法を使えない。

自身が複数の魔力を持っている為、魔力の流れが複雑で、詠唱の補助がなければ魔法を組み立てる事ができないのだ。


だが、ユークラウドはどういう訳か魔術型でありながら無詠唱で魔法を使う事ができる。

ここの魔法に対する認識のズレを調節するのにまず時間がかかり代分手こずってしまったのだ。

しかし、エリアナにも非が無いという訳では無いから、強く言うことは出来ない。


一応、詠唱を使わない無詠唱のまま教育を進めるという手もエリアナになかった訳じゃないが、それを断固として認めなかったのだ。


魔術型にも詠唱を何節か省略する詠唱省略というテクニックがあるのだが、詠唱を省略すると魔法の制度が落ち、失敗の確率が高くなる。

それが無詠唱ともなれば失敗のリスクが更に高まってしまう。


エリアナはそれがどうしても許容出来ず、結果として頭を抱える事になったのだ。


だが、これは言ってしまえば既に解決した出来事である。

エリアナは今、人生でトップ5の頭を抱える問題に直面しており、その要因である壁際をチラリと一瞥して、1つため息を吐いた。


箱にしまってこそいるが、そこには銀色に近い色でそれぞれ光る魔石があり、それが目下、現在進行形でエリアナを悩ませているユークラウドが持ってきた厄介毎である。


これは、ユークラウドが無詠唱というちょっと変わった手順で作ってきた魔石なのだが、これが結構困った代物であるのだ。


通常の魔石は基本的に単属性で、そうで無いと、使う機会が無くあまり役に立たない。

それが言わば普通であり、作りの悪い粗悪品の中に2つか3かの属性が混ざっている事があるが、それは寧ろ未熟の証として安く買い叩かれるのが実情。


だが、4つも属性がある魔石であれば、少し話は変わってくる。

何故なら、4つ以上の属性が混合した場合から魔石は、原理こそ解明されていないものの、彩を持った輝きを持ち始めることが分かっており、その珍しさから、魔光石と呼ばれ始めるからだ。


他の属性が混ざっているため、実用的に消費する事がほぼ出来ない魔光石だが、一部の物好きや金持ち達が研究対象や奢侈品として求めて止まず、魔光石が市場に出たら即売り切れてしまう。

在庫が常にないため、価格も大幅に上昇し、魔光石は相当貴重なものとなっているのだ。


そんな中、ユークラウドの作ってきた魔石は素人が粗悪ではあるものの少なくとも6以上の属性が混ざっていた。

過去に属性が5つ混ざっている魔光石が市場に出た事があると聞いた事があるが、その値段は豪邸が買える程だったという話である。


それより更に属性が混ざっているであろうユークラウドとが作った魔光石。

そんな魔光石が箱の中にはごろごろと敷き詰められていた。

額にしたら幾らになるか考えたくないエリアナは箱にしまい込んで、永遠に日の目を見ないように厳重に封印している。

これをもし市場に出そうものなら要らぬトラブルに巻き込まれてしまうのは想像に難くない。


さて、何故こんなことになったのか順を追って経緯を説明しよう。

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