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バッドエンドの転生者  作者: 避雷心
序章Ⅱ.v
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幼馴染のリリーシャ04

弟子入り04

母親のルルーシャの体調が落ち着いて、自分の時間に余裕が持てる様になると、リリーシャは2階にある自分の部屋から、ユークラウドがどうしているのか覗く様になった。

その日に関して言えば、母の体調も妹の機嫌もすこぶるいい。


だから、手の空いたリリーシャは、朝から窓に張り付き、隣にいるユークラウドの様子をずっと眺めていた。

妹の相手をしたり家事を手伝ったり、本を読んだりするユークラウドの姿を見ると何故かため息が出てしまう。

理由はリリーシャには分からなかった。


ユークラウドの方はというと、何でも無い様に振舞ってこそいるものの、実はリリーシャが見ていることに気付いている。

気付いた上で、彼女の視線に気付かない振りをしているのだ。


出来ることならば、リリーシャに会いに行った方が良いと言う事は理解しているのだが、ユークラウドは、リリーシャの母ルルーシャに嫌われていることを懸念している。

いや、恐れられていると言った方が、正しいのだろうか?


4歳の子供を怖がる大人というのもおかしな話だが、子供らしく無い事をやってきたユークラウドには思い当たる節が無いとは言い切れない。

怖がられていると分かっているのに、リリーシャに会うために、産後で弱ったルルーシャが居る家にわざわざ行くというのを躊躇っているのが大きな理由の1つである。


こうして、喧嘩した訳でも無いのに、何故かお互いに気不味く、声をかけられない微妙な雰囲気が流れてしまっているのだ。

ユークラウド側からしてもこの状況に対して、どうして良いか分からず、ついつい気付かない振りをしてしまっている。


気不味い2人。

互いに悩み、考え、答えが見つからず、ぼーっとしていて、ふと、気付くと全く同じタイミングで視線が合った。


すぐさま目を逸らしたのは、ユークラウド。

事もあろうに、視線が合っていた事を気付かなかった定で、気付かない振りを続行してしまう。

リリーシャにとってはユークラウドに無視された形。

胸の鼓動が速くなる音がした。


「(ズキズキする……)」


胸が苦しい。

自然と手は左胸へと当てられていた。


ユークラウドは、リリーシャの母、ルルーシャの事を考えての事だったのかもしれないが、幼いリリーシャにはそんな事関係ない。

無視された、なんて事初めてで、その気持ちもリリーシャには初めて知るもの。


苦しくて、悲しくて、寂しかった。

どうして、そんな酷いことをするのか分からなかった。


いや、心当たりならある。

リリーシャはユークラウドに対してだけ、自分が横暴な態度を意地悪な態度を見せる事に気付いたのだ。

生意気なのは、ユークラウドでなく自分であり、更に嫌な態度をとる様な子にユークラウドが付き合う理由は無いと、そう考えるリリーシャ。


子供だから仕方がない事とはいえ、本人からしたら絶望的な間違いである。

もしかしたら、ユークラウドに嫌われたかもしれない。

そう考えると、いっそ、このまま閉じこもって居なくなってしまいたいと思い、次の動作をできずにいた。


そんな、どうしようもない2人を助けてくれたのは、リリーシャより更に幼い小さい声。


「にいーー、ねぇー!」


ユークラウドの妹のクリスティーナの声だった。

クリスティーナはリリーシャに気付くと、手を振って居た。

リリーシャもつられて、小さく手を振り返す。


その様子を自分をユークラウドが見ていた。

何かしなければいけないと、謝らなければならないと思い、咄嗟に出たのは、ユークラウドを手招きで呼ぶという行動。


その行動を、クリスティーナは後悔する。

自分から行くのではなく、相手に動いて貰おうとするこの態度はユークラウドの気を悪くさせてしまうのではないのかと。

もし、傲慢な態度に嫌気が刺したユークラウドが来なかったら?そう考えてしまう。


「(……いや)」


いつの間にか、ユークラウドがリリーシャから見えない所へ居なくなっていた。

リリーシャは、何処からか湧いてくる理由も分からない恐怖に怯え、慌ててベッドに潜り込む。


彼が来なかったらという不安に押しつぶされない様に。

リリーシャにとっては永遠にも感じられる程の長く長く感じる時間の中で、家のドアを開く音がした。

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