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バッドエンドの転生者  作者: 避雷心
序章Ⅱ.v
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幼馴染のリリーシャ02

弟子入り02

突然、ユークラウドも魔法を使うようになったと思ったら、今度は、1日会う毎に違う魔法を見せる様になった。

リリーシャは素直にユークラウドを凄いと思ったし、自分も競うように水魔法で自在に色々な表現を見せる。


いつしかこうして親に内緒で魔法を見せ合うのがユークラウドとの遊びの中の1つになっていたが、その日々は長くは続かなかった。


工夫して、一日毎に、手を変え、品を変え、色んなものを見せようとして、ユークラウドが踏ん張っていたが、ある時、ユークラウドが壁にぶつかってしまう。

遂に、新しい事が出来なくなってしまったのだ。


だが、これは当たり前のこと。


リリーシャが行っていることを例えるなら、水魔法という名の筆でキャンパスに様々な魔法というなの絵を形作っていく行為。

これは基本的に1つの魔法をずっと工夫して使っているに過ぎない。


対して、ユークラウドは行なっているのは、持っている少ない絵を様々な表現を使って別の絵に見せているだけの事。

元々少ない手札には限界がある。

先に打ち止めになるのはユークラウドの方だ。


「(ユーには、わたしがついてないと)」


一度、上がりかけていたリリーシャの中のユークラウド評価が、また元に戻ったのは、子供故に仕方がない事だったが、それがユークラウドを追い詰める事になる事に、リリーシャは気付かない。


そんな日々が数ヶ月経った頃、ユークラウドが突如として居なくなったのだ。

この表現には色々と語弊があるが、リリーシャからすればまさしく居なくなったと言えるだろう。

何時もの様にユークラウドの家に遊びに行くと、ユークラウドは何処かへ出かけてしまったのだと言われたのだ。


リリーシャにとってそれは初めての事。

いつも一緒に遊んでいたし、何処か遠出して、村の広場に行く時なんかもユークラウドはリリーシャに教えてくれていたし、付いていった。

だから、自分に何も言わずに何処かへユークラウドが何処かへ行くなんて考えた事、リリーシャは考えた事も無かった。


初めての出来事に動揺するが、リリーシャはユークラウドの家で待つ事にする。

彼の妹のクリスティーナと待っていれば、どうせ直ぐに帰ってくると考えたのだ。


だが、ユークラウドは一向に帰ってこない。

時間にして2時間ぐらいだろうか?

待てども待てども、帰ってこないユークラウドにリリーシャは心ここに在らずと言った様子だ。


「ねぇー?」

「珍しいですね。ユークラウド様が、お2人を置いていかれるのは」


そんな様子を心配するのは、ユークラウドの妹のクリスティーナと家に使えるメイドのミシェル。

リリーシャの動揺が伝染したのか、2人共何処か不安げな様子をして居た。


「やはり、私が探しに行った方が……」

「心配し過ぎよ、ミシェル」


堪え切れ無かった、ミシェルがユークラウドを探しに行こうとして、止められる。

諌めたのは、ユークラウドの母クリシアだった。


「クリシア様……ですが……」

「まだ日も明るいし、何よりあの子はしっかりしてるわ」


食い下がろうとするミシェルに、落ち着きなさいと嗜める。

時刻はお昼時で、まだまだ心配する様な時間では無いのだ、と。


不安そうに寄ってくるクリスティーナを両手で持ち上げ片手で抱き抱えるクリシア。


「リリーシャちゃんも……ね?」


そのまま、クリシアはリリーシャの不安も和らげようと、その小さな頭を撫でた。

優しいその手にで撫でられると、リリーシャの不安が春先に触れた雪の様に少しだけ溶けていくのを感じる。

思わずその手の服の袖を掴むとユークラウドと同じ匂いがした。


「あの子も罪作りな子よねぇ、あの人に似たのかしら?」


ふふっと、クリシアが微笑んだ後、暫くするとドアが開く音がする。

ただいま、と声がして、振り向くと、ユークラウドが帰ってきていた。

あら、王子様が帰って来たみたいね、なんてクリシアはおどけてみせる。


「にぃーーー!!」


最初にユークラウドの元へ来たのは、ユークラウドのリリーシャとクリシア。

クリシアに抱えられたまま、ユークラウドの元へ連れられ、そのままバトンの様にユークラウドの腕に優しく預けられる。


「???」


ユークラウドは最初こそ頭に疑問符を浮かべていたが、次第に妹を甘やかすお兄ちゃんの顔をしていた。

だから、リリーシャに気付いたのは少し後の事だ。


ひとしきりクリスティーナを甘やかした後、リリーシャに気付いて、声をかけようとして、先に口を開いたのはリリーシャ。


「どこにいってたの……」


寂しさと怒りを半々にブレンドした、幼馴染の初めての声色に、ユークラウドは固まってしまう。

リリーシャも自分で自分の出した声に驚いて、同じ様に固まってしまった。


あらあらと、声が聞こえた気がして、我を取り戻したユークラウドが何か声をかけようとして、リリーシャの不安げな姿を見て、何も言えなくなってしまう。


場を動かしたのは、新たな乱入者だった。


「リリーシャすぐに家に戻れ!」


ノックも忘れて慌てた様子で家に乗り込んできたのは、リリーシャの夫、リールイ。

すぐにミシェルが無作法を咎めようとするが、只ならぬ様子に言葉を躊躇ってしまう。

そして、ミシェルより、リールイの次の言葉の方が早かった。


「ルルーシャが!ルルーシャが苦しみ出したんだ!」


その言葉を聞いた、ミシェルは早かった。


「奥様」

「ええ、本来なら私がと言いたいところなのだけど、お願い」

「任されました」


クリシアに了承を得て、リールイの手伝いを申し出るミシェル。

そんなミシェルに肩を叩かれて、ようやく、リリーシャは我に帰る。


みんなの頭には、ルルーシャの大きく膨らんだお腹の、次の命の事が思い浮かんでいた。

その場は解散となり、町の医者を呼びに行ったユークラウドとリリーシャはすれ違う。


数日後、リリーシャにはララーシャと言う名の妹が産まれた。

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