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バッドエンドの転生者  作者: 避雷心
序章Ⅱ.v
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幼馴染リリーシャ01

リリーシャ・エルロックは、先祖返りという特性を持って産まれただけのまだ小さな少女である。

産まれて直ぐに両親に連れられていくつもの町や村を周り、たどり着いたのは自然豊かな辺境の田舎だった。


両親は先祖返りの事で何か問題を起こさないかと考えていたが、そんな事はなく彼女はすくすくと育った。


言葉こそ多く語らないが、強い意志を持ち、自分の思うように、マイペースな性格で、隣に住む少年、ユークラウドがお気に入りだった。


特に、満月の夜、彼女の先祖返りが色濃く現れる日には、彼といれば不安になる事が無くなるのだ。

だがそれとは別に、彼女の彼に対する思いは少し複雑なものである。


「(ユーは、ダメダメ……)」


いつもユークラウドのと一緒に居たリリーシャの素直な気持ちがそれだった。


どんな遊びだって、リリーシャはユークラウドに勝ってしまう。

今年で4歳になるリリーシャの中では、完全な上下関係が出来ており、ユークラウドは完全に下に見られていた。


ただ、それは蔑むと言った負の感情からでは無く、寧ろ好意の表れ。


ユークラウドと遊ぶのが一番楽しいし、特に一緒に居て欲しい時は居てくれるし、泊まりにだってきてくれるし、私の後をいっつも付いて来る。

リリーシャが好意を抱くのはそれだけで十分だった。


「(ユーには、わたしがついてる……)」


その結果、もし、ユークラウドを困らせる様なものが来たら、私が追っ払ってやろうと、守ってやろうというリリーシャ。

感覚的には気の利く便利な弟分だろうか?


実際問題、依存してるのはユークラウドではなく、リリーシャの方であり、リリーシャに合わせてくれるのはユークラウドの方なのではあるし、実際大人はそう見ている。

しかし、子供にはそんな客観視なんか存在せず、関係ない。

常に自分の見えてる自分の主観がリリーシャの世界で正義であり、そんなのは当たり前のことだ。


客観的に物を見れる様になる頃まで、子供の頃の思考覚えている人なんてのは居ない。

リリーシャの中でユークラウドは、完全な庇護対象に入っていた。


かと言って、驚くような事がなかったわけじゃ無い。


ある時、リリーシャは家族に簡単な水の魔法を教わり、それを当たり前の様にユークラウドに自慢した。

ユークラウドが褒めてくれて、ご満悦だったリリーシャはユークラウドにも、やり方を教える。

が、ユークラウドは、その魔法を使えなかった。


リリーシャはやはりユークラウドを守ってやるのは私なのだと気持ちを新たにしたのだが、その日、その事を家族に話すとこっ酷く怒られてしまう。

当然だ、子供が子供に魔法を教えるなんて、危険だし、なによりも魔法の属性には適正がある。

リリーシャは魔闘型で感覚で魔法を扱うことが出来るが、魔術型の人間は勉強をしなければ上手く魔法を使う事が出来ないのだ。


自分が出来ることが、他の人にもできるとは限らない。

魔法の自慢程度可愛い物と考える者もいるが、両親は許さず、こっ酷くリリーシャは絞られた。

人には出来ること、出来ないことがあり、自分が出来るからと言って他人に自慢するのは良くないのだと。


その話を受けて、てっきりユークラウドは水魔法が使えないと、リリーシャは思い込んでいた。

親の伝えたかった事からは少しズレていたかもしれないが、その年で全てを理解しろというのには無理があるのだが、リリーシャはユークラウドの前で魔法の話をしないようになる。


だが、数ヶ月後、ユークラウドが、リリーシャが使えないと思っていた水魔法を使ってみせた。

単に水魔法の適性があったというなんて事は無い話なのだが、リリーシャは無理だと思っていた事をやり遂げたユークラウドに素直に感心する事になる。


「(ユーもやる……)」


出来ないことを出来る様にするユークラウドへのリリーシャの印象は、小さく、それでも確実に変化しようとしていた。

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