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バッドエンドの転生者  作者: 避雷心
序章Ⅰ
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現状把握02

プロローグは、特に話が進みません

 夢を見た。

 懐かしい誰かと話す、そんな夢だったような気がするけど、全く、内容を覚えてない。

 赤子特有の性質なのかは分からないけど、この体不便だなぁ。


 あれから2ヶ月……、ようやく、ようやく立って歩行することが可能になった。

 これはもう奇跡と言っても過言ではないだろう。

 世のお父様、お母様が何でこんなに感動するのか分かった気がする。

 もう赤ちゃんが立ち上がるだけで奇跡だよね!

 まぁ、現状、自画自賛なんですけど……。


 ちなみに、俺が立てる事はまだ隠していたりする。

 だって、危ないからって、雇われてるメイドさんの見張りがつくし。

 俺の自由な時は、俺が昼寝のフリをしている間の、更にメイドさんが少しだけ席を外す短い間だけ。

 まだ、自由時間が減ってしまうような失敗は冒せないのだ。


 僅か10分しか無いその合間にも俺にはやることがあった。

 サイズが大幅に変わった身体の動かし方を確認しながら、本当に少しずつベッドを窓際へと動かす。

 そして、その努力を2月の間継続した今、その成果がようやく身を結ぼうとしている。


 ベッドを窓際に寄せたのは、この世界を己が目できちんと確認するため。

 これで、ようやく部屋の中から出ることが出来ず、情報の得られなかった現状を変えることができるのだ。

 2ヶ月間、これだけを目標にしていたと言っても過言では無い。

 本日、遂に自由時間の到来と共に、赤子用ベッドの上で立ち上がり、僅かに見える窓の外の光景を目に焼き付ける事ができるのだ。


 今まで本当に大変だった。

 筋肉が皆無ともいえる赤子の身体での作業は消して楽ではなかったのだ。

 てか、不可能だったと言ってもいい。

 幾ら素材が軽くても、ベッドなんて、赤子がそうそう動かせるものじゃないのだ。


 それを解決したのが、なんと、体を纏う不思議な力!

 その正体は、恐らく、魔力……! …………だと思う?


 というのも、俺がそもそも魔力について無知な上に、発動した力が赤子の力が幼稚園児生になるくらいの、スゲェ小規模なパワーアシストだったからだ。

 不確定な上にかなり小規模……。

 これでは、真相に近付けたというにはほど遠い。


 さらに言えば、ここ数ヶ月の変化が魔力のせいだと気付いたのは昨日だったりする。

 赤子なりに成長したかな? とかなんとか思ってたから、体を覆う不思議な力に全く気付かなかった。


 最初の1月の内は、どれだけ押してもうんともすんともしないベッドが、明確に数ミリ動くと分かった日があったので、力が発動していたのは、多分、その日から。

 まぁ、つまり、殆どの時間を無駄にしたって、ことなんだけどね。


 よくよく神経を集中させると、白い靄みたいなのが俺を包んでいる様な不思議な感覚に包まれる。

 それが魔力だと勝手に決め付けている状態が現状の一番的確な説明だろう。

 もしかしたら、違う可能性もあるし。

 確証なんて全くないのだ。


 この部屋から出たことのない俺には、未だにこの世界の常識がわかんないし、本棚取り上げられたし、どう確かめれば良いんだよ? って感じなのだ。


 そして、その結論がこちらの窓へと戻ってきます。

 よく話脱線するなぁ俺。

 生後で脳が正常に働いてないのか、元々、こういう人間だったのか……、もしくは、両方?


 また、脱線した。

 取り敢えず、窓の外にいるであろう住人達の様子を見れば、収穫があるだろうというのが俺の出した結論。

 もし、魔力(仮)を使いながら、生活していたり活用していたら、正解、していなければ、不正解だ。


 本当は、純粋に外がどんなのか興味津々なんですけどね!

 ドキドキしながら、窓の外を覗くとそこには…………、壁がありました。

 壁があり、屋根があり、窓があり、うん、きっと、あれはお隣さんの家だね。


 何とも言えないガッカリ感が襲ってくる。


 下から窓を見上げても、見えない絶妙な屋根の高さ。

 太陽の光を遮りこちらの家に日陰をさすことは無いが、それでも俺が見物するのを遮るという絶妙なポジション。

 一体、誰が、こんな嫌がらせを予想しただろう。

 隣の部屋の二階と、一階の途中まで。

 俺の身長と、不審に思われない程度にしか窓に近付けなかったベッドの上という縛りでは、それしか見えない。

 窓の真横まで来ればもっと見えるだろうが、そうなると、今度はベッドを大々的に動かさないといけない。

 そんなことしてしまえば、自由時間なくなること間違いなしなので、絶対やらないけど。


 はぁ……。

 ここまでの苦労はなんだったのか。

 そんな思いで疲れ果てて倒れようとした時だ。


「ん……あぁ」


 声が聞こえた、窓の外、やや高さに差がある正面の窓から。

 具体的には隣の家から。

 ベッドの上に寝転がりながら、大きな瞳で、こちらの様子を覗いているのは、俺と同じくらいの赤子。


 目があったのだ。向かいの家の子と……。

 反射的に思わず、手を振ってしまう。

 いやいや、俺も子供じゃないか。


 降った手を戻して、ベッドに戻ろうとすると……、


「うぅ、あう、うわっ!」


 わぁい、泣こうとしてるね。

 そんなに同年代の子と会ったのが嬉しかったのかな?


「ぁああ、ぁあぁ」


 よーし、泣きやもうか!

 全身をゆーらゆーらと動かす、謎のご機嫌取り。

 いくら、速く動いても、赤子はそれを認識できないとか何とかって、話があった気がする。

 ほら、落ち着くんだ!


「うっ……うっ…………」


 よし! よく堪えた!

 そう、そのまま……、


 ガチャッ。


「っ!?」


 音が聞こえたわけじゃない、向かいの家の部屋の扉が開いたから、そんな幻聴が俺の中の危機感が幻聴という形となって全身に響いたのだ。


 慌てて、自分の身をベッドに伏せ、寝たフリを決行する。

 危機一髪だったよ……。


 見えないけれど、多分、声からして、隣の奥さんだと思う。

 寝ている我が子の様子を見に来たのだろう。


 ご近所の奥さんネットワークに在らぬ噂が建てられると、自分の自由が効かなくなる。

 一応、バレてないかと、聞き耳を立てるが、どうやら、そんな事はないようだ。

 良かった……。


「あら? お隣が気になるの?」


 良くないや。

 声が若干、窓に寄ってくる気がする。

 恐らく、さっきの赤ちゃんを抱えて寄ってきている。


「うぅ……? うう…………?」


 そして、気のせいか、俺の事を疑っている気がする……。

 止めて、そんな目で見るのはやめて……。

 まぁ、寝たふりしてるから、どんな顔してるか分からないんだけどね?


「あぁ、お隣の子が寝てるのね」


 奥さんの方は、促されるままに俺の姿を発見したみたいで、体が強張ってしまわないように寝たふりに細心の注意を払う羽目になる。

 だけど、暫くすると、スゥスゥと寝息が聞こえてきた為、俺が疑っていると思っていたのは杞憂に終わったみたいだ。

 分かるよ、腕の中に包まれるのは気持ち良いもんね。


 そんな中、一言。


「友達になれるといいわね」


 その言葉にハッとする。

 あぁ、そっか、良く考えたら、この子は幼馴染になるのか。

 この世界で初めての同年代。

 もしかしたら、長い付き合いになるのかなぁ……。

 そんな風に考えると感情深いものがある。


 どうやら、窓の外には未来の幼馴染との出会いがあったみたいだ。


 ドタドタとこっちの家の階段を登る音が聞こえてくる。

 恐らく、メイドさんが用事を終えて戻ってきたのだろう。

 こうなると、できることは無い。

 大人しく寝ていよう……。


 …………。


 ……………………。


 ………………………………。


 あれ? 本来の目的は?

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