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バッドエンドの転生者  作者: 避雷心
序章Ⅱ
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弟子入り09

「ここまで説明して来てなんなのですが、実は、魔術師の中では、詠唱省略が主流です。きっとユートの周りの魔術師や、これから会う魔術師は詠唱省略を使うでしょう」


師匠のその言葉は今までの説明を、ある種不意にしてしまう物で、驚いてしまう。


詠唱省略の方が主流という事は、精度より速さを求められているのが現状なのかな。

師匠はそれでも、精度の方を重視していると……。


「私は、断固として否定派ですが、キチンとした魔法を使おうと思う人の方が少数なのです」


少し悲しそうな顔で、自分はマイノリティであると宣言する師匠。


もしかしたら、師匠が最初に俺を避けていた様に感じたのは、そこら辺も関係あるのかも知れない。


僕の思い過ごしかもしれないけれど、教えるのであれば、現状に合った教育をと、師匠は考えそうだ。

今思えば、断固として、僕を相手にする気が無さそうだったのも不器用な師匠なりの優しさだったのかもしれない。


でも、だからこそ。


「僕は、師匠の教え好きですよ」


今の気持ちを言葉にして伝えようと思う。

師匠じゃなければ、俺の魔法の何処が悪いのか、きっと分からなかったと思う。

師匠が魔法の精度を重視したきたからこそ、今僕は師匠の教えを受ける事が出来ているのだ。


僕の言葉に師匠の顔が、一瞬、赤くなる。

だが、それも一瞬のことだけ。


「そうですか、そんなに好きな教えに対して、不誠実を働いたのですか?」

「ごめんなさい……」


冷静さを取り戻した師匠が、冷たい眼差しで僕を見ていた。

そして、完全に非しか無い僕は、誠心誠意謝るしかなかった……。


「あと、師匠と呼ばないで下さい」


それに、師匠は師匠呼びを認めてくれず、じっとりとした目で俺の事を見て来る。

申し訳ありませんでした。


はぁ、とため息を吐いて、師匠がこの話は終わりだと言うように、続きを話してくれる。


「ユートは無詠唱が使えるので、ほぼ間違いなく、無詠唱魔法を勧められます」


自分では実感が無いのだが、どうやら、魔術型でありながら、無詠唱で魔法を唱える事は、本当に珍しいようだ。

正直、師匠の今日の説明を聞いて、無詠唱に懐疑的な気持ちを抱いたから、使わないようにしようと思ったんだけど。

日常生活において、魔法に早さを求められる様な事とか思い付かないし。


「ですが、周りに流される事なく、自分の意思でどうするか決めて下さい」


多分、このまま特出した出来事が無ければ、無詠唱は次第に使わないようになると思うだろうけど……。


「勿論、私の教えを受けた後で、私の考えを異端と切り捨てるのも良いでしょう」


僕の表情は、そんなに読み易いのだろうか?

師匠は僕の考えなどお見通しであるかのようだ。

あくまで、選択の自由は僕にあるというスタンスを崩したくないみたいだ。

しっかりと自分の意思で決めるべきなのだと。


「まぁ、私の教鞭を受けている間は詠唱省略や無詠唱なんて認めませんが」


最後にそう占めて、今日の講義が終わる。

今回の様な事を、毛頭やるつもりは無いけど、やったらただじゃおかないという構えだ。

やっぱり師匠は師匠だったらしい。


こうして、今日の講義は終わった……、


「大体、詠唱省略なんて使ってる癖に、詠唱の意味をよく知りもしない輩が多過ぎるんです。意味さえ知っていれば、幾らでも詠唱は伸びていくんですよ!!」


と、思ったが、すぐに愚痴大会が始まった。

本当に師匠らしい……。

繰り返し詠唱文


主に、付加魔法、結界魔法、契約魔法等に使われる。

同じ呪文を指定回数唱えなくても、実行してくれる文。

しかし、詠唱を省略する事はできても、処理を省略する事はできない為、魔法の発動速度が大幅に早くなると言った事はない。

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