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バッドエンドの転生者  作者: 避雷心
序章Ⅰ.v
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お隣の奥様、ルルーシャ02

基本的に、ルルーシャとリリーシャ、2人の特異性質は満月の夜に近くなると症状が現れる。

突然変異ではなく、遥か昔の先祖の血が色濃く現れた形だ。


症状としては、気分が落ち着かなくなる、無性に暴れたくなる、孤独感を人一倍感じる、一時的に魔力性質が変わる、目が異様に冴える、尖った牙が生える等が代表的な物となる。

気持ちに強く影響され、現在、ルルーシャはリールイに甘える事で、ある程度抑える事が出来る様になっていたが、昔は酷く、子供のリリーシャが抑える事が出来るかは分からない。

更に言えば、リリーシャは、ルルーシャよりその血が強いのか、人間の筈のリリーシャの耳が獣耳に変わる事があり、ずっと心配していたのた。


そして、預かったその日、その夜、ユークラウドの隣で寝ていた筈のリリーシャにそれらの特徴が現れてしまう。

簡易ベッドから起き上がった、リリーシャからは耳が生え、爪が鋭く伸び、刺激すると、隣にいるユークラウドを傷付けるかも知れ無い程に興奮していた。


最近、ユークラウドにちょっかいを掛ける事で発散していたのか、性質が殆ど現れる事がなく、完全な油断である。

その時、ルルーシャは目の前が真っ暗に成る程動揺していた。


娘が、ユークラウドを傷付けて問題になるかも知れない。

ユークラウドが赤子なりに親に今日の出来事を話し、バレてしまうかも知らない。

どちらにしろ、安定してきたこの村から逃げ出さないといけなくなる。


娘には自分と同じ様な思いはさせたく無かったのに、とかつての出来事が頭をよぎり、ルルーシャは動けなくなってしまっていたのだ。


それを解決したのは他でもないユークラウド。


「フー!フー!」

「ん」


ユークラウドが後ろから寄り掛かかると、一瞬だけ、暴れようとするリリーシャだったが、後ろから抱きしめられ、頭を撫でられると大人しくくなっていた。

暫く、頭をユークラウドに擦り付けていたリリーシャだったが、やがて落ち着いたのか、ストンと再び眠りに入る。

その時にはもう症状は全て収まって、いつもの様子に戻っていた。


あっという間の出来事。


あれこれと考えていた事が全て杞憂に終わり、ルルーシャはその場に崩れ落ちた。

ルルーシャ自身にも動揺が症状となって現れて仕舞い、自身の異変を彼に見られてしまうが、彼は手を軽くこちらに伸ばそうとして止めただけだった。


リールイがこの惨状に気付かなければ、ずっとこのままだったかもしれない。

その日は訳が分からず、衝動が収まらず、動けず、色々なことをリールイに任せきる事になる。

娘があんなに簡単に収めた筈の性質を、ルルーシャは自分だけ(・・)で抑える事が出来なかった。


何かあったのは、ルルーシャの家庭の中だけのお話で。

娘に何か問題が起こる事も無く。

ユークラウドが誰かにあの夜のことを話す事も無く。

気付いたら、いつもと変わらない日々を送っていた。

あれだけ隠そうとしてきた事がばれた筈なのに、何も変わらなかった。


こんな小さな子供に何かを否定された気がした。

こんな小さな赤子が怖かった……。




あれから月日が過ぎていった。

満月の夜の数は数十を超えたが、リリーシャは、何故かユークラウドには、あの姿を大胆に見せ、甘えていた。


「リリーシャはユークラウド君の事が本当に好きね」


ルルーシャの中のユークラウドへの恐怖が消えた訳では無い。

あれから少しは考える余裕があっただけだ。

ルルーシャにとってのリールイが、リリーシャにとってのユークラウドなのだと。


きっと、娘は自分と同じ様な道を辿らない。

それ自体は、母として喜ばしい事だ。


だが、ルルーシャという人生が何だったのか、少しだけ分からなくなった。

杞憂していた事が馬鹿らしい。

自分が夫を巻き込んでまで、旅をしてまで、してきた事は何だったのか。


ただ、ただ。


「ほら、こっちにこい」

「あなた……」

「お前がそんな顔をしなくていい」

「……そんな、酷い顔だった?」


ルルーシャの悪い方向に向いてた思考は、夫のリールイに引き戻された。

暫く夫に寄り添う事で、表情をいくばかり取り戻すが、それは夫の言葉で再び歪むことになる。


「お前が何を受けて来たかも、どんな思いだったかも、この子には関係なくない事だ」

「っ…………」


それは突き放す様な言葉だった。

そして、それは優しい言葉だった。


「だけど、それは、お前にも言える言葉だ」

「え……?」


「お前に今まで何かあったかなんて今のお前には関係無い。これからの人生は好きに生きろ」

「……えぇ。そうね」


その言葉に、少しだけ救われた気がした。

ルルーシャの中の蟠りが少しだけ軽くなるのを感じる。

ああそうだ、さっき自分が言ったじゃ無いか。

ルルーシャにとってのリールイが、リリーシャにとってのユークラウドなのだと。


ルルーシャにとってのリールイは……。


「それに、もう1人、家族が増えるしな……」


そう言って、リールイは、ルルーシャの大きくなったお腹を撫でる。

お腹には、あの日に授かった2人目の子供が居た。

ルルーシャ・エルロック(旧姓、ウルフェン)


魔闘型


属性魔法適正

「水」


状態魔法適正

強化系列「肉体変化」(先祖返り)


リールイ・エルロックを夫に持つ。

狼人の先祖返りの特性持ち。

人間史上主義の多い国で育った為、幼い頃、大なり小なり迫害を受けて育った。故に、トラウマを持つ。

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