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バッドエンドの転生者  作者: 避雷心
襲撃Ⅰ
109/114

少年中期05

雷の包囲網が狭まっていく。

森から誰も逃すまいと人数をかけ、周囲の景色を歪ませる炎の蝶を着実に削っていく。


走行してる間にその1人は馬車を捕らえた。

動きを止める為にその場から雷を放つ。


が、その狙いは炎の蝶によりずらされる。

そうと分かれば辺りの蝶から先に削っていく人影。


馬車からの攻撃はない。

一瞬、それを罠かと警戒する素振りを見せるが、それでも構わず突っ込んで来る。

どうやら、自分の実力に多大な自信があるようだ。


そして、炎の蝶でも誤魔化せないぐらいの至近距離まで近付いた所で、雷の魔法を発動させる。

その一撃は見事に馬車の姿を捉え、

当たると同時に馬車は霧散した。


「……っ!」


その驚き顔を遥か遠くから捉え、ほくそ笑む。


馬車の幻覚の中から出てくるのはゴーレムと無数の炎の蝶。

回避行動を取ろうとするが、間に合わず、仕掛けは彼女の足を止めた。


光魔法による望遠レンズ、それを使って辺りを警戒しながら、得た情報を魔力で床に書き込む。

ちなみに、幻惑魔法の応用で、指先が触れた部分のみを歪ませることで書く、魔力消費もタスクも少ない便利魔法。


他の魔法でも同じようなことはできるが、基本的に幻覚か付与以外は床が痛むのでやらないほうがいいというのはどうでもいい小話。


それを見ながら蝶の男は、馬車の進路を変える。

同時に、魔力ポーションの様なものを飲みながら、蝶を増やし続けているところを見るに男も大分ギリギリだ。


球体のゴーレムに幻覚魔法と音魔法を組み込み、馬車の姿と音を再現した模造品は7つ作ることができた。

複製を急いだせいで、よくよく見ると、それが幻覚だとすぐ分かるような粗悪品だが。

それでも男の蝶の魔法が組み合わさった状態で走らせると、判断を鈍らせる。


ちなみに球体ゴーレムの製作者は5つほどゴーレムを作ったところで魔力不足で苦しそうな顔をしていたが、蝶の男がポーションを突っ込むことで何とか後二つ完成させ、そこで力尽きた。

なので、これ以上の追加はない。


一個壊されたので残り6つ。

とは言え、これだけあれば、情報に応じて進路を変え続ければ、何とか希望が見えてくる。


僕が情報を取りこぼさなければという枕詞がつくため、責任は重大だ。

……今更だけど、何でこんな村を襲った奴らと共闘してんだろうね、僕。


とは言え捕まって仕舞えば纏めてアウトなので仕方ない。


そんな余計なことを考えていると、また1人敵を見つけ出す。

レンズで詳細を見ると、明後日の方向に向かう馬車を必死に追いかける女の人の影。


これは、恐らく大丈夫か。


今まで入った情報をまとめると、敵の集団には女性、強力な雷魔法、鎧といった共通点が見受けられる。

この国でその特徴を持った集団がいたような気がするが、気のせいだと思いたい。


次々と視点を変えて様子を見るが、相手は馬車の幻覚には苦戦している様子。

いくら雷魔法が強かろうが、身体強化系統の魔法が使えなければ、幻覚といえど走る馬車に追いつけず、距離が離れれば炎の幻覚により狙いを逸される。


これなら……、そう考えたところで、馬車の数が2つ消えた。


右奥と左奥で続け様に幻覚が暴かれる。

双方ともその後トラップも素早く動いて回避。


ここにきて、身体強化系統が2人かよ。

心の中で、悪態をつくが、馬車の包囲網となれば身体強化持ちを専攻させるのは当然の手だろう。


馬車ガプラフだったことを知ると、2人とも次の馬車を潰そうと、また動き始めた。


これは不味いかもしれない。

すぐに蝶の男を呼んでそのことを伝える。


その報告に彼もまた険しい顔をした。

彼女ら2人は幻覚の馬車を見つけ、破壊するまでの時間が短い。


放置すれば幻覚の馬車は全滅してもおかしくないだろう。

それはかなり困る。

馬車は最低でも二つは残さないといけないというのが僕の見解。


今はまだ森だが、森を抜けると同時に遮蔽物がなくなる為、一気に馬車を走らせる必要があるのだ。

その時、馬車が1台か3台かで難易度がかなり変わってしまう。


その為には……。

蝶の男が進路を右寄りに変える。


どうやら、蝶の男と僕の考えは一致するらしい。

先に強化魔法持ちを1人倒す。

これが脱出の為の絶対条件。

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