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バッドエンドの転生者  作者: 避雷心
襲撃Ⅰ
108/114

少年中期04

詠唱を唱えながら周りの様子を確認。

今のところ周囲に人影は見えない。


馬車は上手く森の中に溶け込みながら走っているが、森のあちこちで雷が上がり、その度、肝が冷や冷やする。

恐らく森中に散った炎の蝶を打ちと落としているののだ。


音が拡散している為、恐らく相手は複数。

もし、ある程度の人数が動員されているのなら、逃げ切れるかかなり危ういだろう。


加えて、詠唱、無詠唱、音の方向と色んな者神経を注ぐ必要必要があり、頭がパンク寸前だ。


「おい、ゴーレムを発進させるなら直進させるんじゃなくて、一定期間停止させて」

「へい」


と、そんなことを考えていると、蝶の男の仲間への指示が引っかかる。

そちらを見ると、1人の男が丸い球体を作り上げていた。


ここに来て、更にタスクの追加か……。


詠唱で口が離せない為、指示を出す蝶の男と球体の男の間に割って入る。


「なんだ?」

「…………」


詠唱が使えない為、身振り手振りのみで伝える。

球体のジャエスチャーを繰り返す。


だが、球体の男は頭を傾げている。

伝わらないか……。


「…………」

「待て、一旦それを複製しろ……。出来るだけ多く」

「……へい?」


だが、幻惑魔法を得意とする蝶の男には伝わったらしい。

うんうん、と頷きながら身振りで許可を取り、出来上がった球体に手を置き、詠唱を変え、作っていた魔法を組み替えていく。


昼間、銀の蝶を作った時、実はかなりの手間がかかった。

それは、蝶自体に移動するというタスクを組み込まないと行けないから。


留まった状態で治癒を行う等の魔法を1としたら、条件を持って移動する治癒を持った蝶の魔法にはその五倍は条件式を組み込まないといけない。


銀の蝶は自由度を下げ、近くの人に向かう程度の命令に抑えているから、その程度で済んでいるけど、本家の魔法は更に複雑だろう。

だからこそ、男は炎の蝶の魔法しか使えない……、なんて、これは関係ない話か。


兎も角、魔法を移動させるのには、より多くの手間がかかる。

ならば、その手間を省くにはどうするか?

答えは簡単、移動は人任せにして仕舞えばいいのだ。


この球体はゴーレムと言われていた為、十中八九移動能力を持たせている。

負荷魔法を使い、そのゴーレムに作りかけの幻惑魔法と音魔法を埋め込んでいく。

特に拒否反応はなく、作りかけの魔法はゴーレムに適応した。

適応した幻惑魔法に一定の調整を加えたところで、魔法の出力をループに切り替え。


思い出すのは、魔石を作ってきた日々。

やってきた事が身になっていることを実感するが、こんな状況では感情にも浸れない。


「ふぅ……」


とは言え、作業がひと段落したため、喋れるようにはなった。

僕のため息に蝶の男が反応するが無視。


「幻惑魔法を付加しました。この球体は、自立軌道で合ってますか?」

「合ってる。おい、次を出せ」


僕の確認に短い答えで済ませ、ゴーレム作りを急がせる。

さすがに同系統の魔法に関しては理解が早いのだろう。


ゴーレム作りに合わせ、シールのように後付け出来るような作りで先んじて魔法を作っていく。

こうすると、強度がかなり脆くなるだろうが、どうせ使い捨てだから構わない。


元々、僕の幻覚魔法は1.2個しか作れない予定だったが、これなら少ない魔力出力でもその先に目を向けることができる。

ループ処理で埋め込みが完全に完了すると、次の球体に魔法を埋め込む量産体制に入った。


口が空いたので、別の魔力門を使って他の魔法の詠唱を開始。

幻惑ゴーレムを少しずつ量産しながら、最悪の事態にも備える。

雷の音は少しずつ近付いていた。

ちなみに、それでもユークラウドが銀の蝶を選んだのは、炎の蝶に見慣れている一味が、一番幻惑魔法にかかるフォルムがそれだったからです

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