バットエンドの○○○
今時流行らないのでスキップ推奨
さて、お立ち会い。
今からちょっとだけ僕の与太話に付き合ってほしい。
今から語るのはある少年の終わりと次なる始まりの話。
とあるバットエンドの物語。
ある時、ある世界で、神々さえ支配してしまう様な恐ろしい存在がいた。
これを便宜上『厄災』と名付けよう。
取り敢えず、やばい奴って事だけ伝わるなら、名前だってどうでも良いのだ、実際。
少年は、その存在と対立する事になる。
最初は、そんな気さらさら無かったのだけれど、その『厄災』は、少年の大切な仲間達を苦しめ始めたのだから、しょうがない。
それしか道は無かったか? と聞かれると、一考の余地はあるだろうが、その時はもう考える余地すら無かった。
何故なら、その『厄災』は、少年から大切な人を奪っていったのだから。
『厄災』と少年は対峙する。それが必然だというように。
最終的に世界を巻き込みながら2人は戦い、激しい死闘の末、勝利したのは少年だった。
たが、物語はそこで終わらない。
『厄災』は散り際に自身の復活の準備をしていたから。
少年は、『厄災』の復活に備えることが自分の使命だと感じ、その備えをすることになる。
まず、何年もかけて、『厄災』によってボロボロになった世界を作り直す事にした。
その道のりは、果てしない物だったのだけど、少年は仲間と協力しあいながら、1歩1歩前へと進み、不可能と思えたそれを成し遂げた。
それが終わると、世界の運営を仲間達に託し、別れを告げ、復活するであろう『厄災』を探す旅に出た。
何の手がかりも無く、世界を回る旅だったが、少年はそれが辛いとは思わない。
世界を見て回るその旅で、少年は新たに様々な人達と知り合い、その旅は、心に傷を負った少年に癒しを与えてくれる。
そんな日々が、何年、何十年と続いたある日、遂に少年は、『厄災』の復活方法を突き止めた。
だが、少年が今いる場所から、その場所は遠い場所でのこと。
この時ばかりは、少年の旅が裏目に出たと言えよう。
結論から言うと、少年は間に合わなかった。
急いでその場へと馳せ参じ、かの『厄災』と相見えた少年。
そこで少年が目にしたのはその旅の途中で知り合った1人の少女の変わり果てた姿。
あるべき筈の物がそこにないその姿に、少年は絶句した。
『厄災』は、少年の気持ちを踏みにじるかのように、少年が守ろうとしたその一つであるその少女の身を依り代として復活する。
一拍遅れて、反撃に出る少年。
が、『厄災』の初動の方が遥かに早い。
予め少年が来る事を予想し、対策を練っていた厄災の方が上手だった。
少年が全盛期から程遠く、復興に尽力したのも相まって全盛期からは遠い能力だったことも理由の一つかな?
勝敗は一瞬で着いた。
結果はみるも無惨な、少年の敗北、、、
ただ、そこで少年は諦めなかった。
敗北を悟った少年は、ある禁術を発動させる。
その禁術とは、身体を構成していた物を全て魔素へと分解し、その魔素を使って、失われかけた存在を取り戻す魔法。
少年が、禁術を使って最後にしたことは、未来へと希望を託す事。
少年は、その希望を、まだ辛うじて息のあった少女へと託し、
そして……、少年という存在は世界から消滅した。
ご静聴ありがとう。
以上が、とあるバットエンドのあらましだ。
意味が分からないって顔するね。
そりゃそうだろう、君はまだ産まれてすらいないんだから。
言ってしまえば、これは大人がお腹の中の子供に聞かせる絵本の中の物語だ。
物語の登場人物が死んだって、何をしたって、現実の君には何も関係ない。
第一、僕がいきなり話始めたのは、このままだと僕が退屈で死んじゃいそうだったからだ。
僕は今、何も出来ない無力な寂しがり屋さ。
別に君に、物語の中の『厄災』を倒してほしいって訳じゃないよ。
実際問題、今の世界に『厄災』なんて物、存在すらしないし、どうしようもない。
僕は君に、平和な人生を送って欲しいと思っている。
優しい親に恵まれて、親しい友達を持って、愛しい恋人と結婚して、温かな家庭を持って、幸せな日々を過ごして、穏やかな死を迎えて欲しい。
君がどう思うかは知らないけど、僕が望むのは、精々平凡で順風満帆な人生だ。
物語の中の人物の様に波乱な人生だなんて、百害あって一利なしさ。
おっと、そうこうしている内に時間の様だ。
話を聞いてくれてありがとう。
理解するのはまだ難しいかもだけど、聞いてくれるだけありがたい。
それでは、君の人生が良きものとなることを祈るよ。




