俺の正体が決定?!
龍蘭高校・身体検査の文字が見えて、俺たちは二手に分かれる。
ジュンとユウは、女側に。
俺は……とりあえず男側に。
こんな大きなしっぽで女側に行けないだろう。
「しかしすごいね、それ」
振向くと、同中の佐野イタルが立っていた。
イタルも、しっぽがはえているが、俺のより間違いなく小さい。
「おう、おはよ。すごいだろ、無駄に長いし、でかいぞ」
俺は無駄に自慢する。
「エロすぎ。四方八方に種付けできるな」
「変態か」
俺はしっぽでイタルを殴った。
「いててっ!! え? もう動かせるの? マジかよ」
イタルは俺に殴れられた反動で転びそうになりながら、言った。
「え? 動かせないの?」
俺は伸びたしっぽをズボンの中にしまった。
「いや……無理でしょ、昨日の今日で」
イタルは俺を不審者のような表情で見ている。
落ち着いて周りを見ると、他の人もひいていた。
あれ……そうなのか。
俺はしっぽを完全に隠した。
「順番に並んでください」
スタッフさんらしき人に椅子に座らせられて、俺たちは廊下で待つ。
窓の外にハナミズキの花が見える。
大きなピンクの花びらと白い中心が、大きなリボンを結んでいるようだと思う。
俺はこの花を見ると、ジュンのお姉ちゃん、ケントさんの事を思い出す。
ジュンと仲がよくて子どもの頃から一緒に遊んでいた。
二つ違いのケントさんも、一緒に遊ぶことが多くて、俺たちはよく中島家の敷地内で遊んだ。
一番お気に入りだった遊びは、敷地内に流れる川で、投げ石だ。
川は中島家の敷地内だけ水が浄化されていて、匂いが無かった。
サラサラと流れる川の水音に、河原にハナミズキ。
昔こそ花の名前は分からなかったが、その花が好きで俺はよく見ていた。
三段も四段も飛んだのは、ケントさんの石だけだった。
俺が何度投げても一段いくか、行かないか……。
俺はケントさんのアンダースロー、好きだったなあ。
アンダースローは大人が投げる感じがする。
あの頃から俺はずっとシンカーばかり練習してた。
俺がアンダースローに憧れてる最大の理由はケントさんかもなあ。
ケントさんのあの指……格好良かったなあ。
「はい、次の方どうぞ」
そのこんな太い関節で……。
「お、アラタじゃないか」
顔を上げると、そこにケントさんが居た。
髪型は短く切られていて、女の人には見えない。
「は?」
なんで龍蘭高校にケントさんがいるんだ?
その短い髪の毛……赤いけど……男の人みたい。
ていうか、なんでここに?
消息不明なんじゃないの?
家から出たとは聞いたけど……ていうか、看護師の服装?!
なんのコスプレ?
「え? え? ええ?」
「はい、どうぞー」
戸惑う俺を無視して、部屋に通される。
「あら、こんにちわ~~~」
そこにはスケボーに乗って俺の部屋に落ちてきた白銀女が白衣を着て立っていた。
「はいーーーーーーー?」
俺は叫ぶ。
「はいはい、服脱いでくださいね」
白銀女が俺の服をズボンを一瞬で脱がす。
「お前……?!」
俺は一瞬でパンツ一丁になる。
そして大きなしっぽが丸出しになる。
「やだ……何回みてもエッチすぎるのよお……」
白銀女の目がトロンとする。
俺はしっぽを動かして、白銀女の頭を掴もうとする。
頭に当る寸前に、白銀女が俺のしっぽを掴む。
「舐めて良い?」
「いいわけねーーーーーだろ!!」
俺はしっぽを掴んだ白銀女ごと持ち上げる。
「パワーも満点。三回戦で終わりそうにないわ~~」
宙に浮いたままの白銀女が言う。
「ねえ、そろそろ白銀女って言うの、やめてくれる?」
浮いたままの白銀女が俺を睨んで言う。
「へっ?!」
俺は一度も声にだして白銀女と言ってない気がするけど……
いつの間にか目の前に白銀女が居る。
真っ赤な羽が、落ちる直前の夕日のように赤く染まっている。
「名前、早乙女凜だって、言ったよね?」
白銀の髪の毛を揺らして、白銀女……あらため、早乙女は俺の前に浮いていた。
「凜って呼んで? 気に入ってるの」
「?!」
どうして俺の【心】を読んでる?
「だって端末食べたから。全部知ってる。全部聞こえる。こんなのつけられて可哀想、この惑星の人たち」
「え?」
「伸した右手を動かない左で叩きつけられるような人生、楽しいかしら」
俺は凜が何を言ってるのか分からない。
気が付くと俺の後ろのケントさんが立っていて、俺を羽交い締めにしている。
「ねえ? ケントもそう思わない」
「凜さまは実に正しい」
よく見ると、ケントさんの左耳の端末も無い。
俺と同じようにギザギザにちぎられているように見える。
消息不明、異端……って……こういうこと?
俺も異端なのか?
「違うよ、君は異端じゃない。世界……いや、銀河でたって一人の仲間だ。ずっと待ってたよ」
凜が微笑むと、赤い羽根が分解されて、小さな虫になり、俺のパンツの隙間に入ってくる。
そして、色々な場所を調べ始める。
「ちょっと……くすぐったい……!」
俺が逃げようとすると、それをケントさんが押さえる。
そして耳元で言う。
「羨ましい。凜さまに選ばれるなんて」
ケントさんは静かに言う。
「いやいや、俺は普通に男か、女が良かったんですけど?! 普通が一番なんですけど?!」
俺は体をよじらせながら叫ぶ。
くすぐったい!!
「ふーん……ちょっと中も見せてもらおうかな……」
顔が近づいてきて、舌を伸ばした凜が俺に近寄る。
キスされる……?!
「ちょっと……!!」
俺が叫ぶより早く、凜の舌が俺のしっぽを舐める。
そっちかよ!
「ああああ……くそ……」
マジで気持ちいい……やめてくれ……なんだこの感覚……!!
凜の舌が俺のしっぽを割って入ってくる。
「ああああああああああ!!」
「よし、やっぱり全部あるね、合格」
やっぱり聞いて無いじゃねーか。
「ごちそうさまでした」
口元からダラリと唾液がたれるのを、ケントさんが袖元の服で拭く。
「なにがだ?!」
俺はほぼ丸裸で転がったまま叫ぶ。
赤い羽根に押さえつけられて動けない。
「これはこれで、あり!」
「だからなんだよ」
「あーーーーーーーーーーーーーーりーーーーーーーーーーーーーーーー!」
凜が叫ぶ。
すると同時に突風のような衝撃波が走り抜けて、一瞬目を閉じる。
同時に超音波のような、プールの奥底に沈んだような、キーン……と深い音が響く。
低い地鳴りのような音を長く響く。
地震?
軽く学校が揺れている。
カタカタ……と揺れた机は、数秒して止まった。
なんだ? 何が起こったんだ?
すると隣の部屋で記録をしていた人たちが
「わかりました、ありですね」
という。
ていうか、隣に記録係り居たの?
「ありです、おおあり、オオアリクイ」
凜は笑顔で言う。
「オオアリクイ」
記録が繰り返す。
「はい、オオアリクイ」
「記録、オオアリクイ」
凜と記録係りは意味不明なやりとりを繰り返す。
「藤井アラタ、記録・オオアリクイ・哺乳綱獣亜綱異節上目有毛目アリクイ亜目」
記録係がかき込む。
「いやいや、違う違う、何を言ってるんだ」
俺はやっと自由になった体で、ふらふらと記録の人に寄っていく。
「入学を許可します」
記録係が俺に札を渡す。
そこには入学許可・藤井アラタ・哺乳類と書かれている。
「えーーーーーーーーー?」
振向くと、凜とケントさんは消えていて、普通の医師たちが診断をしている。
「えーーーーーーーーーーーーーー?」
俺は再び叫ぶが、パンツ一丁で部屋から出された。




