12-2 金獅子の誇り
「あァ? んだと?」
「だ、だから……」
レオンはアンディゴで、親父を問い詰めていた。
その形相は悪人そのもので、親父はすっかり怯えてしまっている。
「ここでの営業許可はでてねえっていってんだァ。勝手に営業しているんだろ?」
「そ、その話はなんども……」
「ああ、そうだなァ。お前が、この通りで不当営業してんのは、別に今日だけのことじゃねえからなァ」
「……!?」
「証拠がねえとでも思ってんのかァ? あいにく、調査はばっちりでなァ。詳しい話は駐屯所できかせてもらうからなァ」
「そ、そんなぁ……」
がくっと首を垂れる親父。
レオンは、ここ数日、この親父の不当営業を摘発するために張り込んでいた。
「ったく、なんだってこの町はこうなんだよ」
「まぁ、仕方ねえですぜ。貧困から解放されたら、嫌でもこうなってしやいやすって」
「以前よりは活気があっていいんだがなァ……」
その金髪を、わしわしと掻きむしる。
あの日から、レオンはもう一度、金獅子の面子を集めなおした。
その噂を聞きつけた仲間は、自然と集まり、昔と同じくらいには戻っていた。
それでも、レオンは義賊として活動はせず、町の自警団を個別に設立。
名前は、「金獅子」とそのままだが、義賊としての名前が知れ渡っていたためか、町民にはすぐに受け入れられた。
「まっ、構いはしねえがなァ」
昔と比べて、きちっと服を着こなすレオンは、なかなか様になっていて、町民からの人気も高い。
(半獣人としての誇り……かァ。まっ、受け入れられてはいる見てえだがァ)
駐屯所までの道を、ゆっくりと歩く。
アンディゴは、王都からの支援もあり、子供が元気に遊べるほどには回復していた。
魔剣騒乱以来、魔物の襲来が激しい訳でもない。
本当に、穏やかな日々が続いていた。
「はん、のどかすぎて退屈なくらいだぜ」
「アニキ? 何かいいやした?」
「あァ? なんでもねえよ」
レオンは、それに向かってほほ笑む。
魔剣と共に戦った懐かしき仲間と、その魔剣を想いながら。




