11-4 決着
『来たか』
ふと、そんな声が聞こえた。
空は日が昇ろうと、薄明るくなっている。
かなりの時間が経ってしまったみたいだ。
祭壇へと続く小さな階段を上ると、そこには、僕の親友……カインに宿るダーインスレイブの姿があった。
「待たせたな、ダーインスレイブ」
『お前ひとりにするために、策を講じていたからな。暇はしていなかったぞ』
「趣味の悪い」
『ふん、貴様も我と同じあるだろう』
「貴様と同じにするな。反吐が出る」
そういうレーヴァテインの顔は、心底嫌そうだった。
本当に、同じにされたくないんだ……。
『まぁいい。さあ、あの日の続きをしよう!』
「口を開けばそればかり……。単純だな」
『我にとっては、それこそが最も重要なことなのだ』
「ならば、望み通り……決着をつけてやる!」
『そうだ、それでいい!』
レーヴァティンが、ダーインスレイブが、腰に携えた剣を抜く。
薄明りの空が、戴冠の祭壇を照らす。
本当に僅かな明かりだったが、それだけでも十分な明るさだった。
ただ、その明りが魔剣を照らして、遠くから見れば、二つの光が相対しているようにも見えるだろう。
(カイン……!)
僕の目の前で、笑みを浮かべるカインの体。
その中に、君は眠っているのだろうか。
それとも、自我があっても抗えないのか。
どちらにしても、カインがこの事態を望んでいるとは思えない。
『必ず救って見せるよ、カイン。』
そう、つぶやく。
この声は、カインには届いていないと思うけど、せめて、それだけでも言いたかった。
「行くぞ!」
『お願い!』
『来いっ!』
レーヴァティンのその一言に、僕とダーインスレイブが反応する。
これでいい。
きっと、その言葉はどちらに対しても言ったんだと思うから。
レーヴァテインが剣を振り上げる。
ダーインスレイブも同じように、剣を振り上げた。
甲高い、金属同士がぶつかる音を、辺りに響かせる。
そのまま、つばぜり合いになる。
『ふははははっ! そうだ、この感覚だ! この死に触れあうこの感覚! 懐かしいぞ!!』
ダーインスレイブは邪悪な笑みを浮かべる。
「その感覚を味わったからこそ、あの日が起きたのだろう!」
つばぜり合いは、両者が同時に距離をとったことで終わった。
「その人の死を軽んじたからこそ、俺たちは自分の部下に殺されたのだ!」
『死んだのは我らではない。シュバルツという人間だ。貴様もわかっているのだろう? 自分が何者なのかを』
「ああ、だが貴様と同じにされたくはない!」
『いや、貴様は我と同じなのだ!』
2人が一斉に魔法を放つ。
炎と氷がぶつかり合い、激しい音と共にまぶしいほどの光を放った。
――― ―――
「な、何の音だ?」
レーヴァテインとダーインスレイブが戦闘する少し前。
王宮からの戦闘音に気付いた民衆が、ぞろぞろと出てきていた。
「お、王宮から聞こえるぞ……!」
「まさか、国王陛下の討伐部隊か……!?」
「いや、そんなわけがない。いくらなんでも早すぎる」
「だったら……」
皆、口々に国王だ、騎士だ、反乱だ……などといっている。
そして、甲高い金属音が響くと、体をすくませた。
「な……何が起きているんだ……?」
「ま、まさか魔物たちがもう来るのか……?」
「そんな!? やつが言っていた期限まで1日あるぞ!?」
先ほどまでの希望が打ち砕かれたのか、不安そうな声を上げる。
民衆の表情は、コロコロと変わり、それだけでも不安定になっているのがわかるくらいだった。
そして、王宮の奥。
戴冠の祭壇から、激しい光が放たれた。
「う、うわああああああ! も、もう終わりだああああああ!!」
誰かがそう叫んだ。
だが、それを叫んだのは一人だけだった。
皆、その光を見ていた。
なぜ、その光を見ていたのか、民衆は理解できていなかった。
だけど、目をそらせない。
そんな感覚だけが、民衆の目をくぎ付けにしていた。
そして、その民衆の中に彼女はいた。
「あ、アストラル……!?」
ぽつりと、そうつぶやいた。
その声は、民衆の中に消えていった。
――― ―――
「世界を滅ぼして、何になる! 貴様の恨みが晴れるだけだろう!!」
『世界を征服するために、我が存在しているのだ! その前の憂さ晴らし、どうということはない!!』
「ついでで人を殺すな!」
剣と剣がぶつかり合い、交差する。
その剣戟は、何度も何度も繰り返されていた。
『貴様も同じだろう! 人を、生物を、殺すことに、ためらいはないはずだ!』
「ためらいはなくても、死を悼む気持ちは忘れてはいない!」
『気持ちがあれば、殺していいのか! ならば、反乱を起こし、指導者を虐殺するのは正しいのか!!』
「殺すことが正しいとはだれも言ってはいない! それを正当化するのは、いつだって殺戮者の傲慢さだ!!」
『傲慢で結構! それが自分であることの証明だ!』
「すこしは、物分かりが良いと思っていたぞ!!」
ふと、声が重なる。
ダーインスレイブが、カインの声ではなく、レーヴァテインと同じ声で話しているように聞こえる。
レーヴァティンも、僕の声ではなく、自分自身の声で話しているみたいだ。
「もう俺たちの時代は終わっている! この時代に、俺達の出番はない!!」
『人が決めた時代など!』
「俺達はその人に負けたのだ! 受け入れられなかったのだ! それをいい加減、理解しろ!!」
『理解するのは、貴様の方だ!!』
剣戟はさらに激しくなる。
もう、人が見えるという次元ではなかった。
魔剣同士の、本気の殺し合い。
そうでもしなければ、カインを救うことなんてできない。
僕自身の体が死んでしまえば、レーヴァティンは戦うことができないからだ。
『我が生まれた理由、最後にシュバルツ本人がこの世界を恨んでいたからだ!』
「そんなことはわかっている! だからといって、それを実行するのは、話が違う!!」
『我自身の考えに基づいて行動している! 他人に言われる筋合いなど、ない!!』
剣戟が止む。
そして、二人とも魔法を放ち始めた。
小さな爆発が、小さな閃光が、積み重なって、大きくなっていく。
「俺と決着がつけたかっただけならば、こんなに大掛かりなものにする必要はない! 結局、世界の支配者に貴様がなりたかっただけだろう!」
『世界はもともと我のものだったのだ! それを取りかえすだけだ!!』
「貴様はシュバルツではない! 先ほども自分自身の口から言っただろう!!」
『貴様も、もとは同じ人間だろう!!』
「だからどうしたというのだ!!」
一際大きな罰発が起きると、二人は一斉に距離を詰める。
地面を思い切り蹴り、その勢いのまま。
その速さは、レオンの素早さと同じくらいだ。
そして、剣閃が交わる。
二人は、ほぼ同時に地面に着地した。
「ぐぅ……!」
レーヴァティンが左手から血を流している。
どうやら、ダーインスレイブに斬られたようだ。
「奴は……!」
後ろを振り返ると、ダーインスレイブはゆっくりと地面に倒れた。
『レーバティン!?』
「大丈夫だ、柄で気絶させただけだ」
レーヴァティンがゆっくりと近づくと、確かに気絶しているようにも見えた。
「変われ。ペンダントはお前がやらなければ」
『わかった』
レーヴァティンから、体を返してもらう。
ふっと自分の体に戻った時、左手の痛みにすこしうめいた。
『早く! 時間がないのだぞ!!』
「わかってるって!」
僕は首からペンダントをとると、カインの首にぶら下げた。
しんと辺りは静まり返っている。
(せ、成功したの……!? 失敗したの……!?)
その結果がまだわからない。
心臓は大きな音を立てている。
「うぅ……」
すこしして、カインが目を覚ました。
「あれ、ここは……!」
「カイン!!」
よかった。
本当に、よかった。
そうおもっただけで、涙があふれだしてくる。
「なんで、こんなところに……?」
「本当に……手間をかけさせるんだから」
そのまま地面に座り込む。
体全身から、力が抜けるようだった。
「まあいいや。さっさと帰ろうぜ」
カインは右手に剣を持ったまま、立ちあがる。
終わった。
僕の旅が、終わった。
ようやく、カインを救うことができたんだ。
「これで……!」
『アストラル!!』
「え……!」
カインの声が頭に響く。
目の前を見れば、カインが剣を振り上げていた。
「ど……うして……?」
信じられなかった。
カインが僕に剣を向けていることが。
『避けろ、死ぬぞ!!』
「っ!!」
レーヴァティンの声で咄嗟に我に返る。
急いで、横に避けると、剣がほほをかすめた。
「なんで! 守護魔法は正しく機能しているはずなのに!!」
「この程度で我を防げると思ったか!!」
「ダーインスレイブ!?」
「大方、レーヴァティンが守護魔法ではじかれるから、この作戦を思いついたのだろうが……それは魔剣が核だった場合だ」
『まさか……! 貴様、人間に核を移したのか!!』
「そのまさかだ。この人間を助けたければ、我を殺すしかない。だが、我を殺せばこの人間も死ぬぞ」
「なっ……!」
カインを助けたければ、ダーインスレイブを殺すしかない。
ダーインスレイブを殺すには、カインを殺すしかない。
(カインを助けたければ、カインを殺すしかない……っていうこと?)
僕は、カインを助けるためにここまで来た。
そして、一つの希望をみつけて、この場所にたどり着いた。
その希望は、目の前であっさりと打ち砕かれた。
どうして、こんなことに……!
『考えるのは後だ! いまは生き残ることだけを考えろ!!』
「レーヴァティン! 変われないの!!」
『やつが守護魔法を発動しているのか、なぜかはじかれるのだ!』
「それじゃあ、僕が戦うしかないってこと……!」
『ああ、そうだ!』
「そんな……! 待ってよ、どうしてこんな……!!」
『喚くのは後にもできる! 今はこの状況を打破することを考えろ!!』
「逃げてもいいが、その場合はすぐにでも魔物を攻撃させるぞ」
「っ……!」
『この……! 貴様というやつは!!』
「何とでもいうがいい。それで貴様たちとの決着がつくのであれば、それで構わない」
『くっ……! ここでやつを倒すしか方法はない! 決断をしろ、アストラル!!』
「なんとかって、方法があるの!?」
『1つだけ、ある。しかし、それはカインも死ぬことが前提だ』
「僕にカインを殺せと!?」
『それしかないのだ!!』
「僕には……! その選択をすることはできないよ……!」
『それでも、決めるしかないのだ!』
「でも……!」
「相談はそれまでか? ならば、決着を付けさせてもらうぞ!」
ダーインスレイブは僕との距離を詰める。
「ただの人間である貴様など、造作もない!」
「っ!」
(ここまで来て……やられるのか……!)
『行ってくれ、アストラル。君は……君たちは、私の希望だ。君の名は希望なんだ。その希望を、かなえてくれ』
ふと、頭の中で彼女の声が聞こえた。
「くっ!」
振り下ろされた攻撃を、間一髪のところで避ける。
それでも、レーヴァテインと比べれば遅い。
服が少しだけ、切り裂かれてしまった。
「ほう、あの割れの攻撃を避けるか」
「僕は……死ぬわけにはいかないんだ」
「だが、貴様では我を殺すこともできないのだろう?」
ダーインスレイブが、人を馬鹿にしたように笑う。
その顔は邪悪で、自らが強者となれたことを喜んでいるようにも見えた。
「次はよけられんぞ」
ダーインスレイブは剣を構える。
(来る……!)
頭の中で、予感がする。
次の攻撃は本気で来る。
その攻撃を、僕はよけることができないだろうと。
「行くぞ……!」
ダーインスレイブが距離を詰めようとした、その時だった。
「なっ……! 人間が……!!」
突然、何かに縛られたように動きを止めた。
『あ、アストラル……!』
「カイン!!」
「くっ! 我の中で、まだ意識が残っているというのか!!」
『俺がこいつの動きを止めている間に……止めを刺してくれっ!!』
「でも……! 君まで死ぬんだよ!」
『構わない! もう、俺の体を使って、人を殺すなんてごめんなんだ!!』
「カイン……!」
予想はしていた。
ダーインスレイブがカインの体を使って何をしていたのか。
この王宮が無人な時点で、そんなことは誰でも予想がつく。
カインはその光景を、自らの目で、自らの意思も反映されず動く身体で、経験していた。
それがどんなにつらいことなのか、僕には想像できない。
だけど……!
『頼む、アストラル……! お前の手で、終わらせてくれ!!』
「……っ!」
どうする……?
どうする……!
どうするんだ!!
「わかった……」
(レーヴァテイン、その方法を教えて)
『いいのか?』
(それがカインの願いなら、僕は……)
『そうか。ならば、お前の魔力も借りる。お前は、俺でカインを貫けばいい』
(僕のすべての魔力を持って行って構わないから、必ず成功させてよ)
『俺を誰だと思っている?』
「僕の……相棒!」
僕は剣を構える。
できることなら、こんなことはしたくなかった。
覚悟はしてきたつもりだった。
だけど、そんな覚悟は無駄だった。
実際、カインを殺すというこの状況になった時、こんなにも動揺してしまったのだから。
『もう、時間がないぞ……!』
「くっ……! カイン!!」
僕は、距離を詰める。
カインは、両手を広げようとしていた。
もう、立ち止まらない。
僕は走る。
「くそっ……! 人間どもがああああああああああああああああああああ!!」
ダーインスレイブの声が聞こえた。
そして、レーヴァテインがカインを貫いた感触が手に伝わってきた。
「ありがとう、アストラル……。俺を殺してくれたのが、お前でよかったよ……」
「カイン……!!」
血が剣を伝って、僕の手を紅く染めていく。
だけど、そんなことは気にならなかった。
僕の親友が、目の前で亡骸となっていく。
それを止めたいのに、それがもう無意味だと、察してしまっている。
その事態を引き起こしたのは僕なのに、誰かに止めてほしいと願っている。
「くそっ……! このままでは、終わらぬぞ……」
「なっ!? なんでまだ……!」
カインの口から、あの邪悪な声が響く。
僕はカインを殺したのに、どうしてダーインスレイブはまだ死んでない!
「貴様も……道連れに……!」
「残念だが、それはできない」
レーヴァテインの声が聞こえたかと思うと、僕は何かに突き飛ばされた。
「うわっ!」
「すまないな」
声がした方を見ると、そこには……僕の頭の中で見たままの姿の彼がいた。
「レーヴァテイン……!」
「ダーインスレイブがお前を道連れにしようとするのは見えていたからな。魔力を分けてもらって実体化した」
「でも、どうして……!」
魔剣がそんなことができるなら、そもそも憑依なんてしなくてもいい。
人を媒介になんてしなくてもいい。
どうして、そんなことが。
そう思ったのをレーヴァテインは察したのか、こちらに少し振り返っていった。
「俺は……俺たちは呪いの魔法から生まれたのだ。シュバルツが最後に発動した呪いが、俺達だ」
「呪い……? なら、レーヴァテインたちは……!」
「そうだ。魔力が足りなくて実体化できていなかったが、剣を核としてそのまま発動し続けていた呪術魔物……ということだ」
シュバルツという人格を元に、魔剣を核にした呪術魔物。
それがレーヴァテイン達の正体。
「でも、どうしていまになって……!」
「先ほども言った。この時代は、もう俺たちの出番はない」
「レーヴァテイン……?」
「魔力を暴走させて、ダーインスレイブを消滅させる」
「そんなことをしたら、レーヴァテイン、君だって!!」
「ああ、だがこうするしか道はない」
「他に選択肢はないの! いつだって、ほかに道があったかもしれないのに!!」
「ああ、これでいいんだ」
「そんな……!」
目の前が真っ暗になる。
どうして、こんなことに……!
「ふん、またそうやって自分自身の殻に閉じこもるのか?」
「僕は……カインを救うために旅をした。君やセレナたちがいてくれたから、ここまで来れたんだよ! 勝手に……勝手に僕の前からいなくなろうとしないでよ! 僕を……一人にしないでよ!!」
「すまないな。だが、お前は一人じゃない」
「えっ……!」
――― ―――
セレナは、戴冠の祭壇に続く扉を開けた。
空は日が昇り、青色に近い水色をしていた。
槍を支えにしながら、階段を上ると、アストラルの姿をみつけることができた。
「アストラル……」
アストラルはしりもちをつくような形で、地面に座り込んでいる。
その眼の前に、剣をダーインスレイブに突き刺している青年の姿があった。
「あれは……誰だ……?」
「セレナ、無事だったか」
黒い髪をして、黒いコートを羽織っている青年は、セレナにそう話しかける。
それだけで、セレナはその青年の正体が分かった。
「レーヴァテイン……だと?」
「事情はあとで、アストラルから聞け」
レーヴァテインはそういうと、再び扉の方へと視線を向ける。
そしてその直後に、二人の姿が見えた。
「やっと追いついたぜ」
「はぁ……はぁ……あ、アストラルさんたちは……?」
それは、レオンとアリシアだった。
一緒に旅をしてきた仲間が、レーヴァテインの姿を見ていた。
「なんだァ? あいつは……」
「れ、レーヴァテインさんですぅ!」
「あァ!? あれが魔剣の姿っていうのかァ!?」
「ふん、いつにもまして騒がしい奴らだ」
レーヴァテインはそういうと、すこし微笑んだ。
――― ―――
「アストラル、お前の周りにはあの仲間たちがいる。お前の周りには、お前を支えてくれる人がいる。それだけは絶対に忘れるな」
「レーヴァティン!!」
「あと、これは返しておこう」
ダーインスレイブの首から、ペンダントをとると、僕に投げ返してきた。
「これで、お前は巻き込まれないはずだ」
「待ってよ! 待ってってば!!」
「もう、夜が明ける。お別れだ」
「レーヴァティン!!」
「皆も、さよならだ」
レーヴァテインはセレナに、アリシアに、レオンに向かって、別れの言葉を言う。
「アリシア、魔法は理論さえ合っていれば何でもできる。お前なら、高級魔法を俺たちの時代よりも発展させることができるだろう」
「レーヴァテインさん……」
「レオン、半獣人であることは決して不遇じゃない。むしろ、誇るべきだ。お前は何かを守れる力がある。正しく使え」
「はん、何様だよ……」
「セレナ、アストラルを気にかけてくれて感謝する。どうか、お前の人生に幸があることを願っている。そして、アストラルをよろしく頼む」
「レーヴァテイン……。わかった、任せてくれ」
「アストラル、最初にあったころは『無理だ』『できない』とばかり言っていたお前が、ここまでよく来れた。時につらいことも、苦しいことも、乗り越えてこれたのだ。きっと、これからも乗り越えていけるさ」
「レーヴァテイン……! 僕はまだ、未熟だよ。一人じゃ何もできない。でも……君がいてくれた、君が僕を守ってくれたから……! 本当に、ありがとう……レーヴァテイン……!!」
「感謝されることはしていない。……できることなら、また会おう」
レーヴァテインはそれだけ告げると、ダーインスレイブを半ば引きずる形で、僕らから離れていく。
「レーヴァティィィィィィン!!」
そして、彼らは白い閃光に包まれていった。
激しい風が、吹き荒れる中、僕は守護魔法に包まれていた。
そして、辺りが白い閃光に包まれると、カインとレーヴァテインの姿が目の前に浮かぶ。
(カイン……! レーヴァティン……!!)
二人は、僕に微笑むと、歩き出していく。
遠くへ、僕の手が届かない遠くへと。
「ありがとう、二人とも……!! そして、助けられなくてごめん……!!」
そこで、僕の意識は途切れた。
せめて、彼らの眠りが安らかであることを。
――― ―――
「うおおおおおおおおおおおおお!!」
王宮から出ると、王都に住む人たちからの声援が出迎えた。
「ありがとう、魔剣を倒してくれて!!」
「ありがとう、君たちが王国を救ったんだ!!」
彼らは知らない。
僕の親友が、魔剣に憑りつかれていたことを。
彼らは知らない。
僕の相棒が、自分の命と引き換えに魔剣をこの世から葬ったことを。
彼らは知らない。
僕が流している、涙の意味を。
世界は……残酷だ。
僕の親友を、僕が殺してくれてありがとうという。
「っ……! ぅぅぅ……!」
涙が止まらなかった。
セレナが、僕を支えてくれていなかったら、僕はその場に座り込んで泣いていたと思う。
こうして、僕の旅は終わりを迎えた。
それは親友と相棒である魔剣を失うという結果を残して。




