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僕と魔剣と  作者: Make Only Innocent Fantasy
第6章 亡霊
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6-1 霧

どうも、Make Only Innocent Fantasyの三条海斗です。

ようやく折り返し地点に到着です。

最後までおつきあいお願いしますね。

では、どうぞ!!

「さっき言ってた村って、ここ?」

「ここだと思うのだが……」

セレナは自分の記憶を確かめるように、考え込んでいるようだ。

それもそのはず、僕の目の前にある村は、いかにも廃村だ。

ここに人が住んでいる様子はない。

「いや、ここで間違いない。先ほど、人が入っていくのを確認している」

「うぅ……なんだか、ここは不気味ですぅ……」

「不気味っていやあ不気味だが……。だが、ここに人の匂いはしねえぞ」

「しかし……」

セレナは確信を持っているようだ。

見間違いだと思っていれば、「見間違いだったかもしれない」と一言いいそうだし……。

そもそも、こうなったのには理由がある。

今から遡ること、30分ほど前。

僕らはアンディゴでの任務を終えた後、新しい手掛かりを探して獣人の里を目指していた。

獣人は、僕らが知らないような知識を持っているかもしれないと考えたからだ。

その道中、僕らは森の中へと入っていった。

最初は順調だった。

しかし、奥に進むにつれ、霧のようなものが現れ始めた。

その霧によって方向感覚を奪われた僕らは、森の中で迷ってしまった。

これ以上遭難しないように、その場で座っていると、セレナが人を発見したらしく……。

「あの霧で見間違える……わけもないか」

「あ、アストラルも私の見間違えだというのか?」

その声にすこし違和感を覚えて、セレナの方を見る。

彼女の目は、見たことないくらいにうるんでいて……いや、涙目といった方が正しい、そんな目をしていた。

(うわぁ……みんなで責めすぎたかな……。)

そんなつもりはなかったが、セレナのことだ、責任を感じてしまっているのかもしれない。

「ま、まぁもしかしたら本当に人がいるかもしれないし……とりあえず、入ってみようよ」

その提案に、レオンとアリシアは賛成してくれたが、セレナはずっと肩を落としていた。

(それにしても……こんな姿、初めて見たな……)

いつも凛としていて、堂々としているセレナの姿しか見てこなかったから、こんな一面を見たことなんてなかった。

もしかすると、僕が気づいていないだけで、本当はこんな風な一面を見せていたのかもしれない。

これだけ長くいるのに、僕は彼女のことなんて何も知らない。

ずっと助けられてばかりだ。

せめて、なにかできれば……。

「おい、止まれ……!」

ぐっと、レオンに肩をつかまれる。

その際、首がゴキッという音が鳴ったが、レオンはそんなことどうでもいいようだった。

「誰だァ!?」

レオンの視線の先。

そこには、確かに人影があった。

「人影っ!?」

「全く気配がしなかったぞ!!」

「うぅ……!」

レオンを筆頭に、僕とセレナは武器を構える。

アリシアは、僕らの後ろで縮こまっていた。

足音はどんどん近づいてくる。

それに従って、僕の心臓の音もどんどん大きくなっていった。

姿が見える。

それくらいの近くまで、人影は来ていた。

「ああ、よかった……! 人に会えたのなんて久しぶりだわ」

現れたのは、若い女性だった。

「「……はぁ?」」

「それにしても、武器なんか構えてどうしたの?」

「えっと……こ、この村の住民ですか?」

「ええ、そうよ。私はナターシャ」

「そうか、それはすまない」

そういうと、セレナは武器をしまう。

僕らもそれに続いて、武器をしまった。

「それで、こんな村にどうしたの?」

「それが……森で迷ってしまって」

「ああ、この霧で」

「それで、霧が晴れるまで休ませてもらえないだろうか」

「いいわよ。それじゃあ、ついてきて」

ナターシャは笑みを浮かべると、僕らを案内してくれる。

その間、村の様子を見てみるが、人が澄んでいる様子は全くなかった。

「人が住んでないみたいでしょ?」

「えっ!?」

こちらを振り向きもせず、まるで僕の考えが聞こえているかのように、ナターシャはそういった。

「ええ……廃村のように見えます」

「廃村ね、あながち間違いでもないかもよ」

「それは一体……」

「ついたわよ」

目の前に現れたのは、普通の民家だった。

てっきり、ボロボロの家を想像していたので、これはすこし予想外だ。

「さ、中に入って。続きは中でするわ」

扉を開けて催促するナターシャ。

誰も拒否せず、その民家の中へと入った。

雰囲気は穏やかそうな、そんな人物なのに……なぜか扉が閉まる音が大きく聞こえた。

「それで、さっきの話の続きなんですけど……」

「ああ、ここが廃村みたいって話ね」

僕は黙ってうなずく。

「そうね……話せば長くなるんだけど……」


――― ―――


5年前までは、この村にも人はたくさんいた。

森の中にあっても、ほかの村や町との交流はあったわ。

だけど突然、謎の病気が流行りだしちゃって……人がたくさん死んでいったわ。

もちろん、治療もしたし、原因も探ろうとしたわ。

それでも、何も解決しなかったの。

そんな中、とある旅人が「幽霊を見た」といったの。

その幽霊が人に憑りついて、人の殺しているんだと。

もちろん、最初は信じてなかったの。

でも、幽霊を見たという人がどんどん増えていって……。

それから村人はどんどんいなくなって、今は私だけ。

だから、あながち廃村というのも間違いじゃないのよ。


――― ―――


「幽霊……?」

「知らない?」

「いえ、知ってますけど……」

にわかに信じられない。

幽霊が人を殺した……なんて話。

でも、この人が嘘を言っているようには見えない。

本当なんだろうか。

「アリシア、どう思う?」

「魔法で人を呪い殺すことはできますぅ。それを幽霊のように見せる事も可能ですぅ。しかし、目的がはっきりしない以上は断言できません」

「だよね……」

確かに、呪いの魔法は見た事がある。

それには明確な憎悪があった。

(レーヴァティン、呪術って目的がないとできない?)

『呪術自体行うことは可能だ。そもそも、呪いとはそれを行うこと自体に目的がある』

(それを行うこと自体に?)

『方法の一つとして呪術があるだけで、目的は「呪うこと」だ。通常の魔法と違って、効力や威力は格段に下がるが、まったく相手を呪うつもりがなくても、呪術は発動できる』

(それじゃあ、人を殺すまでの力はない……ってこと?)

『そういうことだ。だから、目的がはっきりしない以上は断言できない、と言ったのだろう』

(それじゃあ一体、幽霊って……)

『ふん、今はそんなことはどうでもいい。先ほどから嫌な魔力を感じる。早々にここを立ち去るべきだ』

(嫌な魔力?)

レーヴァティンが言った意味が分からなかった。

嫌な魔力を感じるって、どういうことだろう……。

「この村で亡くなった方の慰霊碑みたいなものはあるんですかぁ?」

「ええ、この村の中央……この家から少し進んだ先に慰霊塔があるわよ」

「慰霊塔……? そんなものがこの村にあるのか?」

その単語にセレナが反応する。

「まぁ一時期は栄えた村だし、幽霊を鎮めるためにっていう理由が立てたのよ。この村でなくなった人はすべてあそこで眠っているわ」

「アストラルさん、行ってみたいですぅ」

「ええっ!?」

アリシアのその言葉に、驚きが隠せなかった。

普段なら、というか入り口で、「不気味ですぅ」とか言っていたのに、ここにきて行ってみたいだなんて……。

「まぁ行くというのなら止めはしないわ」

「う~ん……」

目を珍しく、きらきらとさせているアリシア。

どうしようかと、考えながらあたりを見回す。

レオンは寝ていて、セレナはようやく立ち直ったようだ。

『立ち去るべきだ』

とレーヴァティンは言っている。

「わかったよ。でも、すぐに帰るからね」

「大丈夫ですぅ!」

まるで子供のようにはしゃぐアリシア。

いつもの臆病というか、おとなしい姿は鳴りを潜めている。

「道なりに行けば入り口につくから迷わないと思うわ」

「わかりました」

「早く行きましょう!!」

早く早くと急かすアリシア。

レオンを起こすと、僕らは村の中央にある慰霊塔へと向かう。

村にはまだ、深い霧が立ち込めていた。

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