5-1 アンディゴ
どうも、Make Only Innocent Fantasyの三条 海斗です。
バランス調整のため、今回は4話構成になっています。いい加減、話を進展させないとなぁとも思っているのですが……。
最後までおつきあいいただけたら嬉しいです。
それでは、どうぞ!
きゅ、丘陵っていうから、なだらかな丘を越えていくのだと思っていたんだけど……。
「ほとんど山じゃないか!!」
「い、いきなりどうしたんだ?」
セレナは、突然大声を上げた僕を怪しげな眼で見る。
そんな目で見ないで……。
「丘陵って聞いたから、もっと楽なのかと思ったってだけ」
「丘陵といっても、ここは特別だ。ほかの場所はもっと低い丘だよ」
「うぅ……なんでこんなきつい丘を」
「しょうがないだろう。……アリシアは大丈夫か?」
「……」
あれ?
返事がない。
「アリシア?」
ふと隣を見る。
セレナも返答がなかったことを不審に思ってか、振り返っていた。
そこにはアリシアの……姿がなかった。
「えええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」
「アストラル! どこで見失った!?」
「えっと……! ああ、ダメだ! 同じような景色ばかりで、わからない!!」
「もうすこし気にかけておくべきだった!!」
「早く探しに行かないと……!」
「誰をですぅ?」
「アリシアをだよ! ……ってうわああああああああああああ!!」
振り返ったらアリシアの顔が眼前にあった。
「アリシア?」
「はい!」
でもおかしい。
アリシアは僕よりもだいぶ背が低いはずなのに……。
どうして僕の目の前に顔があるんだ?
その答えはすぐ横にあった。
「……」
深く頭巾をかぶった旅人のような格好の男性が、アリシアを片手で持ち上げていた。
「こいつらが捜していた奴か?」
「そうですぅ! ご迷惑をお掛けしましたぁ!!」
「もう迷子になるなよ」
アリシアをゆっくりと下ろすと、旅人はそのまま歩いていく。
「あ、あの!」
僕が大きな声で呼び止めると、振り返らず旅人は止まる。
「アリシアを連れてきてくれて、ありがとうございました!!」
旅人は振り返らず、「構わない」という風に手を振ると、そのまま歩きだした。
「それにしても……アリシア!」
「は、はい!」
「勝手にどこかへ行くなとあれほど言っただろう!」
「す、すみません……」
「今回は旅人に助けてもらったからいいが、次もこうなるとは限らないぞ! わかったな」
「は、はい……」
アリシアは肩を落とし、見るからに落ち込んでいる。
「ま、まぁこうして無事に合流できたんだし……」
「甘いぞ、アストラル……!」
や、やばい。
セレナの変なスイッチを入れてしまった気がする。
「だいたい君は……」
それからしばらく、僕とアリシアはセレナのありがた~いお言葉をいただいていた。
(アンディゴにつくのはもうすこし後になりそうだ。)
その予想通り、僕らがアンディゴに到着したのは、日が完全に落ちた後だった。
「それで、どこを目指せば?」
「領主の屋敷に到着の報告をすることになっている」
「わかった。もうすこし、ってところかな」
「ああ」
「アリシア、大丈夫?」
「はいぃ……ですが、少し眠気が……」
「なら、僕がおぶっていこうか」
「お願いしますぅ……」
すこししゃがみこんで、アリシアを負ぶる。
歩き始めてすぐ、アリシアの寝息が聞こえ始めた。
「本当によく寝るなぁ」
「アリシアをおんぶしても問題ないのか?」
「どういうこと?」
「いや、君はそういうのになれていなさそうだからな」
「酷いっ!? でも、事実だけどね」
(そういえば、どうして……)
以前の僕なら「おもっ!?」といっていそうな感じがする。
『この旅で少しは筋力がついたのだろう』
(そうだといいなぁ)
アリシアを起こさないようにゆっくりと、アンディゴ領主の元へと向かう。
「それにしても、アストラル。君とアリシアは、親子に見えるな」
「そうだとするなら、セレナは僕の奥さん……ってところかな」
「ははっ、旅の途中の家族というところか。もしかすると、そう見えているかもしれないな」
「確かに。アリシアと僕が同い年なんて、大半の人は信じられないだろうね」
「どこか少女の面影が残っているからな、彼女には」
「本当、妹ができた気分だよ」
「おや、今度は兄妹になってしまったな」
そんな会話をしばらく続けながら、歩いていると、目的の場所についたみたいだった。
「ここだな」
「大きい……!」
アンディゴの街で一番大きな建物じゃないかと思う。
「ノワール王国 王国騎士団所属のセレナだ。領主のディゴール殿の要請で参上した」
「少々お待ちください」
セレナが扉をノックして、出てきた家政婦にそう告げる。
するとすぐに扉が開いた。
「どうぞ、中へ」
不愛想な家政婦だったが、仕事に忠実なんだと思うことにする。
それにだいぶ夜も遅い。
迷惑をかけてしまったかもしれないな。
そんなことを思いながら、ふと顔を上げる。
その豪華絢爛な装飾に再び驚いた。
もしかすると、王宮と同じくらいかもしれない。
「いやぁ、お待たせしましたねぇ~」
二回から降りてくる、少し小太りの男性。
この人が……アンディゴ領主・ディゴール。
「ディゴール殿か」
「いかにも。そちらは騎士のセレナさん、魔女のアリシアさん、そして魔剣の使い手・アストラルさんですねぇ~?」
「ああ、間違いない。それで、要件を聞きたいが……」
「もう夜も遅いですし、明日にしませんかぁ~? 部屋は用意させますよ」
「私たちも長旅だったしな。お言葉に甘えるとしよう。アストラルも構わないか?」
「大丈夫」
「では……。おい! この方々を部屋に案内して差し上げろ」
「かしこまりました」
先ほどの不愛想な家政婦が、ゆっくりと頭を下げる。
その様子をみて、ディゴールは自室へと帰っていった。
「では、こちらへ」
その家政婦の案内に従って、僕らは各々の部屋へと入る。
セレナとアリシアは同室で、僕は別の部屋ということになった。
僕はレーヴァティンがいるから、大丈夫だろうけど……何かあった時、セレナとアリシアの二人なら対処できるだろう。
「アストラル様、こちらの部屋です」
家政婦にお礼を言うと、僕は部屋の中に入る。
(うわ、ここまですごい装飾だ……!)
『明らかに自分の地位を示したいという考えが見て取れるな』
(客室にもこんな豪華にできますよ……っていう?)
『いや、”客室ごときでもこれくらい”という風だろう。明らかに玄関より質は下がっている』
(僕には違いが判らないや)
『……明日、町の様子を見たい』
(どうして?)
『すこし気がかりがある』
(またまた、珍しい……)
『ふん、細かいことはどうでもいいだろう。早く休め』
(わかったよ……)
細かいことを聞こうとするとこれだ。
すこしの消化不良のような気分だが、疲れているのは事実だ。
ベッドに横になると、睡魔はすぐに訪れた。
――― ―――
「それで……彼らで大丈夫なの?」
アストラルたちが寝静まった夜。
ディゴールの寝室では妖艶な女性とディゴールが同じベッドの上で寝ていた。
「ああ、これで”金獅子”も撃退でき、私の秘密も守られる」
「本当に大丈夫かしらね」
「ああ、心配ない。私に任せておけばよい」
がははははと、下卑た笑い声が夜の屋敷に響いた。
――― ―――
「決行は明日の夜だ、準備はいいな」
「ですが、アニキ。やつら、王都から援軍を呼んだみたいですぜ」
「アァ? 王都から援軍だぁ?」
兄貴と呼ばれた男は不思議そうな顔を子分に向ける。
「なんでも、魔剣の使い手だとか」
「ほぅ……面白れぇ。やってやろうじゃねぇか!!」
意気揚々と立ち上がったその男の髪はまるで、黄金のような金髪だった。




